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『スター・ウォーズ 無法者たち』「すべてに背景と理由がある。それらが生きたワールドを形成」映画の雰囲気を出すために、あえて古いレンズの効果を再現するなど、世界設計にこだわり抜いた【開発者インタビュー #3】

by坂本ビス太

更新
『スター・ウォーズ 無法者たち』「すべてに背景と理由がある。それらが生きたワールドを形成」映画の雰囲気を出すために、あえて古いレンズの効果を再現するなど、世界設計にこだわり抜いた【開発者インタビュー #3】
 ユービーアイソフトが2024年8月30日に発売予定のオープンワールドアクションアドベンチャー『スター・ウォーズ 無法者たち』。本作は、Lucasfilm Gamesの協力のもと『ディビジョン』シリーズのMassive Entertainmentが開発を手掛ける、『スター・ウォーズ』シリーズ初のオープンワールドゲーム。

 映画
『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』と『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』の中間にあたる時期の銀河の裏社会が描かれ、プレイヤーは悪党ケイ・ヴェスとなって相棒のニックスとともに、銀河でその名を轟かせていくことになる。

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 ここでは、Massive Entertainmentの開発者への全5回にわたるインタビューの第3回を掲載。オープンワールドで描かれる世界、本作のために制作した衛星トーシャーラの制作過程などについて訊いた。

 また、下記の記事や映像を参照しつつ、合わせて読んでいただければ、さらに理解が深まると思う。

・開発者インタビュー 第1回
・開発者インタビュー 第2回
・開発者インタビュー 第4回

開発者インタビュー 第3回:ワールド設計について

Cloe Hammoud氏

アソシエイト ワールドディレクター

Benedikt Podlesnigg氏

アート&ワールドディレクター

――オープンワールドを作る際に、どのような作業から始めましたか?

Cloe
 まず『スター・ウォーズ』を特別なものにしているものとは何なのかと調査しました。視覚的にどう作られているかだけではなく、ジョージ・ルーカスが何に刺激を受けてこの作品を作り始めたのかも含めてです。不朽の名作なので創作の背景を理解したいと思いました。

 クリエイターとして、アーティストとして何がジョージ・ルーカスに影響を与えたのかということです。そしてすぐにジョージ・ルーカスが主要な映画や創作、たとえばサムライ映画、西部劇映画、海賊もの、神話、寓話、伝説に影響を受けていたことに気づきました。これらを総合的に見ることで背景を理解し、私たちの世界観に落とし込むことができました。

Benedikt
 アートサイドでは、自分たちがやりたいと思うことを文書にまとめ、Lucasfilm Gamesに提示しましたが、けっきょくすべてを捨てて、最初からやり直しました。基本に立ち返り、ラルフ・マクウォリー(オリジナル・トリロジーのコンセプトアーティスト)の目線で『スター・ウォーズ』を見ました。多くの書籍を買い、コンセプトアートだけでなく、そこに挙がっていた映画や、当時人気のあったデザイン要素など参考資料も調べました。

 その中には第二次世界大戦時代のもの、スペースファイト、ドッグファイト、飛行機の部品など廃品をベースにしてコックピットを作る技術などがあり、これらを調査しました。その結果、当時の状況にしっかりともとづいたビジュアルを制作する手助けとなりました。

――オープンワールドで描かれるモス・アイズリーやタトゥイーンの砂漠に感動しました。Lucasfilm GamesからCG素材などマテリアルの提供はありましたか?

Cloe
 Lucasfilm Gamesと私たちのコラボレーションは非常に実りあるものでした。Lucasfilm Gamesはつねに協力を惜しまず、私たちの意図を汲んでくれ、アーティストとしてとてもやりやすい環境でした。

 毎週話し合う中で質問に答えてもらうだけでなく、社内データベースにある、映画セットの写真やコミック、書籍、映画の脚本だけでなく、映画から除外されたカットなどを閲覧することが許可されました。好きな時間に観たりして、たとえばキャラクターの衣服、乗り物など刺激になるものを探し、深掘りすることができました。

 タトゥイーンについてはとくに多くのアドバイスを受けましたが、Lucasfilm Gamesは多くの映画にフィーチャーされているこの惑星に対して、私たちが新たに持ち込めるものは何かと意欲的に理解しようとしていました。そこから再びウエスタン・テーマに戻って、本作でプレイヤーがタトゥイーンに降り立った時には無統制な未開拓地への没入感を感じられるようにしました。

