『リッジレーサー』30周年記念DJイベントアフターリポート。7年ぶりの開催で豪華絢爛クリエイターが競演【RIDGE RACER NIGHT 2024】 (1/2)

by佐伯憲司

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『リッジレーサー』30周年記念DJイベントアフターリポート。7年ぶりの開催で豪華絢爛クリエイターが競演【RIDGE RACER NIGHT 2024】
 バンダイナムコエンターテインメントのサウンドレーベル“Bandai Namco Game Music”は、2024年7月7日(日)に『リッジレーサー』の30周年記念DJイベント“RIDGE RACER NIGHT 2024”を渋谷・WOMBLIVEで開催した。

 チケットは計2回の抽選販売後、会場レイアウトを見直し、追加発売されるもすぐにソールドアウト。会場には熱心な“リッジサウンド”ファン500名以上が日本全国から参加した。6時間あまり、日常では味わえない貴重かつ良質で高密度なサウンドを体で浴びまくることのできた充実の半日となった。また、来場者にはCD
『RIDGE RACER NIGHT 2024 SPECIAL DJ REMIX』が配布された。

 “Sampling Masters MEGA”、“Sampling Masters AYA”の両名によるDJミックス2トラックが収められたこのCDには、アーケードタイトルのサウンドでまとめられたトラック1と、家庭用ゲーム機用タイトルのサウンドで構成されたトラック2が収録されている。

 とまあ堅苦しく始まったこのリポートだが、まず、参加した方々の生の声(の一部)がXのハッシュタグ(
#リッジレーサーナイト2024)にまとめられている。まずそちらを追ってみてほしい。30年にわたって紡がれてきたクリエイターとファンの思いがダイレクトに感じ取れるはず。

 さらに、このイベントの模様をCD5枚組にパッケージングした
『RIDGE RACER NIGHT 2024 - LIVE REC』が受注生産商品(2024年7月29日23時59分受注締切)として2024年10月末から順次発売される。いますぐASOBI STOREでオーダーしてもらいたい。なので、イベントに参加できた人も、参加しなかった、できなかった人も、ぜひ! 価格は9900円[税込]。

 ぶっちゃけ、このCDを買って、聴いて、楽しんでほしい! その価値のあるイベントだったから! というのがこのリポート記事の趣旨だ。
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 以下、少々本シリーズの音楽イベントを振り返るところから今回のイベントの模様まで、いくつかの話題をリポートしていく。歴史あるシリーズだけに、書き手の理解を越える熱心なファンの方々が多いと思われるので、そんな方は読み飛ばしていただいてもオーケー!

 さて、
『リッジレーサー』シリーズ関連の音楽イベントととしては、今回で4回目となる。

RIDGE RACER NIGHT
  • 2012年3月3日開催
  • 会場:渋谷・Vuenos

RIDGE RACER NIGHT 2
  • 2014年6月15日開催
  • 会場:渋谷・amate-raxi

RIDGE RACER FES 2017
  • 2017年6月11日開催
  • 会場:渋谷・clubasia

 プレイステーション Vita版『Ridge Racer』の発売を記念しての販促イベントとしてスタートした“RIDGE RACER NIGHT”は収容人数を増やしつつ、シリーズ20周年記念、さらにフェス形式の有料イベントとして規模を拡大してきた。しかし、コロナ禍により急ブレーキをかけられ、イベントの再開は開催条件が緩和されるのを待たなければならなかった。

 その後バンダイナムコエンターテインメントのサウンドレーベル“Bandai Namco Game Music”が2023年に開設され、2024年3月より
『リッジレーサーズ オリジナルサウンドトラック』がサブスクリプションサービスやiTunes以外の配信サービスにも幅広く展開された。

 そして初代
『リッジレーサー』を手掛けた細江慎治氏、佐宗綾子氏が率いるレーベルSweepRecordから、歴代シリーズコンポーザーやホットなリミキサーによる30周年記念REMIXトラックを集めたCD2枚組アルバム『RIDGE RACER REMIX -30TH ANNIV. SOUNDS-』が2024年7月に一般販売されたことをきっかけに、両レーベルが協力し、“RIDGE RACER NIGHT”が“2024”と題して7年ぶりに復活したのだ(シリーズイベントとしては3年ぶり)。
“RIDGE RACER NIGHT / FES”の動画(電音部チャンネルより)
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目次

歴代のアーケード筐体がサブフロアに勢ぞろい!

