強盗をテーマにしたFPSという特異なジャンルを生み出した『 PAYDAY 』シリーズ、そしてハードコアな協力型サバイバルホラーを演出した『 GTFO 』を手掛けるスウェーデンのゲームスタジオ10 Chambers。彼らが新たに送り出すのが、 『PAYDAY』と『GTFO』 の魅力を併せ持つ近未来SF強盗FPS『 Den of Wolves 』(デン・オブ・ウルブス)だ。 2025年3月に 『Den of Wolves』東京メディアツアーが行われ、実際のゲームプレイに加え、制作陣みずからによるプレゼンテーション。そしてメールインタビューに答えていただいた。ここでは、その模様をお伝えしていく。 VIDEO
人間の脳に“ダイブ”する高度なSF設定と戦略的FPSの融合 『Den of Wolves』は2097年という近未来を舞台にしたPvEタイトルで、最大4人で遊べる協力型のFPS。内容は妨害工作や目標の奪取、重要人物の暗殺など、さまざまな目標の中からひとつを選択し、ステージにあるターゲットを回収もしくは暗殺をし、脱出するまでをワンセットとしたタイプのゲームだ。
高度に発達したAI技術によるサイバー攻撃によって世界的なパニックが引き起こされ、情報への信憑性がなくなってしまった2030年。それから5年の月日が流れ、とある企業が人間の脳を大容量かつ秘匿性の高い記録媒体として利用する技術を開発したことで、情報に信頼性のある世界有数の都市ミッドウェイ・シティが誕生することになった。 そして2097年。ミッドウェイ・シティはさまざまな企業がひしめき合う大都市になっていた。安全だと思われていたミッドウェイ・シティだが、人間の脳による情報の秘匿性を盾にあらゆる企業が裏で悪事を働いている状態。競合他社のこの都市で生き残るには他社の悪事を公に晒すという悪意が悪事を処すという世界で、その汚い役目を担うのがプレイヤーという設定だ。
『PAYDAY』では銀行や宝石店などに強盗しにいくことが基本だったが、本作では大企業に秘匿されている情報や重要人物の暗殺がおもな仕事になる。その過程で、記録媒体として活用されている人間の脳にアクセスする“ダイブ”が重要なシステムとなっていることが語られた。
協力が必要不可欠なハードな生存戦略 設定こそ2097年と遠い未来だが、武器はどのFPSにも登場するようなオーソドックスなアサルトライフルやサブマシンガンなどが装備可能。これに加えひとつの特殊なガジェットを装備していくのだが、プレイヤーには時間経過で自動回復する簡易的なシールドこそ装備されているものの、ひとりで正面から敵をなぎ倒してターゲットに近付けるような単純なゲーム性ではない。
まず体力回復や残弾補給の手段が限られており、これらの物資をチーム全員で分ける必要もある点。ミッションやステージにもよるが、敵がつぎからつぎへとやってくるため、長引くほど徐々に疲弊がかさんでいくことなどが挙げられる。仲間どうしで射線や死角をカバーしあい、協力が最適の戦術と肌で感じた。 とくにターゲットに近付くにはメンバー全員が特定のサークルに留まる必要がある扉や金庫へのアクセスなどもあり、チーム全員が助け合って進むことの重要性もいたる所に存在する。 基本的には敵に発見されないようにステルスで動き、やむを得ず戦闘になったら障害物に身を隠しながら戦闘していく。金庫はドリルで開けるので作業時間を要するなど、 『PAYDAY』に似たフェーズも存在している。目標を達成したら全員でお金が入ったカバンを背負って脱出するところまでいっしょだ。