 カンティーナではクラシックな撃ち合いがあり、名だたるガンマンの保安官に出会います。これらはすべて西部開拓時代の図式に結びついています。

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Benedikt
 タトゥイーンのカンティーナはとてもいい例だと思います。カンティーナは非常によく知られており、この映画のセットはよく目にします。まずはこのセットのオリジナルの設計図を見て、すべてを計測して正しいかどうかを確認しました。

Cloe
 すべてはインチ単位で表示されていましたが、ヨーロッパではメートル法を使うので、実際に確かめる必要がありました。

Benedikt
 また、セットの構造を示した本があり、屋根を取り除いたカンティーナを上から見ることができます。これらはチームに大きな影響を与えました。多くの小さなイメージから中に入って歩き回り、360度の体験を推定することができます。

 ほかのロケーション、たとえばキジーミについては、映画で宇宙船がキジーミに乗り入れる際に使用した3Dモデルを手にすることができました。このモデルをベースとして環境と都市構築をスタートしました。カントニカについても3Dの映画セット、コンセプトアート、廃棄されたコンセプトアートなどを参考にして刺激をもらいました。そのまま再現するのではなく、私たちならではのものを活かすことができました。

――世界を構築するうえで、とくに注意した点はどこですか?

Cloe
 プレイヤーが探索できる異なる惑星に多様性を持たせることは重要でしたが、それは“スカウンドレル(悪党)ファンタジー”として、またケイとニックスが行動するうえで意味のあるものでなければなりません。そして前提として、ジョージ・ルーカスが確立したものを維持したいと考えています。

 衛星トーシャーラのベースとなっているのは現実のサバンナ地域ですが、独創的な要素を加えています。風によって特殊な地形が形成されているなど、何かこの世のものではない不思議な感覚があります。これが
『スター・ウォーズ』を特別なものにしているのだと思います。

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Benedikt
 どんな場所でどんな空間なのかという明確な意図を持って構築することで、生き生きとした環境にすることができるのです。単なる映画のセットではなく、人がそこに住んでいるという感覚です。そのために多くの時間を費やしました。

 バラエティーを持たせるのは大事ですが、すべてのものについてパーソナリティ-、ムード、トーンなどを設定することで一貫性があり、人々がそこに住んで働いて、人々とインタラクトできる自然な環境が生まれます。

Cloe
 現実世界と同じようにいくつかのルール、ガイドラインを確立しました。たとえば惑星の歴史について。入念なリサーチを行って、各ロケーション、個々の惑星についてワールド・バイブルと呼ばれるものを作成しました。

 そしてこれにもとづいて私たちがルールを理解し、チームとアーティストがその場所のフレームワークを知ってからアイデアを提出することを始めました。私たちにとっては、ジョージ・ルーカスがそうしたようにいくつかのルールを確立することはつねに大事です。

 そこから小さなストーリー、小さな場所を作っていき、最終的に世界全体が生き生きと呼吸をするようになるのです。

Benedikt
 作るものすべての歴史を創造し、それを知り、共有することはとても大事です。過去に何があったのか、プレイヤーが直面することではないかもしれませんが、つながりを作るうえで役立ちます。

 たとえばトーシャーラでは、軌道にある重力流の中でうまく操縦できなかった宇宙船のデブリが空間に浮かんでいます。住民はこれを使って家を建てるので、すべて金属で作られています。

――メインストーリーから外れて、各惑星の探索も楽しめるとのことでしたが。

Cloe
 惑星はそれぞれで環境やビジュアルだけでなく、体験にも多様性を持たせています。タトゥイーンは砂漠の惑星です。アキヴァはジャングル惑星であり、植物が茂る曲がりくねった道があり、探索のしがいがあるでしょう。トーシャーラやキジーミもまた大きく異なります。迷路都市のようなところで階段が多く脇道や裏道があります。

Benedikt
 歩くこともスピーダーに乗ることもでき、それにより体験も違うので惑星の大きさを具体的に言うのは難しいです。宇宙船で飛び立たてば、そこには銀河が広がっています。ひとつの場所ではなく全体を考えるのがオープンワールドです。都市があり、惑星と月の表面があり、宇宙空間があり、それらがシームレスにつながっているのです。

