“ANIPLEX.EXE(アニプレックスエグゼ)”は、アニプレックスが手掛けるノベルゲームの製作ブランド。2024年12月13日にPC(Steam・DMM GAMES・DLsite)向けに発売される『たねつみの歌』は、同ブランドの3rdプロジェクトとして生まれた。企画・シナリオ担当に、『雪子の国』『ハルカの国』などのノベルゲームシリーズを個人で製作し、その作品クオリティーで高い評価を受ける気鋭のクリエイター・Kazuki氏を抜擢した注目タイトルだ。
物語の舞台は、神々が暮らす春夏秋冬の世界。この地で、16歳の少女・みすずと、過去からやってきた16歳の母親・陽子、そして未来で出会った16歳の娘・ツムギら同い年の3人による、最初で最後の壮大な冒険がくり広げられる。
ファミ通.comでは、春夏秋冬の4つの国にかけて、全4回にわたって『たねつみの歌』に関する記事を展開している。企画のトリを飾る第4回は、メインキャラクターを演じた飯沼南実さん(みすず役)、渡部紗弓さん(陽子役)、早瀬雪未さん(ツムギ役)、田村睦心さん(ヒルコ役)にインタビューを行った。キャラクターの魅力はもちろん、作品やKazukiさんの魅力に迫る内容になっているので、最後までチェックしてほしい。
飯沼南実さん(いいぬま みなみ)
10月18日生まれ。福島県出身。声だけで表現できることに衝撃を受けて声優の道へ。代表作は、『ムーンガール&デビル・ダイナソー』(ルネラ/ムーンガール役)、『タイニー・トゥーンズのハチャメチャ学園』(スウィーティー・バード役)、『サガ エメラルド ビヨンド』(アメイヤ・アシュリン役)など。(文中は飯沼)
渡部紗弓さん(わたべ さゆみ)
9月25日生まれ。北海道出身。『恋は雨上がりのように』の橘あきら役でテレビアニメ初出演を飾る。近年は、『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』(ティアーナ役)、『神之塔 -Tower of God-』(蓮梨花役)、『2.5次元の誘惑』(喜咲アリア役)などに出演。(文中は渡部)
早瀬雪未さん(はやせ ゆきみ)
1月3日生まれ。東京都出身。おもな出演作品は、『ロクロ―の大冒険』(ロクロ―役)、『先輩はおとこのこ』(吉田美代役)など。(文中は早瀬)
田村睦心さん(たむら むつみ)
6月19日生まれ。青森県出身。『バトルスピリッツ 少年突破バシン』で初主演を飾り、さまざまな作品で活躍。近年は、『魔神創造伝ワタル』(星部ワタル役)、『百姓貴族』(荒川弘役)、『神統記』(カイ役)、『英雄伝説 界の軌跡 -Farewell, O Zemuria-』(カトル・サリシオン)などに出演している。(文中は田村)
多くのキャストが運命を感じた『たねつみの歌』のキャラクター
――『たねつみの歌』への出演は、どのような形で決まったのでしょうか?
田村
私は2023年の春ごろに、ヒルコを演じてほしいとご指名をいただきました。キャラクター表と台本をいただいて、ヒルコのイラストを初めて見たときは、線が細くて髪の毛がちょっと長めで中性的な雰囲気だったので、性別はどっちなんだろうと思って見ていましたね。資料に目を通すと性別が書いてあって、男の子なんだと思った記憶があります。
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ヒルコ(声:田村睦心)
――飯沼さん、渡部さん、早瀬さんもご指名があったのですか?
渡部
いえ、私たち3人はオーディションを受けました。
――どのキャラクターのオーディションを受けたのか教えてください。
飯沼
私はみすずの資料をいただいて、テープオーディションを受けさせていただきました。
――資料を見たときの第一印象は?
飯沼
大掛かりといいますか、すべてがちゃんと決まっている作品なんだなって驚きました。設定やキャラクターのデザインが全部決まった状態でオーディションの資料や企画をいただいたので、ものすごく大きなタイトルなんだとワクワクしていましたね。
――設定が決まっていたということは、オーディションを受ける段階で16歳のみすずのほかに、子どものころや母親になったみすずを演じることはわかっていたのですか?
飯沼
はい。オーディションには3つの世代のセリフが用意されていて、すべて収録させていただきました。
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16歳のみすず(声:飯沼南実)
――同じキャラクターの異なる3つの年齢をひとりで演じわけるのは、かなり珍しいケースかと思いますが、プレッシャーは感じましたか?
