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【サウジアラビア】『FF7 リバース』イベントや賞金総額90億円のeスポーツワールドカップ開催の狙いを中東専門家が解説。ゲームに留まらない“サウジの野望”

by鷹鳥屋明

【サウジアラビア】『FF7 リバース』イベントや賞金総額90億円のeスポーツワールドカップ開催の狙いを中東専門家が解説。ゲームに留まらない“サウジの野望”
 2024年8月3日、サウジアラビア関連のX(Twitter)アカウントから『ファイナルファンタジーVII リバース』(FF7 リバース)情報がポストされました。添付動画にはプロデューサーの北瀬佳範氏とディレクターの浜口直樹氏が登場。内容はサウジアラビアのリヤドで“FF7 リバース展”が開催され、8月16日にはトークショーが行われるというものでした。

 発信元は同国のエンタメ企業Qiddiyaのゲーム特化アカウント“Qiddiya Gaming”。このトークショーのVIPチケットは即日完売、現地での『
FF7』の人気を感じ取れます。
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 イベント会場はeスポーツワールドカップ(後述)の開催地でもあるBoulevard City(ブールバード・シティ)の一角。7月にはHoYoverseの『ゼンレスゾーンゼロ』の世界観をイメージした展示品が大量に置かれ、9日間で4万人が来場した場所なのですが、わずか1ヵ月も立たないうちに造り替えられて、今度は『FF7リバース』の展示会場に様変わりしました。規模も勢いもスピード感も、とんでもないのです。

eスポーツワールドカップの現地の盛り上がり

 本題に入る前に自己紹介をさせてください。はじめまして、鷹鳥屋と申します。サウジアラビア政府観光局観光推進委員をしながら日本企業と中東でさまざまなお仕事をさせていただいており、とくに最近は中東で発生するアニメやエンタメ関連のお仕事に多く携わっております。自身もインスタやX(Twittter)などで中東について発信しております。
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 閑話休題。サウジアラビアでは2024年7月3日~8月25日の日程で、eスポーツの国際大会“eスポーツワールドカップ(Esports World Cup)”が開催。ファミ通.comでも記事になっていますし、“そういう大会がある”ということ自体をご存じの方も多いでしょう。
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 では、なぜ突然
『FF7 リバース』の展示がサウジアラビアのeスポーツ大会の会場で行われたのか? これはスクウェア・エニックス・ホールディングスの社外取締役に、サウジアラビア政府系ファンド会社の取締役の数々を兼務しているアブドッラー アルダウード氏が2021年から名を連ねていることは無関係ではないでしょう。

 このアブドッラー氏は、世界初となる
『ドラゴンボール』テーマパークの建設を進めているQiddiya Investmentの常務取締役など、サウジアラビア現地エンタメ企業の上級幹部を兼任。eスポーツワールドカップにもQiddiyaは大いに関わっていることから、今回の展示につながったものと考えられます。
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スクウェア・エニックス公式サイト 役員一覧ページより引用。
 さらにこの展示訪問と合わせて、X JAPANのYOSHIKI氏がサウジアラビアのeスポーツ協会から招待を受けて『ストリートファイター6』の決勝戦を観戦しました。サウジ内でYOSHIKI氏の知名度が高いかどうかは不明ですが、「あの人は男なのか、女なのか、どっちなのか?」などと現地の日本人はサウジ人たちに質問攻めになったようです。
 eスポーツワールドカップの結果に目を向けると、『ストリートファイター6』部門ではKuaiShow Gaming(KSG)のXiaoHai選手が優勝、30万ドル(約4500万円)を手にしました。日本のカワノ選手は惜しくも準優勝となり、獲得賞金は20万ドル(約3000万円)。

 1位は中国の選手でしたが予選を通過した32人の戦いの中で2位、3位と上位のほとんどが日本人で占められていることは、格闘ゲームでもアジア勢の強さを感じる内容と言えます(なお、4位はUAE のAngryBird選手でした)。
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eスポーツワールドカップ公式サイトより引用。
 この記事を準備中の8月21日からは『ESL R1』、『ロケットリーグ』、『PUBG』、そして『鉄拳8』の大会がスタート。とくに『鉄拳8』は日本人選手の活躍が目立つので、個人的にとても楽しみにしていました!

