第9回: [MOBA怪しい伝説] 2003年のDotAを今から振り返る

公開日時:2015-03-24 00:00:00

 皆さんにとって、初めてプレイしたDotAは何ですか? 僕が初めてプレイしたのは2003年にリリースされたEul作の『Defense of the Ancients』です。おそらく世界最古の『DotA』であるこのゲーム(ゲームというより、『Warcraft III(以下WC3)』のカスタムマップ)から、『DotA Allstars』などの様々な亜種が誕生しました。『DotA』を広めたのは間違いなく『DotA Allstars』ではありますが、筆者が当時メインでプレイしていたのはEul氏作の無印『Defense of the Ancients』です。『DotA』の歴史については、記憶の中にしか残ってない部分も多いのでここでは触れません。ここでは、今のゲームとの違いや今でも受け継がれているヒーローなどについて、一部ではありますが紹介します。

 ハードディスクに眠っている古いバージョンを引っ張り出してきてもよかったのですが、今回は現在でもBattle.net上に部屋が立てられている『DOTA 3.76d』というバージョンを使用しました。バージョンによって細かい違いがあるかもしれませんが、ご了承ください。


●今のゲームとの違いなど

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▲Eulの『DotA』のピック画面。『WC3』のカスタムマップであるという都合から、ゲームが始まってから「Shade」と呼ばれるユニットをヒーローが立っているサークルに移動させてヒーローをピックする。

 Eulの『DotA』は陣営別にヒーローを選択する形式でした。下側チームが「The Sentinel」、上側チームが「The Scourge」となっています。今のゲームでは、どちら側のチームでもピックできるヒーローが変わらないゲームの方が多いですが、Eulの『DotA』では「The Sentinel」と「The Scourge」ではピックできるヒーローが全然違いました。

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▲「The Scourge」チームはアンデット系ヒーローが多い。Lifestealer(N’aix)は『DotA Allstars』にも受け継がれ、その後『Dota 2』にも登場しているヒーロー。他にもスキル性能は大分違うが『Dota 2』に登場するヒーローもたくさんいる。例として、Dragon Knight、Stealth Assassin(『Dota 2』ではRiki)、Venomancerなど。

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▲サイドショップは存在しなかったが、シークレットショップは存在する。「Demon Edge」など、『Dota 2』にも登場するアイテムも。サイドショップやクーリエは『DotA Allstars』からの要素だった。

 今のゲームとの違いは他にもあります。大きなものとしては、“ヒーローのレベルキャップがレベル10まで”、“合成アイテムが存在しない”、“Wardが存在しない”などでしょうか。
 ヒーローのレベルが10までしか上がらなかったため、通常スキルはレベル3まで、究極スキルはレベル1までしか上がりませんでした。また、レベルアップ時にスキルにポイントを振らずにステータスに振るシステムもありませんでした。合成アイテムが無いということもあり、ヒーローの成長度合いの天井が今のゲームよりも低かったと思います。
 Wardが存在しないのは、マップの構造の違いもおそらく関係しているでしょう。サイドレーンの1st タワー間の川には『Dota 2』ではMidに行く道があります。ですが、Eulの『DotA』には存在しませんでした。今から思うと、MidからGankを受けて死ぬことはあまり無かった気がします。


●今のゲームとの繋がり

 『League of Legends』に登場する「Rylai’s Crystal Scepter」というアイテムを知っていますか? スキルを使用した時に相手をスロウにする効果が追加されるようになるアイテムなんですが、では名前にある「Rylai」とは誰のことなんでしょうか?

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 「Rylai」とは、Eulの『DotA』から存在するFrost Maiden(『DotA Allstars』および『Dota 2』ではCrystal Maiden)の本名のことです。「Rylai’s Crystal Scepter」とは、彼女が持っている杖のことだったと考えられます。彼女は氷の魔法を操り、敵をスロウにするのが得意なヒーローでした。ですから、「Rylai’s Crystal Scepter」でも相手をスロウにできるわけですね。また、「Rylai’s Crystal Scepter」のアイコンが「Rylai Crestfall」の三番目のスキル(Brilliance Aura)にそっくりなこと(画像参照)からも元ネタが「Rylai Crestfall」であることは明らかです。

 ちなみに、このアイコンは『WC3』にもともと入ってるアイコンの流用だったりします。スキルの名前と性能も『WC3』からの流用。『WC3』のカスタムマップである『DotA』は、『WC3』からの流用が非常に多いのです。彼女の3Dモデリングも『WC3』キャラ「Jaina Proudmoore」の流用。『WC3』プレイヤーにはお馴染みの彼女ですが、やったことがなくても彼女の姿を見たことがある人は多いのでは? 『Dota 2』の「Crystal Maiden」は彼女にそっくりであるし、『Hearthstone: Heroes of Warcraft』にもMageとして登場する。また、「Blizzard Entertainment」の最新ゲームである『Heroes of the Storm』にもヒーローJainaとして登場します。また、完全に未確認ですが、最近『World of Warcraft』にもNPCとして「Rylai Crestfall」が追加されたようです。


 まとめよう。今回は2003年にEul氏が作った『Defense of the Ancients』について書きました。まだまだ今のゲームとの繋がりや違いもあったりするのですが、全ては紹介できませんでした。『WC3』を持っていれば無料でプレイできるので、最古の『DotA』や『DotA Allstars』を今からプレイしてみるのも新鮮かもしれませんね。

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