2024年9月26日~9月29日にかけて、ゲームの祭典“東京ゲームショウ2024(TGS2024)”が開催された。ビジネスデイ2日目の『勝利の女神:NIKKE』(以下、『NIKKE』)ブースでは、SHIFT UPのCEOであるキム・ヒョンテ氏と、ディレクターのユ・ヒョンソク氏が出演。
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ユ・ヒョンソク氏(左)/キム・ヒョンテ氏(右)
サービスから2周年を控える『NIKKE』について、ユーザーへの感謝を伝えつつ登壇したキム氏とユ氏。ふたりのトークから、ビジネスデイならではの開発秘話を聴くことができた。本稿では、その生インタビューの様子をお届けする。
キャラクターデザインを巡る、熾烈な競争
――開発を手掛けるSHIFT UPと、パブリッシャーのLevel Infiniteのあいだで、どのような協議が行われているのでしょうか。
ユ
Level Infiniteとは、役割分担をしています。SHIFT UPは開発チームとして、どのようにゲームをおもしろくするかを考えています。一方で、皆さんに届くように運営する方法については、弊社・SHIFT UPが得意とする分野ではない。だから“作る”と“届ける”を分担して行っています。『NIKKE』が成果を挙げているのは、Level Infiniteの努力あってこそで、弊社にとってのベストパートナーだと思っていますので、これからも末永くお付き合いいただければと思っております。
キム
よくケンカしているように見えるけど?(笑)。
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ユ
ここにはLevel Infiniteの皆さんがいらっしゃるので……! 本当に皆さんいい人ばかりですよ!
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――(笑)。"作る"と"届ける"、わかりやすいですね! つぎに、リリースから2年経ったからこそ、『NIKKE』の開発経緯をお聞きしたいです。
キム
開発には4~5年かかりました。最初の2年くらいはたいへんな時期でしたね。ゲームの大きな枠組みは決まっていたのですが、課題がたくさんありました。そのタイミングでユにディレクターとして合流してもらったのですが……。じつは、最初に私が若干の嘘をついて、彼を引っ張ってきたのです。 「もうほぼ出来上がっているので、すぐにでも動き出せるというよ」と。
その話に騙されて、ユが来ました。実際、フタを開けてみたら「うん?」と表情が変わりましたね。ただそのあとは、真剣に取り組んでゲームを立て直してくれました。その過程で彼は本当に苦労しましたので、私は申し訳ない気持ちをつねに持っていて、彼を見ると「何かサポートしたい」という気持ちがあります。
ユ
それに加えてちょっとした裏話がありまして。じつは、SHIFT UPには『Stellar Blade』チームへ参加するために面接を受けていました。しかし、『NIKKE』に強く惹き込まれて、いまはこちらの開発を手がけています。
キム
彼がそれだけ惹き込まれるほどの魅力が『NIKKE』にあったのだと考えています。だから詐欺ではないのです!(笑)
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――もともと『NIKKE』に参加させる予定で『Stellar Blade』のお話をしたわけではないですよね?
キム
私の記憶では絶対にそうではありません。
――いまでもそうですが、『NIKKE』がリリースされた2022年はほかにもたくさんのスマートフォン向けタイトルが出てきた、レッドオーシャン(競争相手がとても多い市場)の時代だったと思います。そのなかでも2年間を生き抜けた秘訣はありますか。
ユ
開発チームにはひとつ、モットーがあります。それは“なんとしてでも楽しいゲームを作ろう”というもので、これをずっと貫いています。ビジネス的な数字(売上)や指標を追求するのではなく、ユーザーさんが手に取って楽しいと感じることのできるゲームを作りたいということです。
そのようなゲームを作るためには、まず私たち自身が楽しいと思えるゲームにする必要があると考え、弊社のゲーム開発にとってもっとも重要な価値観としました。