 また『
鉄拳』の原田プロデューサーも現地に赴いていたようですね。フル装備のアラブ服で参加しており、手持ちのサウジアラビア民族衣装の中でどのようなドレスコードでいくのが正解なのか悩まれていて、サウジ人たちに問いかける投稿もありました。会場では白の、イベントでは黒のアラブ民族衣装を着ていたようです。
 このように、大物や大型IPが訪れたりエンタメ/ゲーム界隈のニュースがつぎつぎと出てくるサウジアラビア。その中心のひとつが先述のeスポーツワールドカップ(EWC)です。ご存知の方もいると思いますが、あらためておさらいをさせてください。

 サウジアラビアの首都リヤドで今年7月3日から8月25日にかけて開催された世界最大のeスポーツ大会、それが“eスポーツワールドカップ”。500以上のチーム、1500人以上の選手がサウジアラビアに集結しました。
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 大きな話題になる要素として、優勝賞金総額がeスポーツ史上最大となる6000万ドル(日本円で約90億円)とたいへん高額であることが挙げられます。

 賞金の内訳としては、チームに所属する選手の上位入賞ポイントで決まるチーム別のクラブチャンピオンシップに2000万ドル(30億円)、各ゲームタイトル別の優勝賞金に3000万ドル(45億円)、残りの1000万ドル(15億円)は予選の賞金とMVPアワードなどに分配される金額となっています。
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 なぜこのような大型の大会がサウジアラビアで開催されているのでしょうか。もちろん、ある日突然開催されたわけではありません。2年前から“Gamers 8”と名付けた世界最大規模のeスポーツ大会が開催されており、この大会を通じてノウハウを発展させ、その後継として今回のeスポーツワールドカップが開催されるようになったのです。

 サウジアラビアは大型eスポーツ大会を何度も開催して知見を溜め、そして有力選手を取り込むことで着々と準備を進めてきました。結果として数多くのタイトルで上位に入賞し、サウジアラビアのTeam Falcons(チームファルコンズ)がeスポーツワールドカップ2024 クラブチャンピオンシップにおいて8月17日時点で優勝をつかみ取りました。ゲットした賞金は700万ドル(約10億円)です。
 スポーツ選手はやはりホームで力を発揮するでしょうから、開催国であることも優位に働いたのかもしれません。何はともあれ、開催国の面目躍如と言えるでしょう。会場施設内に設けられている彼らのパビリオンには地元のファンたちも集まり、大々的に祝われていました。
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 そもそもこのeスポーツ大会が行われるブールバード・シティは、リヤド市内にある大型のイベント施設。過去2年、先述のGamers 8が開催された場所になります。今回の大会に合わせて新たに大型のeスポーツアリーナが作られました。サウジテレコム、Amazon、キッディーヤなど現地の有名企業などがスポンサーとして名を冠する巨大なアリーナです。

 どのステージもゲームに合わせた巨大スクリーンと配信を意識した撮影機材、音響設備、観客席が設けられており、全体的に豪華な作りとなっています。
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 多くの大会予選は気温の高いお昼の時間に行われますが、上位入賞に関わる試合や準決勝、決勝など大事な試合の多くは日が沈んで気温も下がり(と言っても最低気温30度を超えますが)、この頃になると客足も多くなってきます。

 観客として試合を観戦する場合は、現地のエンタメ情報が集約されたアプリ“webook”を通して各ゲームタイトルのチケットを日程ごとに購入可能でした。各試合のチケット価格の多くは15SAR〜25SAR(600円〜1000円程度)ほどで、日程ごとに購入したり目当てのゲームタイトルの全日程を丸ごと購入したりと、自由度は高めです。

 チケットの購入・登録を行うとリストバンドを渡され、その日の大会が行われるアリーナの出入りは自由、その気になれば朝から夜まで試合をずっと見続けることもできます。
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 全体的に多くの日程でチケットの購入はしやすいですが、地元サウジチームが活躍する試合、決勝戦や有名チーム、スター選手が参加するチケットはすぐに売り切れになっていました。世界の花形選手の活躍だけでなく地元サウジの有名チームの活躍、新たなスターの誕生など、一挙一動に歓声が上がります。応援合戦やコール、ときにはブーイングも起こり、現地観戦の熱気を味わえます。

