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【ポケモンSV】“PJCS2025”優勝者キヌガワ ユウマ選手インタビュー。ポケモンバトルにハマった原点でもあるドーブルといっしょにつかんだ日本一の座

by竹内白州

【ポケモンSV】“PJCS2025”優勝者キヌガワ ユウマ選手インタビュー。ポケモンバトルにハマった原点でもあるドーブルといっしょにつかんだ日本一の座
 ポケモンバトルの日本一を決める大会、“ポケモンジャパンチャンピオンシップス”(以下、“PJCS” )。2025年は6月21日~22日にパシフィコ横浜で開催され、ゲーム部門、カードゲーム部門、『ポケモン GO』部門、『ポケモンユナイト』部門の4部門でチャンピオンが誕生した。

 本記事では、『
ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、『ポケモン S・V』)を使用して行われたゲーム部門マスターカテゴリのチャンピオン・キヌガワ ユウマ選手に対して実施したインタビューの模様をお届けする。

 ゲーム部門はインターネット大会を勝ち抜いた各カテゴリ64名がダブルエリミネーション方式で激突。猛者中の猛者が集うこの大会で、キヌガワ選手は無敗のまま WINNERS(ウィナーズ)トーナメントを駆け上がった。決勝戦ではLOSERS(ルーザーズ)の選手に1試合を先取され、苦戦を強いられるも粘り強く戦い抜き、最後には見事優勝を掴んだ。なお、試合の模様はポケモン公式YouTubeチャンネルでアーカイブを視聴できる。
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キヌガワユウマ

“ポケモンジャパンチャンピオンシップス2025” ゲーム部門マスターカテゴリで優勝。

日本一に輝きつつも「上には上がいると知れた」悔しさの残る優勝

――優勝おめでとうございます! まずは、当時の率直な感想から教えてください。

キヌガワ
 複雑な感情でした。優勝こそしたものの、戦績だけ見れば2勝3敗で勝った気はしなかったですし、決勝戦の対戦相手であるキムラショウヘイ選手のプレイがあまりにうまかったことに対する衝撃がいちばん大きかったです。

 せっかくなら綺麗に勝ちたかった気持ちも少しありますが、優勝したうえで自分に成長の余地がまだまだあることを知れたことはむしろありがたいことだとも思います。まだまだがんばらなければいけないと気が引き締まりました。もちろん、優勝したこと自体は純粋にめちゃくちゃうれしかったです。

――決勝戦では1試合目を落としたことでリセットがかかって再戦となりました(※)。あのときはどんな心境だったんですか?
※大会は2試合負けると敗退のダブルエリミネーション形式。決勝戦はウィナーズ側(無敗)の選手とルーザーズ側(1敗)の選手が対戦する。アドバンテージとして、ウィナーズ側は1勝すればそのまま優勝、ルーザーズ側が優勝するには2勝が必要というルールだった。なお試合はBO3(2本先取)形式なので、最大で6戦を戦うことになる。
キヌガワ
 “ポケモンワールドチャンピオンシップス2023”チャンピオンでもあるキムラ選手を相手に、ストレートで勝たせてもらえるとはそもそも思っていませんでした。最初から5~6本戦うつもりでいたので、1試合目を落としたこと自体に動揺はなかったです。

――DAY1の時点でTop4が出揃っていましたが、その時点である程度決勝戦のマッチングは予想されていたのでしょうか。

キヌガワ
 本人の実力や使用しているチームのパワーを鑑みて、ほぼほぼ上がってくるだろうなと思っていました。マッチングが決まったときは「やっぱり」という感じでしたね。とはいえ前日の時点ではひとまず目の前の対戦に集中していたので、キムラ選手への対策はとくに考えていなかったです。マスターカテゴリはマッチングが決まってから実際に戦うまでけっこう時間が空くので、そのあいだに作戦を練っていました。

――決勝の内容を振り返ると、序盤はかなり押され気味だったように思います。勝因は何だったと考えていますか?

