『Let’s HIT』という歌がすごくいい。MMORPG『HIT : The World』テーマ曲としてミュージシャンの椎名慶治さんが書き下ろした新曲だ。
椎名さんはSURFACEのボーカルでもある。アニメ『まもって守護月天!』の『さぁ』、ドラマ『ショムニ』の『ゴーイング my 上へ』など、僕の好きな曲も多い。そんな人がゲームのテーマ曲を担当したことがうれしくて、コーラス収録の現場でほら貝を吹いた。
ぶぉ~!
いきなり展開が飛躍して恐縮である。僕はゲームイベントのオープニング等でほら貝を吹くことがあるのだ。ファンを招待してコーラスを収録するイベントが2024年7月に開催されたので、収録会場(ライブハウス)にほら貝を持参した。
最初は冗談のつもりだったのだが、現場スタッフの異常な対応力により、イベント開幕を告げる号砲を鳴らすことになった。とくに説明していないので椎名さんファンは驚いたと思う。ゲーム業界ではまれにこういうことがある。
その後は僕もコーラス収録に参加した。ステージに立てたマイクでファンの歌声を録音。みんな素人なのになぜか妙にうまく、引くほどスムーズに進行。
収録後のミニライブで『さぁ』を聴けて感無量。右の画像は、背中をほんの少しだけ押してくれる応援歌『ここは ぶきや です』。これもまたグッとくる。
コーラス収録の様子はドキュメンタリー風MVの中に収められている。『HIT:The World』を運営するネクソンで観賞会を開くことになった。
椎名さん本人といっしょに。
『HIT:The World』はネクソンが運営するスマホ/PC用MMORPG。“ユーザーの声を取り入れた開発・運営方針”を打ち出している。
椎名慶治(しいなよしはる)
1998年にSURFACEのボーカリストとして『それじゃあバイバイ』でデビュー。以来『ショムニ』、『まもって守護月天!』、『NARUTO』など、さまざまなテレビ番組のテーマソングを手掛け、2011年からは本格的にソロ活動も開始。多岐に渡って活動を続けている。文中では椎名。
ミス・ユースケ
ファミ通.comの編集者。そのほかに特筆すべきことなし。文中ではユースケ。
eスポーツの伝統を持ち込む
ユースケ
あー。いいですねえ。とても。とても。
椎名
ありがとうございます。コーラス録りのときのほら貝、あれってそんな簡単に吹けるもんです? コツありますよね?
ユースケ
トランペットとか管楽器を吹ける人はけっこういけますよ。僕、小学校の行事でトランペットを少しだけやってたので。
椎名
へぇー! そんなのあったんですか。珍しい。
ユースケ
学年で金管のマーチングバンドを作るっていう伝統があって。5年生になると6年生から教えてもらって代々引き継ぐ、みたいな。
椎名
肺活量がたいへんそうだけど、5年生くらいならいけるか。
椎名
ほら貝を吹くって聞いて「いや待てよ、簡単じゃねえだろう」と。いったいどんな音が出るんだろうと思ったら、まじでほら貝。こっちはバックヤードでスタンバイしてるのにすげえ響き渡ってたから。
ユースケ
吹くだけならけっこういけますよ。抑揚を付けるのは難しいんですけど。
椎名
おもろかったなー。あれで鼓舞されました。
ユースケ
“ミス・ユースケがほら貝を吹くのはゲーム業界の伝統”って言われたいんです。
椎名
もうなってきてんじゃないですか。多少なってますよね、絶対。
ユースケ
この前、 滋賀県の高校のeスポーツ部に呼ばれたんですよ。先生から連絡があって、合宿するから吹いてくれって。
椎名
もっとほかに呼ぶべき人いるでしょ。「何でこの人ほら貝吹いてんだ?」ってならないんですか?
ユースケ
なります。でもノリがいいから、帰り際に「お前ら、おれのほら貝忘れんなよ」って言ったら「うおー!!!!!」って盛り上がりました。
椎名
みんないい子ですね。
島根県松江市 立正大淞南eスポーツ部公式X(Twitter)より引用(左)。/誇らしげなおれとまったく気にせずゲームに没頭する子たち(右)。
椎名
幕開けがそんなんだったんで。コーラスのレコーディングイベントのときはお客さんも鼓舞されただろうし、でも何でほら貝が鳴ってんだろうと、よくわからなかったでしょうね。
ユースケ
そんなの僕だってわからない。
椎名
わかれよ。
ユースケ
やっぱりライブハウスとか現場スタッフは柔軟ですね。いきなり「ほら貝吹いていいですか?」に対応できる人、そうそういないでしょ。
椎名
うちのマネージャーも「ほら貝で始まるみたいなんで」ってしれっと言ってくるんですけど、クエスチョンマークが飛ぶわけですよ。えっ、誰が吹くの? 前に会ったファミ通の人? まあいいよ。やろうやろうって。
ユースケ
「まあいいよ」で納得するのも大概どうかしてるからね。
泥船には乗りたくない
お気づきかと思うが、これは僕と椎名さんがインタビューのふりをした世間話をする記事だ。せっかくなので気になることを端から聞いていこう。
ユースケ
どうして『Let's HIT』を作ったんですか?