 今回、“RIDGE RACER NIGHT”で初の施策として、千葉県松戸市にて限定営業している“バックトゥザアーケード”(BTTA)の協力により、『リッジレーサー』と『リッジレーサー2』、『レイブレーサー』に『ポケットレーサー』を加えた、シリーズ4タイトルの筐体がサブフロアに設置された。

 古いものは製造後30年にもなる貴重な筐体ばかりで、補修パーツの確保やメンテナンスも難しくなり、コンディションの維持はきびしい状況だが、BTTAの熟練スタッフに加え、アーケード基板の修理で豊富な経験を持つ“スタジオたからのす”の協力もあり、全台無事良好な状態での稼働を実現。来場者はもちろん、出演者も空き時間にプレイして盛り上がっていた。

 また、歴代ナムコアーケードタイトルをNintendo Switch/プレイステーション5/プレイステーション4に移植している
『アーケードアーカイブス』(アケアカ)を展開しているハムスターもイベントをスポンサード。フラワースタンドが入口に飾られ、来場者にアケアカラインアップカタログがプレゼントされていた。また、ゲーム周辺機器を多数開発・発売しているホリも協賛メーカーとしてステージで紹介され、来場者やX向けに周辺機器のプレゼント施策が実施された。

 なお、Xのリポストキャンペーンは2024年7月29日23時59分まで実施中だ。
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リッジサウンドの深堀りが進み、アルバムやイベントにも活用されていた

 海外で2022年に発売されたArcade1Up『Ridge Racer Arcade Machine』にはバンダイナムコ研究所の協力のもと『リッジレーサー』、『リッジレーサー2』、『レイブレーサー』、『エースドライバー』、『エースドライバー ビクトリーラップ』(いずれもアーケード版はシステム22を使用)が収録された。この際、各サウンドトラックのサンプリングデータやシーケンスデータ、ボイスデータなどが調査、提供されており、30周年記念アルバムに収録された音源や今回のイベントにも活用されている。

 ちなみに時代をさかのぼると、こうした取り組みは『リッジレーサーズ』(PSP)の制作の際にも行われている。過去作のサウンドデータの権利関係の洗い直しとともに、音源データが発掘された。C352(アーケード版PCM音源IC)用に当時のROMに収められた音源データは、現在に比べると圧倒的に小さな容量のサウンドROMに収めるために、サンプリングの際にもととなる音やボイスを倍速で録音し、ビットレートを落としたデータを再生するなどの工夫がなされていたことがわかっている。

 熱心なゲームのファン、サウンドのリスナーはもちろん、クリエイターにもリミキサーにも根強い人気を誇る本シリーズは、データの発掘が行われ、いまに合わせたコンテンツとして実績を残し、このイベントの開催にこぎつける動機付けにつながったのだ。

イベントリポート……参加することで完成する、リッジサウンドの新たな境地!

 さて、今回のイベントに登場したメンバーは以下の通り。

出演DJ(以下敬称略)
  • Sampling Masters MEGA [SuperSweep]
  • Sampling Masters AYA [SuperSweep]
  • sanodg [DETUNE]
  • J99
  • Hiroshi Okubo [Bandai Namco Research Inc.]
  • ミフメイ [Bandai Namco Studios Inc.]
  • Sho Okada [Bandai Namco Studios Inc.]
  • Spinnage
  • 永瀬麗子

出演VJ(以下同)
  • KAZUMiX [1st-impact]
  • DeLPi
 以上の豪華メンバーに加え、バンダイナムコスタジオのオリジナルキャラクター“ミライ小町”による会場アナウンスでオープニングタイムがスタートした。

 ここからは各ステージのリポートに加え、ステージを降りたDJの皆様にインタビューを行ったので、その模様もいっしょに楽しんでほしい。
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Spinnage……ゲームの作り手からコンポーザーへ進化したクリエイターがオープニングを飾る

