ロゴジャック広告

『かまいたちの夜×3』レビュー。思わず選びたくなる選択肢やガラッと変わるシナリオはシリーズならでは。『1』と『2』のメインストーリーも遊べるお得タイトル

byジャイアント黒田

『かまいたちの夜×3』レビュー。思わず選びたくなる選択肢やガラッと変わるシナリオはシリーズならでは。『1』と『2』のメインストーリーも遊べるお得タイトル
 『かまいたちの夜×3(トリプル)』は、2006年にプレイステーション2で発売されたサウンドノベルで、シリーズ3部作の完結編にあたるタイトル。本作には、『2』から1年後を描いた三日月島事件の真相編に加えて、『1』『2』のメインストーリーも収録されていた。

 そんな
『かまいたちの夜×3(トリプル)』が、Nintendo Switch、プレイステーション4、PC(Steam)で約18年ぶりに復活。発売日は2024年9月19日予定。Nintendo Switch版のみ予約特典として、全20曲を収録したサントラCDが付属。ダウンロード版には同内容のサウンドトラックアプリがついてくる。

 楽曲の中には、初代『
かまいたちの夜』の音楽を手がけた加藤恒太氏によるシリーズ30周年記念の新アレンジ版BGMも含まれ、シリーズファン必携の特典だ。
広告
[IMAGE]
 オリジナル版の雰囲気をそのままに、移植版では文字フォントの切り替え機能とサウンドプレイヤーを新たに収録。前者、ゲーム内のテキストを初代『かまいたちの夜』をイメージしたドット風のフォントに変更でき、後者はゲーム中のBGMを楽しむことができる。これらの機能はゲーム開始後すぐに利用可能だ。
[IMAGE][IMAGE]
左が通常の文字、右が初代『かまいたちの夜』をイメージしたドット風の文字。
[IMAGE]
お気に入りの楽曲を堪能できるサウンドプレイヤー。
 本稿では、記事担当ライターによるレビューをお届け。ネタバレには十分配慮しているが、事前にまったく情報を知りたくない方はご注意いただきたい。

『かまいたちの夜』シリーズ3部作がこれ1本で楽しめる!

 メインストーリーの「三日月島事件の真相編」の感想を語る前に、まずは『かまいたちの夜』の思い出を語らせてほしい。筆者が初めて遊んだサウンドノベルは、1992年にスーパーファミコンで発売された『弟切草』だった。小学校時代に友人宅でプレイし、選んだ選択肢の結果に一喜一憂して盛り上がったのをよく覚えている。

 テキストアドベンチャー形式のサウンドノベルは、画面いっぱいに表示される文章と、背景画像やサウンドで物語を演出するスタイルが斬新で、筆者は夢中になった。初代
『かまいたちの夜』も同じ友人宅で楽しんだが、本格的にプレイできたのは、家庭でゲームが解禁された後のことだった(きびしい家庭だった……)。とくに、プレイステーションで発売された『かまいたちの夜 特別篇』のフローチャート機能は便利で、コンプリートを目指して何度もプレイした。
[IMAGE]
 『1』の舞台は、雪に閉ざされたペンション“シュプール”。主人公・矢島透と友人の小林真理が訪れた際、客室に「こんや、12じ、だれ かがしぬ」という不気味なメッセージが投げ込まれ、不穏な空気が漂い始める。そして、本当に殺人事件が起こる……。当時、筆者は犯人やトリックを解明できず、多くの犠牲者を出してしまったが、スキーのストックはいまもトラウマだ。
[IMAGE][IMAGE]
 続く『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』は、2002年にプレイステーション2で発売。『2』の舞台は絶海の孤島・三日月島で、招待を受けた透と真理が再び恐怖の事件に巻き込まれる。『1』と比べて演出面が格段にリッチになり、筆者はその臨場感に驚いた記憶がある。
[IMAGE][IMAGE][IMAGE]
 このように、『1』『2』はプレイしていたものの、『かまいたちの夜×3』をプレイしたのは、今回の移植版が初めて。オリジナル版が発売された2006年、筆者はすでにライターとして働いており、忙しさにかまけて買い逃したゲームがいくつかあった。本作もそのひとつだ。いつか遊びたいと思っていただけに、『かまいたちの夜×3』が現行機に移植されると聞いたときは心が踊った。