椎名
最初はネクソンからの依頼ですね。サービス開始の直前に言われたんで、どう考えても間に合わない。もっと早く言えよ。
ユースケ
依頼の仕方にライブ感あるな。
椎名
もともとネクソンとは『V4』(※)から縁があって、いちプレイヤーとしても遊んでたんですよ。サービス終了したときに、「またMMORPGをサービスすることがあったときは、いっしょに何かしましょう」って話してました。
※V4:ネクソンが運営していたスマホ用MMORPG。2023年4月26日をもってサービス終了を迎えた。椎名
で、はくしん(※)から声をかけてもらって、体験会って言うんですかね、イベントに参加させてもらいました。別にゲストでもなんでもなく。たしか高田馬場のeスポーツ施設みたいなところでやったやつ。
※はくしん:『HIT:The World』日本運営ディレクター。『V4』でも同職を務めていた。コーラス収録イベントのステージに登壇するはくしんさん(中)。首のヘルニアで満身創痍。右は『HIT:The World』エバンジェリストの反王ケンラウヘルさん。
ユースケ
僕らも取材に行ったイベントのことかな。4月くらいにあったやつですよね。
椎名
そうそう。そのときは「いちプレイヤーとしてプレイさせてもらいますねー」なんてね。
ユースケ
社交辞令だ。
椎名
そしたら「4月17日からサービス開始で、その前にこういうゲームが始まるよって配信番組があるんで、ゲストで来てください」みたいな感じで呼ばれたんですよ。で、そのときの楽屋で「椎名さん、テーマ曲作りませんか」って。
ユースケ
あ、そこで依頼されたんだ。
椎名
4月から開始するけど、秋頃に少し大きな展開を迎える予定。そこで流れるテーマソングとして作っていただけませんかって言われて、それなら理解できる。その場の口約束で「わかりました」と。
椎名
でもね、未知数ですよ。テーマソング歌ってくれと言われたときはほかのMMORPGをやってて、『HIT:The World』を体験してみたら「うーん……?」。
ユースケ
そこをお聞きしたいんですよ。芸能人として考えると、泥船に乗りたくないじゃないですか。
椎名
それはそうですよ! いっしょに沈みたくはない。
ユースケ
最初の感想は「うーん……?」だったわけですよね。じゃあどうしていっしょに仕事をしてるんですか?
椎名
歌詞の中にも出てくるんですけど、引き裂けないキズナに変わっていくんです。そんな体験が、ゲームが始まってる。あのー……ひと言で言うと。
「はくしんです」
ユースケ
運営ディレクターのはくしんさん?
椎名
はい。はくしんとおれの絆です。それがなかったらやってないです。
ユースケ
へぇー!
椎名
はくしんが『V4』のときに悔し涙を流してサービスをやめることになった。そこからもう一度立ち上がって、「つぎに自分が担当するゲームは椎名さんには刺さらないかもしれない。正直、『V4』より弱いと思う」って言ったんですよ。
以前の記事で「そのご意見、いただきます!」と美少女怪盗の決めゼリフみたいなひと言を言わされるはくしんさん。
椎名
で、体験会に行ったら案の定そこまでは刺さらなかった。でも、はくしんから「力を貸してくれ」と真剣に頼まれました。それが(2024年)2月かな。その後でテーマソングを頼まれて、まだ全然先が見えない時期だったから、もやっとしていたのは事実です。
椎名
でもね。あのはくしんがもう一度立ち上がって、こんだけ本気ということは自信があるんだろうなと。だから、乗ったんです。
ユースケ
うおー! いい話! 何であの人ここにいねえの!?
椎名
いたら話してませんよ! ちなみに、いま人間ドックに行ってるらしいです。
ユースケ
それなら仕方ないか。健康は大事。写真を合成しときますね。
椎名
ネクソンから頼まれても動かなかったかもしれない。はくしんがいたから。僕がいっしょに仕事をしたかったのはネクソンじゃない。はくしんなんです。
ユースケ
はくしんさんという個人がいたから。
椎名
あいつから始まって、いまはネクソンと仕事してますけどね。はくしんがおれを頼ってくれたのはうれしいし、恩返しみたいなところはあります。お互いがお互いに恩返ししてるんじゃないかな。
椎名
ま、変な絆ですよ。
わざわざ3回に分けてレコーディングを実施
ユースケ
でも、ちゃんとゲームをやらないと、どういう曲がいいかわかんないですよね。
椎名
サービスも始まったから本腰入れるかなって。もともと試しにやってみるつもりだったし。触ったときに感じたのは、やっぱりどのMMORPGも絶対的にギルドは必要。ないとおもしろみが半減する。半減以下かも。
ユースケ
コミュニケーションの仕組みが大切というのはわかります。
椎名
チームとしてやらないとやってけないと思ったんですよ。ソロもいいんだけど、いちばんおもしろいところに届くまでが遠い。ゲームとしてそういう設計なんでしょうね。開発の人たちはきっとそこを遊んでほしいんだろうな。
椎名
だから、“ギルド”を曲の中心に置きたかった。チーム=絆をテーマに曲を書こうと考えたのがスタートでした。
ユースケ
依頼を受けたのが春なわけですよね。夏に形になったと考えると3、4ヵ月。 これって短いものですか、それとも長い?
椎名
僕からすると長いです。お声がけいただいた翌日には曲はだいたいできてたんで。
ユースケ
は? そういうものなんですか?
