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『野狗子: Slitterhead』試遊レビュー。『SIREN』みたいなホラーゲーム? 否、異能バトル青年漫画的な熱いアクションゲームだ! そこらへんのおばちゃんに憑依して怪物と戦え!

by西川くん

『野狗子: Slitterhead』試遊レビュー。『SIREN』みたいなホラーゲーム? 否、異能バトル青年漫画的な熱いアクションゲームだ! そこらへんのおばちゃんに憑依して怪物と戦え!
 Bokeh Game Studioより2024年11月8日に発売予定の『野狗子: Slitterhead』。対応ハードはプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、PC(Steam、Epic Games Store)。

 某日、Bokeh Game Studioのオフィスにて『野狗子: Slitterhead』のメディア体験会が実施された。本記事では実機プレイを通してわかったゲームの詳細と、遊んでみた感想をお届けしよう。

 なお、同日行われた外山圭一郎氏、山岡晃氏、吉川達哉氏によるトークライブの模様は別の記事として掲載している。

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会場の様子
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会場には本作の設定画なども飾られていた
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敵となる怪物“野狗子”の模型

ホラーではない“ヤバい”ゲーム!

 本作は『SIREN』、『GRAVITY DAZE』などを手掛けた外山圭一郎氏のBokeh Game Studioによる完全新作タイトル。サウンドはコンポーザー・山岡 晃氏が担当しており、初代『SILENT HILL』以来のタッグとなる。

 これまでのトレイラーの印象や、外山氏が手掛けてきたタイトルの印象から、やはり「ホラーゲームなのかな?」と筆者は感じていたし、おそらく多くの方々もホラー寄りのゲームに見ていたのではないだろうか。


 結論から言うと、ホラー要素はそこそこあるが、ホラーゲームとは言い難い。あくまでゲームの世界観に不気味さが混じっているだけで、それよりもシステム&アクションに振り切った、青年誌バトルマンガのようなアツい作品になっていた。

 それでいて本作は、かなり“ヤバい”ゲームだ!

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“憑鬼”となり、野狗子を倒せ

 舞台となるのは1990年代初頭の架空の都市“九龍”。謎の猟奇殺人事件が蔓延するこの街には、人間に擬態し、人の脳を食らう怪物“野狗子(やくし)”が存在していた。本作のタイトル名は、この怪物から名づけられている。

 そんな混沌とした九龍で、あるとき精神生命体“憑鬼”が目を覚ます。憑鬼は霊体・魂のような存在で、生物に憑依することで、この世界に干渉できる能力を持っている。

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 憑鬼は自分が何者なのか、そのすべての記憶を失っているが、たったひとつの使命だけは覚えていた。それは、“すべての野狗子を殲滅する”こと。プレイヤーは憑鬼を操作し、謎と狂気に満ちた九龍で、野狗子と戦っていくのだ。

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敵となる怪物の総称が“野狗子”。その姿や形はさまざま。
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憑依して、記憶を取り戻せ

 体験できたのはゲーム開始直後からのプロローグ的ステージと、物語がある程度進んでいる、途中のステージ。

 最初に憑鬼が憑依したのは、まさかの犬。人間以外にも憑依できるのだが、憑鬼の能力はその生命体の能力にも左右される様子。犬ほどの知能では、憑鬼の知能も下がってしまうようだ。

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 プレイヤーは憑依している対象から、ほかの人間に憑依できる。ある程度離れていてもボタンを押せばビュンと憑依できるし、霊体を飛ばすようなイメージで空中に移動し、憑依していた生命体の視界にいない人にも憑依可能だ。

 たとえば、たどりつけないような場所にいる人に憑依すれば、その場所に瞬時に移動することもできる。憑依が一種のパズルのような役割にもなっているのだ。なお、憑依された人間は基本的に自分の意識を保つことはできないようだ。

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たとえば高いところから飛び降りて……。
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その瞬間に別の人間に憑依するなど、ヤバい方法での高速移動なども可能だ。

 人間に憑依すると、憑鬼の知能も人間並に。考える力が戻ってきた憑鬼は、人間に憑依しながら散らばった記憶を取り戻していく。記憶を取り戻すと憑依力が増すというか、ゲーム的にはシステムがどんどん解放されていく。最初はダッシュさえできなかったが、ジャンプやダッシュなどの基本アクションがつぎつぎと使えるようになっていった。