 最初にステージに立ったSpinnageはXでの予告通り『スターブレード』の『Prologue to STARBLADE』からオープニングタイムをスタート。ゆったりとしたシンセサウンドとオペレーションボイスが会場を包み込むように流れ、“RIDGE RACER NIGHT 2”もこの曲で始まったな……と筆者は昔を思い出していた。

 しかしここからが違った。当時はプライベートでDJイベントに参加していたSpinnageは、いまや数々のハウスナンバーをみずからクリエイトし、海外のレーベルでリリースするコンポーザーに進化していた。「RIDGE RACER!」などのゲーム中ボイスを要所で絡めながら、自身のオリジナルナンバー
『Transfer』、『Puddles』、『Hypnotized』など5曲が立て続けに軽やかに涼し気に紡がれているあいだ、フロアは人で埋め尽くされていき、早くも準備は万端といった空気が感じられた。ラストはシリーズ30周年記念アルバムからみずからがリミックスした遊び心満載のナンバー『Game over (Spinnage It Ain't Over Remix)』をプレイ。数多くの拍手とともに締めくくられた。
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Spnnage直撃インタビュー!

――心臓の鼓動のような心地よい低音のリズムに、フロアも徐々にテンションが上がっているように見えました。レースで例えるなら、タイヤを温める決勝戦のフォーメーションラップのような……。かつてシリーズに作り手として関わられていた人が、いまやコンポーザー&DJとしてイベントのオープニングに関わられていることが個人的に感慨深かったです。

Spinnage 
すごかったです。本当に楽しかったですね。30分は意外と瞬間で終わっちゃった。皆さんの顔や表情がステージの上から見えて、フロアの景色もすごかったし、反応が見られてうれしかった。

 神々たち(本編出演者のこと)がこの後DJしますけども、その神々もこのイベントのためにめっちゃ考えてるんですよ。神々は30周年記念アルバムに新しい曲を提供してくれて、さらに考えて準備してこのステージに臨んでいるんです。だから僕もこの1週間、ずっと家でリハしていました。そこでボイスネタを使おうと思いついて、急遽機材を用意したんですよ。

――あれはクリエイターだなと感じさせる仕掛けでした。あのボイスが体に刻み込まれているんだな、『リッジ』のイベントなんだなとテンションが上がりました!
※オープニングタイムのSpnnageのDJプレイは『RIDGE RACER NIGHT 2024 - LIVE REC』には収録されません。[IMAGE]

永瀬麗子……いまを体現する姿でイメージキャラクターがサプライズでDJプレイを披露!

 ほどなくスクリーンに浮かび上がるように姿を見せたのは、真っ白なタイトスカートのワンピースに赤い三角が並ぶ『レイジレーサー』からシリーズのイメージキャラクターのひとりとしてたびたびオープニングやエンディングムービーなどに登場してきた永瀬麗子。

 オープニングタイムの可憐なサプライズに、会場からは大きな歓声が上がった。3Dモデルデータは、
『レイジレーサー』で彼女を生み出した有限会社ケイカの由水 桂(よしみず けい)氏がこのイベントのために『リッジレーサー7』以来、久々にモデリング&リギングを手掛けた最新作!

 両腕まですっぽりと覆われたまばゆい反射光のサテン的素材と組み合わされたブランニューかつ『R4』を思い起こさせる意匠(スタイリングのバリエーションは数々のゲームにいくつか登場している)のスリムなスタイルにメタリックなヘッドフォンを装着した彼女が、バンダイナムコ研究所の技術“ELMIRAIVE AX”でリズミカルに躍動する姿に思わずため息が出てしまう。

 なお、システムへの組み込みはバンダイナムコ研究所の大久保 博氏が手掛けたとのこと。

 セットリストは歴代シリーズナンバーはもちろん、『R:RACING EVOLUTION』、『鉄拳2』、電音部のアキバエリアから東雲和音(声:天音みほ)、『パックマン チャンピオンシップエディション』とバンダイナムコサウンドを手掛けてきた実力派クリエイターによる多彩かつ緩急の感じられるトラックのチョイス。

