『ツーポイントミュージアム』博物館の学芸員(古生物専門)にコツを訊いたらガチすぎた「対グリズリー用の銃を片手に発掘調査」【プロとゲーマーの作品で格付けチェック】
 2025年3月5日、セガより発売されたヘンテコ博物館経営シミュレーション『ツーポイントミュージアム』。

 『
ツーポイントホスピタル』や『ツーポイントキャンパス』に続くシリーズ最新作であり、シミュレーションとしてリアルな経営が楽しめる一方“おふざけ感”も満載という、シリーズの系統を存分に受け継いだ作品となっています。

 プレイヤーは学芸員として、経営難に陥った博物館を立て直していくという役目を担っています。それぞれの分野に特化した専門家や運営スタッフの雇用、展示品の発掘、レイアウト、泥棒への対策、諸問題の解決などなど、やることは盛りだくさん。
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ほぼ水族館や、違う星の文明の展示をする博物館も作れる。
 筆者もヘンテコ博物館・学芸員として資金繰りなどに奔走。しかし、どうしても思うような博物館に仕上がらない……。

 ここはもう、本物の学芸員さんとお話をきいてみたい。

 そこで……、

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 群馬県立自然史博物館の地学研究係長・髙桒祐司さん(文中では、髙桒)にお話を訊きながら
『ツーポイントミュージアム』で博物館を制作してもらいました。

 本作をそこそこ遊んだライターが用意した博物館と本物の学芸員さんが作った博物館。どちらが髙桒さんが制作した博物館か見分けられますでしょうか。

※本稿はSEGAの提供でお送りします。

本物の学芸員さんが作った博物館を当てよう!

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髙桒さんからオンラインでレクチャーしてもらいました
――今回は企画に参加いただき、ありがとうございます。簡単に自己紹介をお願いいたします。
髙桒
群馬県立自然史博物館で地学研究係長を務めています、髙桒祐司です。おもに脊椎のある古生物が専門で、サメやシカについて研究しています。

――博物館で、ふだんはどんなお仕事をされているんですか?

髙桒
展示物の管理や企画展の進行、普及事業の講師などをやりつつ、自分が専攻する分野の研究も行っています。けっこう、事務仕事も多いですね。

――ありがとうございます。詳しいお話はまたのちほど聞かせていただくとして……さっそく、博物館の展示を作っていきましょう!

AとBの博物館の比較

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見学の順路は同じにしていますが、大きな化石を置く位置や種類などに違いがありますね。
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ここはエントランス。入って向かい正面左の部分がに壁の有無があるのが大きな違いのようです。
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メインの化石の展示場所。化石の周りの装飾や床の模様などにも違いが出ています。
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Aの博物館は画面した部分にバックヤードが大きめに設置されています。一方Bは展示用にかなり広く施設が使用されていますね。

 片方は筆者が作った博物館、そしてもう片方は髙桒さんが作った博物館です。

 こうして見ると、同じ展示物を使っているのに配置の違いが現れていておもしろいですね。

 では、正解発表にまいりましょう。


本物の学芸員・髙桒さんが作った博物館は……

A!!!


 みなさん、予想は当たりましたでしょうか。ここからは髙桒さんが作った博物館を見ながら、展示する際のポイントなど、各種解説を聞いていきます。

グリズリーから身を守るために銃を片手に発掘調査することも

――改めて、詳しいお話を伺っていければと思います。本作で博物館を作るうえで必要な仕様はひと通り説明させていただきましたが、気になったポイントはありますか?

髙桒
これらの展示品は、どうやって獲得するんでしょうか。

――学芸員さんを発掘現場までこの大型ヘリコプターで派遣して、取ってきてもらいます。かなり危険な場所もあって、学芸員さんのスキルやアイテムを積まないと行方不明になってしまう、なんてことも……。
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髙桒
北海道大学の恐竜研究チームみたいですね。彼らはヘリに乗り込んで、グリズリー対策に銃なども積み込んで行きますから。

――怖すぎる……。

髙桒
あと、募金箱の設置を積極的にやっているのはアメリカとか、海外の博物館っぽいなと。

 海外は国の助成金だけじゃなくて、積極的に運営資金を稼ぎなさいねっていうスタイルらしいです。グッズ売り場も出入り口にひとつ、とかではなく、展示物と展示物の間に関連商品が置いてあることもあるみたいですよ。
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――では、化石などを展示していきましょう。何から設置しますか?