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 そして突如、目の前に“野狗子”が現れる。人間の身体は脆く、野狗子に襲われてしまえばすぐに命を落としてしまう。憑依していた対象が死亡した場合、憑鬼はすぐにほかの生命体に憑依すれば、生き延びることができる。ただし、魂を失ってしまい、3回魂を失うとゲームーオーバーとなる、ゲーム的に言えばいわゆる残機だ。

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 このあたりは物語を楽しみながらも、丁寧にゲームになじんでいけるチュートリアルになっている。ここまでは全体的に「憑依を使った、ホラーアドベンチャー」といった印象だったが、その感触はバトルでガラリと変わっていった。

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渡れない建物と建物のあいだも、憑依を使えば移動できる。

一般人で、怪物と戦え


 憑鬼はあやつっている人間の血液を固めた武器“凝血武装”を使用し、野狗子に対抗できる存在だ。戦闘が発生すると、凝血武器を使ったアクションをくり出せるようになる。

 バトルの基本部分はそれなりにシンプルで、通常攻撃や強攻撃、回避やガードを使いながら敵と戦う。右スティック入力で、いわゆるジャストガードやパリィのような“ディフレクト”が使用でき、成功すればプレイヤーにさまざまな有利効果が付く。

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 そして本作ならではの部分が、バトル中にも憑依先を変更できること。たとえばひとりが戦っている最中に、憑依先を変更して後ろから攻撃するなど、逐一操作するキャラクターを変更して戦えるのが、本作の大きな特徴だ。

 ただし憑依していなければ、その存在は当然ただの一般人になってしまうため、逃げ惑うだけの無防備な状態に。そんな一般人を、おとりにして戦ってもいい。やっていることはメチャクチャにひどいのだが、一般人はもはや使い捨てのコマのような割り切ったシステムなのが、逆に本作の尖った部分になっている。

 また、ディフレクトに成功し続けると“ブラッドタイム”が発動し、自分以外の攻撃がゆっくりになる。そのあいだに攻撃したのちに、ほかの人間に憑依して攻撃すれば瞬間的に同時攻撃が可能。憑依を駆使することで、自分で連携攻撃も作り出せるのだ。

 アクションや本作のシステムに慣れない人は「ひとりのキャラクターをずっと操作して戦う。倒されそうになったら憑依先を変更する」をやりがちになりそう。ただ、いろいろな面から実際のところは、「たくさん憑依先を変更しながら戦う」のがセオリーになっているゲームだと感じた。

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稀少体が、運命を左右する

 一般人たちに憑依して怪物・野狗子と戦うのは、本作のバトルの基本部分。もちろん物語の中では重要な役割を担う、憑鬼とは違った別の主人公たちが存在する。

 物語の中で、憑鬼は野狗子に襲われた女の子と出会う。巨大な野狗子に腹を貫かれ死亡したかに見えた少女は、“稀少体”と呼ばれる憑鬼とのシンクロ率が高い存在だった。

 大ケガを負いながらも生存している少女の生命力の強さに注目した憑鬼が憑依すると、少女の力が覚醒。長く伸びた赤い血の爪を使い、高い戦闘力を発揮する。

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 稀少体は本作のメインキャラクターで、特殊な力を持ったヒーロー的なポジション。バトルでの性能が高く、攻撃も固有のものとなっている。

 また、スキルが使用可能で(一般人ものちに使用できる様子)、キャラクターごとにそれぞれ特徴的なスキルを持っている。

 体験した中では女の子・ジュリーの覚醒のみが描かれていた。大きな野狗子に勝利すると、バイクに乗った謎の男がショットガンを手に現れ……。といったところで、序盤の体験は終了。

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 途中から体験できたステージは、野狗子に制圧されたビルを進みながら、野狗子を倒していくミッション。ここでは稀少体のアレックス、アニタが物語の主軸となっているようだ。

 残念ながらアレックスやアニタが、なぜ憑依されたのか、なぜ協力しているのかなどはわからなかったが、このあたりが物語として描かれるとのこと。ちなみに、稀少体は憑依されても本人の意識があるようだ。何らかの形で憑鬼と協力関係を結ぶのだろうか。