キヌガワ
 僕の中ではバドレックス(こくばじょうのすがた)を2回行動させられれば勝てるだろうという目算があったのですが、キムラ選手の駆け引きがうますぎて2回どころか1回行動できるかどうかというような試合展開が続いてしまっていました。それでも焦らず冷静に一貫して同じ駆け引きを仕掛け続けたことが、最終的には優勝に繋がったのではないかと思っています。

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――観ている側としては精神的にも苦しい展開かなと思っていたのですが、最初から長期戦を想定していたことで冷静さを保てていたんですね。
 
キヌガワ
 はい。ただ、キムラ選手とはまだまだ経験の差があるなと痛感しました。僕は今回初めて公式大会の決勝戦を経験しましたが、彼は2023年に世界大会の決勝を戦っています。場慣れ感というか、大舞台でもまったく恐れず強気な選択を取れる胆力のようなものを感じさせられました。

――“ポケモンワールドチャンピオンシップス2025”(以下、“ポケモンWCS2025” )での再戦も可能性としてあるかと思います。現時点で勝てる自信はどの程度ありますか?

キヌガワ
 うーん……本当は五分五分だと思っているのですが、自分への期待込みで55%と言っておきます。正直な話、できれば当たりたくないです(笑)。

――“ポケモンWCS2025”では海外の選手と戦う機会も多いと思いますが、注目ないし警戒している選手はいますか?

キヌガワ
 今年はイタリアの選手がかなり勢いに乗っているなという印象があります。とくに直近で開催された海外大会“2025 Pokémon North America International Championships”(通称:NAIC)で優勝しているFederico Camporesi選手、同じ大会で準優勝したMarco Hemantha Kaludura Silva選手、そして昨年の世界チャンピオンLuca Ceribelli選手は別格だと思います。もちろんイタリア勢以外も油断できないプレイヤーはたくさんいて、アメリカのWolfe Glick選手(“ポケモンワールドチャンピオンシップス2016”優勝)はその筆頭です。

――各選手の強みはどこだと考えていますか?

キヌガワ
 全員に共通して言えるのは、対戦中の盤面を正確に整理する能力が非常に高いことと勝負勘の鋭さだと思います。つねに戦況を完璧に把握しているのでとにかくミスが少ないし、不利な状況では的確な場面で逆転に繋がる手を選択できます。そのうえで、Marco選手はバトルに出す4匹のポケモン選択がずば抜けて正確だと思います。これは僕の周囲のプレイヤーたちも口を揃えて言っているのですが、相手のチームに対してもっとも有効な4匹を選ぶ能力が非常に長けています。

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キヌガワ
 Federico選手は行動を選択するスピードが信じられないくらい早いのですが、それでいて的確なんです。盤面の情報を整理する能力がトップ選手たちの中でもさらに頭ひとつ抜けているような印象があります。Luca選手とWolfe選手はどちらも世界大会優勝経験があるので、僕からするとやはり経験値の差というのがいちばん怖い部分だと感じます。とくにWolfe選手は、まったく知られていないオリジナルの最強チームを本番に突然持ってくる印象があるので、そういう意味でも警戒すべき相手だと思っています。

――キヌガワ選手自身も、“PJCS 2025”の2週間前というスケジュールでありながらNAICに参加され、見事Top8に入賞されています。ご自身の強みについてはどう分析されていますか?

キヌガワ
 どうなんでしょうね(笑)。基本的なプレイングや先ほどから話している盤面整理の能力は同等のものを僕も持っていると思っています。しいて特徴を挙げるとするなら、不利な状況から逆転するプランニングが優れているのかなと思います。必要だと判断すれば、「噓でしょ!?」と思うような行動を取ることもあります。それこそ、NAICの配信卓では相手にリキキリンがいる状態で、ランドロス(けしんフォルム) に向かって“じんらい”で攻撃するという、一見とんでもないプレイを仕掛けました。

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相手の先制技を無効にする特性“テイルアーマー” を持つリキキリンがいる状態で、じめん・ひこうタイプのランドロス(けしんフォルム)に対してでんきタイプかつ先制技の“じんらい”を選択。もちろんそのままであれば“じんらい”は不発に終わるだけだが、対戦相手からするとドーブルの“キノコのほうし”が厄介だった。
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そのためリキキリンをミライドン に交代してエレキフィールドを張る。さらにランドロス(けしんフォルム)をどくタイプにテラスタルさせる。ひこうタイプや特性が“ふゆう”のポケモンはフィールドの効果を受けられないためタイプを変更した。エレキフィールドが張られた状態で地面にいるポケモンはねむり状態にならないという効果を活用したハイレベルなプレイだ。が、そうなると“じんらい”がクリーンヒットしてしまう。
キヌガワ
 実際のところ、あれは“キノコのほうし”を避けようとすれば“じんらい”が、“じんらい”を防ごうとすれば“キノコのほうし”が通ってしまう2段構えのプレイだったのですが。仮に通らないと負けてしまうようなリスクのある一手でも、僕はここぞというときに選択できるプレイヤーだと思っています。