髙桒
まずはメインどころの配置を決めようかな。このラインアップだと……“シャーポントプスの骨”がいいんじゃないでしょうか。

――展示には目玉となるメイン展示があると思いますが、どのあたりに配置することが多いんでしょうか。

髙桒
入り口にいきなりあってもつまらないし、最後まで引っ張るのもよくないので、だいたいは入り口からすこし歩いたところに配置するんじゃないですかね。

――展示する際に意識しているポイントはありますか?

髙桒
できるだけ、いろんな角度から観察できるようにすることです。展示物の周囲はなるべく空けておきたい。
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パーテーションを低いものに変更し、会場奥も見渡せるように変更。
髙桒
基本的には自由な順番で見てもらって構わないんですが、一応、順路のようなものは考えて配置することが多いです。看板とかって置けます?

――設置できます! そのほかにも床の装飾ができますよ。恐竜の足跡とか、アンモナイトの化石とか。それを使って順路を表現できると思います。

髙桒
ではそれでいきましょう。「ここに立てばいい写真が撮れるよ!」というポイントの床にわかりやすくマークを付けたりもしますね。
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恐竜の足跡で順路を表現。
髙桒
そういえば、このゲームってバックヤードとか、修復室、倉庫などは作れるんでしょうか。

――スタッフの休憩室や研修室は作れるんですが、いま髙桒さんが仰ったような部屋は作れないですね。ゲームの仕様として、展示物の修復は専門家が定期的に巡回して、展示されている状態で直接行っています。
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髙桒
なるほど。博物館は倉庫や事務室、医務室などを含めたバックヤードがけっこう広めに取ってあって、うち(群馬県立自然史博物館)の場合だと2:1(展示スペース:バックヤード)くらいの割合だと思います。

 このゲームの仕様だと、バックヤードツアーみたいなものは開催できないんですね。

――そういった博物館の、いわゆる“裏側”を公開するのは一般的なんでしょうか?

髙桒
うち(群馬県立自然史博物館)ではけっこう人気のツアーですね。修復室や、標本を作る作業が見られるようになっている博物館もあります。福井県立恐竜博物館は、たしか化石のクリーニング作業が見られるようになっていたかと。
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群馬県立自然史博物館で定期的に開催されているバックヤードツアー。
髙桒
お客さんが体験できるような施設ってあります? 標本作りとか、発掘作業の体験とか、できたらすばらしいのですが。

――遊具などの体験型展示物がありますね。

髙桒
いいですね。ぜひ置きましょう。お子さんが遊ぶものなので、親御さんが写真を撮りやすい位置を考えて設置したいです。

――お子さんが退屈しないような仕掛けも大切にしているんですね。

髙桒
当館は親子連れのお客さんが多いので、気を配るようにしています。子どもでも見やすい位置に展示物の情報パネルを設置するとか、そういう工夫は大切ですね。
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恐竜の尻尾を壁側、子どもが滑り降りてくる口を通路側にして配置。
髙桒
化石などを常設展、氷河期まわりの遺物を企画展として考えましょうか。

――ちなみに、氷で覆われている展示物は、常時冷やしておかないと中身が脱走します。実際の博物館では、こういった空調の設備なんかは見えないところに配置するのでしょうか?

髙桒
空調は見えないところに配置しますね。湿度に関しては、化石は基本管理が楽なんですが、黄鉄鉱が含有されていると硫黄が水分と結びついて劣化する場合もあるので、湿度管理が大事なものもあります。皮膚の質感まで残っている化石なんかは、劣化を早めるので光を当てないようにします。

 ただ、以前に南極の氷ごと展示するものがあったときは、冷やす機械を展示物のすぐそばにあえて置いたこともありますよ。本物の氷だと強調するためですね。

――なるほど。では今回は見える位置に置きましょうか。
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氷漬けの像の真横にクーラーを設置。
髙桒
展示物の場所はあらかた決まりましたね。ほかに置けるものはあるんですか?