またミッションにはMain heist(本番)とPrep missions(準備)があり、準備ミッションでの状況が本番に影響を与えるシステムがおもしろい。たとえば、チーム全員がステルス重視の装備でミッションに挑んだ場合、マップがステルス用マップに切り替わり、そのルートでしか出現しない金庫が開けられるという変化が発生する。 実際のゲームでは準備と本番は連続していないので、合間にゲーム内/オンライン通話などで入念な作戦会議が行える。体験会ではよりリアルな強盗FPSを演出する目的もあってか、本番ミッションに挑む前に対象ミッションの敷地図を用意して、侵入ルートや全体の流れを書き込んで確認するブリーフィングが行われた。ゲーム内には簡易マップがないのもあり、実物の敷地図で建物の全体の構造を把握でき、初回から動きがスムーズだったのは効果を感じられて印象深い体験だった。
ひとつだけ装備できるガジェットには設置式の簡易シールドやセンサー式の地雷などがあり、これらは回収することで再利用できるため、とくに戦闘には欠かせない。なかでもシールドは敵の攻撃を防ぎ、味方の攻撃は通すというかなり強力なアイテムで、ミッション終盤の敵のラッシュにはお世話になった。 肝心の“ダイブ”が絡んだミッションでは、厳重にロックされたゲート内にいる人間の脳にアクセスしなければならず、まずゲート解除のためのセキュリティキーを複数探すことから始まった。どの金庫にセキュリティキーが入っているか不明ななか、ひたすらに金庫開けと敵の襲来をくぐり抜け、ようやく“ダイブ”に成功した先に待っていたのは奇妙な空間だった。
上下左右もむちゃくちゃなルールの世界。まさに記憶の断片のような足場と呼んでよいいのかすらわからない物体をひたすら渡っていく。ちょっとしたパルクールの時間と表現だ。落下すると“ダイブ”のスタート地点からやり直しになるが、制限時間内に誰かがゴールにたどり着かなければならず、またこの“ダイブ”を複数回こなすことでようやくデータの収集が完了するというもののようだった。 今回は真っ赤な空間に漂う奇妙な足場を渡っていく人間の脳内だったが、後述のインタビューでは「ノルウェーの森でモンスターに追いかけられる」とあるように、“ダイブ”する対象によってさまざまな空間を見せてくれるのはおもしろそうだ。戦いの緊張感とはまた別の好奇心が湧いてくる。
ひと筋縄では行かない難度で、プレイした際は敵のラッシュに耐えられずミッションを1度失敗してしまった。作戦を練り直し、仲間どうしで声を掛け合いながら2回目はしっかりクリアーできた。ミッションのおおよその流れがつかめているほか、武器を装備し直したことも功を奏したのではないかと思う。 通してみると『PAYDAY』のルールを基盤に、『GTFO』のハードさを加えた、継承者とも言えるようなタイトルだと感じた。正式リリース日は未定だが、アーリーアクセスでそのおもしろさを肌で体感してほしい。最新情報を見逃さないようにウィッシュリストにも追加を忘れずに。
【開発者インタビュー】核となるのは“ダイブ”。プレイヤーをあらゆる場所やシチュエーションに誘うことができる インタビューに答えていただいたのは10 Chambersにてゲーム開発のほか、作曲家としても活躍しているサイモン・ヴィクルンド氏。 『PAYDAY』シリーズを始め、さまざまなゲーム音楽を手掛けている。また本作『Den of Wolves』では、シナリオ・ディレクターも務めている。
――サイバー要素とゲーム性を組み合わせる中で、もっとも注力した要素、システムはどこでしょうか?
サイモン
やはりダイブです。 『Den of Wolves』で核となる要素ですし、プレイヤーをあらゆる場所やシチュエーションに誘うことができます。この電脳空間はかなり自由で、宇宙空間を飛び回れるほか、ノルウェーの森でモンスターに追いかけられることもあります。人間の脳の空間はとても創造的で自由なことを私たちはとても気に入っています。 ――“対象の脳にダイブする”というのは『攻殻機動隊』の影響でしょうか?
