2026年2月某日。私は佐賀県の最南端で、干潮時の有明海を眺めていた――。
って、あれ? なんで私、佐賀県にいるんだっけ? ついこないだ(2025年10月末)佐賀取材旅行をしたばかりで、「つぎはいつ来れるかなあ」などと思っていたはずなのに、三月も経たないうちになんで佐賀に来てるんだっけ。
どうやらここは佐賀県の太良町(たらちょう)。満ち引きをくり返す有明海に面した町で、その干満差を通じて月の引力の存在を実感できることから、“月の引力が見える町”と呼ばれているのだとか。
ああ、そうか、私も月の引力に導かれて佐賀に来ちゃったってわけなのか! な~んてロマンシングな詩人みたいなことを考えていたら、おや、干潟の先から誰かが歩いてくる。あの、小柄なのにエネルギッシュなお姿は……


マンガ家・画家の柴田亜美先生だ――――――――っ!

先生、スービエに乗って来たんですか? とりあえず記念撮影。
ああ、そうだった、週刊ファミ通編集長であり、スクウェア・エニックスの『サガ』シリーズの記事担当でもある私は、佐賀県と『サガ』シリーズのコラボ企画である“ロマンシング佐賀”(以下、ロマ佐賀)の取材で何度か佐賀県を訪れていて……そのご縁もあって今回、柴田先生に佐賀県の見どころを紹介する役目を仰せつかったんだった。
ということで本記事では、柴田先生と私の佐賀県珍道中の模様を、柴田先生のイラストを交えてお届けしていこう。
「あの柴田先生が、佐賀県に来てくれる!」っていうんで、アテンドしてくれた佐賀県庁の皆さんもめちゃくちゃ張り切ってしまい、佐賀県の南から北までを巡る大ボリュームツアーが組まれてしまった。その結果、とても1本の記事には収まりきらず前後編になってしまうのだが、お付き合いいただけると幸いだ。
では改めて、月の引力が見える町、太良町の紹介から。
悪代官がスービエ……じゃなくてナミウオに助けられた伝説の地・太良町
この町の観光スポットである“大魚神社の海中鳥居”は、その名の通り有明海の中に建てられていて、干潮のときだけ鳥居の下を通ることができる。
なんでこんなところに鳥居があるのだろうか。言い伝えによれば、これを建てたのは1693年ごろにこの地で悪さをしていた代官。その所業に耐えかねた住民の手によって、代官は沖ノ島(有明海にある島。満潮になると沈む)に置き去りにされてしまうのだが、竜神に助けられ、大魚(ナミウオ)に背に乗って生還することができた。その助けに感激して、代官は大魚神社を建てた、ということらしい。

今回は干潮時に訪れたが、満潮のときは鳥居が海の中に浮かんでいるように見えて、神秘的なのだとか。もし太良町を訪れるなら、せっかくなので一泊して、朝晩で様子が変わる鳥居の姿を眺めてみてはいかがだろうか。近くには温泉(たら竹崎温泉)もあるし!

太良町の方々からご提供いただいた、満潮時の写真がこちら。青い空と海に、赤い鳥居が映えてキレイ。
なお潮の満ち引きは、太良町で生きる人たちにとっては漁業に関わる重要な情報。道の駅 太良には潮見表が掲示されている。

ロマ佐賀ポストやフォトスポットもあります。



太陽と潮風で育てられたみかんは太良町の特産品。おいしそう。カニやカキも有名で、海沿いにはカキ小屋が並ぶ。
ちなみに、道の駅の近くには太良町の観光案内所があって、パネルや『サガ』クリエイターのサイン色紙などが飾られている。ファンからの寄贈品なのか、スーパーファミコン時代の攻略本が置いてあったりもして趣深いので、ぜひ訪れてみてほしい。この記事が載るころには、柴田先生のサイン色紙も飾られているかも?



非常に見晴らしのいい海辺でサイン書きに勤しむ柴田先生。「潮風にさらされながらサインを書いたのは人生で初めて」
有田と伊万里で絵付け体験! ロマンシング佐賀2025の人気企画
さて、今回の旅の目的は、柴田先生に佐賀県の自然や芸術を味わってもらうこと、そして『サガ』好きである先生に”ロマ佐賀”の魅力を伝えることである。
10年以上にわたり“連携”し続けている佐賀県と『サガ』だが、“ロマンシング佐賀2025”(2025年10月25日~2026年3月22日に行われる施策)では、有田町と伊万里市がフィーチャーされている。とくにファンから好評なのが、“ロマ佐賀絵付け体験”だ。
有田では、ドット絵転写シートを使って、『サガ』のキャラクターや佐賀県の観光地・県産品のドット絵をお皿に配置し、さらに絵付けをして自分だけのお皿を作れる。柴田先生にもぜひ、オリジナルのお皿を作ってもらいたい! ということで、絵付け体験をしていただいた。

筆を手に、真剣な表情の柴田先生。ひたすら見守る私と佐賀県庁の皆さん。
完成したお皿には、『南国少年パプワくん』のタンノくんの姿が! よくよく見ると、佐賀県・唐津市で行われるお祭り“唐津くんち”の曳山のひとつ”鯛”のドット絵も使われているので、なるほど、これは“鯛”と“変鯛”の夢のコラボレーション皿というわけか……!


