
この勢いに乗ってKONAMIとしてはある意味で本丸と言えるゲーム版、『シャインポスト Be Your アイドル!』がリリースされる……と思いきや、数年にわたって新情報は公開されず。そして月日は流れて2025年1月、対応プラットフォームがモバイルからコンシューマー機へと変更されることが発表されたのです。
アイドルたちが輝く場所として、なぜこの未知のゲーム機が選ばれたのか? そして、長らく大きな発表のなかった『シャインポスト』がいま目指そうとしていることは何なのか? プロデューサーを務める石原明広氏に聞きました。
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石原明広 氏(いしはら あきひろ)
コナミデジタルエンタテインメント所属、メディアミックス作品『シャインポスト』プロジェクトプロデューサー。『Elebits』、『ラブプラス』、『ラブプラス+』などのタイトルではディレクターを担当。(文中は石原)
“終わりが来ない”ゲームから“夢破れて引退”などの結果がプレイヤーの育成・経営に委ねられるゲームに
一言でいうとそれはやはり「アイドルとしての何らかのゴールを描きたい」。そういう思いを持ち続けていました。さらに昨今のスマートフォンアプリ市場の変化などを始め、いくつかの判断材料が出てきた状況でプラットフォーム変更をするにいたりました。
――対応プラットフォームにSwitch2を選んだ理由は何でしょうか?
スマートフォン向けに開発している段階から本作のライブシーンは、アイドルの成長度合いによって多種多様な変化がリアルタイムで起きる仕様だったため、ある程度の性能が必要でした。Nintendo Switchでもテストしてみたのですが、シェーダーなどを簡素にしても思ったような描画スピードが出ず、あらゆるグラフィックをデータから作り直す必要があったんです。
けれど、Switch2の性能であればモバイル版で考えていた以上のグラフィックが表現できる。ローンチに間に合わせるならば限られた期間で作り上げなければならないというミッションでもあったので、これまで作ってきたデザインアセットを大きく変えることなく持って来られるというのもSwitch2の利点でした。
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ゲームクリアーの概念がある買い切りゲームは育成や成長が手段となり、“アイドルの夢の実現がゴール”のゲームデザインになりました。これによって、困難に対峙して成長していくシナリオから、夢が叶う/叶わないの状況・結果に対してプレイヤーの価値観が問われるシナリオにゲームとしての軸足を変更しています。
――本作は“アイドル育成”と“事務所経営”がミックスされたゲームになるとのことですがこのふたつはどのように絡んでいくのでしょう?
アイドルはどんな環境でも自分の夢のために努力は惜しまないのですが、育成施設やアイドルの成長を育む環境が整っていくことで、アイドル自身の努力が実る効率や確率が高まる、というような仕組みにしています。
また、今回のシステムのポイントは育成(≒夢)と経営(≒現実)の2軸があることで、プレイヤーの価値観が問われるように絡んでいます。アイドルの“夢”を叶えるには、アイドルの成長や活躍に振り切った事務所運営をするほうが有利です。しかし、プレイヤーの立場は経営者。あまり肩入れをし過ぎると、経営バランスを欠きゲームオーバーである赤字倒産になりかねません。かといって“現実”の経営優先で進めると、夢が遠のくアイドルたちは不安を抱くかもしれません。
アイドル育成と事務所経営における利害関係のズレが、プレイヤーの価値観を問うシステムの根幹になっています。
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けれど、アイドルは1年ごとに二期生、三期生と採用していくことになり、アイドルたちががんばった結果は事務所に寄与していきます。本作の大目標は“5年以内に武道館にいく”ことなので、一期生や二期生にがんばってもらえば、三期生が武道館に到達するのは、じつは初心者であってもそこまで難しくありません。
ですが、3年で武道館に到達できなかったアイドルは“引退”しなくてはいけないので、一期生や二期生には悲しい思いをさせてしまうことになります。本作はマルチエンディングを採用しています。トゥルーエンドの条件はまだ内緒ですが、やはりアイドルを誰も泣かせることなくこの難題をクリアーすることはとても重要な条件になってくるわけです。
