BitSummit the 13thは、Drift(前回)の先を見据えてさらにアクセルを踏み込む。“妖怪たちの夏祭り”をテーマに、よりワクワクしたものに【インタビュー】

by古屋陽一

BitSummit the 13thは、Drift(前回)の先を見据えてさらにアクセルを踏み込む。“妖怪たちの夏祭り”をテーマに、よりワクワクしたものに【インタビュー】
 2013年に1回目が開催されて以降、日本最大級のインディーゲームのイベントとしてすっかりおなじみとなっているBitSummit。2025年7月18日~20日(18日はビジネスデイ)には、“BitSummit the 13th / ビットサミット13”が、京都市勧業館みやこめっせにて開催される。

 毎年大きな注目を集めているBitSummitだが、2025年はどのような内容になるのか。BitSummitを主催する日本インディペンデント・ゲーム協会(JIGA)の理事長、ディラン・カスバート氏、副理事長、小清水史氏、理事、ジョン・デイビス氏に、2024年のBitSummit Driftの振り返りと、BitSummit the 13thへの抱負を聞いた。

 なお、ただいまBitSummit the 13 thへの出展エントリーを受付中。応募受付の締切は2025年2月28日までとなっている。
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ディラン・カスバート氏

JIGA理事長 キュー・ゲームス 代表(文中はディラン)

小清水 史氏こしみずひさし

JIGA副理事長 ピグミースタジオ 代表取締役(文中は小清水)

ジョン・デイビス氏

JIGA理事 BlackSheep 代表(文中はジョン)

2024年はフロアが拡大してよりバラエティーに富んだ出展になった

——まずは、2024年7月に開催されたBitSummit Driftに対する手応えを教えてください。

ディラン
 初めての京都市勧業館みやこめっせ全館を使っての開催だったので当初は心配もあったのですが、たくさんの人が来てくれてかなり盛り上がったと思います。すごく楽しいイベントでした。

ジョン
 BitSummitはどこにいても同じ空気で楽しめるようにしたいと思っているので、1階と3階に分かれて実施することでフロアごとに雰囲気が変わってしまうのではないかと少し不安でした。でも結果として、同じ雰囲気を守ることができました。さらに言えば、3階が従来のBitSummitのスタイルを維持している一方で1階には大型デバイスやボードゲームがあるなど、インディーゲームスピリッツを応援しつつさらに広がりを持てたのはうれしかったですね。

—— BitSummitらしさは守りつつも、フロアが広がったことでやれることが広がったということですね。
ディラン
 スペースの兼ね合いもあって置けなくなっていた大型デバイスなどが復活できたのもうれしかったです。フードスペースもそうですね(笑)。広がったことで、よりバラエティーに富んだ出展になりました。

ジョン
 成長しているBitSummitを実感できましたね。

ディラン
 2023年はコロナ禍がひと息ついて、「やっと戻ってきた」という感じでワクワク感があったのですが、2024年はそれとはさらに違ったワクワク感がありました。いろいろなゲームを楽しんでいる来場者の皆さんの姿を見ることができてうれしかったです。

小清水
 BitSummitの出展企業社数だけを見ても、2022年の66社、2023年の88社から、2024年は163社と倍増しています。これに一般出展社(者)も加わるわけで、それだけでもバラエティー感があるのがわかります。そのぶん、運営がたいへんだったというのもあるわけですが(笑)。でも、みんなでやりきったという充実感があります。ただ、じつは1階は少し余白を残したんですよ。2025年はそこをしっかりと埋めたいというのが課題です。まだまだ成長する余地はあります。

――BitSummit Driftで、とくに印象に残ったトピックはありますか?

ディラン
 キュー・ゲームズも久しぶりにちゃんとしたブースを出したのですが、精一杯でたいへんながらも、とても楽しかったです。

 あと、個人的には1階の特殊なコントローラーを展示していた“make.ctrl.Japan”ブースかなあ。モグラ叩きゲームなんて、見ているだけで楽しかった(笑)。大きな声を出してみんなでワイワイ満喫できるし、イベントならではの楽しみですよね。

ジョン
 BitSummitが開催されるということで、皆さん京都に集まって、イベントが終わった後もお酒でも飲みながら、リラックスしてゲームの話をしてワイワイ楽しむというのは、何ものにも代えがたいひとときですね。

――ジョンさんは、世界中の数多くのイベントに参加していますが、「BitSummitが最高」みたいなことをおっしゃっていましたね。

ジョン
 はい。“BitSummit is the Best”です(笑)。任天堂やプレイステーションといったプラットフォーマーから個人開発者まで、同じフロアに集まっていますよね。BitSummit独特の雰囲気がありますね。
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「みんなでインディーゲームを楽しもう」という気持ちは変わらずに

——2024年は入場者数が38333人と、2023年の23789人から大幅に増えましたね。

小清水
 ワンフロア増えたので、そのぶん順当に来ていただけたという感じですね。チケットぴあさんと連携してコンビニにポスターを貼っていただけたりしたのも大きかったと思いますが、やはりインディーゲームの人気は本当にすごいです!