椎名
あんまり悩まないんですよ。 メロディーを自分の家でボイスメモで録って、こんな感じかなーって。それが翌日。
椎名
で、そこから肉付けしていく。サビの雰囲気だけじゃなくて、Aメロ、Bメロとね。そんな中で、ネクソン側から具体的にこうしてほしいっていう案が出てきたんですよ。
- 演奏は生演奏にしてほしい
- 100人規模のコーラスがほしい
- お客さんを呼んでコーラスをレコーディングしたい
ユースケ
なかなかですね。
椎名
なかなかでしょ。コストは? って話なんですけど、そしたらネクソン側が「制作費は受け持つから椎名さんは曲作りに集中してほしい」って言うわけですよ。
ユースケ
ほーん。じゃあ、つぎがあったら、
「オーケストラアレンジか海外レコーディングをやりましょう」
ユースケ
「制作費は受け持つ」と言ったことを後悔させてやりたい。絶対に。
椎名
何でネクソンに厳しいんだ。
椎名
ネクソンはみんなで作り上げたいんでしょうね。いっしょに盛り上げる感じにしたくて、Bメロのメロディーをイントロでお客さんに歌ってもらう作りに。そういう計算をして、歌詞も書いて。
椎名
そこからオケ(演奏)のレコーディングがスタートします。こういう楽曲でどうですかとネクソンに提出してOKもらって。
椎名
最初はドラム、ギター、ベースの生演奏から。さっき見たドキュメンタリー映像のやつですね。楽器隊とは別日にボーカルを録って、終わったうえでお客さんコーラスを録るっていう3段階のレコーディングがあったんですよ。
ユースケ
3回も? 僕、音楽のことは詳しくないですけど、きっとめちゃ手間をかけてるんですよね。
椎名
ほんとそう。コーラスを別日に録るなんてことはそうそうしないですよ。でもまあ、おもしろいイベントでした。僕のファンと『HIT:The World』ユーザーから募集をかけて、会場を押さえてね。
椎名
ああだこうだやってから、つぎはミックス。いつものレコーディングより1ヵ月くらいは長くやってたんじゃないかな。
ユースケ
ふだんより時間をかけてレコーディングをやって、手応えはどうでした?
椎名
やっぱりそのー……タイアップじゃないですか。クライアントありきで仕事したのは久しぶりだから懐かしかったですね。昔よくやってたなーって。
ユースケ
昔はドラマの主題歌やってましたもんね。
椎名
そうそう。ダメ出しを受けて何度も書き直して、それでもNG食らって。でも、ネクソンはNGがひとつもなかったんですよ。「これはやだ」、「あれはやだ」がない。意思疎通ができてたのか妥協してくれたのか。
ユースケ
完璧に理想通りだったのか丸投げなのか。
椎名
そう! それは言ってくれー(同席しているネクソン担当者を見ながら)。わからないですけど、NGを食らってないので、やりたいようにやらしてもらえた。時間もコストも気にしなくていいからストレスがない。いつものレコーディングよりも自由だったと思います。
ユースケ
ネクソンからしたら椎名さんはお客さんのひとりじゃないですか。プレイヤーが「これがいい」と言うんだったら、それはきっと正しいんだと思いますよ。椎名さんはゲームやってるから全体のイメージをつかめているでしょうし。
椎名
納得いってないことがひとつだけ。僕はフル尺の曲を作ったんですけど、オープニングで流れるのは1分40秒くらいなんです。ゲームを始めるとワンコーラス分が流れる。
椎名
なのに、2番もゲームに寄っちゃってんですよ、歌詞が。魔法障壁って出てくるの2番なんですよ。 わざわざ専門用語を入れたのに、いらなかったじゃん。
ユースケ
先に言えよ! って。
椎名
そうなんですよ! どっかで2番に切り替えてくれと思ってます。できないことはないはずだから。『仮面ライダー ディケイド』でもありましたよね。GACKTさんが歌った主題歌、(約7ヵ月の放送期間の中で)前半は1番で、後半は2番だったんですよね。
ユースケ
ですって(ネクソンスタッフを見ながら)。
椎名
中身をプログラムする人に伝えておいてね。
ユースケ
あとは、はくしんさんとかね。
椎名
はくしんには言っときます。明日会うんで。
自分でも、自分の曲は古いと思う。だけどそれがいい
椎名
いつもと違ったレコーディングで新鮮味もあったし、クライアントから頼まれて縛りがある中で曲を作ったのも久々。
椎名
“縛り”がおもしろいんですよ。20代の前半でデビューしたんですけど、若い頃は何でこんなに縛られなきゃいけないんだって思ってました。こっちは自由に曲を作りたいのに、タイアップなんていらないのになって、とがってる時期があった。でもいまは逆に縛りがあった方が曲が作りやすい。
ユースケ
そういうものなんですか。
椎名
うん。ただ作るだけだったら制限があったほうがやりやすいと思います。自由に25年もやってるから、やりたいことは十分できてきた。そんな中で「こういうテーマで作ってもらえませんか」って頼まれたときの楽しさも感じられたし。
ユースケ
それはやっぱりミュージシャン、クリエイターとして技術が上がってきたということ?