――“ポケモンWCS2025”でも配信卓でキヌガワ選手の試合が見られる可能性は高いでしょうから楽しみですね。

キヌガワ
 一方で、基本的にはミスなく負けない選択を淡々と取り続けられるのも僕の強みだと思っています。そのギャップみたいなところに注目してもらえたらいいのかもしれないです。

衝撃的な出会い。レベル1ドーブルが教えてくれた、ダブルバトルの奥深さ


――ここからはキヌガワ選手の過去について深堀りしていきたいと思います。そもそもポケモンとの出会いというのはいつだったのでしょうか。

キヌガワ
 記憶があやふやなところもあるのですが、僕が覚えている限りでは『ポケットモンスター ルビー』をプレイしたのが最初だったと思います。4つ上の兄が誕生日に両親から『ポケットモンスター サファイア』をプレゼントされていて。誰からかは忘れてしまいましたが、もうひとつ『ポケットモンスター ルビー』ももらっていたんですよ。でも兄は『ポケットモンスター サファイア』の方をプレイしていたので、『ポケットモンスター ルビー』は僕がもらったんです。

――お兄さんがポケモン好きだったんですね。

キヌガワ
 はい。家にはゲームボーイカラーや『ポケットモンスター ピカチュウ』もあったので、もしかしたら僕もそっちを先にやっているかもしれないのですが……。『ポケットモンスター ルビー』を遊んでいたのが6歳くらいのころなので、それより前のことは正直あまり覚えていないです。

――ポケモンバトルに目覚めたのはいつごろなんですか?

キヌガワ
 これも兄の影響でして、僕が小学校5~6年生のころに兄が「ダブルバトルやろうぜ!」と突然勝負を仕掛けてきたんですよ。

――すごくゲームみたいな展開だ。

キヌガワ
 どうやらポケモンに詳しい兄の友だちから仕入れた知識を披露したかったみたいなんですが、とりあえずOKして対戦したんです。そうしたら兄がレベル1のドーブルをくり出してきて、「なんでレベル1……?」とか思っていたら“ねこだまし”とか“このゆびとまれ”とか“トリックルーム”とか当時の僕はぜんぜん知らない技ばかり使われて。

 けっきょくドーブルのサポートを受けたカビゴンが“はらだいこ”を使って大暴れして、わけがわからないままボコボコにされました。それがあまりに衝撃的過ぎて、「ポケモンバトルっておもしろ!!」って感動したんです。それで、自分も最強のポケモンと戦術を考えて兄を倒してやろうと思ったのがポケモンバトルにハマったきっかけです。

――見かたによっては理不尽な兄にボコボコにされる弟なわけですが、そこで「おもしろい!」と思えるのはある種の才能のように感じます。兄弟仲もよかったんですね。

キヌガワ
 仲はめっちゃよかったですね。ただ負けず嫌いなので、負けたままでは終われないっていう思いもありました。まぁけっきょく、兄は教えてもらったことを試してみたかっただけで、その後ポケモンバトルにハマることもなく僕が兄を倒す日は来なかったんですけど。

――それは残念(笑)。しかしキヌガワ選手をダブルバトルに目覚めさせた原点のポケモン・ドーブルが日本一に輝いたバトルチームにも入っているというのは、かなりドラマチックじゃないですか。

キヌガワ
 そうなんですよ。もちろん偶然なんですけど、なんかエモいなと思ってドーブルのことがよりいっそう好きになりました。じつは先日ポケモンセンターシブヤに行った際に“ポケモンデザインラボ”でドーブルのTシャツを作ってきたんですよ。

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キヌガワ
 ドーブルのイラストはもちろん、ドーブルを捕まえたときに使ったハイパーボールのイラストも入れました。僕だけのドーブルTシャツができて、すごく気に入っています。せっかくなので“ポケモンWCS2025”の会場にも、これを着て行く予定です。

――キヌガワ選手の活躍がきっかけでドーブルを使用する選手が増えていますし、その本人がドーブルのTシャツを着ているというのはプレッシャーがありますね。

キヌガワ
 本当はドーブルのぬいぐるみも欲しかったんですけど、人気なのか売り切れてしまっていました。じつは昨日まで使用候補だったチームにはドーブルが入っていたのですが、いったん候補から外れてしまったので本番はドーブルを使っていない可能性もあります(笑)。

――ちなみに、ドーブルのほかに好きなポケモンはいますか?