サイモン
まさしく『攻殻機動隊』は私たちがインスパイアされた作品のひとつであり、もっとも好きな映画のひとつです。そのほかにも『AKIRA』や『インセプション』、『ブラック・ミラー』もそれに含まれます。 また映画『ブレードランナー』や『ストレンジ・デイズ』という名作からも多大なインスピレーションを得ています。 ――この世界観にこだわった理由を教えてください。
サイモン
まず私たちは、ゲーム体験を非常に重視しています。プレイして「何が楽しいか?」軸にテーマを考えます。 『Den of Wolves』のダイブでは、プレイヤーをまったく異なるロケーションに召喚できます。高精度AIがハッキングツールになるというゲームのAIのテーマは、ダイブのアイデアにもつながっています。 ――『PAYDAY』ではクリアー時の報奨金で武器やアイテムを購入していましたが、本作はミッションクリアーはどんな特典がありますか?
サイモン
『Den of Wolves』の進行方法はまだ詳細を明かせません。ただ、『PAYDAY』と同じく強盗で得た戦利品によって新しい武器やガジェットをアンロックできるスタイルはいっしょです。 『PAYDAY』にはないガジェットは世界観に合わせたハイテクなものばかりです。なかでもシールドはとくにクールな装備なので、ぜひ使ってみて下さい。武器やガジェットの選び方次第で、自分の「クラス」を作る楽しみもあるでしょう。ゲームを進めつつ、仲間と戦利品の助けを借りながら、より多くの武器やガジェットをアンロックしてプレイに没頭して下さい。
――キャラクターにパークの選択を始めとするカスタマイズ要素はありますか?
サイモン
その予定はありますが、アーリーアクセスで入手できるかどうかはまだ秘密です。 ――銃器のアタッチメントによるカスタマイズ要素はいかがでしょうか。
サイモン
アーリーアクセスのリリース時点で準備ができているかは不明ですが、スコープやそのほかのアタッチメントで銃器をカスタマイズできる予定です。プレイヤーがキャラクターや武器をパーソナライズすることは、我々にとっても重要なことです。 ――サイバー世界特有の武器も登場するのでしょうか?
サイモン
SFに注力したテーマがあればレーザーやビーム銃も許されると思いますが、やはり古典的な武器がクールだと考えています。その理由は武器の重さや音、弾道兵器の反応をよりリアルに感じられるからです。 古典的な武器がクールと話しましたが、じつは皆さんがプレイしたミッションではドローンが使われていました。銀行で設計図と思われるものを持ってギャングを待ち伏せしたとき、それはドローンが詰まった箱で、敵を感知して飛び出し部屋の全員を倒していたのです。 ――ダイブした世界では誰かがゴールに着けばクリアーになるのでしょうか。ゴールに到着できない場合のペナルティは?
サイモン
ダイブとは、誰かの脳をハッキングすることで情報が詰まった脳を強奪するようなものです。ダイブ世界はひとりでもゴールに着けば問題ありませんが、全員がゴールに到達できればクリアーに必要なダイブの回数が少なくなる仕組みです。プレイヤーに協調性を感じてほしいので。
――本作でもっとも注目してもらいたいアクションは?
サイモン
やはり協力(Co-Op)です。我々は協力型ゲームを作るのが大好きで、『 ゴーストリコン アドバンスウォーファイター 』や 『PAYDAY 1 & 2』、そして『GTFO』とこれまで多くの協力型作品を作ってきました。協力型ゲームに対するかなりのノウハウや実績があると自負しています。 ――最後に、『Den of Wolves』を楽しみにしているユーザーの皆さんにひと言お願いします。 サイモン
もしあなたがFPS全般、とくに強盗FPSゲームのファンなら、ぜひSteamで 『Den of Wolves』をチェックして、ウィッシュリストに登録してください! 私たちはこのプロジェクトにとても情熱を注いでおり、これらのジャンルのファンを失望させないよう最善を尽くしています。