椎名
それはありますね。小手先で曲を作れちゃうとこもある。
ユースケ
あー。そういうことか。
椎名
そう! ただ(そればかりになると)よくないですよね。
ユースケ
でも、いい部分もありますよね。たくさん作れるに越したことはないし。
椎名
まあねぇ。そうなんですけど、焼き直しみたいなもんだったらいくらでも作れるけど、やっぱり音楽を作っている人間として、それはどうなんだという気持ちもある。
ドキュメンタリーMVより。
椎名
ネクソンで僕のことを担当してくださっている方が僕の曲を聴いて「こういう曲が好きなんです!」って言われた曲が、『Let’s HIT』にちょっと近かったんですよ。ノリとしてはね、ロックで。
椎名
ロックなんだけど、焼き直し感が出ないように意識しました。やっぱり「似てる」とは言われたくないわけですよ。
ユースケ
ちょっとわかるなあ。プライドはありますよね。こういう曲がいいと言われたら、それを超えないといけない。
椎名
自分で言うのもなんですけど、よく作れたなとは思ってます。
ユースケ
昨日、奥さんとMVを見て復習してたんですよ。奥さんは「こういう曲を聴きたいけど、作ってくれるミュージシャンがいないのかな」って言ってました。
椎名
あー。たしかに。
ユースケ
なんだろう、狙って疾走感を出している曲を聴きたいんですよ。バトルものアニメのオープニングみたいな。『Let’s HIT』を聴いて「……あぁっ!」ってなってました。僕も。
椎名
よかったー。そう言ってもらえるのはうれしいですよ。
ユースケ
ふつうに生活してると流行りの曲だけ耳に入りますよね。売れる曲はどうしても似通ってくる気がして。
椎名
うーん……そういうところもあると思います。難しいですが。
ユースケ
そういう中で、わかりやすく「あ、これはロックンロールだな」と感じられて、ちょっとうれしかったんですよね。
椎名
ありがとうございます。(『Let’s HIT』は)最近の曲の傾向からはみ出たとこにいるとは思います。いまの曲が似通ってるというのはわかりますね。
椎名
ある程度(時流に)流されないといまの子たちには響かない。みんなそういうところも意識しながら作ってると思いますよ。
ドキュメンタリーMVより。
ユースケ
『Let’s HIT』も?
椎名
そう。ごりごりのロックだけど、じつはけっこうドラムが軽いんですよ。耳が疲れないように軽快に。ズンズン響くと80年代とかに戻っちゃうから。
ユースケ
へぇー、ドラムの音だけで変わってくるんだ。
椎名
もうね、全然変わります。リズムパターンとかドラムの音色とか、ギターのエッジの部分が……いなたい(垢ぬけないなどの意)って言うんですかね、エッジが立ってない曲になると古さが悪目立ちしてしまう。
ユースケ
“古いけどいい”、“古いから悪い”の差はそういうところから出てくるのか!
椎名
このメロディーのまま演奏をいなたくするだけで、80年代から下手すると70年代まで戻ったようなサウンドになってしまう。そうすると、やっぱいまの子たちからすると古くさいというかね。
椎名
その辺は、エンジニアのキッシーっていう僕がいつも世話になってる人が意識してくれたところ。僕だけじゃ作り上げることはできないから。
ユースケ
たとえば、たまに「そういう曲作りてえな」ってときはありますか? 古い曲だったり、あえて売れ線を外した曲だったり。
椎名
ありますあります。そういうのがもともと好きなタイプで。高橋まことさんって知ってます? 元BOØWYの。やりたいなと思ったときに、高橋まことさんから声をかけられてバンドを組んだんですよ。(いまだったら避けるような)バンドサウンドをいっぱいやらせてもらって、あれはおもしろかった。運がいいんですよ、僕。
椎名
それが2016~2017年頃。ある程度出し切ったので、ソロでごりごりの曲をやろうという気持ちにならなかった。「やりてえな……でもソロでもSURFACEでもねえよな」って気持ちをそのバンドで消化できたから。
ユースケ
『Let’s HIT』にはそういうテイストが少しありますよね。いまの若い子はこれを聴いて何を感じるんだろう。
椎名
気になりますよね。アンケートを取ってみたい。
ユースケ
僕はもうすぐ45歳で、感性はどうしても古くなってると思うんです。
椎名
僕もです。自覚するのは大事ですよ。
ユースケ
僕らくらいの世代と若い子たちの感覚、共通項はあるんですかね。
椎名
巡り巡って新しいものとして聴いてくれていたらいいかな。少し古いものって、僕ら世代の感覚からすると懐かしいじゃないですか。だけど、いまこんなのが流行ってんだみたいなことってあるわけですよ。ファッションで言うと(2023年に再流行した)肩パットだったりね。
椎名
ファッションにしても食べものにしても、流行は何度も回ってくるもので、それが「懐かしいな」という言葉で出てきちゃうんです。
ユースケ
音楽でもそういうのありますか?
椎名
ツーステップ的なリズムが流行ってたときがあって。去年、一昨年くらいかな、おれからすると「うわ、懐かしいなー」っていう。H Jungle with tじゃん!
