“トップゲームクリエイターズ・アカデミー”キーパーソンインタビュー。この人材育成プログラムでは「ゲーム作りに本気で取り組みたい!」という溢れるエネルギーをぶつけてほしい【TGCA】
 一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会と連携して実施するゲーム分野のクリエイター等育成プログラム“トップゲームクリエイターズ・アカデミー(TGCA)”が始動した。

 TGCAは、世界で通用する次代のゲームクリエイター育成のために選抜者を2年間にわたって無償で支援。プロのクリエイターによる指導などが受けられるという。TGCAに込められた思いを、CESA理事 CSR委員会 委員長の岡村信悟氏と、プログラムの監修を行うプリンシパル(監修役)に就任した、レベルファイブ代表取締役社長/CEO日野晃博氏のおふたりに聞いた。(聞き手・ファミ通グループ代表 林克彦)
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日野晃博氏(ひの あきひろ)

レベルファイブ 代表取締役社長/CEO(文中は日野)【写真・左】

岡村信悟氏( おかむらしんご)

ディー・エヌ・エー 代表取締役社長 兼 CEO 一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会 理事 CSR委員長(文中は岡村)【写真・右】

トップゲームクリエイターズ・アカデミー概要
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 CESAと文化庁、日本芸術文化振興会の3者が連携して取り組む、ゲーム分野のクリエイター等育成プログラム。

 世界で評価されるオリジナルのゲームIP・コンテンツを創出できる、優れたアイデアと技術力を持つクリエイターの育成を目的に、プロのクリエイターによる指導などが受けられるほか、海外のイベント出展などへのサポートも行う。

 具体的には、TGCAの一環で出展するイベント参加に必要な出展料や交通費、宿泊費はCESAが負担。そのほか、無償貸与という形でゲーム制作に必要な機材類の支援も行うという。なお、本プログラムで開発したソフトの権利は、すべてクリエイター自身に帰属する。

 育成対象者は公募により選定し、対象となるのは30歳以下(2025年3月末時点)。プロ、アマを問わず原則ゲームソフト1本以上の制作経験があり、職業としてゲームのパブリッシングで生計を立てていない人が対象となる。募集期間は2025年1月の予定。プログラムの実施期間は2025年4月~2027年3月までの2年間。対象は10組(個人、チーム問わず)を予定。より詳しい募集条件は下の公式サイトにて。

【TGCAのおもな特徴】
  • 個人、チーム問わず、30歳以下で、原則ゲームソフト1本以上の制作者が対象(例外あり)。
  • 現役クリエイターが指導してくれる!
  • 受講費なし。育成対象者には無償で助言、指導を実施!
  • 台北ゲームショウやgamescomなど海外イベントの出展について、交通費、宿泊費を含めてサポート!
  • プログラム終了後、3年間をめどにフォローアップ!
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東京ゲームショウの会期中に行われた発表会の模様から。岡村氏、日野氏と、文化庁 次長の合田哲雄氏(右端)。
“トップゲームクリエイターズ・アカデミー(TGCA)”公式サイト

世界に通用するゲームクリエイターを育てたい

――文化庁が参画してのクリエイター育成の取り組みが始まります。国がゲームに力を入れていくことの証明でもあると思いますが、まずは感想から教えてください。

岡村
 近年、日本にとってゲームを始めとするコンテンツ産業というのは、とくに海外に向けたときに非常に重要になってきています。そのために大切になるのはやはり人材育成です。いい人材が育っていかないと優れたコンテンツも生まれてきません。

 今回、文化庁がゲーム業界を支援しながら、海外に通用する人材育成をするというのは、画期的なことだと思っています。コンテンツの持つ力が再認識され、日本の産業を盛り上げるものとして期待されていること、そしてその柱のひとつにゲームがあることはたいへんうれしいです。

日野
 国がコンテンツ産業の振興に力を入れてくれるのは大きな進歩だと思っています。このプログラムをいかに進めていくかは、今後たいへんなところかとは思いますが。

――TGCAを企画するにいたった経緯を教えてください。

岡村
 我々としては、日本のゲーム産業の特徴であり、海外にも通用する質の高いIPコンテンツを生み出せる人材をしっかりと育成しなければいけないという認識でいます。ゲームソフトはプラットフォームの垣根がなくなり、グローバルでのリリースが当たり前になってきました。日本のゲームクリエイターのありかたも大きく変化しています。

 そのような変化を踏まえて、改めて世界で広く楽しまれるオリジナルコンテンツの創出やそれを制作できる人材を積極的に育てていくことが重要となってきています。そうした人材をゲーム業界として積極的に育成していくためのひとつの方法がTGCA開設の理由です。

――業界でもクリエイター育成の取り組みはいくつかありますが、TGCAならではの魅力はどこでしょうか?