 しかも、先ほど紹介した
『1』『2』のメインストーリーが収録されており、ゲームの世界をすぐに理解できる点も魅力だ。筆者も、過去2作品のメインストーリーをプレイして復習を済ませた。
[IMAGE]
遊ぶタイトルは最初からすべて選択可能。初めて遊ぶなら、『1』のペンション“シュプール”編→『2』の監獄島のわらべ唄編→『3』の三日月島事件の真相編の順に遊ぶのがオススメ。

複数の視点から多角的に物事を見て三日月島事件の真相を解き明かせ

 さて、そんなわけでいよいよ『3』のメインストーリーである“三日月島事件の真相”編に進んだ。『3』は三日月島の惨劇から1年後が舞台。“監獄島のわらべ唄”編の事件で犠牲になった人々を慰霊するため、香山の呼びかけに応じて再び島を訪れた透たち。参加者はそれぞれの思いを胸に犠牲者たちの慰霊に臨むも、またしても三日月島で殺人事件が起こってしまう……。
[IMAGE]
 『3』は何と言っても主人公を切り換えられるのが新鮮だった。シリーズ初の試みとして、複数主人公制を採用しており、三日月島を再訪した事件関係者のうち、4人がプレイアブルキャラクターとして登場する。プレイヤーは5分単位で進行するタイムチャートでキャラクターを切り換えることで、異なる視点から真相に迫ることができるのだ。
[IMAGE]
物語はシリーズおなじみのキャラクター香山の視点からスタート。ゲームを進めていくことで透など、ほかのキャラクターが順次選べるようになっていく。
[IMAGE]
タイムチャートは5分ごとに区切られており、各時間帯に誰がどこにいたのかを確認しながらプレイする主人公を選択可能。メニュー画面ではエンディングリストも閲覧できる。
 最初に選べるのがシリーズ主人公の透ではなく香山という点に驚いた。彼は大阪で会社を経営している男。一度話し出すと止まらず、人の話を聞かないという困った面があるが、社長だけに羽振りはよさそう。『2』では前妻の春子と別れて年の離れた夏美と結婚していて、子どもながらに「社長ってすげー!」と感心したっけ……。
[IMAGE][IMAGE]
春子や夏美だけではなく、筆者の心も鷲掴みにした男・香山。シリーズ3部作をプレイするときは、注目したってな!(エセ関西弁)。
 香山のルートは、大阪弁で進行するストーリーや、鉢巻きに4本のロウソクを立てた祈祷時の衝撃的な姿など、笑みがこぼれるシーンが満載。しかし、油断していたところで新たな殺人事件が発生し、突然別の主人公のルートに移る。「え! どうなったの!?」と続きが気になり、時間を忘れて物語を読み進めた。

 だが、筆者の推理力があまり高くないせいか、三日月島の惨劇はなかなか終わらない。つぎつぎと犠牲者が出てしまう絶望感や虚無感は、初めて
『1』をプレイしたときと同じだったが、そういったものを乗り越えたからこそ、事件の真相にたどり着いたときの感動はひとしおだった。
[IMAGE]
 OL三人組のひとりで食べることが大好きな北野啓子や、香山のようなコメディリリーフ的なキャラクターが緊張感の中での一服の清涼剤となってくれたのも、ゲームを続けるモチベーションになった。シナリオの振れ幅がいい意味で大きいのも、『かまいたちの夜』シリーズの大きな魅力だろう。
[IMAGE][IMAGE]
 三日月島での出来事が、主人公たちのタイムチャートで管理されているのも特徴的だ。タイムチャートは5分ごとに区切られており、各時間帯に誰がどこにいたのかを確認しながら主人公を選ぶことができる。メニュー画面では、過去2作品と同様にエンディングリストも閲覧でき、コンプリートを目指す楽しみが増す。

 本作は約4000円と手頃な価格もうれしいポイントで、先述の通り
『かまいたちの夜』シリーズ3部作のすべてのメインストーリーが体験できるため、初めて『かまいたちの夜』を遊ぶ人や、筆者のように遊んでいない作品がある人にもピッタリだ。もちろん、シリーズファンにもオススメで、ふたつの追加要素もファンにとって楽しめる内容だろう。
      この記事を共有

      本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

      集計期間: 2025年04月24日11時〜2025年04月24日12時