PS5より高性能なGPUを搭載したことで、レイトレーシングを強化し、新たなAIアップスケーリング技術”PSSR(プレイステーションスペクトルスーパーレゾリューション)”の導入により、グラフィックモード同等以上の画質で可変4K/60fpsを実現している。さらに、2TB SSDや最新のWi-Fi 7をサポートするなど、“Pro”の名にふさわしい機能も搭載されている。
しかし、日本ではPS5の価格改定が発表された直後というタイミングでの発表となり、約12万円という高額な価格設定は、多くのゲーマーにとって購入を躊躇させる要因となっている。加えて、ディスクドライブが別売りであることもトータルコストを押し上げることにつながる。
筆者もRyzen 5 5600XとGeForce RTX 3080を搭載したゲーミングPCを所有しており、PS5 Proの価格を考慮すると購入を見送る予定だった。しかし、幸運にも米国本社での先行体験イベントにご招待いただいたので、PS5 Proの実力を確かめるべく参加してきた。本稿では、PS5 Proの実機体験を通して感じた進化を紹介する。また、商品企画を担当したSIEの青木俊雅氏とのインタビュー内容もお届けする。
PS5ユーザーが抱えるジレンマからの解放
このようなジレンマを抱えるくらいならPCでプレイしたほうがいいと考えるゲーマーも多いだろう。筆者もPS5専用タイトル以外はPCでプレイしていた。しかし、今回のイベントでPS5 Proのポテンシャルを体験したことで、PS5 Proの購入かPCのアップグレードか、真剣に検討せざるを得ない状況に陥った。それほどのショックを受けてしまったのだ。
PS5 Proのデザインと進化点
PS5 Proのサイズは、PS5 Slimより一回り大きいものの、“Pro”を名乗るには比較的小型に感じる。これは、PS5 Proの高さが初期型PS5と同じ約390mmである一方、横幅がPS5 Slimと同じ約260mmに抑えられているためだ。初期型PS5よりもコンパクトなサイズに収まっているのは驚きだ。
圧倒的なパフォーマンスを実感できる試遊体験
試遊できたタイトルは以下の通り。これらのタイトルを含む40~50タイトルが、PS5 Pro発売と同時に対応アップデートを配信予定とのことだ。
- デモンズソウル(Bluepoint Games)
- ドラゴンズドグマ 2(カプコン)
- F1 24 (Electronic Arts)
- ファイナルファンタジーVII リバース(スクウェア・エニックス)
- グランツーリスモ7(Polyphony Digital)
- ホグワーツレガシー(WB Games Avalanche)
- Horizon Forbidden West(Guerrilla)
- Marvel's スパイダーマン 2(Insomniac)
- ラチェット&クランク:リフトアパート(Insomniac)
- The Crew Motorfest(Ubisoft)
- The Last of Us Part II Remastered(Naughty Dog)
すべてのタイトルを試遊してみたが、ここではPS5版と比較してとくに大きな変化を感じたタイトルを例に挙げて紹介する。試遊したタイトルはすべて開発中のものという点は留意いただきたい。
ファイナルファンタジーVII リバース
しかし、PS5 Proではグラフィックモードと同等、あるいはそれ以上の画質で60fpsを実現していた。美しいグラフィックと安定したフレームレートの両立は、まさに理想的なゲーム体験だ。
今回のデモでは、グラスランド、ジュノン、ゴールドソーサーの3つのエリアをプレイできた。とくに大きな違いを感じたのはジュノンだ。アンダージュノンを遠方から望むシーンでは、PS5版では看板の文字がぼやけて判読できなかったが、PS5 Proでははっきりと文字やデザインを確認できた。また、アンダージュノン近くにあるチョコボ牧場のオブジェクトも、PS5版ではカクカクした描写だったが、PS5 Proでは滑らかに表示されていた。
これらの進化は、PS5 Proの目玉機能であるAIアップスケーリング技術“PSSR(プレイステーション スペクトルスーパーレゾリューション)”によって実現されている。PSSRは、SIEがAMDと共同開発した技術だが、マーク・サーニー氏を始めとするSIEのエンジニアが設計やアルゴリズムを主導し、PS5 Proに搭載する専用ハードウェアを開発することで完成した。
PCゲーミング界隈ではNvidiaによるAIアップスケーリング”DLSS”が有名だが、じつはNVIDIAのライバルでありSIEのパートナーであるAMD自身は、まだAIアップスケーリングに対応したGPUをリリースしていない。
ドラゴンズドグマ2
今回のイベントで試遊できたPS5版は、4K/30fpsに設定されていたが、それでも30fpsを維持できない場面が頻発していた。一方、PS5 Pro版はヴェルンワースでもフィールド戦闘中でも60fpsを安定して維持していたのは驚愕だ。しかも、装備のテクスチャやアンチエイリアスはより高精細に見えた。
カプコンの広報担当者によると、PS5 Pro版は最高画質設定で55~60fpsを維持できるようにパッチを開発中とのことだった。筆者のPCでは4K解像度を選択すると60fpsを維持するために画質を大幅に落とす必要があるため、PS5 Proの性能に驚かされると同時に、ついに自分のPCが完全敗北してしまう時が目の前に来ていると実感させられてしまった。 なんともツラい話だ。
The Last of Us Part II Remastered / Horizon Forbidden West
ホグワーツレガシー / デモンズソウル
『ホグワーツレガシー』は、PSSRでフレームレートを引き上げるのではなく、レイトレーシングによる反射と影の描写を大幅に強化するという方向性を取っている。PS5だとレイトレモードとクオリティモードは約45fpsで動作するが、PS5 Proのエンハンスドモードは30fpsに固定し、処理能力をレイトレーシングに割り当てている。
グランツーリスモ7 & F1 24
価格面はよりゲーム体験に熱中しているハードコアユーザーを意識。価格にあった高性能を実現
なのでほとんどのゲームが、4K30fpsとか1080pや1440pの60fpsというふたつのモードを用意していて、残念ながらベストの対比を提供できていませんでした。そこでPS5 Proの構想に入ったときに、やはりそこを何とかしたく、グラフィックスにフォーカスし、今回GPUをより強化して、レイトレーシングも強化、さらにAIのアップスケーリングを入れて、先ほど言った解像度とパフォーマンスの両立を目指してやってきました。
いくつかデモでも体験できていると思いますが、ゲームチームとしても今回のAIアップスケールが従来の単なるアップスケールよりも、よりリアリスティックにレンダリングに近い物を再現できているので、かなりみんな喜んでどんどんそれを使って、それによって60fpsに収まるようになったということで、デベロッパーさんからもかなり好評はいただいていますし、これでプレイヤーさんに4K60fpsといういちばんベストな体験を提供できるかなと思っています。
もちろんGPUだけではなくて、たとえば2TBのストレージだったりWI-Fi 7とか、より周辺的な機能や仕様も盛り込んでいるので、それだけの価値があると思っております。
――Wi-Fi 7は非常に新しい技術でまだまだ世間一般に浸透していませんが、PS5 Proに導入したのはクラウドゲームやPSポータルでのリモートプレイなどのラグ軽減が目的でしょうか?