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アレックス
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稀少体が扱う凝血武装はキャラクターごとに違うようだ。

 アニタは一般人を召喚したり、敵をマインドハックするなど、テクニカルな性能。アレックスは戦闘特化といった感じで、血液の弾丸をショットガンで放つなど、個人のパワーに優れているような性能だった。

 ジュリーは体験しただけでは“一般人を全員蘇生する”など、サポート向きの能力を持っていた。ふつうならアレックスのような個人の強さに特化した人物が最初に仲間になりそうなところだが、最初に憑依したのが一般人もサポートできるジュリーというのが、本作の方向性を表しているように感じた。

 体験したビルでのミッションは、敵を倒して進んでいき、逃げる野狗子を追い詰めていくような内容。途中にはグラップルのようなイメージで、血を飛ばした地点に自身を引き寄せて移動するシーンもあった。ときには稀少体の面々が歩いていけない場所へ、憑鬼だけが先行して一般人に憑依し移動する場面も多々あった。

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 稀少体たちはメインキャラクターであり、戦闘での立ち位置はメイン戦力、またはお助け役。バトル開始時に一般人だけだった場合はしばらく一般人で戦うことになるが、その後に稀少体たちも憑鬼に追いついて合流する形でバトルに登場する。

 一般人だけではキツい戦闘も、「待たせたな!」といった感じで現れてバトルが有利になるのが、とてもヒーローらしいシステム。なお稀少体は時間経過で出現(合流)するようで、キャラクターによって現れる時間も変わる様子。戦闘力の高いアレックスは、登場が遅めだった。

 ちなみに稀少体は腕を切り離されても、血液でつなげることができる模様。システム的にもバトル中に腕を切り落とされることがあり、それをタイミングよくボタンを押すことで血を伸ばしてキャッチし瞬時に接合できる。失敗しても、地面に落ちた腕をつなげることもできる。切り落とされている状態では、攻撃アクションなどがくり出せないようだ。

おばさんが、カッコイイ

 憑依できる一般人=プレイアブルキャラクターなので、もはやその数は膨大。一般人の種類も豊富で、若い男性や女性から、おじさんおばさん、おばあちゃんくらいの人間まで多種多彩。ビルの中を探索するミッションでは、刺青の入った黒社会の人間などにも憑依できた。

 憑依するたびにキャラクターの見た目が変わるので、これがとても楽しい。きっとプレイヤーそれぞれ、状況に合わせて“お気に入りの一般人”で遊びたくなってくるはずだ。

 筆者はとくに、どこにでもいるような、おじさん&おばさんを操作するのがメチャクチャ楽しかった。中肉中背のおばさんが“中二病”のような“凝血武装”で、スタイリッシュに戦いをくり広げるなんて、もう見たことがないシチュエーション! 一般おばさんのジャンプ斬りにシビれたワケです。

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 また、ミッション達成時は操作キャラクターの顔がアップで表示される演出が採用されている。クリアーしたときもおばさんのキリッとしたキメ顔が表示されて、これがカッコいいんだけど笑えちゃう(笑)。

 カットシーンも、操作している一般人によってその見た目が変化するので、じつのところかなり手の込んだシステムになっている。一般人は、それぞれ身長も大きく異なる。それを考えると「あれ、カットシーンのカメラの位置が操作キャラクターによって変わるのでは?」と思った。

 ディレクターの大倉純也氏にお聞きしたところ、それぞれのキャラクターモデルがうまくカットシーンに合うようにカメラ位置の調整が入っているそうだ。地味な部分だが、ものすごく手間が掛かっている……! 人によってシーンごとの印象も変わるだろう。

 ちなみに一般人が使えるスキルには敵の注意を惹く“ウォークライ”や、血液を爆発させる人間時限爆弾スキル“タイムボム”などがあった。それを見てすぐにピンと来た。ウォークライ→タイムボム→そして別の人間に憑依! これぞ、敵を惹きつけての人間自爆作戦! 実際にかなり有効だったほか、タイムボム使用後にすぐ別の人間に憑依すれば憑鬼の残機も減らない。こうした、残酷だがブッ飛んだ戦術も取り入れられるのだ!