岡村
 CESAには世界に名だたるゲームメーカーが会員として加盟しており、それらの企業には優秀な現役ゲームクリエイターがたくさん在籍しています。そのクリエイターの方々にTGCAに参加していただき、育成対象者に伴走支援や専門的なアドバイスを実施するということは非常に魅力的です。TGCAのキモと言っていいかと思います。

――現役のゲームクリエイターからアドバイスをもらえるというのはうれしいですね。

岡村
 それに加えて、今回プログラムの期間を2年間という長期で考えています。複数年にわたるプログラムは画期的だと思っています。それが国の事業の一環として行われるのです。文化庁や日本芸術文化振興会と連携したプログラムということで、応募を検討する皆さんにも安心して手を挙げてもらいたいと思っています。

――今回、日野さんがプリンシパルとして参加していますが、日野さんにお願いした経緯を教えてください。

岡村
 TGCAの目指すところは、オリジナルのゲームIP、コンテンツを創出し世界的に活躍できるクリエイターの輩出です。日野さんが国内外でヒット作品を多数手掛けているという実績は大きなポイントでした。さらに、日野さんはトッププロデューサーであり、プログラマーでありディレクターの側面もあり……と、TGCAの応募者たちにとって憧れや目標となる方だと思います。何より、現在のゲームは総合芸術として表現の幅がさらに広がっているところで、日野さんはゲームのみならず、アニメ、映画、マンガなどクロスメディア作品を世に送り出した実績もお持ちであり、今回の役に適任のため打診したところ、ご快諾いただけました。

――日野さんがプリンシパルの話をいただいたときの率直な感想を聞かせてください。

日野
 正直言って、最初はどういうものなのかよくわからなかったんです(笑)。それで少し戸惑ったのですが、お話をお聞きするうちに、これから日本のゲームクリエイターは海外に対してすごくがんばっていかなければいけない状況にあるときに、こうして国を挙げてクリエイターを育てるというプログラムが実施されるのはすばらしいことだと改めて思いました。

 実際のところ、自分がゲームを作るために蓄積してきたもの――スキルなのかもしれないですし、心掛けや技術かもしれないですし、そういったものを何かしら伝えて、それがつぎの世代のゲーム作りに活かされるというのにはワクワクします。

――プリンシパルとして、どのようなことをしたいですか?

日野
 具体的な指導などは、優秀なアドバイザーたちが対応してくださると思うのですが、僕個人としては、ゲームを作る楽しさを伝えられればいいなと考えています。僕は、ゲームを作る楽しさを感じているかどうかで、この業界で仕事が長続きするかどうかが決まると思っています。ゲーム作りを“仕事”と思うのではなくて、「ものを作ることはむちゃくちゃ楽しい」ということを伝えられたらいいですね。

――TGCAが目指しているものとしては、世界を目指すゲームクリエイターになってほしいという思いが強いのですか?

岡村
 そうですね。現状を分析すると、日本のコンテンツ産業はいま非常に強いという認識ではいます。最新のデータでは、ゲームの市場規模はグローバルで年間約30兆円におよび、かつここ5年で2倍近くに伸長しています。一方、それだけ競争が激しくなっているとも言えます。最初から世界で戦えないとダメなのです。TGCAでは、そういう“世界で戦う”という方法論を学んでほしいですね。

――いま以上に世界で存在感を放つための人材育成ということですね。

岡村
 これは私が代表取締役を務めるディー・エヌ・エーの話になりますが、若くしてゲームの開発や運営における中心的な役割など重要な領域を担ってきたメンバーが多くおります。また、そのような経験を早くから積み重ねることが、さらに大きな挑戦を行う原動力にもなるとも感じているところで、そうした挑戦心溢れる方にぜひ応募してほしいと考えています。

――日野さんは、「失敗してもいいし、そういった経験をしている人材のほうが欲しい」とお話されていたとお聞きしましたが?