 本大会が開催される7月〜8月は、本来ならサウジアラビアでは野外イベントがほとんど行われないオフシーズン。首都リヤドは湿度が低く乾燥はしていますが、気温はお昼の涼しいときで40度、暑いときは45度以上と、なかなか過酷な環境になります。
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 eスポーツ大会は屋内で完結するイベント。会場間の移動や予選トーナメントの多くは日の高い午前中から夕方にかけて行われます。選手や関係者は控室からアリーナまで屋根付きの電動カートで移動するのですが、短い間でさえも汗をかいてしまうようです。観客のほうはと言うと、スマートフォンが熱を持って機能せず、アリーナのゲートでセキュリティに入場パスを表示できなくなるなど、たいへんそうな場面も見受けられました。

 世界各国から集まった選手やマネージャーの方々とお話しをすると、遠方から来た疲れや施設内と外の寒暖差で体調不良になったり、乾燥で喉を痛めたり、空気が乾燥して指の感覚がいつもと異なり操作に苦労したりなど、遠征に伴うアウェイの洗礼に対して何とか調整しようとする様子も伺えました。

eスポーツに舵を切る理由は、競技としてサウジが強くなり、手薄な“夏”を埋めたいから

 そろそろ核心へ迫っていきましょう。なぜわざわざこんな夏の時期にeスポーツワールドカップが行われるのか?

 ひとつは現地で行われるほかの大型イベントとの兼ね合い。そしてもうひとつは気候条件です。2019年から観光ビザを世界各国に広く開き、“開かれた国”として観光業に力を入れるサウジアラビアは、過ごしやすい春、秋、冬だけでなく、暑い夏も含めた一年中に渡って観光客に来訪してほしいのだと考えられます。eスポーツは屋内で完結しますから、ほかと比べて暑さの影響を受けにくいのでしょう。

 これに伴い、経済などさまざまな面で変化が見られます。たとえば、ホテルの値段。昔は夏の時期は安く泊まれたのですが、イベントの開催時期ということもあってそこまでは大きく値下がりしていなかった模様です。観光において“オフシーズンを作らない”という目標を達成できたと言えるのではないでしょうか。
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 現地の会場に目を向けてみると、選手がプレイを競いあう会場だけでなく、多数のスポンサー企業も出展。プロモーションを兼ねて多くのアリーナやブースが設営されています。

 会場のひとつでもあるSTC Playアリーナ内ではSTC、サウジテレコムが提供するサービスや製品を体験できる特設スタジオも設けられていました。VRゲームをすべて体験すれば企業ロゴ入りのグッズが配られ、充電器やマグカップやバッチなど販促品の配布も活況です。
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 そして、スポーツにはやはりエナジードリンクが似合うのでしょうか。エナジードリンクメーカー・ロックスターのバーが設けられ、エナドリ系カクテル(もちろんノンアルコール)を常時提供する場所が設営されていたり、ペプシコーラにいたってはペプシ系飲料だけを提供する専用のカフェを丸ごと設けたりと、食品系メーカーも協賛している様子を各所で見ることができます。
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 さて、クラブチャンピオンシップで優勝したサウジアラビア最大手のeスポーツチーム・Team Falconsのパビリオンは大盛況で、1日に2回行われるファンミーティングはチケットがつねに売り切れ。追加販売が行われても即完売するなど、激しいチケットの争奪戦がくり広げられており、たいへん活気がありました。

 2017年からゲーム配信活動を開始して以来、中東では古参と言える彼らTeam Falconsはその人気の高さからゲーム配信だけでなくYoutuberとしても活躍。若いゲーマーだけでなく家族連れを含めて幅広く人気があり、壇上に主要メンバーが登場する度に歓声が上がります。
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 会場ではメンバーがプロデュースしたシャツやパーカーなどをはじめ、多くのグッズが販売されていました。eスポーツチームのスポンサーになっているサウジアラビアの大手コーヒーフランチャイズやファストフード企業もブース出展し、会場限定のコラボ商品やメンバーが手がけたアパレルに限定グッズと、ラインアップは多彩です。