九龍を、観光せよ

 じつは本作は、かなり観光が楽しめるゲーム。九龍の街並みは中華な雰囲気にネオンが輝く、怪しい雰囲気に包まれている。街の中は細部がかなり作り込まれており、食べ物や売り物、看板などが非常に細かいので、これが見ていてすごく楽しい。

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 ポスターを眺めたり、置かれている本の内容を想像したり、部屋を見渡して住人が何をしていたのか推理したり……。ついついゲームそっちのけで観光を楽しんでしまった。麻雀卓はしっかり役が作られていて驚いたものだ(見た感じ、日本で主流のリーチ麻雀ルールではないようだ)。

 マジで細かすぎて、これだけでゲームの楽しさが1個生まれているほど。憑依していた体から抜け出せば、自由にアップにしたり狭い場所に入り込めるため、小物の数々をアップで見ることもできる。
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悲惨な状況っぽいおじさんは置いておいて、とある一室の小物だけでもとてつもない量。
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キッチンを見るだけでも、トマト型のタイマーがあったりととても楽しい。
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麻雀卓は作り込まれすぎている。ちなみに、戦闘で破壊されると牌もバラバラに散らばっていた。

 ちなみにゲーム中にビールが登場するのだが、それをBokeh Game Studioはクラフトビールとしてグッズ化。メディア体験会では取材陣にも振舞われた。
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ゲーム中に登場する、クーロンファイヤークラッカーというビール。
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会場では中華料理とともに、同じデザインのクラフトビールが振舞われた(奥になんかヤバいのがいるような……)。

個性的すぎて、ヤバい

 最初にお伝えしたように、いろいろな印象からホラーゲームを想像してしまうだろう。ただし、公式紹介文も“バトルアクションアドベンチャー”と称しているように、試遊を通してホラーゲーム寄りの作品ではないことがわかった。

 人体欠損描写もあり、グロテスクな野狗子の見た目などからも、そういった部分ではある意味ホラーではあるが、決してプレイヤーを怖がらることに重きを置いたゲームではないことが、遊んでいてひしひしと伝わってくるのである。

 本作は“不思議な力に目覚めた主人公たちが、異能でクリーチャーたちと戦っていくバトルもの”なのだ。だからこそ冒頭で述べたように、“青年誌のバトルマンガのような作品”だと筆者は感じた。

 シーンもある意味王道的で、稀少体が力に目覚めるときも、金色のオーラに包まれたような覚醒の仕方が、なんというか“スーパー(超)稀少人”というか(笑)。稀少体の面々が、姿を隠すためにヘルメットやマスクで顔を隠すのも、バトルものの戦闘装束っぽくてカッコイイ。

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 また、物語の中でジュリーが上空から燃える街を見下ろすシーンが挿入されたのだが、燃える街を見て驚く彼女の目の前に明らかに大きな力を持った3体の野狗子が現れる……。どうやら夢か幻のようだが、この“主人公たちの前に立ちはだかる大ボスが、序盤に現れて絶望させる”感じも、なんともバトルマンガ的な展開で燃えるところだった。

 憑依のシステムは独自性の強い部分で、それが探索だけでなくバトルにも紐づいているのは、まったく新しい体験として味わえた。憑依はある意味『SIREN』の“視界ジャック”を、大幅に進化させたものだろう。憑依できる対象が青や黄色で光る感じは、少しだけあの体験に似ている。

 作風や雰囲気はブッ飛んでいて、システムもブッ飛んでいる。だからこそ、本作は“ヤバい”。許される時間の限り何度もステージをやり直して試遊させてもらったが、一気に本作の虜になった。2024年11月8日の発売日が、いちファンとしても楽しみだ。

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隠し要素もたくさんあるようなので、今後の続報にも期待しよう。

おまけ

 試遊がおこなわれたBokeh Game Studioのオフィスも、今回撮影オーケーということで、せっかくなので見学。外山氏が歴代関わっていたタイトルのグッズや展示品がズラリと並んでおり、とくに『SIREN』ファンにはたまらないものとなっていたのでオマケとして公開しておこう(展示会で見たことがある人もいるはず)。

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      集計期間: 2025年04月24日12時〜2025年04月24日13時