ディラン
 出展メーカーも増えて自然と人が増えたというのもありますね。あと、スパイク・チュンソフトさんやHipster Whaleさんなど、新規で参加してくださったメーカーさんがいたのもうれしかったです。インディーゲームの集積地という感じで、2025年もたくさんの方にいらしていただきたいです。2025年は40000人が目標かしら。

ジョン
 海外からの注目度もさらに高まっていて、皆さん一度見にきて、雰囲気を気に入ってくれて「来年絶対に出展します!」というパターンも多いですね(笑)。

小清水
 BitSummitに出展するとウイッシュリストの数字が跳ね上がるという話もよく聞きますね。とてもうれしい話です。ウイッシュリストを増やしたいからBitSummitに参加したいという会社さんもけっこう増えてきているようですね。

ディラン
 BitSummitとSteamは相性がいいよね。

小清水
 一方で、インディーゲーム市場が拡大していて、BitSummitがその受け皿になっているということもあるかもしれません。たとえば、東京ゲームショウとかは基本的にAAAタイトルが大きくピックアップされて、注目が集まるわけですが、BitSummitではインディーゲームにスポットをあてて、お祭り気分で楽しめるわけですから。

ディラン
 それとともに、日本で作られているインディーゲームのクオリティーが上がっていて、コミュニティーが成熟してきているということもあるかもしれません。この10数年間ですごく進化してきました。おもしろいアイデアのゲームがたくさん出てきていますね。とてもいい感じになってきました。

ジョン
 開発者がBitSummitに遊びに来て、そこで見たゲームにインスパイアされて「うちもゲームを作りました」という話も聞きますね。

――BitSummitに影響を受けてインディーゲームを作っている、という世代も出てきているのですね。

ディラン
 BitSummitは、「みんなでインディーゲームを楽しみましょう!」ということで2013年にスタートしたのですが、どれだけ大きくなっても、そのときの気持を大事にしていて、それはいまも変わらないです。
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――ちなみに、BitSummit Driftを開催して見つかった課題などはありますか?

ディラン
 個人的には、アワードに関して少し考えるところがありました。おもに開催時間ですね。例年会期最終日の終了間際に行っているのですが、昔はコンパクトに収まっていたものが、賞の種類も増えたことでじょじょに時間が長くなってきたんですね。そのぶんブースを回ってほかのゲームを見てほしいとの思いがあります。アワードで受賞してクリエイターが呼ばれたときに、個人開発者だったらブースをケアする人がいなくなってしまうという問題もあります。

――たしかにそうですね。

ディラン
 せっかく賞を取ったのに、そのあとプレイする時間がないというのも残念です。

小清水
 2023年から3日開催になったので、ビジネスデイの金曜日と一般日の土曜日を審査にあてていただいて、土曜日の終了直後に発表するというのもいいかなと思っています。

ディラン
 日曜日は来場者が受賞作をプレイできるわけです。賞を取ってそれで終わりというのが少し残念な気がしていました。IGFアワード(※)も、会期3日目の夜に発表されて、4日、5日は会場で出展されていますからね。“IGFアワード受賞!”と、告知が掲げられていたりもします。受賞した人は誇らしげに出展できるわけです。

――受賞したら人が殺到しててんやわんやになりそうですね。

ディラン
 そうですね。

小清水
 それもうれしい悲鳴ということで……。

――考えてみると、それだけBitSummitに注目が集まると、しっかりとしたものを作らないと出展できないということで、出展に対する心理的ハードルが高くなっているとは言えるかもしれないですね。出展を検討しているクリエイターへのプレッシャーもハンパではなさそう。

小清水
 そうですね。参加を考えているクリエイターに対して心理的なハードルを下げるということも、ここ数年のテーマになっています。インディーゲーム全体のクオリティーが上がってきて、「僕たちは参加できないのではないか」ということを懸念される方もいらっしゃいました。とくに学生の方はそうですね。

 ゲーム開発を始めたばかりでセンスはすごくあるけれど、まだまだ荒削りというタイトルは、企業がしっかり作り込んだインディーゲームには伍していけないのではないかという。

 そのための間口を広げる取り組みのひとつが、ここ数年実施しているゲームジャムだったりします。ゲームジャムは2024年も大盛況で、学生さんもそうですが、「ゲームを作りたい」という思いを抱いている、企業に所属していらっしゃる社会人の方なども積極的に参加されています。間口はなるべく広げるように……という努力はしています。

ディラン
 タイトルの選考ということでは、選考担当によって選択基準はそれぞれなので、バランスが取れていると言えると思います。たとえば、僕自身はオリジナリルなアイデアをいちばん重視する傾向があります。ヘンなゲームを見つけたら、「これは絶対におもしろい!」と思ってすごくプッシュしてしまう(笑)。基本的にほかと似たようなゲームは選ばないなあ。2023年だと『Death the Guitar』がそうでした。『SKY THE SCRAPER』もよかった。

小清水
 オリジナリティー溢れるゲームには担当も注目していますので、臆せずにどんどん応募していただきたいと思います。
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Driftの先を見据えてさらにアクセルを踏む!

——では、2025年のことを聞かせてください。2025年はどのようなイベントにしたいですか?