日野
 そうですね。失敗というか、心が折れないことがいちばん大事です。ゲームクリエイターは繊細なタイプが多くて、そういう人たちは失敗したら終了と思いがちなんです。だから、ずっと積み重ねて成功し続けて一度も挫折を味わったことのなかった10年選手が、11年目に初めて挫折を味わって、それでゲーム開発を辞めてしまうこともあります。

 失敗というものを乗り越えられる人が、最終的には大きくなるのではないかと思います。TGCAの新しい人材を育てるということと直接的には関わりはないかもしれないですが。TGCAには、失敗を経験した方とかも、ガンガン参加してくださればいいのかなと思います。

岡村
 そうですね。ずっともがいている人が、「これはチャンスだ!」と捉えてくれればうれしいですね。

日野
 あと、若いクリエイターの方で特別な才能を持っている方がいても、その才能を活かして新しいものを作る前に、“大人の事情”を知っていく中でその才能が丸くなってしまうのはもったいないことだと思います。

 そういう意味で、TGCAの期間中、場合によっては2年経って卒業した後でも、まずは何かに縛られることなく自分自身が「これがおもしろいんだ」と思う新しい発想でゲームを作ってもらいたいです。そのように開発したゲームが大ヒットすれば当然ですが、もしそうならずとも誰かの印象に残るゲームを作ることは大切だと思います。

 それがたとえ売上的には失敗となっても、自由な発想でゲームを作った経験があるクリエイターが増えることは業界にとっても大きなメリットですし、企業側もそういう経験値のあるクリエイターは求めるだろうと思っています。いずれにせよ、TGCAでは少人数での体制を考えているので、その人に合った教育というものができるのではないかと思っています。

──TGCAは対象者を少数精鋭にして、サポートするということでしょうか?

日野
 そうです。あまり過保護にするのもよくないとは思いつつも、TGCAではしっかりとしたサポートを予定しています。クリエイターというものはやはり気難しくて、メンタルがいろいろな方向に向いていたりするんですね。そういう人たちに対して、今回のプログラムは少人数でのマンツーマン形式に近い形で教えていくということなので、いままでにない細かい対応ができると思います。
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「熱意を持って挑戦したい!」という思いにきっかけを与えたい


――クリエイターの応募条件について教えてください。どのような思いでこの応募条件にしたのでしょうか?

岡村
 細かい部分は募集要項を確認いただきたいのですが、応募条件でいちばん重要なのは、30歳以下という年齢の制限を設けたことですね。これは、若い人の「自分で熱意を持って挑戦したい!」という思いにきっかけを与えるためです。そこには当然学生さんもいるでしょうし、保護者の方の同意があれば、未成年の方でも応募可能です。すでにゲーム会社で働いているけれど、「自分としてはもう一度こういう場で学びたい」ということなら30歳以下であれば歓迎します。

 ただし、セルフパブリッシングなどをしていても、収入が500万円を超えないことが条件となります。よく質問を受けるのが、「ゲーム会社に勤めていて、その勤務での給料の収入が500万円を超えている場合は?」というものですが、その場合は応募していただいて問題ありません。

日野
 個人やチームの枠組みは問わない条件となっていますので、ひとりでなんでもできる必要はなく、チームで分担しながらのゲーム制作であっても応募いただけます。おもしろい発想を持っていることが大事ですが、スーパーマンである必要はありません。ただ、応募条件で、いずれはもう少し高い年齢の人も入れてあげてほしいとは思っています。

――今後に向けてということですか?

日野
 自分の会社のスタッフを見ていて実感するのですが、モノを作ることに対する熱意や勢いはみんな持っていても、それを実行に移す技術があってバリバリ進める人もいれば、空回りしている人もいたんですね。そういう人たちが、うまくいかない状況に陥ることで、若かりしころに持っていたエネルギーを徐々に失くしてしまう。30代、40代でもそういう人は見てきました。

――なるほど。

日野
 そんな30代、40代にも機会を提供してあげたいというのはあります。心が若い人が、年をある程度重ねているということもありますし、その逆もあります。

岡村
 そうですね。技術や知識はあるけれど、遮二無二がんばる機会をご提供するというのは大事かもしれないですね。

日野
 今回の取り組みがうまくいけば、つぎは年齢制限を40代に……ということになるかもしれないです。

岡村
 今回の応募に関しては、とにかく意欲、熱意ですね。「こんなことをやりたい!」ということをアピールしていただきたいです。
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――条件として、“過去にゲーム制作経験がないものの、これに準じる能力を有することが証明できれば応募できる”というものもありますが、これはどういった意図でしょうか?

