Nintendo Switch、プレイステーション4用ソフト『パワフルプロ野球2024-2025』が本日(2024年7月18日)ついに発売。制作者たちに本作の魅力を訊くインタビューをお届け。
経歴もセクションもさまざまに異なる6名に集まってもらい、30周年記念作品となる本作の注目ポイントを始め、サクセスや追加機能の制作秘話など盛りだくさんに語ってもらった。コアな内容のインタビュー、じっくりとご覧あれ。
松井徹哉 氏(まつい てつや)
本作のプロデューサー。前作に引き続きプロデューサーを務める。(文中は松井)
濱見太輝 氏(はまみ たいき)
本作ではディレクターとして携わる。『パワプロ』の制作をしたくて入社した経緯を持つ。(文中は濱見)
小野浦辰哉 氏(おのうら たつや)
本作のメインプランナー。初めて遊んだ『パワプロ5』以来、大の『パワプロ』好き。(文中は小野浦)
横萩幸保 氏(よこはぎ ゆきやす)
本作ではリードデザイナーを担当。『がんばれゴエモン』を制作したくてKONAMIに入社した経緯を持つ。
長澤祐介 氏(ながさわ ゆうすけ)
本作のプロジェクト管理を担当。『パワプロ2014』~『パワプロ2018』、『パワプロ2022』でディレクターを担当。(文中は長澤)
豊原浩司 氏(とよはら こうじ)
本作の野球セクションリーダー。初代から制作に携わり、野球に関する部分の開発を担当。
30周年の『パワプロ』とアンバサダー
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──『パワプロ』30周年ということで、おめでとうございます。
一同 ありがとうございます!
──30年ともなると、プレイヤーを飽きさせない新鮮さを生み出すのもひと苦労なのではないですか?
松井
長くファンに支えられているタイトルですので、まずは既存プレイヤーの声をしっかりと聞きつつ、「新しい方に遊んでいただくには」という課題についても、ずっと考え続けています。その方策のひとつとして、大谷翔平選手にもアンバサダーに就任していただきました。
──そう! 大谷選手がニンテンドーダイレクトにいきなり登場してソフト紹介までやっていて、驚きましたよ! 反響はいかがでしたか?
松井
やはり皆さん、同じように驚いたとおっしゃっていました(笑)。社内でも大部分が知らなかったと思うので翌日から大きな話題になっていましたね。
濱見
大谷選手の力がすごく大きいのかなというのは制作のほうでも感じています。
──あれはどういった経緯で決まったのでしょう?
松井
『パワプロ』が2024年に30周年を迎えるにあたって、「ベストは大谷選手といっしょに何かできることじゃないか」というようなことを、みんなで話していたんです。
濱見
誰かアンバサダーを立てて30周年を盛り上げていきたいというアイデア自体はずいぶん前から構想としてあったんですけど、どなたにお願いするかというときに、野球界で考えた場合、大谷選手がいちばんのトップランナーだと思っていたので。実現できればいいなとみんなで言っていたんです。
それに大谷選手も1994年生まれで『パワプロ』と同い年なので、 頼むなら大谷選手でしょう! と盛り上がりました。
──『パワプロ』と同い年というのはなかなかに運命的ですね。
松井
我々『パワプロ』チームは、多くの方に野球を知るきっかけや野球と触れ合う機会を増やしたいとつねづね考えているんです。そして大谷選手も、報道などでご存知かと思いますが、全国の小学校にグローブを配布したりと野球を普及する活動をすごく積極的にやられています。
我々の「野球を広げたい」という思いにご賛同いただいてアンバサダーも引き受けていただけましたので、すごくうれしかったですね。
──今回はパワターもいっしょに週刊ファミ通の表紙になっています。このパワターは新たに制作したのですか?
横萩
表紙のものは本作用に調整していますが、 大谷選手のパワター自体は2017年にモバイルゲームの『実況パワフルプロ野球』(パワプロアプリ)に初登場する際、デザインを起こしています。
最初から目力が強いイメージで、目が特徴になるデザインを目指して着手しました。結果的に、ちょっと大きくクリっとした目がほかのパワターたちと並んだときの相性もよくて、うまくまとまったと思います。それ以外の部分だと、最初はもうすこし面長のデザインだった時期もあったのですが、いまの形に固まり、ご本人にご確認をお願いした際も快くご了承いただけたので、きっと気に入っていただけたのかなと思っています。
──なるほど。大谷選手みたいなイケメンをパワターで表現するのは難しいですよね。
濱見
鼻も口もないのですが、それでも「似ている」と言ってもらえるのもパワターの魅力なのかなと思います。なんとなく再現されているからこそ、皆さんが想像で補完して、「似ている」と思えるのでしょうね。
大事なファンとのキャッチボール
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──改めて話題をゲームのほうに戻しますと、やはり『パワプロ』プレイヤーは、シリーズ経験者のほうが多いという構成なのでしょうか?
