第8回: [LoL] LCS観戦感想 Team SoloMid vs Team Liquid戦 TSMの対応力が光る一戦

公開日時:2015-02-12 00:00:00

 今回は『League of Legends』のNA LCS Spring – Week 2 – Day 2(Riot Games公式大会)のTeam Solomid(以下TSM) vs Team Liquid(以下TL)の試合について、僕なりの感想を書いていきます。TSMの対応力が光る、双方のチームの目的が分かりやすかったことなどがこの試合を選んだ理由です。なお、Youtubeに公開されている試合の録画を参照します。この記事で言う再生時間は、この動画での再生時間となります。

 LoL Esports(Riot公式大会であるLeague of Legends Championship SeriesことLCSの情報をまとめているサイト)のこの試合のページはここです。このページから試合の録画、チーム構成やビルドなどを見ることができます。当然、試合のネタバレになってしまう可能性もあります。結果のネタバレが嫌な人は録画だけチェックしてください。また、この試合のパッチは5.1となります(Deathfire Grasp削除前、Tristanaの大幅変更前のパッチ)。


●Banとピックについて(再生時間7:05~)

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▲プロの試合はDraft Pickモードで行われます。まずBan(使用禁止チャンピオン)を決めてから、自分たちの使うチャンピオンを交互に選択していくモードです。プロの試合のレーン構成(ロール)は基本的にEUスタイルが採用され、ピック画面では上から、Topレーン、Jungle、Midレーン、AD Carry(Marksman)、Supportプレイヤーとなります。また、プロの試合ではTopレーン担当のプレイヤーがレーンスワップをしてBotレーンに一人で行ったり、AD CarryのプレイヤーがTopレーンに一人で行くケースもあります。Banとピックの読み合いなどを考えるのもプロの試合を観戦する楽しみの一つです。ピック&Banで既に戦いは始まっているといえるでしょう。

 Banについて、気になるところだけ。TSMのBanは、Cassiopeia、Annie、Sivirです。
 Cassiopeiaは、このパッチでは単純にOP(Overpowered)である、Ult(究極スキル)がここ最近流行ってるエンゲージ構成(※)に対して強いからなどがBanの理由として挙げられるでしょう。Annieはここ最近流行っているSupportです(プロの試合ではSupportとしてのピックが多い)。序盤に火力を出せ敵に当てやすいスタンを持っていることから、早期にBoots of Mobilityを装備してマップを動き回るローミングサポートとしてよく見ます。また、範囲スタンを持っていることから、強烈な開戦能力があるのでエンゲージ構成で使われてるようです。Sivirは、他のMarksmanのNerfにより上がってきたチャンピオンです。Ultにより周囲の味方の移動速度が上がるので、こちらも開戦能力に優れることからエンゲージ構成で使われてるようです。

 TLのBanは、Kalista、Rumble、Kassadinです。
 Kalistaについては、TSM WildTurtle選手(AD Carry)に使わせたくないからがBanの理由ではないでしょうか。KassadinはUltのブリンクによる高い機動力を生かして、孤立した敵を一人ずつ倒していくピック構成でプロの試合ではよく使われるのがBanの理由でしょう。

(※編注:エンゲージ(集団戦の開始)から敵を一気に畳み掛けるのを狙ったチーム構成のこと。Sivirの移動速度上昇Ultや、Annieの範囲スタン、Jarvan IVの機動力とUltなどを組み合わせて戦う。関連して、範囲Ultが重なっていくコンボのことをスラングで”Wombo Combo”などと言ったりする。)

【要約すると】 エンゲージ構成を嫌うTSM?WildTurtle選手のKalista怖い。KassadinのBan率。


 ピックについても気になるところを。TSMのチーム構成はTop Lissandra、Jungle Jarvan IV、Mid Xerath、AD Carry Tristana、Support Morganaです。

 また、TLのチーム構成はTop Gnar、Jungle Nunu、Mid Ahri、AD Carry Caitlyn、Support Jannaです。

 TSMの構成について。Lissandra(スキルのクールダウンがレベルに依存する)、Tristana(通常攻撃の射程がレベルで上昇する)ともにレベル依存度が非常に高いチャンピオンであり、後半戦を視野に入れたチーム構成といえるでしょう。また、楽しみなところはLustboy選手(Morgana)のQ(スネア)とBjergsen選手(Xerath)のE(スタン)の二つのスキルショットCCを起点として、LissandraJarvan IVが突っ込んだりしてスネアやスタンがどんどん繋がりそうなところです(Jarvan IVが突っ込んでからでも)。TristanaCaitlynと戦うのは相性が悪いと思われるため、TristanaがTopに行くなどのレーンスワップが起こる可能性も考えられます。若干、序盤に不安のある構成かもしれません。