ユースケ
ゲームの取材に来てH Jungle with tという言葉を聞くことになるとはね。
椎名
そういうビートが回ってくるんですよ。僕の曲なんかは古くさい、懐かしいって自分は思うけど、もしかしたら若い子からすると新しく聴こえているのかもしれない。いまこういう曲ないですから。
ユースケ
親子二世代でゲームやったり音楽聴いたりしている人からするといいことなのかもなー。お父さんお母さんは懐かしい、子どもは新しいって感じられていたら完璧。
椎名
それは成功でしょうね。家族でゲームやるって、ほっこりするなぁ。
テーマ曲を作った人が引退したら、やばい
ユースケ
ネクソンのゲームは「子どもの頃やってて、最近また始めました」という話も聞きますね。イベントにお子さんを連れて来てる方もいるし。『メイプルストーリー』なんて20年以上サービスが続いてるから。『HIT:The World』はどうだろう。
椎名
……どうでしょう。家族ではやんなそうですけど。
ユースケ
ここで「お子さんとも遊んでほしいですね!」と言わないあたりがリアル。
椎名
あ、夫妻でやってる方が多いのは知ってます。僕のギルドにもいますよ。
ユースケ
PS5とかPCは一家に一台って人が多いけど、スマホならね。ひとりが1台持ってるから。
椎名
あと、ほかのMMORPGよりとっつきやすさはある気がしてて。絵のタッチは欧米のゲームよりは柔らかくて、中は言うほどゴリゴリではない。やりやすいと思いますよ。
ユースケ
最近はどれくらいやってます?
椎名
毎日ちゃんとやってますよ。いまも狩りやってます。
取材中もしっかりオート戦闘を走らせている椎名さん。
椎名
テーマ曲を担当させてもらうって決まったじゃないですか。そのときから「やめらんねえな」と思って。
ユースケ
そういうテンションでやってるんですか?
椎名
嫌々ってことはないですよ。もともとやろうとは思ってたし。そのー……テーマ曲作った人が引退したらけっこうやばくないっすか。
ユースケ
わかるー! あなたそのゲーム好きなんじゃないの? ってがっかりしますね。ちょっとかっこ悪いというか。
椎名
そうなんですよ。「テーマ曲を提供したら仕事として終わったからやってません」みたいな空気になるのは嫌。ネクソンから特別な扱いは一個もないんですけど、そのうちそういうのくれてもいいんじゃないかなと裏で思いながら。
ユースケ
でも、コーラス録りのときに仰ってましたよね。冗談で「古代(レアリティーの)ペットくれ」と言ったら断られて、これは信頼できると感じたって。
椎名
そうそう。あの後、古代ペットは自分で引きました。いまは伝説ほしいんですけど、なかなか引けない。
コーラス収録イベントには椎名さんのファンのほかにプレイヤーも参加しているので、おしゃべりはゲームの話題が中心。
椎名
僕はテーマ曲を歌っているミュージシャンで、 なおかつギルドのギルマスでもある。ある程度の強さを維持するためにはどうするかと考えたときに、やっぱりずっとつないでおくのがいちばんいい。MMOってサボるとすぐレベルで(ほかのプレイヤーに)負けるでしょ。
ユースケ
かっこ悪いところは見せたくない?
椎名
ちょっとあります。課金はある程度は仕方ないとして、課金以外でやることって、そういうところしかないんですよ。レベリングをずっとしてて、いまは69かな(2024年9月下旬時点)。あと1レベルで古代ペットがまたもらえるところまでは来てるので、しっかりやってる方だとは思います。
ユースケ
少し前はいわゆる“Pay to Win”、お金を払って強くなるようなゲームが流行りましたよね。
椎名
あー、そういうときありましたね。
ユースケ
最近はTime to WinというかPlay to Winというか、たくさん遊んだ人が強くなることを大事にするメーカーが増えてきていると思うんですよ。
椎名
それはすごく好感度高いですね。『HIT:The World』も近いかな。課金は運の要素が多くて確実に強くなれるわけじゃないから。
ユースケ
だとしたら、課金しない方がいいのでは。
椎名
そうかもしれない。そういうMMORPGが増えてほしいなぁ。そういう時代になればいいなって。『ファイナルファンタジーXIV』のような形がいちばんいいと思うんですけど。
ユースケ
本来はね、月額いくらの形がいいんでしょうけど、それはやっぱり難しいですから。
椎名
あそこまで成功させるのはたいへんですよね。僕は『ファイナルファンタジーXI』からの人間で、前の取材でも語らせてもらいましたけど、8年やってたんで。PKのない世界だし、追加の課金もなかった。そこからいきなりね、PKがある、アイテム課金もある世界ががやってきて戸惑いはありました。
椎名さんとは前回の取材でMMORPGについて語り合った。
椎名
これがいまの流行りなんだ、新しい時代が来たんだなって実感しましたよ。うんうん、なるほどな、と。
ユースケ
椎名さんはそこに拒否感がある方ですか?
椎名
拒否感というか……時代の波はあると思いますよ。『HIT:The World』でも、いちばん課金してる人は1000万単位だなんて噂も聞きます。で、そういう人はやっぱり強いんですよ。Pay to Winが完全に消えることはない。100%消えない。
椎名
ただ、無課金でもある程度楽しめるゲームだなとは思うんで。
ユースケ
僕は仕事もあっていろいろやってますけど、課金なくてもそこそこ遊べるゲームは増えてますよ。
椎名
『HIT:The World』も中堅までは行けますね。トップはもうしょうがないじゃないですか。さっき言った通りどうしようもないとこあるんですけど、毛嫌いせずに「課金しなきゃ強くなれないでしょ」っていう思い込み抜きでゲームを触ってほしい。
椎名
別に『HIT:The World』だけじゃなくて。いろいろなゲームに触れてほしい。みんなスマホ持ってるんだから。
ユースケ
中堅まで行ったとき、たぶん誰かと遊んだ思い出はできてると思います。野良で大人数のバトルにわーっ! と参加したりとか。そういう思い出はゲームを続けるパワーになる。
椎名
……いいですよね。話したことがない人とも“絆”は生まれますから。やってない人にこのおもしろさを伝えるのがすごく難しいじゃないですか。ゲーム人口を増やしたいんだけど。
ユースケ
僕としては「MMORPGはコミュニケーションが楽しいよ」とは言いにくいんです。「人と話さないといけないのかー」って面倒に感じちゃうから。
椎名
義務感ねぇ。たしかに、そう思うと腰が重くなるか。
ユースケ
ずっとMMORPGやってる側からすると、会話がなくても気にしなくないですか?