 ちょうどeスポーツワールドカップが開催されている最中に、Team Falconsにmentos(メントス)のスポンサードが決定。チームユニフォームが刷新されて、会期中にメントスのロゴ入りのチームユニフォームが販売されるようになるなど、目の前で経済的な動きが足早に動いている様子も見ることができました。
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Team Falcons公式X(Twitter)より引用。
 このようにeスポーツワールドカップの現場ではスポンサー企業の商品やロゴをあらゆる場所で見ることができます。その中で日本企業はあるのかと探していると、代表的なのはソニーが本大会のパートナーシップ契約を締結しています。企業ロゴや旗の中に掲載されており、会場各所でそのロゴで存在感を示すと同時にソニーのテレビ・BRAVIAの広告を各所で見ることができました。
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 また日本企業や日本のeスポーツチームの方々もサウジアラビアまで訪問しており、今回参加したプロeスポーツチームのREJECT様にお話を伺いました。

Q. サウジアラビアeスポーツワールドカップでは現地にはどのような目的で訪問しましたか?

A. REJECTに所属しているときど選手(『
ストリートファイター』部門)の帯同サポートと、eスポーツワールドカップおよび来年から開催されるオリンピックeスポーツシリーズの情報収集、開催地であるサウジアラビアの環境視察が目的でした。

Q. 現地訪問の手応えは? どんな成果が残せましたか?

A. 初めてサウジアラビアを訪れましたが、いい意味で非常にイメージと異なる国でした。観光ビザが解禁されてからまだ数年ですが、街並みや建物もきれいで、食事もおいしく、現地の方も優しい方が多い印象でした。開発中の施設も多く、直近数年でサウジアラビアでのさまざまな事業や取り組みが加速すると実感しております。

Q. 現地を訪問してみた感想、サウジアラビアの今度のマーケットをどう見ますか?

A. 今回eスポーツワールドカップが開催されていたブールバード地区はきれいなアリーナや体験型のアトラクション、チームベースなどすばらしい設備が整った施設がいくつかありましたが、サウジアラビア全体を通して見れば、道路や建物、エンタメなどインフラも含めてまだまだ発展途上の部分もあるかもしれませんが、キディア地区の都市計画も含めて、この数年での発展ぶりが非常に楽しみです。
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Q. 今後、中東でどのようなことをやりたいのか? サウジアラビアなど中東諸国は日本企業、eスポーツやエンタメ企業に可能性はありますか?

A. 弊社はプロeスポーツチームの運営事業を行う会社ですので、チーム補強・強化を行い、今後も開催されるであろうeスポーツワールドカップの出場と高順位入賞を目指します。来年以降はオリンピックも開催されますので、オリンピックのeスポーツタイトルについても参入および強化を考えております。

 また、サウジアラビアは環境的な問題か、まだまだ日本に比べて娯楽が少ないように感じました。なので、eスポーツのみならず、ゲームやアニメ、VTuberなど日本の文化の浸透には大きなビジネスチャンスを感じました。

Q. 現地企業や団体と話して前向きに挑みたいと考えたりしましたか? またどんな企業、団体と打ち合わせをしましたか?

A. 現地では、eスポーツチームスタッフやチーム運営の親会社、ゲームパブリッシャー、EWCスタッフ、キディアのスタッフ、投資家など多くの関係者の方とお会いして、今後についてお話させていただきました。まだまだ課題は多そうですが、皆様が口を揃えて今後のサウジアラビアでのeスポーツやエンタメの同行が非常に楽しみでワクワクしているとおっしゃっていました。
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 と、全体的に好印象の様子でした。

 eスポーツワールドカップ最終週の2024年8月24日と25日には、リヤドのフォーシーズンズホテルで開催されるプレミアイベント“ニュー・グローバル・スポーツ・カンファレンス2024”が行われ、今年のテーマは“ファンダムの未来”。eスポーツワールドカップの中に日本のゲームも採用されていることから、日本の大手企業も参加し、中にはブース出展する企業も。

 ちなみに、招待なしで申し込む場合は入場料は約40万円(10000SAR)となかなか驚きの金額ではございますが、中東から発信されるエンタメの未来を感じたい方は、こういったイベントも今後増えていきますので、参加を検討されてはいかがでしょうか。
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 8月25日には閉会式が行われ(チケット代は約4200円=105SAR)、初代クラブチャンピオンであるTeam Falconsを祝福。式典では世界的に有名なアーティストたちによるショーやコンサートが行われるとのこと(ラベ・サケル、キッド・カディ、DJのスティーブ・アオキ、セヴダリザ)。最後の最後まで盛り上がろうとする勢いを感じます。