 TLの構成について。こちらはTSMとは全然違い、序盤からどんどんタレットやドラゴンなどのオブジェクトを取得していく構成と言えます。その起点となるのは、NunuCaitlynJannaのトリオでしょう。NunuはQにより中立モンスターを倒すのが得意で、ドラゴンなどを獲得しやすいチャンピオンです。また、Wによる味方のAS(攻撃速度)を上げられるため、タレットを破壊するのも得意です。Caitlynは長射程のMarksmanであり他のMarksmanと比べて安全にタレットを破壊できるため、NunuのWとシナジーがあります。さらにJannaのE(攻撃力が上がるシールド)をCaitlynに付けることによって、タレットをどんどん破壊できるはずです。一方でNunuは集団戦が弱くTSMは集団戦をかなり重視している構成のため、序盤に有利を広げないと厳しいチーム構成だと思います。

【要約すると】 後半戦重視のTSM。序盤にどんどん有利を広げたいTL。


●序盤の動き、レーン構成の読み合い、オブジェクトの交換(再生時間13:41~)

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▲再生時間14:23。TL(レッドチーム)がTSM(ブルーチーム)のTopレーン入り口にワードを置いています。おそらくTopレーンに行く相手チャンピオンを確認するためのワードで、プロの試合では有用なワードでしょう。これにより、レーンスワップをするかしないかなどを選択できます。しかし、TSMはそれを読んでいたのかTopレーンにMorgana(Lustboy選手)が向かったように見せかけて、途中でリコールを選択してBotレーンに向かっています。

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▲再生時間15:49。TSMのTristana(WildTurtle選手)とMorgana(Lustboy選手)の二人は、BotレーンにTLのCaitlyn(Piglet選手)とJanna(Xpecial選手)が見えた途端にリコールをしています。これは、TristanaとCaitlynではCaitlynの方がレーン戦で有利なため(通常攻撃射程の差など)、Topレーンに向かいレーンスワップをするためではないでしょうか。

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▲再生時間16:40。ここでTSMはTristanaをTopレーンで一人にするレーン構成を選択しました。これはTristanaがレベル依存度の高いMarksman(レベルを上げると通常攻撃射程が延びるパッシブスキルを持っている)であるため、ソロレーンに行かせてレベルを早期に上げたいという狙いがあると思われます。プロの試合では、AD CarryがTopに一人という展開もよくあります。また、対面のチャンピオンがGnarならソロでやられることも無いということでしょう。先ほどリコールしたMorganaはピンクワードなどのアイテムを買った後、Lissandra(Dyrus選手)と二人でBotレーンに向かいます。また、ピンクワードはTSM(ブルーチーム)側のジャングルの入り口に置いたようです。TSMの素早いレーンスワップが光ります。

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▲再生時間19:38。BotレーンではMorganaとLissandraがミニオンをプッシュします。プッシュしきってから、Morganaがリコールを選択しTristanaのいるTopレーンに向かいます。展開によりどんどんレーンを移動するTSMが面白かったです。一方、レーンスワップしないなりに有利を取りたいはずのTLはレーンスワップに上手く対応できているとは言えない展開になっていると感じました。

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▲再生時間21:35。しかし、TLはTSMがTopレーンに二人置いたことを見てか、それに対抗してドラゴンの取得を選択。何事も無くTLが1stドラゴンを取得し、ここはTLの選択が光る結果に。TLはジャングラーがNunuのため、オブジェクト取得を得意とするというチーム構成の特徴を上手く生かしました。ただし、TSMもTopレーンをプッシュしていたため、その直後にTopの最初のタレットを破壊し、オブジェクトの交換をしました。

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▲再生時間22:37。TLのNunuはドラゴンを取得した後、ブルーバフをAhri(FeniX選手)に渡し、すぐさまBotレーンに向かい3人でBotの最初のタレットの破壊を狙います。Topレーンのタレットは渡してしまいましたが、TSMのレーン構成を見てドラゴン+タレットという二つのオブジェクトを取得したのでTLは狙い通りの動きが出来たといえるでしょう。ただ、TSMはチーム構成的に序盤不利でオブジェクトを取られるのは仕方がないので、二つのオブジェクトを与えてしまいましたがTSM側としても狙い通りなのかもしれません。

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▲再生時間24:22。今度はTopレーンの最初のタレットを3マンプッシュをし始めるTL。TLがチーム構成を生かし始めました。ただし、またしてもTSMがそれに対応してかBotレーンの最初のタレットをTristanaとMorganaで破壊し、戦わずしてオブジェクトの交換をし続けます。この時点でTSM側が0.2kのゴールドの有利。TL側はドラゴンを取得したとはいえ、もっと序盤に有利を広げたいことでしょう。この後、このままTLはTopレーンをプッシュし続けますが、Lissandraのミニオン処理能力を前にしてタレットを壊しきることはできませんでした。