キヌガワ
 ニャスパーですね。シンプルに見た目がかわいくて好きです。あとはイエッサン(メスのすがた)も、以前に大会で優勝したときにチームに入れていたので思い入れがあります。

――ダブルバトルにハマったきっかけはお兄さんとのバトルだったとのことですが、“PJCS”や“ポケモンWCS”を本格的に目指すようになったのはいつごろからなのでしょうか?

キヌガワ
 何か特別なきっかけがあったというわけではないのですが、『ポケットモンスター X・Y』が発売されたタイミングから本格的に目指し始めました。ちょっと私的な話で恐縮なんですが、中学のころからの友人でみずみというやつがいまして。いまでもずっといっしょにポケモンをやっているのですが、彼といっしょに「ちょっと本気でやってみようぜ」という話をしたのを覚えています。じつは先ほど話した兄の友人というのが、みずみの兄なんです。兄たちはふたりともポケモンバトルはもうやっていませんが、弟はどちらも全力でポケモンバトルに取り組み続けています。

――お互いのお兄さんも含めておもしろい関係ですね! 『ポケットモンスター X・Y』の発売が2013年ですから、約12年前ということになります。それだけ長い間続けている理由って何だと思いますか?

キヌガワ
 ポケモンバトルがおもしろいからというのは前提としてありつつ、一度本気でやると決めた以上、世界一になるまで終われないというのがいちばん大きいです。それが最大のモチベーションになっていますね。

――なるほど。では、仮に世界一になったとしたらモチベーションはどうなりそうですか?

キヌガワ
 いまは“ポケモンWCS”で優勝できたら、いったん引退というか、公式大会に本気で取り組むのはやめてもいいかなと思っているのですが……。でも実際に世界一になった友だちに話を聞くと、みんなけっきょくやめてないんですよね。

 というのも、世界大会で優勝すると翌年の世界大会の出場権利がもらえるんですよ。せっかく出られるなら、ということでけっきょくやってしまうし、その結果負けると悔しいしでやめられなくなるそうで。僕も含めてみんなポケモンが大好きなので、なんだかんだでやってしまうんだろうなって思っています。

――たしかに、そう言われると昔からの強豪選手とか元世界チャンピオンがいまも活躍し続けていることが多い界隈な気がします。

キヌガワ
 翌年の世界大会出場権利付与っていうのがなかったら、もしかすると多くのレジェンドプレイヤーたちがいなくなっていたかもしれないですよね。そう考えると、いいシステムだと思います。

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脳内でポケモンバトルをシミュレート!? 正確なダメージ感覚が為せる特殊能力

――キヌガワ選手といえば、独創的なチーム構築も大きな特徴のひとつだと思います。バトルチームを考えるうえで大事にしているポイントについて教えてください。

キヌガワ
 多くの人が強いと評価しているポケモンの、まだ注目されていない型を模索することが多いです。たとえば、2017年に使っていたウツロイド。特攻や素早さを伸ばす育てかたが主流のポケモンですが、あえてHPと防御を伸ばして“トリックルーム”を覚えさせた型を考えました。翌2018年には特性“かげふみ”で使われることが多いゴチルゼルを、特性“かちき”で活躍させる型を思いつきました。どちらもその年の世界大会で、僕の案を参考にしてくれた選手が上位に入賞しています。

――どうしてそうしたオリジナルのアイデアをつぎつぎに思いつけるのでしょうか。

キヌガワ
 思いついたアイデアを片っ端から試しているんです。だいたいは「そんなに強くなさそうだな」と思いながら試すのですが、たまにめちゃくちゃ強いポケモンが見つかることがあります。そういうことがあるのを知っているので、絶対に一度は試すようにしています。そうやってほかの人が考えないようなこともふだんから考えているので、構築の中に相手には想像できないような攻めのプランを隠し持っていることが多いです。それも僕の強みのひとつかもしれません。

――相手の意表を突くようなアイデアを重視するところは、レベル1ドーブルをおもしろがっているころと同じなのかも(笑)。プレイングの面では、ふだんどのような練習をされているのでしょうか。

キヌガワ
 いまお話ししたような新しいアイデアを生み出すときは実際に対戦で試すのですが、使用率の高いメジャーなチームや使い慣れたチームの練習はもっぱら脳内シミュレーションですることが多いです。

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――脳内で対戦を行うということですか……?
 