――マーク・サーニー氏の動画によると、グラフィックモードについて、プレイヤーの4分の3がパフォーマンスモードを選んでいるとのことでした。PS5のような高画質の機種を購入するユーザーでもパフォーマンスを優先するということは、PS5で表現されるハイクオリティーなグラフィックは、ゲーマーの中ですらオーバースペックのように感じられている、という証明にもつながるのではないかと感じます。ユーザーがパフォーマンスモードを選ぶことが多いことについて、どのように感じていらっしゃいますか?
そうすると1080pとか低い解像度で遊んでいるのは、喜んで選んでいるわけではなくて、それしかないからなので、そこをよりきれいな映像で60fpsという本当にフルパッケージで楽しめるというのが、PS5 Proで提供できる価値だと思ってます。
そこで今回まずグラフィックスを合計で45%ぐらい強化しました。 レイトレーシングも2〜3倍速くなるので、レイトレーシングを使っているゲームはその分レンダリングが速くなります。
PSSRでたとえば2倍〜4倍アップスケールするのにも時間がかかりますが、2〜3msなので通常のレンダリングをするよりは短く済みます。 フレームレートが速くなる方向にいろんなものを強化しているので、ゲームの作り次第という点もあるので一概には言えませんが、60fpsや120fpもより狙いやすくなります。
――競技シーンでPS5とPS5 Proのあいだに入力速度などの不公平は生まれませんか?
――PS4のときには、PS4の型番の進行とPS4 Proなどの発売に合わせて初期型との乖離が大きくなり、『サイバーパンク2077』ではCD PROJEKT REDからゲームのパフォーマンスに関するお詫びが出る状況になりました。今後、PS5も初期型ではパフォーマンスの発揮が難しいといった状況が生まれる可能性はあるのでしょうか?
PS5だけだとどうしても両立できないので、少しパフォーマンスが下がっていると思われるかもしれませんが、いまと同じ状況にはなると思ってます。
――“PS5 Pro Enhanced”認証にはどのような要求を送っているのでしょうか? ゲームによって上限が60fpsだったり30fpsだったり変わっていますが、統一の規格のようなものはありますか?
PSSRにしても、もともとの画質がとてもよかったから違いがわかりにくいゲームもあれば、大きく変わるゲームもあるので、統一規格というのはアンフェアだと思います。
AMDさんとの共同開発ではありますが、マーク・サーニー筆頭にゲームチームとも話しながら、アルゴリズムとかこういうハードウェアに設計しましょうと決めました。
世の中にあるアップスケーラーそれぞれに好みだったり特徴があったりする中で、我々としては60fpsでプレイした時に、デベロッパーさんがこのアップスケーラーだったらネイティブ4Kではないけど、やろうとしていた表現が提供できると満足してもらえるレベルを目指そうというところから始まっているので、そこに特化してAMDさんともゲームチームともいろいろ試行錯誤して開発をしていきました。
――PS5にはPSSRをダウングレードしてでも実装はできませんか?
――最後にPS5 Proの購入を検討されている方へのメッセージをいただけますか。
PS5 ProはPCゲーマーをも魅了する次世代ゲーム機
一方で、PS5 Proによるエンハンスですべてのタイトルが一目見ただけで違いがハッキリわかるほど、劇的な変化をしているわけでもない。静止画なら違いが大きく感じられるが、動き回っている最中だと画質の差は感じにくくなる。 今回は大きなテレビでプレイしたが、PCモニターなどのサイズ感でプレイしたら画質の差はより小さく感じられるだろう。
しかし、フレームレート差によるプレイフィールの違いはとても大きい。 そのためアクション系や動きの早いタイトルをプレイする方にはとても強くオススメできるコンソールに仕上がっている。 今後、対応タイトルが増えていくことで、その真価がさらに発揮されるだろう。
プレイステーション5 Proは2024年11月7日(木)から販売開始。価格は11万9980円で、9月30日(月)10時より予約受付が順次開始される。