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未熟なアイドルの“ヘタ”なパフォーマンスの表現に最新“AI歌唱ライブラリ”技術を活用
武道館への道のりにおいても少しずつ大きな規模のライブができるようにクラスアップしていくことが重要なのですが、クラスアップしていくにはライブを成功させなくてはならず、それはつまり会場に来ている多彩なファンを楽しませる必要があります。そのためには適切な歌唱曲を選ぶ必要もありますし、会場のサイズが大きくなれば、来るファンも多くなり、よりバリエーション豊かなライブを求められます。
つまりより多くの楽曲数、セットリストも重要になります。ダンスナンバーのように体力を必要とするものや、表現力を必要とする楽曲を組み込もうとしても、アイドルにそこまでやりきれる体力が備わっていないと、ミスを連発し、結果的にライブを成功させることは難しくなってしまいます。
十分な育成が成功してアイドルが成長すると、ミスが減って歌も上手くなっていく、というのは後述の“歌唱AI”の採用によってライブシーンで実感できることでしょう。
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全曲、歌唱ポジションを全アイドルから組み合わせることもできます。歌割りも楽曲ごとにかなり複雑に作られているため、リアルなアイドルユニットのような歌割りと、CRE8BOYさんによる素晴らしい振り付けのフォーメーションダンスがお楽しみいただけます。
歌唱ポジション変更の自由度が高いため、あらゆる組み合わせで歌唱パートを歌えなくてはいけないこともあり、専用にディープラーニングしたAI歌唱ライブラリを作りました。育成が進んでいないとアイドルはライブでミスをすることが多くなりますが、そうするとピッチを外したりテンポがズレたり、ビブラートやロングトーンがうまく使えなかったり……そうした歌唱になります。
しかし、育成が進むとミスも減りそれらは改善される、という育成表現がされています。
生歌の歌唱でそれらを表現しようとすると収録にとんでもない時間がかかるため、ライブシーンは歌唱ライブラリの採用ならではの仕様になっています。AI歌唱と聞くと品質に不安を持つ人もいるかもしれませんが、じつは弊社から先行して『LAUGH DiAMOND』(※)というAI歌唱ライブラリを発売しており、その技術の一端は公開済みです。ご興味があればぜひサンプルなども聴いてみていただきたいです。
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アニメでは螢のライブを見た春たちがアイドルを志しますが、本作ではプレイヤーがアイドルの夢を支えるためのアイドル事務所経営者になることを志します。螢のシーンで聞こえる雑踏の声の中に、どこかで聞いたことがある声も混ざっているかもしれません。
また、小説やアニメの『シャインポスト』を好きでいてくださる方のために、“ヒロインストーリーズ”というフルボイスのストーリーモードを用意しました。メインモードはifの世界線ですので公式ユニットは登場しないのですが、このヒロインストーリーズでは原作の設定に準拠したお話が、各ユニットからひとりに焦点を当てて、つまりヒロインたるその子の目線でユニットの物語が語られます。
ボリュームのあるストーリーの実装は相当な作業量だったのですが、チームが本当に気を吐いてくれて、1話まともに音声を再生すると8時間近くはかかる物語を4話も実装してくれています。
――単純計算で32時間!
――原作小説の発売やアニメ版の放送当時から現在まで、アイドル業界のトレンドの移り変わりにともなって意識的に調整したポイントがあれば教えてください。
本作ではそういった部分も描きます。さまざまなアイドルの多種多様なゴールを描いています。これは当初のモバイル版の企画にはなく、その時点からさらにアイドルシーンが変化していったことで描こうとなった部分です。
――最後に、ゲーム版『シャインポスト』で表現したい“アイドル像”は、どういったものですか?
仮に外見やスキルだけが至上の基準なのであれば、ここまで多様なアイドルたちが活躍する文化は育ってないでしょう。前述しましたが、アイドルの生き様や在りかたがひとつ象徴的に現れるのはやはり大きな区切りを迎えたときだと思います。何かの目標を達成したときや、引退などさまざまですが。そうしたアイドルのありようそのものをゲーム版では、より重要なテーマとして扱っているかなと思います。
――大きなライブや引退の瞬間に、アイドルとしての“在りかた”がひときわ大きく輝く……。