ディラン
 インディーゲームの魅力に気づいていない人が、まだまだたくさんいると思っています。年齢が若い人にもインディーゲームのおもしろさを感じてもらって、たくさんの人にBitSummitに来てほしい。2~3年前から来場者にお子さんの比率が増えていまして、これはとてもうれしいことです。いままであまりインディーゲームを遊んだことがない人に、できるだけ届けられるようにしたいです。

小清水
 BitSummitが一般の方に浸透していっているという手応えは感じています。そのための努力はしているのですが、今後はさらにやり切っていなかったところを強化して、インディーゲームをより知ってもらえるようにしたいです。インディーゲームとゲーム実況の相性がいいのはご存じの通りですが、これまでの経験を活かしてやりたい施策がまだまだたくさんあります。

——インフルエンサーにもさらに注力するということですね。

小清水
 あとは、ゲーム展示のバランスとかでしょうか。1階と3階の組み立てかたと言いますか。BitSummitは13回の開催の中で時代に合わせてさまざまな変化がありましたが、2025年もまた大きく進化するときが来たという印象です。詳細はこれから詰めるのですが、チャレンジだった1階の展示に、さらにいろいろと手を加えて、いっそうパワーアップさせようと計画中です。いまはここまで……。

ディラン
 ちょっと曖昧模糊としておりますが(笑)、展示に関してはいろいろな議論が出ていますね。何しろ全館開催は2024年が初めてだったので。人の流れとか、よりよくしていきたいと思っています。

小清水
 具体的なことはまだお話しできないのですが、よりエキサイティングになることは間違いないです。期待していてください。

——イベント名は決まっているのですか? 2023年のLet’s Go!、2024年のDrift と来て、その先にあるものは?

ディラン
 さらにアクセルを踏む感じになりますね!

小清水
 次回のイベント名は、BitSummit the 13th(ビットサミット13)となります。イベントテーマは、Summer of Yokai(妖怪たちの夏祭り)。13という数字が、ミルキーのインスピレーションで“妖怪”に昇華されました。日本では大ヒットすることを大化けするとも言いますし、そのような作品が次回イベントからたくさん誕生することを楽しみにしています。
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—— 妖怪とはユニークですね。

小清水
 いずれにせよ、来場される方に楽しみにしていただきたいのは、会場がさらにバラエティーに富んだものになるということです。BitSummitでは2年前から出展ブースの設計をある程度自由にしたんですね。それまでは主催者側で用意していた決まった枠組み(トラス)に合わせて、その中に収めてもらうようにしていたのですが、それを自由にしたんです。ここ2年、皆さんアイデアを凝らしたデザインの出展をしていますが、来年はよりさまざまな施策も予定していますし、それがさらに楽しくなることは間違いありません。

——お話をうかがっていると、会場に足を運ぶのが楽しみになってきますね。

小清水
 フードコーナーや物販も充実しますし、インディーゲームを中心として、いろいろな楽しみかたができます。イベントとして、さらにスケールアップします。

—— 最後に、BitSummit the 13thに向けての抱負をお願いします。

ディラン
 BitSummitはインディーゲームクリエイターのためのイベントです。自分の作ったタイトルに対して、少しでも“おもしろさがある”と思ったら、ぜひ応募してみてください。そして、コミュニティーに参加してみてほしいです。

ジョン
 来年も楽しみにしてください。

小清水
 あのとき、ここで。イベント会場にしかないファンの皆さんの熱量、クリエイターの思いなど、インディーゲームに関するすべてが集まる場所がBitSummitだと思っています。来年の開催にご期待ください!
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2025年は日本のゲームフェスティバル史上もっとも楽しいものに

●BitSummitクリエイティブディレクター ジェームズ・ミルキー氏
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 2024年のBitSummitは大成功でした。AAAゲームに疲弊している人たちのあいだで、インディーゲームが本当に浸透していると思います。2025年は私たちが準備しているものを見てもらうのがとても楽しみです。日本のゲームフェスティバル史上もっとも楽しいフェスティバルになるでしょうし、誰もが、とくに子どもたちが楽しめるものになると思う。ハロウィーンのように仮装して訪れてほしい! 私はコスプレをするつもりです。あなたは?

新しい世界との接点や可能性の提供ができるような準備を進めている

●JIGA理事 スケルトンクルースタジオ 代表取締役 村上雅彦氏
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 BitSummitは、日本のインディーゲームクリエイターのための世界へのゲートウェイとして成長してまいりました。BitSummit Driftでは、初めて会場の規模を拡大することができ、より多くのクリエイターの皆様に参加いただけました。アナログゲームや特殊な機材を使用したゲーム、アート性の高い作品まで、幅広いゲーム作品を世界に向けて発信することが叶いました。次回、2025年開催のBitSummit 13thは、大阪万博の期間中の開催という特別なチャンスを得ます。いままで以上に、海外展開の促進、国際的なパートナーシップの構築など、新しい世界との接点や可能性の提供ができるような準備を進めています。クリエイターはもちろん、ファン、スポンサーの皆様にとって、よりいっそう価値のあるイベントになる予定ですので、どうぞご期待ください。
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