柴田先生が絵付けしたお皿は、2026年3月22日まで二宮閑山 有田駅前店に展示されている。 ※展示期間は予告なく変更になる場合があります
続いて伊万里では、『サガ』シリーズのキャラクター“はにわ”を形どった湯呑みに絵付けができる、“はにわ湯呑み絵付け”を先生に体験してもらうことに。


「どんな絵を描くか、事前にイメージを済ませていた」という柴田先生。“せんせい”がたくさん描かれた、キュートなはにわ湯呑みが完成!

絵付けが終わった後、焼成を経て器は完成する。今回の旅が終わった後、しばらくしてから、伊万里・有田焼伝統産業会館さんから「焼き上がりました」と届いた写真がこちら。

焼かれたことでちょっとだけ小ぶりになって、ツルンっとした手触りになったはにわ。焼成前・焼成後で、色合いの変化を見比べるのも楽しい。

裏側には『南国少年パプワくん』のパプワが! この柴田先生が手掛けたはにわ湯呑みは、2026年3月22日まで伊万里・有田焼伝統産業会館にて展示予定。 ※展示期間は予告なく変更になる場合があります
この有田・伊万里での絵付け体験はとても好評で、一度ならず二度、三度訪れる『サガ』ファンも少なくないのだとか。この絵付け体験の開催は2026年3月22日まで。事前に電話予約が必要なので、「私も自分だけの器を作りたい!」と思った人は、公式サイトを確認のうえ、ぜひ早めのご予約を。

ふだんの仕事を忘れて、楽しい佐賀旅行……なのに、佐賀でもペソペソ絵を描いていただいてしまいましたよ。
佐賀のやきものの400年の歴史を学ぶ
「佐賀県と言えば、やきものが有名」ということは多くの人が知っていると思うが、なぜ佐賀県でこれだけ磁器生産が発展したのかご存知だろうか。じつはこれには、豊臣秀吉の朝鮮出兵が関わっている。
朝鮮出兵は1592年から約7年にわたって行われたが、その拠点となったのが佐賀だった。この朝鮮出兵の際、当時の佐賀藩主が朝鮮から陶工を連れて帰ってきて、やきものの生産に従事させたという。
そして、陶工たちのリーダーであった李参平が、有田で良質な陶石を発見し、日本初の磁器の生産に成功。そこから有田焼・伊万里焼の歴史が始まった……ということだ。
その“李参平が陶石を発見した場所”は、現在は観光スポット“泉山磁石場”として公開されている。山のスケールの大きさや、採掘の跡が残る岩肌の質感に圧倒されてしまう、不思議なパワーを感じる場所だった。


今回は特別に、旧採掘現場の近くで撮影させてもらうことができた。青空に映える山の姿に感動する柴田先生。
佐賀で作られた磁器は、誕生から400年経ったいまも国内外の人々を魅了しており、いまも有田と伊万里には複数の窯元がある。
今回の旅では、有田の老舗の窯元である源右衛門窯の工房を見学させてもらう機会を得た。見学者がいても微動だにせず仕事をする源右衛門窯の皆さんは、まさに歴戦の職人……! 柴田先生も絵描きとして刺激を受けながら見学されていたご様子。そしてその後、源右衛門窯のショップでしっかりお買いものを楽しまれていきましたよ。



雛人形に繊細な絵付けをしていく職人さん。

以前から源右衛門窯の器を愛用していたという柴田先生。工房の敷地内にある源右衛門窯の直営店で胸を高鳴らせていました。
今回の旅行記を読んで、「佐賀のやきものの歴史に興味が沸いた!」という人には、伊万里・有田焼伝統産業会館や、有田にある九州陶磁文化館の展示がオススメ。佐賀県のやきものの歴史を学ぶことができる。

はにわ湯呑み絵付けの体験会場でもある伊万里・有田焼伝統産業会館は、“秘窯の里”と呼ばれる大川内山にある。江戸時代には、この大川内山に佐賀藩鍋島家の御用窯が置かれており、献上品として高品位な磁器“鍋島”が焼かれていた。職人の技術が外に漏れないよう、あえて山奥に窯を置いたのだとか。まさに、RPGでよく見る隠れ里のような雰囲気!
さらに伊万里・有田焼伝統産業会館では、2026年3月22日までの期間限定で、“ロマ佐賀やきもの展”も開催中。『サガ』シリーズのキャラクターデザインで知られる小林智美氏が絵付けした有田焼大皿や、これまでのロマ佐賀企画の中で作られた美しいやきものの数々が展示されているので、はにわ湯呑みの絵付けとともにぜひ楽しんでほしい。


さて、柴田先生との旅はまだまだ続く……月の引力を浴び、やきものの歴史に触れた先生が向かう場所は? 後編をお楽しみに。

絵付けの合間に、有田の古民家カフェ・kasaneでお昼ごはん。ロマ佐賀コラボメニューに舌鼓。旅行記の後編では、佐賀のグルメも紹介予定!