日野
 原則としては、ゲーム制作経験を有する方を応募条件としています。ただ、未経験でもゲームを作りたいという強い熱意やおもしろいアイデアがあって、それを実現するための最初のハードルを、TGCAをきっかけに乗り越えたいという場合は、あきらめないで事務局に相談してほしいんです。その熱意やアイデア次第では、原則に関わらずエントリーが受け付けられる可能性があります。

――その人の人生がかかるので、選考基準も気になるところですが、どのようなものになりますか?

岡村
 いちばん大事なのはやはり意欲です。本当にやりきりたいという切実な思いですね。また、クリエイティブというのは個性が大切です。それは取りも直さずオリジナリティーだと思うので、作品のオリジナリティーは欠かせません。それから当然いまのゲームは、いろいろな技術が不可欠なので、技術力も判断材料となります。

 そして自分で新しいものを作り出すにあたっての自分の特筆すべき能力をしっかりとアピールすること。TGCAは手取り足取り教えるプログラムというよりは皆さんのゲーム制作を後押しするものですので、こういったポイントは押さえつつ、自律的にゲーム制作に取り組める人材を期待しています。

日野
 僕は直接的に選考する立場ではないのですが、本気かどうかというのは、選考する人たちに見てほしいと思っています。ただゲームが好きとか憧れているだけではなくて、人生を懸けようと思っているかですね。それでもゲームの完成に必要な最後のピースがハマらない人。TGCAはそういう人たちのためのものだと思います。もうひとがんばりで殻を破れる人かどうかを見るためのものですね。そういう人たちは、もし失敗したとしても後悔はしないと思うんです。好きなことをやりきって、もしいまひとつ届かなかったとしても、それはそれでとてもいい経験をして、つぎのステップを踏み出せると思います。本気で好きだったら、やるべきだと思います。

――現役クリエイターのアドバイザーについても詳しく教えてもらえますか?

岡村
 コンテンツ制作のサポートを主として行うクリエイティブアドバイザーと、ゲームを制作する以外で、海外でのビジネスやコンテンツをリリースする際に必要な知識の学びを支援するビジネスアドバイザーという体制になります。クリエイティブアドバイザーは、育成対象者の進捗確認といった伴走支援を実施する“専任メンター”と、専門領域に関する指導やアドバイスを個別で行う“スペシャリティアドバイザー”に分かれます。
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東京ゲームショウの発表会でアドバイザーについても紹介。
――クリエイティブとビジネスの両面で指導、助言をするのはおもしろいですね。

岡村
 クリエイティブアドバイザーは、まさに伴走者と言っていいかもしれません。2年間はけっこうな長さです。ひとつの作品を作ることを通して、お互いにコミュニケーションを取りながら、ゲーム作りの何たるかを学んでほしいと思っています。

 一方のビジネスアドバイザーは講義形式と個別アドバイスの両方を実施します。ゲーム制作においては、特徴とする切り口がさまざまに考えられますし、規模が大きくなるほどチームでの役割分担が必要になりますので、どのような体制、ゲームのアイデアであっても支援ができるよう、多方面から支援する体制構築が必要不可欠だと判断しました。

――アドバイザーの人選は決まっているのですか?

岡村
 CESAには、私が代表取締役を務めているディー・エヌ・エーを始め、カプコン、グリー、コーエーテクモゲームス、コナミデジタルエンタテインメント、スクウェア・エニックス、セガ、バンダイナムコエンターテインメントの計8社が理事会社として参加しています。これらを始めとする国内の大手企業を中心に現役のクリエイターをアドバイザーとしてアサインいただく予定です。具体的にどのようなクリエイターが参加するかは、今後の発表をお待ちください。人数としては、それぞれのアドバイザーで、10~15名程度を予定しています。
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日野
 各アドバイザーのほかに、特別講師として、スポットで講義を行う方に参加していただくことも考えています。僕がいままでの仕事でつながりのあったトップクリエイターにも関わってもらえればと考えています。ただ、クリエイター仲間はみんな忙しいので、もう強制的に出てもらおうかなと(笑)。

――(笑)。TGCA参加者のゴールを教えてください。“ゲームの完成”や“ゲームメーカーへの就職”といったことではないようですが。

岡村
 TGCAのいちばんの目標は、次代を担うような将来のトップゲームクリエイターを創出することですが、そのようなクリエイターになる道はひとつではありません。「ひとつの作品を作りきって、そして売ります」というのがTGCAのゴールではない。むしろ、作品作りを通しての経験自体が目標と言えるのかもしれません。