ゲームやアニメを軸にした経済的な狙い

 またちょうど、eスポーツワールドカップと近いタイミングでサウジアラビアで行われた日本と関係の深いエンタメニュースと言えるのが、アニメ『グレンダイザーU』第1話の世界初のプレミア上映会。加えて、『ガンダムSEED FREEDOM』のサウジアラビアプレミア上映会に立ち会えたのも、個人的にはラッキーでした。
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 それぞれ往年のファンが映画館に集まり、イベント、撮影会、鑑賞会はそれぞれ盛況で、現地のテレビやメディアでも取り上げられました。

 アラブ現地のアニメ通は音声を日本語で聴いて字幕をアラビア語で読む方が多く、日本語がわかる私は羨ましがられました。この30年間近く映画館が作られなかったサウジアラビアの近年の歴史を考えると感慨深いものがあります。
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 昨今はエンタメ関連のニュースが増えて注目度が増しているサウジアラビアやドバイ、アブダビなど中東湾岸諸国ですが、この背景には産油国の石油依存からの脱却を目指していることが挙げられます。経済の多様化戦略を推進しており、eスポーツやゲーム産業への投資もそのひとつ。

 最先端エンタメの浸透と合わせて若年層の多い中東産油国の新たな産業を創出、国内の若者に新たなキャリアパスと雇用を生み出し、さらなる経済成長を促進する国家戦略的な流れの一環と言えます。
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 まず掲げているのは、これら産業のグローバルハブ構築。エンタメ、ゲーム、eスポーツの中心地となることでゲーム開発者やeスポーツチームを世界中から誘致し、大規模なトーナメントの開催は国際社会における存在感を高めると同時に観光地としての地位の確立にも寄与しています。外貨の獲得という意味で、一定の成功を果たしたと言えるでしょう。

 また、このような国際大会を行うことで開かれた国としてアピールする意図もあります。実際に、継続的な大会開催が評価され、国際オリンピック委員会(IOC)はサウジアラビアで2025年に第1回オリンピックeスポーツ大会“Olympic Esports Games”を開催することを発表しました。
 国際オリンピック委員会による「サウジアラビアはeスポーツ分野において類まれな専門知識を有している」という発表とともに、今後12年間、オリンピックeスポーツ大会がサウジアラビアで定期的に開催されることが決まりました。

 eスポーツだけでなく2034年にFIFAワールドカップを開催するサウジアラビアは、eスポーツだけでなくオリンピック・パラリンピックの招致に向けた動きも行なっているようです。さらなるエンタメ大国、スポーツ大国へと変貌しようとするサウジアラビアのパワーを感じます。ファミ通.comにはサウジアラビアeスポーツ連盟会長を務めるファイサル殿下のインタビューも掲載。こちらも合わせてご覧ください。
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 ですが、さすがにすべてが順風満帆とは言えず、人材面の問題が散見されます。たとえば、eスポーツワールドカップで華々しい成績を納めたサウジアラビアのチームですが、サウジアラビア国外の外国人選手の活躍によるところが大きかったのも事実。経済力で外国人選手を自国チームに組み込んで勝利を重ねている、という声も上がっております。

 もちろんTeam Falconsのムサイド・アルドーサリー選手のような有名サウジ人選手もいますが、全体的にはアジア系選手が活躍(種目として選ばれたゲームの特性もありますが)。サウジアラビアの国内サッカーチームがネイマール選手やクリスティアーノ・ロナウド選手といった有名な外国人選手を高額な契約金でつぎつぎと獲得して、サッカーだけでなく観光PRに選手を活用した構造と似通っていると言えます。
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 また、eスポーツ大会を積極的に開催しているものの、国内すべてが熱狂的というわけではなく、男女間、世代間で熱狂度合いに温度差があるようです。今後、eスポーツというジャンルを国内に浸透させて有力選手を自国で養成、オリンピックで活躍してメダルの栄誉を得る。そんな未来を描いているのかもしれません。

 eスポーツ市場は年々拡大しており、世界の中でも先んじているサウジアラビアは今後どのような動きを取るのか。その動きを追い続けていければと思います。
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集計期間: 2025年04月29日14時〜2025年04月29日15時