だから、とんでもない開発も多かったのですが……、もし皆さんが『NIKKE』を初めてプレイしたときに、なにか“違和感”を感じた方がいらっしゃったとしたら、それは私たちのポリシーから来るものだと思います。
そして、ユーザーの皆さんがそこに気づいてくださって、楽しんでくださったのではないかと思います。改めて皆さんに感謝の言葉を送りたいと思います。
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キム
少しおもしろい逸話を紹介します。SHIFT UPには社内政治とか策略みたいなものがありまして。新しいシナリオが出来上がると、どうにか誰よりも先に原稿を手に入れて、それに合ったキャラクターデザインを企画して横取りしようとする作戦があるのです。
そういう策略をやられた側は抗議して、キャラクター統括のKKUEM(クエム)が状況整理をするのですが、デザインを描けなくなったスタッフが泣いたりとか、面談を申し込んだりとか、ひと騒ぎが起きます。
魅力的なキャラクターを作るための、熾烈な競争がくり広げられている環境です。私はそういうことがあるからこそ、ゲームがおもしろいものになっているのではないかと思っています。
――KKUEMさんというのは、キムさんの奥様でもありますね。キャラクターデザインの統括も手掛けられている……。ちなみにキムさんもキャラクターデザインを奪いに行かれるのですか。
キム
私がクエムに提案しても、実力不足でいつも拒否されています。
――なるほど、KKUEMさんのラインはかなりきびしいと。
キム
そうですね。昔と立場が逆転していて、いまでは私が承認を仰ぐ側になっています(笑)。
ネットミーム発のネタがゲームに実装! ユーザーと開発の共創
――先ほど“ユーザーさんが手に取って楽しいもの”を作りたいとおっしゃっていましたが、いちばん手応えを感じたものはなんでしょうか。
ユ
“OVER ZONE”(※)は私と開発チームのみんなで力を合わせて作りましたし、シフティーが参戦したエイプリルフールイベントも私が主導して作ったコンテンツですね……。いろいろあると思いますが、私はストーリーとしっかり連動したコンテンツがいいと思いますし、それこそが『NIKKE』の魅力だと思います。
※ハーフアニバーサリーで実装され、指揮官(プレイヤー)たちの心を破壊した人気シナリオ。キム
私が直接手掛けたわけではないですが、今年のエイプリルフールに実施したシュエンのイベントも楽しいと思いました。あれは、ユーザーの皆さんがつくってくださったミームと、開発側の用意したものが上手く合わさって、お互いに共感できる素敵なコンテンツになったのではないでしょうか。そういったものも、『NIKKE』ならではのよさですね。
――ミームと言えば、インターネットで流行った“DORO”をゲーム内にも登場させたのには驚きました。採用しようと思ったきっかけはありますか。
キム
開発室には例の“DORO”のぬいぐるみが100体くらいあるのですが、弊社ではそういったものを発売してはいません。それにも関わらず、社内にいっぱいいる状況がおもしろくて不思議な状況です。そうした環境があるから自然と取り入れるようになったのかなと。
――TGSで配っているうちわにも付いていますから、ほぼ公式グッズと言っても過言ではありませんね。
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キム
あのミームを描いてくださった方々に許可をいただいて、公式グッズに付けさせていただいています。ちなみに、頭と体の部分を手掛けたのはそれぞれ別の方ですよ。
ユ
体を描いた方はすぐに見つかったのですが、頭を描いてくださった方がなかなか見つからなかったという苦労話もあります。
――そこまでしてでもゲーム、グッズに取り入れたかったという熱意が伝わりました。
キム
今後もこういった取り組みは増やしていきたいです。ユーザーの皆さんが考えてくださったミーム、ネタ、コンテンツがゲームに取り入れられて融合するような経験は、開発をする者としては貴重で幸せなものでした。
――なるほど。私でもがんばってバズるネットミームをつくることができれば、ゲーム内に実装される可能性があるということですね!?
ユ
もちろんですよ。
――ということなので、皆さんもがんばってネットミームを作りましょう!
