友達の家で「なんか違うのやろうぜ」と、よく知らない古いゲームソフトの山から適当に遊ぶ時のだらっとした贅沢な時間。カンを頼りに操作しながら「そういうことかよ!」とクセのある操作やルールを試行錯誤で学んでいく妙な楽しさ。
あるいは知り合いが海外で手に入れたという怪しい詰め合わせカセットや、昔の体験版ディスクのお目当てのゲーム以外を遊ぶ経験でもいい。待ち望んだ最新ゲームを完璧に準備して遊ぶ時とは別のワクワクした感覚がある、あの感じを覚えている人はいないだろうか。
腕利きのインディーゲーム開発者たちが手掛けた50本のゲームを収録した『UFO 50』は、そんなニッチだけど贅沢な愉しみを味わえる異色の作品だ。今回、本作のレビュー版をひと足先にプレイしたので、その内容をご紹介しよう。なお本作はPC向けにSteamで2024年9月19日に配信を予定している。
“有名インディーゲーム開発者による架空のレトロゲーム集”で戯れるという贅沢な遊び
収録されているゲームは、UFOsoftという架空のゲーム会社が“LX-II”なるゲームマシン向けに1982年から1989年にかけてリリースした……という設定の50タイトル。
いずれもレトロなドット絵スタイルは共通するが、ジャンルなどはバラバラ。アーケードスタイルのプラットフォームアクション、シューティングゲーム、対戦アクション、ストラテジー、ポイント・アンド・クリック型のアドベンチャー、クラシックなRPGなどさまざまだ。1人でも遊べるけど、対戦ゲームや協力プレイのあるゲームもあるので、可能なら友達やパートナーとワイワイ言いながらトライしていくといいだろう。
蜘蛛の巣がはっちゃってるコレクションから、一本ずつ遊んでいく。
サイバーゴルフゲーがあったかと思えば西部劇RPGが始まったり、ホントバラバラで面白い。
50作品は一応“リリース年順”に並んでいるものの、どれから遊んでもオーケー。個人的には“できるだけ適当に選ぶ”のをオススメしたい。実は説明ページを開けば基本操作が書かれていたりもするが、まずはそれすらも無視して適当に選んで起動し、適当に操作して……ワケわかんないままゲームオーバーになろう。
「え、これ何?」となると思う。それでいいのだ。それでも何かを感じたらもう一度トライすればいいし、とっとと“次”を試す方がワクワクするならそうすればいい。基本操作やルール(スタート前のデモ画面で説明してくれたりする)を確認して「ちゃんとプレイする」のは、そうしようと思ってからで十分だ。
お互いに技を発見しながら適当に対戦するのもいい感じ。
というのも本作に収録されている疑似レトロゲームは、それぞれのジャンルが今のように確立される前のレトロゲーム特有のユニークな発想・模索まで込みで作られている。しかもアイデアを注ぎ込んでいるのは、『Spelunky』や『Downwell』などを手掛けた一級のインディーゲーム開発者たちだ。
さらにそれぞれコンパクトではあるものの決して一発ネタのミニゲーム集ではなく、1本1本が独立したアイデアのゲームとしてしっかり作られている。なのでまず「いま」のスタンダードな感覚から外れたそのワケわかんない感じを味わって、そこから「あーこういうゲームなのね」と理解して楽しんだ方が2度美味しいのだ。
1画面のアーケードスタイルゲーム『Magic Garden』は、超絶かわいいのだがルールを把握するまでなかなか手こずる。
中にはホラーアドベンチャーゲームも。英語テキストを読むのがめんどくさいかもしれないが、かなりいい感じの仕掛けがあるのでオススメ。
ちなみに50本のタイトルの中にはシリーズ作があったり、同テーマで別々に開発された姉妹作という設定のゲームがあったりもする。架空のゲーム会社としての技術の進化の跡が見られたり、昔のゲームみたいにキャラクターやモチーフは共通していてもゲームプレイがかなり違ってたりするので、偽レトロゲーム社史的な楽しみ方も可能だ。さらに特定の条件をクリアーしていくことでボーナスも用意されている。
初代『カンパネラ』は、UFOをゴールに向けて飛ばすアーケードスタイルのアクション。『カンパネラ3』は奥スクロールシューティングになっている。UFOが自機なのは一緒。
『カンパネラ2』はダンジョン探索アクションに。降機してパイロットとして戦う『メタファイト』的な要素も。
なおレビュー版では対応言語は英語のみだったが、設定画面には言語の選択機能も存在。開発を主導したDerek Yu氏に確認したところ、発売段階でフランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語の追加を予定しており、日本語についても後日の対応を検討しているとのこと。