椎名
全っ然気にしないですね。
ユースケ
別に無言でもいいし、「おつかれー」ってチャットでもスタンプでも返したら100点満点どころか120点。
椎名
そうそう。それくらいがもうちょっと広まるといいですね。何かそういう使命を与えられた人になってません?
ユースケ
だって、ゲームが流行らなかったら困るもん。椎名さんもそうでしょ?
椎名
わかる!
ユースケ
ゲームメーカーがちゃんと稼いでくれないと、巡り巡って、
「職を失ってしまうので」
椎名
思ったより切実だった。
椎名
僕はもう単純にゲームが好きなんで広まってほしいと思うし、ネクソンなんかは売れなかったら終わりですからね。
ユースケ
僕らゲームメディアはゲームメーカーからもらった情報を出すのが大切。一蓮托生なところがあるので、メーカーが儲かんなかったら僕らも困る。
椎名
そのわりにちょいちょい辛辣なこと言いますよね。
椎名
最近のネクソン、ちょっと肌艶いいんですよ。前よりもちょっと元気だな、もしかして成功してんのかな、みたいな。
椎名
あと、隠せないじゃないですか。ゲームの売り上げは。
ユースケ
そうそう。ネクソンさんは上場企業なんで。
椎名
利益をオープンにしないといけないから。へぇー、そうかー。『メイプルストーリー』はいまそうなってんだーってね。
こんなに成功するとは思ってなかった
椎名
たぶんおれ、ネクソン側の人間だと思うから失礼なこと言いますけど、ごめんなさい。こんなに成功すると思ってなかったんです。もちろん成功してほしいから取材を受けるし、力になりたいからこそテーマソングも歌うけど、心の片隅で「でもなー……」と。
椎名
その理由として、ほかのMMORPGにはあるのに『HIT:The World』にはないコンテンツがけっこう多くて。乗り物系ペットもないですからね。乗り物で気持ちよく移動してもらったら広い世界をアピールできるのに。逆に言うと、初心者でも楽しめるくらい削っていったのかも。
ユースケ
あー、そういうこと。
椎名
玄人だったら、もっとこういうのがほしい何でこれがないんだっていう意見がいっぱい出てくるでしょうね。でもね、いま悪くないんですよ。(要素を)除外したことが成功につながった。ちょっと僕はびっくりしてます。ライトユーザーが多いってことかもですね。
ユースケ
最近のゲームを見ていると、グローバルで“ウケる”傾向はあると思うんですよ。
椎名
ありますね。
ユースケ
でも『HIT:The World』はそうじゃない。グラフィックもそうだし、ゲームシステムもそうだし、課金体制もそう。
ユースケ
正直、僕もずっとわかんなかった。始まる前はどうかなーって。体験させてもらったら中身は悪くなさそう。おもしろいとは思うんだけど、おもしろいゲームが流行るとは限らないわけですよ。
椎名
ほんとにそう!
ユースケ
(スタートと同時に)垂直立ち上げという感じではなかったと思います。ただ、ちゃんとユーザーが動いている感じはある。何かがうまくハマったのか……。
椎名
ですよね……ほんとに……
「よくだませましたよね」
ユースケ
溜めて言うんじゃないよ。
椎名
ネクソンはラッキーだと思います。ゲームって、いやゲームというか何でも、チャンスをつかめるかどうかなんですよ。さっき仰いましたよね。おもしろい=売れるとは違う時代だから。タイミングは大事だし宣伝の仕方も大事だし。うん。
椎名
そのラッキーにネクソンはちゃんと食いつけた。はっきりと名前を出しますけど、僕は『オーディン:ヴァルハラ・ライジング』もやってます。クオリティ的には負けないくらいかな。もしかしたら(『HIT:The World』より)上かもしれない。
椎名
そういうゲームがある中で『HIT:The World』も善戦している。ということは、チャンスをつかむことに成功しているんだろうなと思って。
ユースケ
いま、だいたいの業界がそうなってると思いません?