松井
プレイヤーアンケートを見ると、ありがたいことに、かなりの割合で「いずれかの『パワプロ』作品を遊んだことがある」という方が多いですね。
──これだけ長く続くシリーズになった秘訣、理由というのは何なのでしょう?
濱見
新作の制作開始時には、前作でのプレイヤーからの要望を実現したいなと思って制作をしています。
それと同時に、我々開発者のほうでも中長期で計画を立てて、各モードを「本作ではここまでしかできなかったけど、つぎのタイトルではさらにここまで作り込みたいよね」という希望があるので、そこはバランスを取りながら、いちばんいいものができ上がるように毎作意識していますね。
──ファンからの声をしっかりと受けながら、開発陣の熱意も大事にする姿勢、そしてある程度未来を見据えながらの開発計画があると。
松井
そうですね。もちろん、つぎがある前提で考えているという話ではないのですが。たとえば、本作ではオリジナルシナリオ制作機能が搭載されたのですが、このアイデアは『実況パワフルプロ野球2018』でライブシナリオが搭載されたときから、「プレイヤー自身で好きな試合、好きなシーンを設定して、シナリオが作れたらおもしろいよね」という構想としては存在していました。
濱見
ですが、『パワプロ2018』の時点では、制作期間的に難しくて......。「オリジナルシナリオを搭載したほうがおもしろくなる」という思いがずっとあり、実現できる日を見据えて構想を練っていました。今回ようやく実装できたので、6年越しでようやく実現ということになりましたが(笑)。
今回、レジェンドチームという形で、OBも非常に多数収録しています。歴史的な試合、再現してみたい試合を、うまくデータを活用して、皆さんで作って共有し、楽しんでもらえればと思います。
松井
歴史が長くなってくると、やはり基本的にはプレイヤーの方の反応を見て、 プレイヤーが「こういうモードをプレイしたい」という願いと、「『パワプロ』でこのモードを作りたい」という開発陣の意思疎通と言いますか、キャッチボールみたいなことが大切だと考えています。その制作陣とファンのキャッチボールがこの10年ぐらいはきれいにできてるのかなと。
お互いの望むものと、「こういうモード、新要素はどうですか」という提案を続けられて、シリーズの人気につなげられているのかなと思っていますね。本作ではとくに30周年記念作品というのが、予定として見えていましたから、以前から「こうできたらいいよね」と見据えていた部分をいろいろと実現しました。
──その“見据えていた部分”というのが......。
濱見
関西私鉄球団やその本拠地球場の収録だったり、過去の『パワプロ』の歴史がわかるコレクションモードだったり、というところですよね。やっぱりなかなか、準備に時間が必要なこともありますので。
──現在『パワプロ』の球場データ制作では、実際の球場に取材して、3Dスキャンを行ってリアルに再現していると聞いています。ですが、現存しない大阪スタヂアムや阪急西宮球場は、どのように制作されたのですか?
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本作には、現在すでに取り壊されている西宮球場(左)と大阪スタヂアム(右)が収録されている。
豊原
3Dスキャンがない時代と同じように、現存している映像や資料写真を目で見て、昔と同じように手で作りました。幸いにも、『パワプロ』チームにはそのころの作りかたでやっている開発スタッフもいますから。手でね、作っていたんですよねえ......。
──30年の歴史を感じますね。それとは別に、本作でプレイヤーの要望に応えて反映した部分というのはどういったところでしょうか?
濱見
たとえばパワフェスです。今回、生まれ変わるような形で“パワフェスアドベンチャー”という名前になりました。パワフェスは『実況パワフルプロ野球2016』から収録されて、ひとつの主力モードとして人気があるモードなのですが、「遊びかたにもうすこし変化が欲しい」という声もいただいていました。
そこで「ちょっと遊びかたを変えてみようか」ということを、 本作では開発初期段階から話していました。
──なるほど。パワフェスアドベンチャーは前作までと大きく変わっていますよね。
濱見
そうですね。ただ、これまでのパワフェスのファンが遊んだときにがっかりされないように、パワフェスのよさをきちんと残しながら変化を加えるという目標を立て、開発陣の中でもかなり議論しました。どこを変えてどこまで変えたらダメなのかと。そういった話し合いをかなり行いました。
──スタッフの中でもそれぞれ意見が違うと思いますが、その議論で結論は出たのですか?
