VRゲーム環境といえば、プレイステーション5(PS5)&プレイステーションVR2(PS VR2)、Meta Questシリーズ、Picoシリーズ、そしてゲーミングPC&VRヘッドセットなどがあります。有名どころのゲームタイトルはマルチプラットフォームに対応していますが、特定のプラットフォームでしか遊べないタイトルがあるのも事実。
とくにPC VRはインディーゲームスタジオでも自社ゲームの販売がしやすいことから、実験的な要素が強いゲームもあります。VRアクションの粋を追求したタイトルやえっちいノリ、バイオレンスなやつまで選り取りみどりなんですよね。そんなおもしろおかしいPC VRゲームたちを、PS VR2で遊べるようになりました!
1万円以下でゲーミングPCと接続できるアダプターが発売
新商品のPS VR2用のPCアダプターCFI-ZVP1Jが発売されたのです。ソニーストアでの販売価格は8480円[税込]。PS VR2の可能性と楽しみかたを大きく広げるデバイスとしてはリーズナブルですし、ソニー自ら外部プラットフォームのゲームが使えるようにする周辺機器を開発するとは、時代の変化も感じますねえ。
なお、CFI-ZVP1JとゲーミングPCを接続した場合、PS5と合わせて使ったときとは異なり、PS VR2のすべての機能が使えるわけではないことに注意しましょう。具体的にはHDR表示、ヘッドセットフィードバック、視線トラッキング、アダプティブトリガー、ハプティックフィードバック(の一部)が無効となります。
必要となるなPCスペックは以下のとおりです。このスペックではフレームレートが低くなってしまうVRゲームが多いので、できるだけハイスペックなゲーミングPCを使いたいところです。
- OS:Windows 10 64ビット版/Windows 11 64ビット版
- CPU:Intel Core i5-7600/AMD Ryzen 3 3100(Zen 2以降のアーキテクチャが必要)
- RAM/メモリー:8GB以上
- GPU/グラフィックカード:NVIDIA GeForce GTX 1650以降(Turing以降のアーキテクチャが必
- 要)、NVIDIA RTXシリーズ、AMD Radeon RX 5500XT以上/AMD Radeon RX 6500XT以上(推奨GPUは、NVIDIA GeForce RTX 3060以上またはAMD Radeon RX 6600XT以上のグラフィックカード)
- DisplayPort:DisplayPort 1.4対応ポート
- USB:USB Type-A
- Bluetooth:Bluetooth 4.0以降
起動時には正しい手順で作業すること
「CFI-ZVP1Jが届いた! さあPC VRゲームをやろう!」と気持ちが先走りますが事前の準備が必要です。まずはCFI-ZVP1JとゲーミングPC、そしてPS VR2を接続します。
PS VR2に、ヘッドセットを外してPCの画面を見ることを示すアニメーションが表示されたら、ゲームプラットフォームSteamのアプリから“PlayStation VR2 App”と“SteamVR”をインストールします。
PlayStation VR2 Appを起動して、左右のコントローラのPSボタンを押してPCとBluetoothでワイヤレス接続。PS VR2をかぶり、プレイエリアを設定します。これで初期設定は終了。続いてSteamアプリでSteamVRと、PS VR2で遊びたいPC VRゲーム/アプリをインストールしましょう。
ゲームを遊ぶときはPlayStation VR2 Appを起動、PS VR2本体とコントローラをPCに認識させた状態でSteamVRを起動。PS VR2をかぶり、SteamVRのホーム画面からゲームを選択します。筆者が試したかぎり、この手順でなければVRゲーム/アプリを動かすことはできませんでした。
Meta Quest 3と遊び比べてみた
2024年7月期におけるSteamVRで使われているヘッドセットは1位がMeta Quest 2(39.66%)、2位がValve Index(16.10%)、3位がMeta Quest 3(15.65%)。以下Oculus Rift S、HTC Vive、Oculus Riftと続きますが、トップ3が高いシェアを占めていることには違いありません。
PS VR2でSteamVRのPC VRゲームを遊んだとき、これらの人気のVRヘッドセットと比較して勝った!といえるポイントはあるでしょうか。3台のなかでもっとも新しく、ユーザー数の伸びも著しいMeta Quest 3と比較しながら試してみました。
軽量かつ重量バランスがいいPS VR2はアクションゲームにぴったり
最初にプレイしたのは、2024年7月19日に発売された『ブレイゼンブレイズ』(MyDearest)。3vs3で戦うFPS視点の対戦アクションゲームです。銃撃もできますが、おもな戦いかたは近接バトル。空中ダッシュを駆使して敵の懐に潜り込み、ガントレットで強烈な一撃パンチをブチこむゲームのため、描画の美しさよりも視界・視野角の広さや、VRヘッドセットそのものの重量バランスが効いてくるタイトルといえます。