【要約すると】 上手くレーンスワップをして、オブジェクトの交換を続けるTSM。序盤に有利を取りきれないTL。


●序盤に有利を広げられないTL。ここで試合が大きく動いてしまう(再生時間24:33~)

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▲再生時間24:58。Lissandraを前にしてTopの二つ目のタレットを破壊できなかったTLは引くことを選択します。そこにMidでタレットを殴っていたTSMのJarvan IV(Santorin選手)とXerath(Bjergsen選手)が寄ってきて、このタイミングでLissandraがフラッシュUltをしてCaitlynを捕まえます!CaitlynはフラッシュとEを連続で使用して壁越えをして、なんとか生き延びます。JannaもJarvan IVのUltに捕まってしまうのですが、Ultとフラッシュを使用してTLの三人はなんとか死なずに帰ります。ここで相手にキルを渡してしまっては、ただでさえ有利を取れていないのにゲームが決まってしまうレベルに差がついてしまう可能性があるからでしょう。

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▲再生時間25:21。ここでTLがMidから寄っていたAhriを生かして、チーム全体がTopから逃げたと見せかけて反撃に出ます。仕掛けた理由は相手のJarvan IV、Lissandra、XerathのUltが落ちた、Xerathがリコールしているのが見えたなどが理由でしょうか。Gnar(Quas選手)もTP(Teleport)が残っているので、人数的にもUlt的にも仕掛けれれば勝てると判断したのでしょう。

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▲再生時間25:31。TLは仕掛け返したのだが、逆にFirst BloodをTSMのTristanaに与えてしまいます。TLの判断が悪かったというより、TSMのスキルが光った結果だと思います。Jarvan IVはAhriのCharm(E)を避け、MorganaはBlack Shield(E)でJarvan IVを守りました。一番驚いたのは、First Bloodを取ったTSM WildTurtle選手のTristanaです。Ultからのフラッシュイン、そして相手チャンピオンをキル/アシストするとWのジャンプのクールダウンが解消されることを生かして壁越えをして逃げたのです。地味ですが、Jarvan IVにHealを使用して助けることまでしています。たった1キルと思うかもしれませんが、TSM WildTurtle選手はかなりの活躍をしました。仕掛け返したTLとしては、後半強いチャンピオンであるTristanaにFirst Bloodを与えてしまったことで、かなり不利な展開になったのは間違いありません。TSMは、ここでAhriをキルしたことによりMidの最初のタレットまで壊してしまいます。その後、Tristanaは少しだけファームをしてInfinity Edgeを完成させます。両チームのAD Carry間に装備差ができることになりました。

【要約すると】 プッシュしきれないTL、TSMに仕掛けられるが生き延びる。逆にTLが仕掛け返すが、TSMの素晴らしいプレイによってWildTurtle選手のTristanaにFirst Bloodを与えてしまう。


●First Bloodを取ったTSM、無難に少しずつ有利を広げていく(再生時間34:45~)

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▲再生時間34:35。かなり有利になったと思われるTSMが難なくドラゴンを取得。今度はTSMがプッシュする展開に。

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▲再生時間40:52。TLがワードを置きに来たので、待ち伏せしていたTSMはJannaを捕まえてキルすることに成功しました。ワーディングとデワードの重要性がとてもよく分かるワンシーンでした。

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▲再生時間42:28。LissandraがCaitlynを追って捕まえようとしたところでCaitlynに逃げられ、深追いしすぎたと思われたシーンです。ですが、LissandraはCaitlynを捕まえるためにUlt(相手に使うとスタン、自分に使うと無敵になれる)、を撃つのではなく自衛のために残しておいたようです(なんとここではAhriのCharm(E)を無敵で避けて生き延びている)。筆者だったら即CaitlynにUltを撃ってたと思うので、Dyrus選手のLissandraの判断は素晴らしかったと思います。これにより、TSMはAhriをキルすることに成功しました。

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▲再生時間45:06。Topの相手タレット下での集団戦を3-0で制したTSMは会場にTSMコールが響き渡る中、Baronの取得を選択します。TSMファンはTSMの勝利を確信したことでしょう。

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▲再生時間51:49。その後はTSMがBaronバフを生かして、MidのInhibitor+Nexusタレット一本を破壊します。一気にゲームを決めずに一旦戻る丁寧な試合運びです。戻ってから、そのままプッシュし続けていってTSMの勝利!

【要約すると】 試合を投げないTSM。TSM! TSM! TSM!


 まとめよう。今回はTeam SoloMid vs Team Liquidの試合について書きました。一方的な試合のように見えますが、それはTSMの戦術が上手かったからだと思います。もちろん、WildTurtle選手などの個人技も光っていましたが試合を大きく決めたのは序盤のレーンスワップとオブジェクト交換をするという対応力でしょう。また、観戦感想を書くのは初めてなので、至らぬ点があるとは思いますがご了承ください。

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