濱見
ある程度企画の形が見えてきた段階で、「これはパワフェスだよ」という人もいれば、「これは俺の思っているパワフェスではない」という意見もありましたね。本作ではミニゲームを追加したり、“スカウ島”マップを散策したりする仕様に変わっていますし、「モード名から“パワフェスアドベンチャー”に変えましょう」となりました。
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人気モードの“パワフェス”は“パワフェスアドベンチャー”に生まれ変わった。
──ミニゲームをくり返して仲間を集めていくあたり、『パワプロクンポケット』シリーズみたいな感じもありますよね。あのあたりはファンの声から生まれた遊びなのでしょうか。
小野浦
パワフェスアドベンチャーに関しては、 プレイヤーの声を受けつつも、パワフェスをどういう方向に改良していくか、スタッフ側で考えて練り上げていきました。そういう意味ではチャレンジングな部分が多かったので、本作のパワフェスを遊ばれたプレイヤーの皆様の反応を楽しみにしています。
長澤
そもそも、パワフェスを最初に作ったときは「サクセスキャラクターが勢揃いする、一度きりのお祭り」というモードのつもりで制作していましたからね。
──ああ、当時のインタビューでそう語られていたような気がします。
豊原
サクセス20周年の記念として作られたモードなのでね。当時は「今回だけだ」と思っていましたね。気づけば10年続いてしまっているわけですが(笑)。
松井
パワフェスはすごく支持をいただいたので、「これは一作で終わらすにはちょっともったいないんじゃないか」ということで、残すことが決まったという経緯もあります。そういう意味ではこれもプレイヤーの方のご要望の声を聞いた結果という形ですよね。
もちろんすべてが思った通りにはいかないのですが、開発側としても「こう作りたい、こうなったらいいよね」というものを、毎作市場の様子を見ながら制作をしています。
松井
30周年ということで、『パワプロ』の歴史を振り返るような取材が多く、僕自身『パワプロ』というシリーズを振り返る機会が多いんです。そして思ったんですけど、改めて思うのはやっぱり挑戦の歴史というか、本当に毎回攻めているんです。
今回パワフェスの仕様を大きく変更したこともそうですし、『実況パワフルプロ野球3』(1996年発売)でサクセスを導入したり、アプリなど新しいプラットフォーム展開も含めて、“挑み続けている”というところが、『パワプロ』が長く続く要因のひとつなのかなと思っています。
挑むのをやめたらいまの人気は止まってしまうだろうと思いますし、そこは『パワプロ』の強みだし、チャレンジできるコンテンツなのかなと思います。歴史を振り返ると、ふつうの野球ゲームではできないことも多かったシリーズだなあと。
直球の速さは変わる? 野球部分について訊く
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──本作で、「このシステムを前作から調整しました」というところはありますか?
濱見
本作は、 細かい点では調整を施していますが、全体のバランスであったり、ストレートの速さなど、大きなところは前作のものを引き継いでいます。
豊原
ゲームの手触り部分以外のところでは、いわゆる“大谷ルール”を入れたり、大谷選手用にオリジナル変化球“スイーパー”を入れて球種を増やしました。アクション部分の調整はすごく難しいところなのですが、前作の反響を見ると野球部分では大きな課題というところは出ていませんでした。ですから、本作でも大筋では引き継いでおり、 安心してプレイしていただけるかなと思います。
──なるほど。ゲームでストレートなどの球速を調整する基準は何かあるのでしょうか。
濱見
明確な基準というのはありませんが、「初めて『パワプロ』をプレイした人がいかに打ちやすいか」、逆に「長年プレイしている人たちにとって気持ちいいストレートであるか」というようなところを見て微調整を加えています。 数年前に、『パワプロ』を使った“eBASEBALLプロリーグ(※)”が始まりましたので、そのあたりからは、野球の根本的な部分を大きく変えるということはあまりしてこなかったですね。
※eBASEBALLプロリーグ......2018年から2020年に掛けて『パワプロ』を使用して行われたプロeスポーツリーグ。豊原
プロリーグが行われているときは対人戦のバランスなどの調整はしましたが、一般のプレイヤーに大きな影響がないように意識しながら調整をしていました。
小野浦
直球で言うと、昔のタイトルではすごく打ちやすく調整されていることも一時期ありましたね。対戦でストレートを投げるだけ損じゃないかみたいな(笑)。
豊原
『実況パワフルプロ野球4』~『5』あたりですかね。僕らが対人戦をプレイしていても、一試合に2球ぐらいしか投げなかったなあ、という(笑)。ストライクに入れると、すぐにホームランを打たれるから、そのころはちょっとハイリスクな球種ではありました。
小野浦
いまは通常のストレートより球速が速く感じる“全力ストレート”がありますが、通常のストレートが速すぎると、全力ストレートがどうしても打てなくなるんですよ。そんなこともあり、ストレートの調整はかなり難しいんです。
濱見
初代『実況パワフルプロ野球』(1994年発売)の開発時に、野球部分を担当していたプログラマーが、最初は現実と変わらないほどの、リアルなスピードでストレートを開発していたそうなんです。だけど、当時の上司から「もうすこし遅くしないとミートカーソルが追い付かないし、おもしろくない」と指示をされて、でもリアルなスピードにもこだわりがあるから、激論になったようで(笑)。
──おお。最終的にはどうなったのですか?