椎名
ほんとそう。音楽もそうですから。
ユースケ
いまのゲームは何をやってもそこそこおもしろいし、音楽業界にはいい曲が多い。じゃあこれがいちばんおもしろいから売れるかって言われたら……。
椎名
絶対違いますね。それをジャッジメントするのは不可能ですよ。リリースされて初めて知ることだから。結果論として『HIT:The World』は一定の成功を収めた。少なくとも現段階では。
椎名
ヒットしてるゲームのテーマソングを歌わせてもらったのはすごく光栄なことだと思っています。ややこしいな。
まずは2年
椎名
これからがまた勝負だと思います。第1期は成功したけど、いまはサーバー移動(8月下旬~9月上旬に実施)も終わって第2期に入りました。人が動くとバランスはガタガタになっちゃいますよね。
椎名
それは絶対あることだからいいんですよ。想定内のはずだから。敵対ギルドとの戦いのバチバチとか第2次の戦争が始まっていて、この中でどうおもしろいギミックをぶち込んでいけるのかが運営の腕の見せどころなんだけど。
「……下手なんですよ」
ユースケ
ここまでど真ん中に剛速球を投げ込む取材はなかなかないな。
椎名
いっつも後手。いっつもおれに文句言われてる。はくしんにも言っときますよ。「韓国で実装されてるもので日本で実装されてないものいっぱいあるよね」って。早く日本でやらないと、まじ向こうよりも飽きるの早いから。
椎名
飽きるというのはちょっと違うか。とにかく日本人って……ゲームがうまいんだろうな。うん。韓国の人たちはゲームのコンテンツじゃなくて、プレイヤー同士で戦うのが好きだって言いますよね。だから新しいコンテンツを横に置いといても楽しんでくれるけど、日本人は逆。コンテンツが大好きだから。
椎名
コンテンツが増えるとモチベが上がってくんですよ。でもそれをすぐ制覇しちゃう。そうすると、やっぱりつぎが大事。GvGを出すって言っても3ヵ月くらい待たされてるし……。
椎名
そりゃ、こっちも大人だからわかりますよ。たしかに簡単な話じゃない。でもね、それを韓国の開発と交渉するのは大切な仕事なわけだから本気出してやれよ! ってね。
椎名さんの勢いに圧倒されるミス・ユースケ(右)。
椎名
どうしました?
ユースケ
めちゃくちゃ語るなーと思って。
椎名
ユーザーの声ですから。おれと同じように思ってる人、けっこういるんじゃないかな。日本の運営にちゃんと伝えるのは大事です。はくしんも前より「これでは日本じゃウケない」って強く言えるようになったと言ってました。勇気を持って交渉に行ってるらしいです。
ユースケ
開発だって何がウケるか知りたいはずだから。ユーザーの声には答えがある。
椎名
いま『HIT:The World』を起動すると、僕の『Let's HIT』が流れます。ということは……ある意味で(運営側の)一員になってしまった。ほかの人からしても、ふつうのいちプレイヤーには見えないですよね。
椎名
ちゃんと力を入れたい。宣伝だってしたいですよ。おれはそう思っていて、同じように本気でやってるユーザーもいると思う。なのに運営が本気じゃなかったら関係に亀裂が走るじゃないですか。
椎名
だから、はくしんにはものすっごい動いてもらいます。「わかってるよね!」って。今回の記事も「はい! ここ読んで!」って読ませますから。
ユースケ
OK。もうほぼノーカットでいきましょう。
椎名
まじっすか。ぜひ!
ユースケ
ぶつけるところはぶつけた方がいいですから。
椎名
本当に言えばわかってくれるので。ちゃんと言わないとだめ。
ユースケ
そうだ。プレイヤーのみんなに言っておきたいことがあるんですよ。
「開発や運営によくしておくといい」
ユースケ
SNSで文句を言うんじゃなくて、問い合わせ窓口から冷静に意見を出したりして。(自分たちのメリットになって)返ってくるから。めちゃくちゃ売れてるときより、思い悩んでいるときに優しくしておいたほうがいい。でも甘やかすだけじゃだめ。
椎名
女を落とすテクニックの話してます?
椎名
ネクソンが調子をこき始めたら、おれ言いますから。課金パックが中身スッカスカなのに高くね? そんなことになったらガツーン言いますから。おれにはちゃんと伝説が出るパックを売れって。
ユースケ
おい。
椎名
そこら辺しっかりしてるんですよ。本当に忖度なくて。「椎名さん、裏では何かもらってんじゃないの?」って噂も立つと思うけど、ほんとにないですね。すっげえクリーンな会社だから。ちょっとムカつくくらい。
椎名
いやー、でもね。やっぱりおもしろい状況にあるなーと思いますよ。自分の曲が流れるゲームをやってるなんて僕だけだから。悦に浸っていられます。
ユースケ
あ、やっぱりうれしいものですか。
椎名
そりゃうれしいですよ。よし、やるかって起動して、いい曲だねー誰が作ってるんだろう、椎名ってやつか。おれかよ! なんつってね。
ユースケ
ゲーム業界全体を見渡しても、そのノリツッコミできる人はそうそういないですよ。
椎名
ゲーム音楽を担当するミュージシャンっていろいろいますけど、そのゲームやってんのかな。「そのゲーム、おれのほうがやってるんじゃないかな」と思うときもあります。
椎名
『HIT:The World』がサービス終了するのはいつかわからないですけど、そこまで引退したくないですよね。サービス終了は遠い未来の話であってほしい。やっぱりどうしても比べちゃうんですよ、『V4』と。
椎名
『V4』は結局2年もたなかった。まだこれからだってときに何かがあって、それはネクソンの中での話なんで僕はわからないですけど、何かがあっていきなり衰退したんですよ。いきなりガシャッとシャッターを閉めたように終わった。それがトラウマなんですよね。
椎名
『HIT:The World』に言いたいのは、まずは2年。プレイヤー人口はどうしても減るもんだけど、飽きさせずに、一気に衰退しないように、2年プレイできるゲームを目指そうよ。
ユースケ
ものすごく現実的な激励だ。
椎名
そこまでのプランを大きくね、ちゃんと先々を見て。目先の半年アニバーサリーとかばっか気にしてるんですよ。 もうそこはもういいから、つぎ行け! っていうね。
椎名
ちゃんと壁を乗り越えられるゲームになってほしい。ほかのMMORPGにはやっぱ負けてほしくない。ほかのゲームもおもしろいじゃないですか。いまは平均値が高いから。
椎名
そういうゲームに負けないように。向こうを蹴落として勝とうじゃなくて、みんな売れりゃいいんですよ。理想論だけど、ゲームなんだから夢くらい見たっていいじゃないですか。
椎名
テーマソングは最後に「Let's HIT The World~」って歌ってるから『HIT:The World』の曲だけど、そこの部分をカットすると途端にほかのMMORPGでも同じことが言えるわけですよ。そこだけ歌い直すんで、ほかのゲームでも使ってください。
ユースケ
いい話に自分でオチをつけるの、やめてもらっていいですか?