キム
ぜひお願いします(日本語で呼び掛けていた)。
PC版の横画面モードは事務職に最適
――『NIKKE』にはPC版もリリースされています。PC版はグラフィックが向上したり処理が速くなったりとメリットがたくさんありますが、クロスプラットフォームで開発する上で苦労やこだわりはありますか。
ユ
いちばん苦労したのは、横画面に合わせてリソースをすべて作り直したことです。PC版のリソースを作り直そうと決めた当初は、スタッフたちから「えー!」という声も上がりました。スタッフのみんなが苦労しましたが、いまは後悔していません。
PC版があるからこそ、よりたくさんのユーザーの皆さんに楽しんでいただいていると思っていますし、これからも横画面、縦画面それぞれのモードに対する最適化を図ってまいります。
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キム
私はPC版の横画面モードについて、ひとつ気づいたことがあります。社内のオフィスを歩いていると、仕事中のスタッフがモニターの片隅で横画面の『NIKKE』をプレイしているのです。事務職の方に最適なモードなのではないでしょうか。
――僕も仕事しながらデイリーを消化しています。片手間にできるよさもありますよね。
キム
それこそが『NIKKE』です。
――ありがとうございます。おふたりは現在、企画・開発などでどのようなことをされているのでしょう。
ユ
私の開発チームでの役割は、キム社長から給料を受け取ることしかないですね(笑)。それ以外にも少しやっていることとしては、開発の日程調整や、内容についての大きな方向性を決めること、細かなフィードバックなどを行っています。『NIKKE』に盛り込まれているリソースのほとんどに少しずつ私が関わっていると言うことができます。
キム
私は社員に給料を渡すことと、インセンティブをあげること、それからおやつを提供することですね。
――ユさん、おやつはしっかり提供されていますか。
ユ
いやあ~……(笑)。
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――(笑)。先ほど“OVER ZONE”のお話がありましたが、ほかにも思い入れのあるエピソードはありますか。
キム
最近の思い入れで言うと、『エヴァンゲリオン』コラボをさせていただいて、アスカとレイを描いたのですが、「エロすぎる」と却下されてしまいました。つぎは私の絵を使っていただきたいです!
ユ
あるエピソードで、NPCからひとりがボコボコになるまで殴られるシーンがあります。「こんなに殴っていいのか」という意見を出したのですが、意外とユーザーの皆さんには「いい」とおっしゃっる方がたくさんいらっしゃいましたね。
――なんとなくシーンが想像できました。ユーザーが思っていることを開発がわかってくれているからこその反応なのかなと思います。
2周年のイベントは1周年よりもボリューム大!
――11月で2周年を迎える『NIKKE』ですが、その開発状況を伺っても?
ユ
2周年には1周年のときよりもさらにボリュームたっぷりのコンテンツを準備しています。1周年もけっこう規模の大きいコンテンツだったのですが、2周年もそれに負けないようなものをたくさん用意しております。ミニゲーム制作に苦労していますが、皆さんぜひご期待いただきたいです。
素敵なキャラクターも準備しております。公開されたら、皆さんに好きになってもらえるのではないかと期待しております。これからも初心を忘れずにがんばって開発に励んでいきたいと思います。2周年だけでなく、数十周年が祝えるゲームにしていきたいと思います。
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キム
私は20年間、給料が払い続けられるようにがんばりたいと思います。
というのも、開発の初期は直接関わる部分が多かったのですが、後半になってからはユーザーに近い立ち位置になりました。いまはコンソール(家庭用ゲーム機)パートのディレクターを兼任していますので、『NIKKE』については応援する立場です。
しかし、『NIKKE』の開発スタッフの情熱からいろいろ学ばせていただいておりまして、初心に戻るきっかけにもなっています。本当にみんなが楽しそうに仕事をしていて、つらそうに仕事をする人を見掛けませんでした。
このように、みんなで楽しく作った『NIKKE』を皆さんのもとに届けられるように、これからもLevel Infiniteさんといっしょに、手を組んでがんばって参りたいと思いますので、これからも引き続きご期待いただければ幸いです。
――ありがとうございます。ちなみに、ミニゲームは本当に“ミニ”ゲームですか? これまでにMOG(『ヴァンサバ』のようなサバイバルゲーム)やFOR THE KING(タワーディフェンス)などが展開されてきました。
ユ
“ビッグ”ゲームかもしれないですね(笑)。
キム
社内ではすでにビッグゲームと呼ばれているのですが、私からすると“ジャイアント”ゲームと呼んでしまってもいいかもしれません。
ユ
開発としては、長い時間を掛けて“ビッグ”な感じに作っていますが、とはいえユーザーさんの目にどう映るか次第です。ミニゲームに感じるのであれば、それはミニゲームなのでしょう。
――少なくとも私はこれまでのコンテンツが“ミニ”に感じたことはないですね(笑)。
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1.5周年のミニゲーム“FOR THE KING”。大ボリュームすぎて“ミニ”ゲームじゃないと話題に。
キム
私がなにかアイデアを伝えると、すぐに開発のみんなが「それをミニゲームにしましょう!」と話してくれます。だから、新しいゲームを作りたいという気持ちでいつも斬新なものを届けられるようにがんばりたいと思いますし、私はそれを後ろから促すことができる人になりたいと思います。
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