Cloe
 具体的にここは何平方メートルあるかどうかより、楽しいかどうか。プレイヤーがそれぞれ異なる惑星のどこにいるかがわかるようにどんなランドマークが必要なのか。そういったことに注力しています。

Benedikt
 ゲームのロードがなく惑星から空間、ハイパースペース、別の惑星へとシームレスな体験を作ることが非常に大事なのはそのためです。すべてが流れるように進行します。

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――衛星トーシャーラはLucasfilm Gamesと協力して制作したのですよね。どのように制作を進めていったのでしょうか?
Benedikt
 『スター・ウォーズ』にある惑星を調べ、これまでにないユニークなものにしたいと考えました。Lucasfilm Gamesとの話し合いの中で、アンバーリーン(琥珀)の要素を加えました。サバンナの中に琥珀があり、これらつが相互にどう影響するかを考えていきました。

 そして風の要素を加えたのですが、これがすべてを上のレベルに引き上げてくれました。風は地表にあるものすべてに影響します。アンバーリーンは惑星のコアとして形を保っていて岩の割れ目から突出しているので、ビジュアルとしてすぐれています。

Cloe
 風、サバンナ、アンバーリーンという3つの材料からどんな野生生物を作るかを検討しました。惑星に棲む生物はオリジナルであり、この分野でのトップスタジオのひとつであるUbisoft Shanghaiとともに作りました。

 また象徴的なサバンナの植物を取り入れ、強風のインパクトを表現した曲がった植物もあります。住民がどのような暮らしをしているか、建物の傷みや埃など、すべてに一貫性があります。トーシャラに住む人々は独自の衣服を纏い、独自の精神性を持ち、暮らしかたも違います。私たちはLucasfilm Gamesと協力しつつ、自由に惑星を作ることができました。

Benedikt
 トーシャーラの人々は風をおもな原動力としています。ウインド・フィッシングと呼ばれる漁もあります。風の流れに沿ってトラップを仕掛けて、トーシャーラにいる翼の生えたフライヤーという小さなクリーチャーを捕獲します。こうした文化や風習を創造するのも、たいへん興味深かったです。

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――ほかにもオリジナルの生物を数多く制作されたとのことですが。
Cloe
 広範囲な多様性を表現したいと強く思っていました。まったく新しいクリーチャーであるニックスを作ることもできました。かわいいさと奇妙さのバランスが難しかったですが、そこが『スター・ウォーズ』らしいと思っています。

Benedikt
 ほかに、タトゥイーンには(正確な発音はわかりませんが)Bonegnawerという飛行生物がいて、数少ないスケッチだけがあります。このように、私たちはすでにあるロアにビジュアルを載せることをしなければなりませんでした。

 またサンド・リザードのように新しいものを作ることもありました。最終的な名前がどうなるかわかりませんが、これもとてもおもしろい経験でした。

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――ジャバの宮殿のシーンでは、やっぱり落とし穴が作動していて「おお!」と思いました。ということは、穴の中にはアレが……?
Cloe
 ネタバレは避けておきますね(笑)。ケイはタトゥイーンを訪れ、最も悪名高いジャバ・ザ・ハットに会います。宮殿の中には、映画では観られない廊下や部屋などに行くこともできますよ。

Benedikt
 トレーラーにあったようにランコアはゲームに登場しますが、どのように出会うことになるのかは伏せておきます。

――同じくタトゥイーンといえば、サルラックも気になります。フィールドで出会ったり戦ったりすることはできますか?

Benedikt
 ある専門家(スキルを教えてくれる人物)がケイに何かを取ってくるように指示します。トレーラーでサルラックの穴に滑り落ちる場面がありましたが、そこで何か探索することになるかもしれません。

――制作していてとくに楽しく感じたのはどのような点ですか?