PS VR2の視野角は約110度(公表されてはいないがたぶん水平視野角)。対するMeta Quest 3の視野角も水平110度です。しかしレンズ・センサーと目の距離を微調整しやすい構造のため、PS VR2のほうがより広い視野が得られると感じます。実際にプレイをしても、視野の端の動きが見えやすいので戦場が把握しやすいといったメリットがありました。
大きく見えて軽い作りであることもPS VR2の大きなメリットでしょう。額と後頭部を挟み込んで固定するヘッドバンドは滑りやすいところがあるため、髪型によってはやや使いづらいと感じるかも。それでもゴムバンドゆえにフロントヘビー、かつ激しく頭を動かすアクションゲームだとズレやすいMeta Quest 3よりはるかに好印象です。
コントローラも大きいのですが、こちらもまた重量バランスがいい。さすがゲーム機を作り続けてきたソニー・インタラクティブエンタテインメントのハードウェアだと改めて感心します。
左から、Meta Quest 3のコントローラー、PS VR2のコントローラー。
ネガティブに感じたのは、有線接続であること。約4.5mもの長さのUSBケーブルでCFI-ZVP1Jと接続するのですが、『ブレイゼンブレイズ』で遊んでいると太さと重さが気になってきます。ケーブルを天井から釣りさげて重さを感じさせなくする方法もありますが、その手間は大きな負担でしょう。付属イヤホンのドンシャリサウンドも気になるところ。少なくとも『ブレイゼンブレイズ』のBGMや効果音を聴く限りは強調された高音がエグ味と感じてきます。サウンドのエネルギーバランスがフラット気味なイヤホンへの交換を考えたいところです。
有機ELで美麗ワールド&アバターが見られる『VRChat』
片目あたり2000×2040ピクセルの解像度を持つ有機ELパネル&フレネルレンズを採用しているのがPS VR2です。Meta Quest 3は片目あたり2064×2208ピクセルの液晶パネルにパンケーキレンズを合わせています。スペック上はわずかにMeta Quest 3が有利ですが、実際の描画はいかがでしょうか。さまざまな3Dの仮想空間に旅立てる『VRChat』で試してみました。
真っ先に感じたのは、有機ELパネルならではの色の鮮やかさです。引き締まった黒色から、色鮮やかに立ち上がる赤・緑・青のグラデーションに目を奪われます。3Dモデルだけではなく現実空間の写真をテクスチャとして活かした空間にも生々しさを感じます。
しかし細部の解像感においてはMeta Quest 3の勝利でしょう。PS VR2もSteamVRのレンダリング解像度を150%・片目あたり4164×4244ピクセル(計算上の数値ではなく、SteamVR設定画面上の数値)にすることで、薄いヴェールを1枚はがしたようなクリアな描写が可能になりますが、とくに周辺視野の解像力はMeta Quest 3のほうが明らかに勝っています。
これはパネル解像度ではなく、パネル輝度&レンズの性能差が出たものでしょう。PS VR2は特殊なフレネルレンズを使うことでゴッドレイやゴーストの影響を低減していますが、Meta Quest 3は明るい液晶パネルとクリアなパンケーキレンズを使うことで、透明度の高い映像表現を可能としていますから。
注意するべきはBluetoothとの相性
ふたつのゲームでPS VR2とMeta Quest 3の使い勝手や映像表現力を試してみましたが、個人的にはわずかにQuest 3のほうが勝っているけど、使い勝手全体をみたらほとんどイーブン。どちらも魅力的なVRヘッドセットだと感じました。
PS VR2
◯視野角が広く感じる構造
◯重量バランスにすぐれたヘッドセット本体とコントローラ
◯色味の豊かさからくるリアリティ
✕有線接続方式の煩わしさ
✕高音がキツく感じる標準イヤホン
Meta Quest 3
◯無線接続が可能でプレイエリアを自由に歩ける
◯USB接続のオーディオヘッドセットが使用可能
◯クリアかつ細部も見やすい描画力
✕前側が重く感じる重量バランス
△オプションのヘッドバンドを使うことで重量バランスは改善可能
何の要素を重視するのかは、ユーザーごとの好みで判断するべきでしょう。個人的にはPS VR2で見るアバターの美しさに感動しましたよ。
ただし、ゲーミングPCのBluetooth機能との相性に関しては注意が必要です。PCによって内蔵Bluetooth機能の電波が弱いようで、動いているときに手のトラッキングが外れてしまうことがありました。そこでUSB接続の外付けBluetoothアダプター“UB500”(TP-Link)を用いたら、状況が改善しました。これってPS VR2とCFI-ZVP1J側の問題ではなく、ゲーミングPC側の要因となる話です。可能ならば、ソニー・インタラクティブエンタテインメント側から、相性に優れトラッキングが安定する外付けBluetoothアダプターが出してほしいところです。