 そのおいしいところがウォーミングなWOMBLIVEのぶアツいスピーカーから飛んでくるのだからたまらない。まだオープニングタイムだというのに、テンションはすでにレッドゾーンの様相を呈してきた。そしてラストトラック
『Planet (Select Screen Edit)』から「RIDGE RACER!」のボイスの響きとともにオープニングタイムは幕を閉じた。
※オープニングタイムの永瀬麗子のDJプレイは『RIDGE RACER NIGHT 2024 - LIVE REC』には収録されません。[IMAGE][IMAGE]

Sho Okada……「リッジサウンド最高!」と声が出てしまう「好き!」が詰まったステージ

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 「3、2、GOooo!!!」のカウントダウンのVJとともに、イベントが本格的にスタート。トップバッターのSho Okadaがブースに立つと、いきなりひずんだエレキギターのイントロから始まる『SAMURAI ROCKET』が! モチーフのひとつ『源平討魔伝』の平景清による「必・殺・旋風剣!」のリフレインからの「いやあー!」のボイスのリピートとともに観客も声を上げる。

 続いても『リッジレーサーV』から
『TuiTui』、そしてPS Vita作品から『Future Driven』と新しめのテンションアゲアゲにならざるを得ないトラックを連発し、『R4』から『Your Vibe』、さらに『リッジレーサーズ』の『Motor Species Remix』、『Synthetic Life』とファンの心に深く刺さった容赦ないセットリストで攻め込んでくる……と思えば『HURRICANE HUB』でPS世代のファンにも爪痕を刻んでくる。ほかにも電音部の『麻布アウトバーン』でちょっとした遊びの要素を取り入れながらも『R4』の『Move Me』など、ああもう降参……というトラックが続く。

 最初からこんなテンションで立ちっぱなしで最後まで持つのだろうか? などと考える余裕すら与えてくれない、リッジサウンド愛が詰まったステージだった。
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Sho Okada直撃インタビュー!

――まずはご感想をお願いします。

Sho Okada 
僕は『リッジレーサー』で『Rotterdam nation』に出会って、そこから始まったんですよ。紆余曲折ありましたけれど、バンダイナムコスタジオに入らせていただいたのもこのシリーズのおかげです。今回、30周年記念アルバムでもリミックスで参加させていただいて、ステージにも呼んでいただけて感無量と言いますか……。

――ファンの立場からクリエイターになられたShoさんによる、本日のセットリストは?

Sho Okada 
僕もファンなので、僕が聴きたい曲はファンの方も聴きたい曲じゃないか、それとこれからステージに上がられる歴代クリエイターの方々のセットリストと被らないかどうか、いろいろ避けながら……。歴史も長いので、自分が生まれる前の曲もあったりして、過去のトラックを聴き直したりして魅力を再発掘しながら取り入れたりして……悩んで決めていったところがありますね。『R4』とか自分的にも刺さる曲が多くて……。

――まさに世代なんだろうなというお客さんから歓声が挙がってましたね。

Sho Okada 
僕が好きな曲なので、その辺は狙って入れました。何をかけても盛り上がるといいますか……自分のファン精神にお客さんもノッてくださったのはうれしかったですね。最近のバンダイナムコスタジオのサウンドは皆さんおしゃれになってきているので、僕は『リッジ』の楽曲に込められたある意味おバカなところを受け継いでいきたい、という思いを新たにしました。
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ミフメイ……リッジサウンドといまのバンダイナムコサウンドの特異点(?)を深掘りしたステージ

 続いてのステージはミフメイ。『R:Racing Evolution』から『TIME COMPRESSION』、『学園アイドルマスター』(学マス)から『Fluorite』、『鉄拳8』から『Back to Kids』、さらに電音部から『Catch a Fire (Mitsunori Ikeda Remix)』、そして『DEEP RESONANCE』と、『R:Racing Evolution』を挟んでドラムンベースつながりという尖ったチョイスで始まった。