Benedikt
 ずっと作りたいと思っていたゲームを作れたことです。幼い頃から『スター・ウォーズ』の中でいろいろなものを作ることを想像していました。本作ではとくにタトゥイーンを探索できることに興奮しました。それに加えて自分のスピーダーがあって、悪党の暮らしをするゲームはこれまでになかったので、とてもうれしいですね。

 
『スター・ウォーズ』ゲームを作る機会があるかどうかも知らず、Snowdrop(自社ゲームエンジン)で『スター・ウォーズ』ゲームを作るとしたらどうなるか、とよくジョークを言っていました。その結果が見られてワクワクしています。

Cloe
 自分たちの作ってきたものを誇りに思っていますし、とても楽しかったので難しい質問です。アソシエート ワールドディレクターとしては惑星やロケーションを作る機会を得たことが楽しかったです。

 プレイヤーがいろいろなものを発見してくれるのを楽しみにしています。自分の仕事でいちばん楽しいのは、現実世界から影響を受けたものを翻訳して変化させ、この世界にない要素を組み合わせてユニークでありながら本物らしいものを作ることです。天候、植物相、動物相、惑星、そしてエコシステムがこのゲームを特別なものにしています。プレイヤーはそれを自分なりの方法で発見していくことができます。

ディレクターではなく、ひとりのプレイヤーとしては、自宅のソファで本作をプレイしたいです。ずっと夢見てきたゲームですから。

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――とくにこだわった点や見てほしい点を教えてください。
Benedikt
 もっとも重要だったのは、ゲームのシネマティックな感覚です。本作はオリジナル・トリロジーの時代設定です。私たちは映画のような体験だと感じるような見た目を再現するために努力しました。

 本作でレンズ・プロジェクトと呼んでいるものがあります。当時、映画を撮影した際に使われたオリジナル・レンズをSnowdropで再現しています。このレンズには被写界深度、背景のボケ味、レンズフレアなどさまざまな効果があり、画面の両サイドに微妙なカーブ(歪み)ができます。

 こうした欠陥は、当時の映画業界では排除したいものでした。しかし、これらの欠陥は独特なテクスチャーを作り出します。私たちが古い映画を見るとこういったテクスチャーをエモーショナルだと感じます。私たちはこれをゲームに取り入れたいと思いました。

 このレンズ・プロジェクトによってオリジナル・トリロジーのような映像を表現可能となりました。ぜひとも、ゲームを21:9アスペクト比でプレイしてほしいです。好みがあるのでワイドスクリーンはオプションとして加え、もちろんオフにすることも可能です。ですがチームの全員が、一度ワイドスクリーンにしたら戻すことはありませんでした。

 私のデスクにあるスクリーンは小さくてワイドにすると一部が切れてしまうのですが、それでも映画のような没入感を味わうことができます。

――世界観制作に携わったおふたりがおすすめする絶景スポットがありましたら教えてください。

Cloe
 本作の世界はプレイヤーに息を呑むようなすばらしい絶景を見せるための目的も持って作られているので、フォトモードを使って象徴的な写真を撮ってほしいですね。

 ニックスを追っていくクエストでは、景色込みでクールな瞬間が訪れる機会があります。また、
『スター・ウォーズ』では大きな難破船も象徴的ですが、メインクエストのひとつにハイ・リパブリック期の大きなクルーザーを調べるものがあります。このようにプレイヤーの前には自分が小さく感じるような壮大な景色が広がることがあるでしょう。

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Benedikt
 私は本作をプレイするときはあちこち出かけて5分に一度はフォトモードを使っています(笑)。時間や天候が自然と変化するので時折、信じられない光景にびっくりします。

 トーシャーラのある海嶺に行くと空に大きな惑星が登り、また夕日に似た日の入りを見ることもできます。遠くに大きな太陽が沈むサバンナ・サンセットのようです。タトゥイーンではある場所に行くとふたつの太陽が完璧に並びます。探索して時間の経過を楽しんでください。

 また、トーシャーラで流れ星を見ると、そこにはクールなランドマークがあり、全体の風景が見られます。パイソンズ・ロックと呼んでいるところがあり、とてもユニークな形をしていて、その周辺にはミステリーや発見がたくさんあります。

――『スター・ウォーズ』映画やドラマ、アニメでお気に入りの作品はどれでしょうか?

Benedikt
 映画では『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』です。『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の浪人のストーリーやビジュアルもとても気に入っています。

Cloe
 ドラマ『マンダロリアン』ですね。『スター・ウォーズ』の異なる側面をマンダロリアンを通して表現しているところ、ディン・ジャリンの旅とさまざまなチャレンジが気に入っています。私たちもこれまでとは違うキャラクターのストーリーを『スター・ウォーズ』らしい形で作ろうとしていたので共感するところが多かったです。

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      集計期間: 2025年04月29日11時〜2025年04月29日12時