キヌガワ
 そうです。まずは自分と相手のチームを用意して、お互いの選出を考えます。自分の方は4匹固まっていることが多いですが、相手側の選出はいろいろなパターンを考えてそれぞれシミュレーションをします。どのパターンが来ても勝てるような選出を自分側ができているかを確認するイメージですね。もし勝てないパターンがあるなら、選出を変えるなり構築を変えるなりして改善していきます。

――そもそも脳内でシミュレートするというのは具体的にどんな感じで行うのでしょうか……? 1試合まるまるシミュレートできるのですか?

キヌガワ
 はい。脳内対戦をやるために必要なのは、ダメージ感覚です。僕の脳内では、このポケモンに対してこの技を使ったらこれくらいのダメージが入るなっていうのはわりと正確にイメージができています。それさえできれば、お互いの立場で最適な行動選択を考えていくだけです。

――そう言われればそうなのかもしれないですが……ふつうはできないですよ。何らかの特殊能力じゃないですかね。脳内対戦はいつごろからできるようになったんですか?

キヌガワ
 けっこう最近かもしれないですね。『ポケットモンスター ソード・シールド』のころくらいからかも。当時は明らかに実力が伸びているのを感じていました。それくらいダメージ感覚は重要なんです。

 “PJCS2025”の決勝でも、相手のガチグマがザマゼンタのボディプレスを耐えたときに、すぐにおかしいと気づきました。ふつうなら倒せるはずだとわかっているので、防御が非常に高く育てられていること、つまり攻撃はそこまで高くないだろうということが推察できたんです。結果的にはうまく決まらなかったのですが、その推察をもとにタケルライコでガチグマの“からげんき”を受けにいくというふだんはやらない立ち回りも即座に実行できました。その一手が勝敗を分ける可能性もあるので、ふだんから磨いておくべきものだと思います。

――キヌガワ選手のように強くなりたいという人は多いでしょうから、とても参考になると思います。とはいえいきなり正確なダメージ感覚を身につけるというのは難しすぎるとも思いますので、もう1段前のステップで何かアドバイスをいただけませんか。

キヌガワ
 これは昔からよく言っているのですが、とにかく対戦をしてみることがもっとも重要です。そのつぎに、1戦1戦をムダにしない意識を持つことです。無心で対戦をするのではなく、それこそダメージ感覚を身につけようと意識しながら対戦をしたり、対戦を振り返って改善点を探したり。何かしら考えながら対戦を行うことが上達の秘訣だと思います。

――僕自身、対戦が終わると即座につぎの対戦のマッチングを始めてしまいがちなので、ちゃんと振り返りをするように気を付けます……! さて、“ポケモンWCS2025”までもう間もなくとなってきましたが、世界大会に向けてはどんな取り組みをされていますか?

キヌガワ
 世界大会ではオープンチームシート形式といってお互いのポケモンの情報を公開したうえで戦うのですが、その際にポケモンの情報が書かれた紙を交換して、対戦中はその紙を見ながら情報を確認するんです。なので世界大会に参加する仲間たちといっしょに、その紙を作って本番を想定した練習をしています。紙を交換して、挨拶をして、対戦中も紙に書かれた情報をしっかり確認して。要は本番で練習どおりのパフォーマンスを出すための特訓ですね。

――そこまで本格的に再現されているんですね。

キヌガワ
 オープンチームシートの練習ということであれば、わざわざ紙を印刷しなくてもデータでできるのですが、やっぱり微妙に感覚が違うんですよね。

――大会本番に向けて、期待が持てますね。それでは最後に、キヌガワ選手を応援するファンの皆さんへメッセージをお願いします。

キヌガワ
 取材の時点で本番まで2週間ほどなのですが、現状何ひとつ構築が決まっていないです。ということでいまは自信がないのですが、2週間あれば僕ならなんとか完成した構築を用意できると思います。なんやかんやで本番は勝っていると思いますので、期待していてください。

――いまいち締まらないですね(笑)。

キヌガワ
 プレッシャーを感じすぎずに、気を楽にして臨みたいと思っているんですよ。でも、自信はないけど優勝できるような気もしています。何を言っているかわからないと思いますが、“PJCS2025”のときも同じような心持ちで優勝したので、“ポケモンWCS2025”も応援よろしくお願いします!
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      集計期間: 2025年08月11日15時〜2025年08月11日16時