 リッジサウンドをメインに聴きに来たオーディエンスにも、同じジャンルの曲の間に“いま”のバンダイナムコサウンドの新鮮なナンバーをマシンガンのようにフロア叩き込むという構成は、クリエイターとしてのミフメイをさらけ出すような、あいさつの意図があったのかもしれないと筆者には感じられた。

 そこからもシリーズナンバーに挟む形で『学マス』から
『Fighting My Way』、『Tame-Lie-One-Step』、『鉄拳8』から『パックマン』、『ゼビウス』などのサウンドを巧みに組み込んだ『GameChanger』を織り交ぜつつ、自身が手掛けたリミックスナンバー『RARE HERO (ミフメイRIMIX)』も披露し、“クラブイベントというものは、新しい曲との出会いの場でもある”と観客を導くような構成を展開。

 ラストは
『いただきバベル (Prod. ケンモチヒデフミ)[Massive New Krew Remix]』からバンダイナムコレジェンダリーIPやクラブ・サウンドともかかわりが深い電音部ナンバーの4連発という、これまた意外な展開でステージを締めくくった。これはいまのバンダイナムコサウンドを知っている世代にリッジサウンドを紹介し、知らない世代にはいまもリッジサウンドの志が引き継がれていることを示したようなステージだった。
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ミフメイ直撃インタビュー!

――今回のミフメイさんステージのテーマを教えてください。

ミフメイ 
いままでの『リッジ』の歴史のコアの部分は諸先輩方がやってくださるので、そこも入れつつ、自分なりのコアな部分を入れて、差別化しようと考えました。

――リッジサウンドにはインスト曲が多いなか、ミフメイさんのセットリストには電音部や『学マス』などのボーカル曲も積極的に入っていたのに、聴いている自分には驚きとともにすっとなじめたのが新しい発見でした。

ミフメイ 
自分がやりたいところと、お客さんが聴きたいものはどこかで合致しているところが必要だと考えて、それはキャッチ―なものというテーマを担保するということで、自分の武器でもありつつ、お客さんの聞きたいものと合致するものを組み込めたらいいなと考えながらセットリストを組んでいきました。

――曲と曲のつなぎがとてもきれいで、空気が変わった感じが自然に感じられて驚きました。それは組み立ての妙なんでしょうかね?

ミフメイ 
それはうれしいですね。自分で実際につないでみて、気持ちいいなと思えるように共通項を考えていて。たとえばドラムの音色が近いとか、ボーカルのサンプリングが入っているとか、それがもしかしたらきれいにハマっていただけたんだとしたらうれしいです。

――ナムコサウンドらしさというのは、世代交代をしていくなかでどんどん変わっていきつつも、何か共通したものを感じるんですが、その秘密は何なんでしょうか?

ミフメイ 
キャッチ―さは担保しているなと意識していて。奇抜なジャンルやチャレンジはしていても、ゲームサウンドだったら企画(ゲームの企画担当のこと)が求めているものを守りつつ入れられているということがクリエイターの使命だと個人的に思って心がけていることですね。諸先輩たちが自分たちの音楽性を確立しているなかで自分たちなりに新しい何かを提示しないと、いる意味がなくなってしまうので。

 お客さんが求めるものにがっつり寄り添っていると、何も新しいものを提示できないのも……。1曲でも好きになってくれる曲があればオーケーだと思っています。30周年記念アルバムの企画に呼んでいただけたのも、そういった新しいところを求められているんだなと思いましたので。

――新旧ナムコサウンドの競演に違和感がなくて不思議な気分でした。

ミフメイ
 今日かけた電音部の曲にも、多分ナムコ時代の曲に影響を受けているんだな、サウンドが好きなんだなと感じられる要素があるものを選んだんですが、それが意外とつながりやすかったりしましたね。それがひとつの理由かもしれないです。
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sanodg……『RARE HERO』を深掘りして発見された三三七拍子のフレーズ! を実演、秘められた謎を解き明かした(?)ステージ


 DJイベントだというのに、毎回軽妙かつテンポよく展開するプレゼンテーションのようなトークで笑ったり感心したり勉強になったりと、とにかく異彩を放つ(といってもリッジサウンド関連イベントのみならずVRゴーグルを使ったステージングでおなじみといっていいだろう)、sanodgステージ。