濱見
一旦は突っぱねたらしいのですが、上司が帰ってから、こっそりと言われた通りにストレートを遅くしたらしいんですよ。 それでプレイしてみたら打ちやすくておもしろいと。悔しいけど、けっきょくストレートを遅くした......というエピソードが初代『パワプロ』のころからありますね。
──いい逸話ですね(笑)。
濱見
それぐらい、どこがいちばんゲームとして気持ちいいのか、打ちやすいいのか、打ち取りやすいのか。そういった要素を、毎作しっかり調整しながら、最近のバランスに落ち着いてきたということなのかなと思いますね。私もそのエピソードを最初に聞いたときに、初代の開発当時からそういうこだわりが担当者どうしであったんだなと思い、ちょっと感動した覚えがあります。
新サクセスは未来が舞台。あおいちゃんの相手は?
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──新しいサクセスのシナリオはどういうふうに考えているのでしょうか?
濱見
30周年の歴史があるので、サクセスというモードにもキャラクターの歴史がありますよね。そこで、「じゃあキャラクターたちの“先の未来”というものを本作で描いてみたらおもしろいんじゃないか」、と。30周年というタイミングで挑戦しようということで、小野浦を中心に進めていきました。
小野浦
未来を描くという部分で、やっぱりある種の禁忌といいますか、プレイヤーの求めているキャラクター像に踏み込んでしまうという危険性はあるんです。ですけが、いままでそこにチャレンジしてない、未開拓の分野だというところもあり、かつ、本作は30周年記念なので、多くのキャラクターをとにかく掘り起こして、本作に登場させてあげたいという思いから、未来という舞台を選びました。
──フューチャーズ編では、早川あおいの血縁者のようなキャラクターが出ますよね。
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アオくん(左)とあおいちゃん(右)
小野浦
おっ......“アオ”くんのことですよね。なかなかかわいらしい顔の。何か気になることがありますか?
──早川あおいの“孫”ということなんですけど、つまりそれは、あおいちゃんの子どもがいるということで、あおいちゃんが誰かと結ばれ......。
小野浦
これはですね。まさにそのファンに配慮させていただいた部分でございまして、議論を尽くしたうえで、(本編で明らかになるんですが、)直接の血縁ではないということになっています。あおいちゃんがあの時点で、既婚なのか未婚なのか、誰と結ばれているのかというのは......。
──......いうのは?(ゴクリ)
小野浦
すみません、皆さんのご想像にお任せしたいと思います!
──ズコーッ!