――ベンチやゴミ箱、自動販売機も設置できます。

髙桒
ベンチ! 大事ですね。たくさん置きましょう。

――お客さんが休憩するスペースは、やっぱり大事ですか?

髙桒
いろんな年代のお客さんがいますし、座ってひと息つける場所があったほうが喜ばれます。自動販売機は国内だとあまり見ないかな。飲食禁止の展示スペースもけっこうあるので、置くとしたらお土産屋さんのそばとか、そのあたりかもしれません。
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ベンチの置けるスペースがあればとにかく設置!
――これで配置のほうは完了です。本日はありがとうございました!
髙桒
ありがとうございました。ぜひ、群馬県立自然史博物館にも遊びにきてください。

群馬県立自然史博物館 概要

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 群馬県立自然史博物館の常設展示では、大型恐竜の代表というべき竜脚類3体から、群馬県に生息する身近な生き物に関するものまで、生命の成り立ちと進化の歴史が展示されています。

 4月に入って見頃を迎える季節の花・ツツジに関する企画展も開催中。人気のバックヤードツアーや、化石のレプリカを作成できる体験型のイベントなども行われています。群馬県立自然史博物館へ足を運んでみてください。
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群馬県立自然史博物館をもとに制作した博物館。骨の周りに水槽など、いろんな組み合わせの博物館を実現できちゃう!
 そして、今回紹介した博物館を舞台とした経営シミュレーションゲーム『ツーポイントミュージアム』は3月5日にXbox Series X|S、PC(Steam)版が発売。プレイステーション5(PS5)版は4月17日(木)発売予定となっています。

 4月12日に実施予定の無料アップデートにより、シリーズ初となる日本語ボイスが実装されます。

 ゲームをプレイしていると博物館の評価などが軽快なラジオ番組口調で紹介されることもあるのですが、日本語ボイス対応ということでより直観的に楽しめるようになりそうですね。
 自由に想像を働かせオリジナルの博物館を作ってみてください!

『ツーポイントミュージアム』商品情報

  • 商品名:ツーポイントミュージアム
  • 対応機種:PlayStation5/Xbox Series X|S/PC(Steam)
  • 発売日:Xbox Series X|S/Steamデジタル版 発売中(2025年3月5日(水)発売)、PlayStation5パッケージ・デジタル版 2025年4月17日(木)
※PlayStation5版のパッケージ版は、エクスプローラーエディションのみの販売となります。
  • 希望小売価格:パッケージ版・デジタル版 3,535円(税込3,888円)
  • エクスプローラーエディション版 4,444円(税込4,888円)
  • ジャンル:ヘンテコ博物館経営シミュレーション
  • プレイ人数:1人
  • 発売・販売:株式会社セガ
  • CERO:B区分(12歳以上対象)

ご協力いただいた群馬県立自然史博物館 施設情報

住所:群馬県富岡市上黒岩1674-1
電話:0274-60-1200
FAX:0274-60-1250
公式HP
営業時間:9:30~17:00(最終入館16:30)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末・元日(詳しくはHPをご覧ください)
観覧料:一般510円、高大生300円、中学生以下無料(企画展開催時は特別料金)

【アクセス】
【電車】上信電鉄上州富岡駅下車、タクシー約10分
上州七日市駅下車、徒歩約25分 
上州一ノ宮駅下車、徒歩約30分
JR磯部駅下車、タクシー約15分
【 車 】上信越自動車道富岡ICより約15分、無料駐車場あり

【企画展情報】
第71回企画展「ツツジとその仲間たち―華麗にして奇妙な一族の話―」
開催日:2025年3月15日(土)~5月18日(日)
観覧料:一般800円、高大生450円

第72回企画展「ながいながい骨の旅」
開催日:2025年7月19日(土)~9月7日(日)、9月13日(土)~12月7日(日)(9/8~9/12は観覧不可)
観覧料:一般1000円、高大生500円