 今回は、自身がコンポーザーとして書いた『RARE HERO』からサルベージされたデータを深掘りしてしていくなか、自身も「なぜこのフレーズを入れたのか記憶が定かではない」という高校野球での応援団などで有名な三三七拍子のリズムをテーマにステージが展開された。
『Rarehero』(ラレヘロ)Tシャツもしっかり仕込んでの登場だ(笑)。

 ステージの内容をすべて書き起こすのは、どうあがいてもそのおもしろさがほとんど伝わらないと思うので、当日会場に来られなかった方や気になる方はぜひライブ盤を買って、いっしょに三三七拍子をやってみてほしい(ダイレクトマーケティング)。多分、おそらく「なるほど!」と思っていただけるはず。

 それから、音を中断するタイミング、そしてトークからBGMを実演するタイミングのテンポのよさは特筆に値するものだったということも改めて記しておきたい。トークステージにリズム感を感じさせる、サウンドクリエイターらしい独特のスピーディさが心地よい、というのが個人的な発見だった。

 ということで、
『RIDGE RACER REMIX -30TH ANNIV. SOUNDS-』に収録された『RARE HERO FOREVER』のベースパートなどが何度も流され、フル尺でフィニッシュ。さらに『リッジレーサー』シリーズの楽曲をリミックスしたゲームミュージックアルバム『リッジレーザー』から『Grip』をアレンジした『Had Gripped』がさりげなく流されたことをここに記して、リポート後半へと続きたい。
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sanodg直撃インタビュー!

――『RARE HERO FOREVER』を作る過程を振り返るプレゼンテーションのようなステージングは、奔放にやっているように見えてじつは相当計算されたものなんじゃないかな? と感じたんですが。

sanodg 
『RARE HERO FOREVER』はこんな風にやりたくて作った面もありますんでね、そういってくださるととてもうれしいんですが、DJソフトではなくDAWでその場で演奏しているので、すぐに音が出なかったりとかで、けっこう失敗してますよ(苦笑)。

――リスナーの勝手な解釈ですけれど、sanodgさんの曲をこうして手ほどきしてもらうと、音楽に詳しくなくても、sanodgさんの世界ってこうなんだと感じとれるんですよね。

sanodg 
自分には自覚がないんでね。だからおもしろいんでしょうね。きっとね。

――過去の“RIDGE RACER NIGHT”でトークDJとしてすっかり確立された芸風がお客さんにも浸透した感じもありますよね。sanodgステージになると、フロアが柔らかくて暖かい空気に包まれるといいますか。

 しかもどんどん期待値もあがっているのに、笑いに包まれるステージがとても楽しみになっちゃってるんですよね。サブベースのカッコよさをその場で流してくれたり、本当にわかりやすい。

sanodg 
お客さんといっしょに、「この音いいじゃん」って投げかけて「いいね!」って共感してもらえることに尽きますね。

――sanodgさんのステージって、「楽しい!」が共感できる話題が多くて。今回の「三三七拍子」も学生時代を思い出したりして楽しくなりました。『リッジレーサー』チームへの大好きが詰まっている感を30年供給してくださる。

sanodg 
とにかくナムコ時代が楽しかったというのは大きいですよね。あのフレーズも当時曲を作っているときに入れたものだと思うんだけど、ぜんぜん覚えていなかったんですよ。30周年記念アルバムのリミックスを作るときも素材をトラックに全部並べてから音を削っていったんですけれど、その中で「なにこれ?」って気づいて。思い出せないけれど、でも楽しいなって。これをソロに使おうと。

 それで今回のステージ用にWOMBみたいな大きい箱でみんなと聴いてみたいなと。単音を大きい箱で聴く機会ってなかなかないんで。

 それと、このイベントでバラバラにパーツごとに流した曲を、30周年記念アルバムで聴き直すお客さんにはある種バイアスがかかるじゃないですか。それが楽しみですね。空耳アワーみたいにね。今日を境に聞こえかたが変わるというのを体験してもらえたらいいですね。自分もそういう聴きかたが好きなんで。ぜひ。
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