ゲームが好きな芸能人としての立ち位置
椎名
意外と絆が深いんですよね。おれとはくしんと反王ケンラウヘル。だからこそ(MVの最後で)ああなっていた。違和感すごかったでしょ。
ユースケ
何でお前らがメインのレコーディングに参加したつもりになってんだと思ってました。
レコーディング風景を追うMVのラストで、ちゃっかり記念撮影に参加している反王ケンラウヘルさんとはくしんさん。
椎名
おれとはくしんをつないでくれてるのが反王ケンラウヘル。おれが直接はくしんに連絡すると、ちょっと話が変わってきちゃうから。
ユースケ
そこは一歩引いて、いちユーザーとして意見を言うんだって話ですね。
椎名
そうそう。線引きが曖昧になっちゃいけない。
ユースケ
連絡先を交換するとしたら、終わってからなんでしょうね。
椎名
そういうことです。だから絶対に交換したくない。
椎名
友だちになると、プレイヤーとしての意見を言いにくいかもしれないから。公式番組に呼んでもらうときも文句しか言ってないですからね。
椎名
これけっこう大事で、ご意見番みたいなやつがいるとコメントが荒れないんですよ。全員が運営側について番組を進めると否定的なコメントが目に入らなくなる。そこにめちゃくちゃいいアイデアがあるかもしれないのに。そうなると余計に炎上しますから。
熱いことを言いつつ、僕の眼鏡に興味を示す椎名さん。
椎名
なので、みんなの意見を代弁する人が大事。おれ自身もそう思ってるからちょうどいいんです。
ユースケ
ほかのゲームに関わってるタレントさんもこれくらいやったほうがいいと思うんだよな。そのゲームを好きな人がテーマ曲を歌って、メーカー側にガンガン意見を言ってくれて。それが健全だと思う。
椎名
知り合いで『スプラトゥーン』の歌を歌ってる子がいまして。イカの言葉なのかな、変わった歌詞のやつ。その子はやっぱり『スプラトゥーン』を愛してて、グッズもいっぱい持ってるんですよ。ああいうのが“愛”じゃないですか。
ユースケ
ほんとそれ。ファンからするとうれしいんだこれが。
椎名
そう思ってもらえるのは僕らミュージシャン側からしてもうれしいですから。うん。やっぱりサービス終了まで見届けたいね。PKされたらイラっと来るし、つぎは勝ってやろうって気持ちもある。いまほかのギルドに敵視されてるんですけど、そこに勝てるくらいに強くなりたい。
ユースケ
その感覚いいですね。僕、PKされてイラっと来ると逆にうれしいんですよ。おれやっぱこのゲーム好きなんだなって再確認できる。
椎名
おれもそうです! ムカつかなくなったら終わりですよ。闘争心とかモチベーションがない証拠。ちゃんとムカつきたい。負けたくねえもん。
椎名
こういう熱さが少しでも伝わってほしいですよ。ほかのMMORPGと比べても全然緩くはないから骨太に楽しめるし、ライトユーザーはおれのギルドに遊びに来ればいいし。
椎名
年齢も関係ない。うちのギルドはいちばん上がもう60近いんだったかな。10代の子もいる。『Let's HIT』が気になった人がこの記事を読んでいるかもしれない。スマホはみんな持ってるんだから、ちょっと触ってみようかなと思ってもらえたらね、うれしいですよ。
椎名
そうだ。アニカ1のサーフィス1とサーフィス2においでって書いといてください。アニカ1サーバーじゃないと会えないから。そしたら受け入れますんで。どんなに弱くてもうちは垣根ないから。
なぜか盛り上がって「アー写を撮りましょう」で撮った写真。
じつはこの世間話の少し後にまた別のMVを撮る予定が入っていた。それもネクソンからの提案だという。『Let's HIT』がリリースされてから1ヵ月以上も経ったうえで公開されることになる。
椎名さんは「時間が経っちゃったからね。曲のプロモーション効果はあまりないんですよ。でも、たまにはそういうのもいい。おれのためじゃなくて、『HIT:The World』がこんなこともやってるんだと伝わって、おもしろいものになるんだったら力を貸しますよ」と笑う。
椎名さんと『HIT:The World』の関係はふしぎだ。ずっと文句を言っているようだけど、どこか楽しそうでもある。椎名さんが言うには「まずは2年」。丁寧に丁寧に、やっていきましょう。
新MVは2024年10月17日20時開始の公式生放送でお披露目予定。お楽しみに。
おれたち楽しそうだな。