濱見
(笑)。けっきょく、いろいろな未来の可能性があり、約束された未来というものはないのですが、こういう世界線がひとつあってもおもしろいんじゃないか......という試みを本作でさせていただいたという感じですね。
──なるほど。ではつぎに、『実況パワフルプロ野球2010』に入っていてリメイクされたプロ野球12球団と、前作『eBASEBALLパワプロ2022』に搭載された千将高校が本作でも遊べます。これらが収録されることになった理由について教えてください。
濱見
30周年記念作品というところで、ここまで長く続いているサクセスという部分で、「過去のシナリオをリメイクで入れ込んでみたいよね」という話はあったんです。どれが人気シナリオなのかというアンケートも取っていまして、その結果から選びました。
──それが『パワプロ2010』のプロ野球12球団だったと。
濱見
そうなんです。人気のシナリオのひとつ、『パワプロ2010』に収録されていたプロ野球12球団を今回採用することになりました。『パワプロ2010』のころというのはまだ登録選手が限られていて、1チーム全70人のプロ野球選手が搭載されていなかったので、二軍戦の試合ではけっこう架空選手も多かったんですね。
ですが、本作の場合は支配下登録されているプロ野球選手全員が収録されていますので、二軍戦でも、よりリアルなプロ野球を味わっていただける内容になっています。そういう意味でも、このタイミングでプロ野球12球団をやってみるのもいいのかもということで採用となりました。
──千将高校が今回も入ったというのは、熱心なファンがたくさんいたのでしょうか? 余談ですが友人が千将高校にハマって、それだけで1000時間くらい遊んでいたんですよ。
小野浦
ありがとうございます(笑)。千将高校は『パワプロ2022』で初搭載されたモードですが、その開発時から、次回作も見据えて、栄冠ナインのようにずっと遊び続けられるサクセスを作ろうということで考えられたものです。
特定のキャラクターも出ませんし、イベントもシンプルで、サクセスの遊びの純粋な部分を楽しめるものになっています。ですから、前作でも評判がよく、本作でも無事収録できたのはよかったです。
リアルにルールを再現する難しさ
──マイライフでは“現役ドラフト”と“トライアウト”、ペナントではDH制の有無を設定できる“大谷ルール”や“現役ドラフト”などが追加されましたね。
濱見
ペナントとマイライフは、現実のプロ野球を体感できるモードであり続けたいと思っています。新たなルールや仕組みなど、 現実の野球ファンのあいだで話題になっているものを中心に、ゲームにも導入したいと考えています。実際のところ、「絶対入れよう」と最初から決めていました。
──ゲームにこれらの要素を追加する際に難航した点などはありますか?
濱見
現役ドラフトとか、大谷ルールもそうなんですけど、厳密なルール文言がわからないことがあるんですよ。こういうシチュエーションでは適用されるのかとか、この場合はどうなるのが正解なんだとか。
とくに現役ドラフトは、各球団内でどのように進められているのかなど見えづらい部分もけっこうありまして。開発段階で得られる情報をもとに「おそらくこうなんじゃないか」という予想で実装しているところもありました。そのあたりはけっこう......このシステムを搭載するのは最初から決めていましたが、いま思い返すとわりとたいへんでしたね(笑)。
豊原
大谷選手はゲームで使えるのに大谷ルールが再現されていないのはどうなのかということで、制作を進めていたんですが、 確認するために公認野球規則を見ると、一応載ってはいるのですが、詳しく書いていなくて(笑)。そこはちょっと作るうえでは苦労がありました。
──現実の野球で実際に適用されるとしたら、大谷選手くらいのものでしょうからね。参考になる具体例がないという。
濱見
そうなんです。“先発投手がDHを兼ねられる”という大谷ルールを実行した場合、その後に交代やDH解除が発生した際にどう扱うのが正解なのか明文化されていないケースもあり苦労したんですよ(笑)。
でも、ゲームとしてはきちんと仕様に落とし込まないといけませんから。ルールを実装したうえでゲームが破綻しないようにする。そこは難しいところではありましたね。
これからもいっしょに“野球しようぜ!
──さて、30周年を迎えた『パワプロ』なのですが、今後の目標はあるのでしょうか。
濱見
新規プレイヤーを今後もしっかり取り入れて、 野球を愛している人も、詳しくない人も含め、「野球ゲームの入り口になるタイトルであり続けたい」というのは我々の共通の想いかなと思います。
ゲームのプラットフォームというのは、時代によって変わっていきますが、つねにその野球を愛している人の生活の中に、『パワプロ』がしっかりと存在し、野球界に貢献して、現実のプロ野球、NPBさんともしっかりとしたパートナーシップを築いていきたいと思っています。
松井
本当に多くのお客様に、より長く『パワプロ』を楽しんでいただくため、我々は日々制作を行っています。『パワプロ』だから実現できるゲームのおもしろさを多くのファンに伝えたいです。つぎの『パワプロ』があるとしたら、多くの人に野球というスポーツ、そしてその魅力を知ってもらうのがいちばんの課題かなと考えています。
いままでのファンの方と、新しくプレイするお客様に『パワプロ』というすばらしいゲームを伝えるにはどうしたらいいかという部分は、いちばんのメインテーマとして考えていきたいと思っています。そして、『パワプロ』を通して、ひとりでも多く野球ファンになっていただけたら、それに勝ることはないですね。
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