殺伐とした世界の清涼剤
『ゴースト・オブ・ツシマ』はくり返しになるが、蒙古軍に侵攻された鎌倉時代の対馬を描いた、シリアスの極みにいるような作品である。似合う単語は、
凄惨、悲痛、血反吐、慟哭、悲哀、憐憫、酸鼻、醜悪、恐怖、悲劇、惨憺
と言ったところで、どれひとつ漢字で書けないくらい悲惨な世界(意味不明)が展開しているのである。
逆に、この世界観にもっとも似つかわしくない言葉は、
おふざけ、テキトー、面白半分、散漫、お遊び、小バカ、冗談、ギャグ、お笑い
このあたりで、ちょっとでもその気を見せようものなら、
ぶっしゃあああああ!!!!
ってな感じで、境井仁に一刀両断されるに違いない。クスッする要素は1ミリたりとも入り込む余地がないほど、ギリギリの緊迫感に満ちた世界が広がっている--。
……と、俺も思っていたんだけどね。
さすがに、1秒たりともゆとりのない生活はストレスと緊張でハゲる……じゃなかった、何も生まないと思ったのだろう。このような張り詰めた世界観でありながら、『ゴースト・オブ・ツシマ』はところどころに一服の清涼剤を置いているのだ。
それが……日本人にとって最強のレジャーのひとつ、“温泉”なのである。
秘湯の作法
俺は日本一の温泉大国である群馬出身なので(異論は聞かぬ)、風呂についてはかなりうるさい。そして、幼少期からあらゆるロケーションの温泉に慣れっこになっているので、ゲーム中で露天風呂に出会ったところで、
「ふん。湯が湧いているのか。しかし……ただそれだけのことだ」
このように、その対応は冷めたものなのである。
そしてある日、俺は『ゴースト・オブ・ツシマ』の中で温泉(秘湯)に出会った。事前情報をほとんど得ることなくゲームを進めていたので、対馬のあちこちに露天風呂が設えられていることを知ったのは、そのときが初めてであった。
しかし俺は、温泉大国・群馬が生みし者。前述の通り、そこに湯が湧いていたところで喜びなど……!
ぴょーーーーーーーんwww
「わっほーーーーーーい!!!www 温泉だ温泉だ!!!ww 露天風呂が沸いてるうおぉおおおおお!!!!www」
もう、飛び上がって狂喜乱舞だわwwww 日本人に植え付けられている遺伝子が、露天風呂を見て騒がねえわけがないのだよwww
そう、じつは対馬には、このような美しい秘湯施設がアチコチに設えられている。1歩でも野を歩けば悪鬼のごとき蒙古兵に襲われる殺伐とした世界ではあるが、この温泉につかっているときだけは、血生臭い浮世の刃傷沙汰を忘れることができるのだ。
ちなみに上のスクリーンショットは正真正銘、俺が初めて秘湯を発見したときの1枚なのだが、うれしさのあまり温泉での作法が頭からすっとび、なんとそのまま、
ヨロイでドボンwwwww
しばらくのあいだ、
「対馬は……鎧を着たまま温泉に入っていいのかな……?」
そんなことを考えながら湯に浸っていたんだけど、どうも落ち着かず(当たり前だが)、後になって、
「ちゃんと脱衣所もあるじゃねえか!!!www」
と気づいた次第です^^;
唯一の良心
ちなみに、『ゴースト・オブ・ツシマ』の温泉は心の平穏を得るためだけに置かれているわけではなく、キチンとした、それもゲームプレイに大きな影響を及ぼす効果を得るための施設だったりする。
それはズバリ、体力の最大値の増加だ。
新たな秘湯を見つけ、入ると、ググッと最大体力が増えるので、その後の戦闘を楽にする意味でも積極的に秘湯巡りをしたほうがいい。馬に乗って散策していると、ときたまワールドマップに“?”が出ていることがあるが、それは温泉の可能性もあるので躊躇なく突撃するのが吉だぞ。
秘湯はそれぞれ、趣向を凝らしたロケーションを形成しているので、それを見るだけでも行く価値がある。
↓ほら、こんな感じで。
くぅ~~~!!! たまんねえなあオイ!!
そこで居ても立っても居られなくなり速攻で鎧を脱ぎ捨て、湯に入っていくわけだが……。
このとき、もしかすると『ゴースト・オブ・ツシマ』の中で唯一かもしれない、ほっこりとしたシーンが展開する。プレイヤーがついつい、無意識のうちにスクリーンショットのボタンを押してしまうこのシーン……。
それが……↓こちらであります!
尻~~~~ん……www
堅物主人公、境井仁のバックショット!!w このお色気シーン(?)こそ、『ゴースト・オブ・ツシマ』でたったひとつの清涼剤なのではなかろうか!!w
なので、もう1枚。
尻~~~~~ん……www
ついでにもういっちょ!!!w
尻~~~~~~ん……wwww
重くなりがちな世界観の中にあって、この尻はわずかに残った“良心”なのかもしれない(何言ってんだ)。
大塚角満(おおつか かどまん)
元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。2017年に独立。編集部時代から現在に至るまでゲームエッセイを精力的に執筆し、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』、『折れてたまるか!』など、多数の著作がある。