 2年間本気でゲーム作りを経験してもらう。その結果として作品を世に出すことにつながるかもしれませんが、たとえそうはならなかったとしても、TGCAを通して得られたものが、ひとつのゴールになると考えています。

日野
 TGCAを経て、大手企業に在籍したいとか、個人でインディーゲームを制作したいといった、自発的な希望があればそれを尊重したいと思いますが、たとえばTGCAの中で知り合った方々が育成対象者どうしの横のつながりで、会社を起業して新しいゲーム制作に取り組む……といった化学反応が起きてもおもしろいですよね。

 与えられたルートではなく、より楽しく、おもしろくゲームを作るためにはどういう道を進みたいか、参加しながら考えてみてもらいたいです。TGCAでの2年間が、その人にとっての始まりになればいいと思っています。
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──仮に2年間でゲームが完成はしなかったけれども、その後のイベントに出展したいというとき、支援の継続はあり得るのですか?

岡村
 そうですね。支援自体は2年間となりますが、ご自身で作った作品の権利は当然、著作権も含めて作られた方に帰属します。海外を含むいろいろなパブリッシャーさんと交渉されて、そのゲームをリリースしていただいても構いません。

 さらに、TGCA卒業後もCEDECやCEDEC+KYUSHUへの参加など、関係者間のネットワークや知識の拡大に寄与する機会の提供など、一定の継続支援はCESAとして考えていきます。

――2年のあいだにゲームが1本完成したら、それは一般への発売をしてもいいものでしょうか? その際、支援は継続されますか?

岡村
 先ほどの話と一部重複しますが、TGCAを通じて知り合った方々と協力して実際にパブリッシングをすることは問題ありません。これがたとえば、TGCAの期間中からであったとしても、応募以前からすでに調整されていたような話ではなく、あくまでTGCAの活動の成果であれば支援を打ち切るといったことはありませんので、そういったビジネス面の交渉も含めて経験していただければと思います。

 なお、セルフパブリッシング希望の場合、そのための資金提供はできませんが、実際のパブリッシングまでにどのような審査や手続きが必要になるかといったビジネスノウハウについては、ビジネスアドバイザーからのアドバイスにより支援が可能です。

――TGCAに興味を持っているクリエイターの卵もたくさんいるかと思いますが、最後に応募を考えている人にメッセージをお願いします。

岡村
 TGCAを発表させていただいて以降、着々と応募が来ています。ぜひ、たくさんの人に思いを持って挑戦してほしいなと思っています。

 いまの若い方たちを見ていますと、日本はなかなか可能性があると思っています。日本はこの数十年、相対的に国力が落ちたと言われていますが、停滞はしていないと思います。むしろコンテンツ産業を筆頭に、日本のよさというものが違う形で世界に浸透してきているのではないでしょうか。「好きなゲームで足跡を残したい!」という思いを持っている方が、より多くなることが重要だと思っています。ですので、このプログラムに興味を持っていただいて、このプログラムを踏み台にするくらいの気持ちで、チャレンジしてほしいと思います。

日野
 クリエイターになりたいということで言うと、レベルファイブにもたくさんの応募をいただきます。この前ゲーム業界の飲み会で、とあるメーカーの開発者の方から「レベルファイブに10回応募したのですが、全部一次の書類選考で落ちました」と言われたんですね。5回くらいはそこそこあるのですが、10回というのは極めてまれで。「僕10回応募してダメだったのですが、いまこうしていっしょに仕事ができていますね」と言われて。その方はあっけらかんとされていたのですが、僕は「なぜレベルファイブは、こうしてプロとして働けている人材を10回落としたんだろう」という思いにとらわれたんです。

――ゲーム業界でやれる実力はあったのに……ということですね。

日野
 それは、そのときにレベルファイブが満たしてほしい何かの、いくつかのピースが足りなかったからだと思います。ただそれだけのことで10年間縁がなかった方が、いまプロとして活躍できているんです。ピースが揃っているかどうかを我々は一次選考で判断するしかないわけですが、TGCAに関しては、「ゲーム業界で働きたい!」という溢れるエネルギーをぶつける場としては、このプログラムは持ってこいだと思います。ぜひ応募してみてください!
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