飯沼
プレッシャーはありました。オーディションに受かるかどうかわかりませんでしたし、そもそもどういうふうに演じればいいかわからなかったので。というのも、キャラクター表をいただいたときに、ほかの登場人物たちはキャラが濃いというか、ハッキリしているなと思いましたが、みすずはいわゆるふつうのやさしい主人公という印象を受けたので、どういうふうに演じていけばいいんだろうという感じでした。
――渡部さんがオーディションで受けたキャラクターは?
渡部
陽子でした。事務所から陽子のオーディションを受けましょうとお話をいただいたので。
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16歳の陽子(声:渡部紗弓)
――陽子の設定などを見たときの第一印象を教えてください。
渡部
おごっていると思われたくはないのですが、陽子役に受かる予感がしたんですよ。陽子にすごくシンパシーを感じて、私はあなたと縁があるような気がするなっていうのが第一印象でした。
――シンパシーを感じたというのは、たとえば渡部さんと陽子に似ているところがあったとか?
渡部
似ているというか、どこか近しいところがあるといいますか……。性格などが似ているというよりも、通じ合えるものがあるというか。陽子の気持ちが理解できて、陽子の声をいちばんうまく表現できるという自信がありました。テープオーディションが終わった後に、マネージャーさんに陽子とは縁がある気がすると伝えたのを覚えています。
――手応えがあったと。
渡部
テープオーディションなので、スタッフの方たちの反応を見ることができたわけではありませんが、セリフのひとつひとつがしっくりきましたね。スッと入ってきて、すごく気が合いそうな女の子と出会えたなという感覚が私の中ではありました。
――早瀬さんはどのキャラクターのオーディションを受けたのですか?
早瀬
ツムギ役を受けることになって、彼女の資料をいただきました。ツムギのイラストを見たときは、髪色が明るいのでギャルっぽい子なのかなと思いましたが、オーディションの台本を読んで印象が変わりましたね。すごくしっかりしている子で、自分の言葉をちゃんと相手に伝えられる強い子だなと思いました。
――ツムギは演じやすかったですか?
早瀬
そうですね。私も渡部さんといっしょで、ツムギのセリフを読んだときにスッと入ってきて、自分がしゃべっているような不思議な感覚になりました。ツムギと私は性格がぜんぜん違いますし、語彙力もツムギのほうがあるんですけど、なぜかこの子のことを知っているような感覚になりました。
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ツムギ(声:早瀬雪未)
涙なしには語れない感動のストーリー
――役が決まって、実際に台本を読んだ感想を教えてください。
飯沼
ボリュームがすごかったです。みすずはセリフ量が圧倒的に多かったのですが、実際に収録してみるとそんなに話したっけと思うくらい少なく感じて。むしろみんなのほうがしゃべっているんじゃないかと思いました。それで理由を考えてみたところ、みすずは登場シーンが多いものの、自分が中心になってしゃべるよりも、相槌を打ったり、リアクションをしたりすることが多かったので、文字量に対してセリフが少なかったんだと気がつきました。
――なるほど。渡部さんたちはいかがでしたか?
渡部
本作のようなノベルゲームは物語の順を追って収録が進んでいくので、ボリュームはたしかに感じましたね。ほかのキャラクターとの掛け合いや気持ちの流れは、ストーリーの流れをきちんと把握して演じていかないとわからなくなってしまうなとも思いました。
早瀬
私はノベルゲームの収録に参加したのがほぼ初めての体験だったこともあって、ボリュームはあるなと思いましたが、こういうものなんだなって気にならなかったです。ふだんから小説を読むのが好きだったので、台本を読んですごくおもしろいなと感じましたし、早くツムギを演じたいという気持ちが強くなりました。
――とくにおもしろいなと感じたところは?
早瀬
そもそも設定が斬新じゃないですか。三世代で旅をするというのがものすごく不思議だったので、そこから引き込まれました。春夏秋冬の国に登場するキャラクターたちが個性的だったので、最後まで楽しく読めましたし、涙が出るほど感動しました。
――たしかに、16歳の同い年の主人公と母、そして娘が旅をするという設定はインパクトがありますよね。田村さんは台本を読んでいかがでしたか?
田村
ヒルコはみすずや陽子、ツムギと比べて説明することが多くて。こんなにも時間がかかるかってくらい、収録日数をいただいた記憶があります。あとは、感動するシーンやセリフが多くて、涙が溢れて収録が止まる止まる(苦笑)。
一同 あ~!
渡部
スタッフの方が気を遣って、休憩をいれますかって聞いてくれるんですよね。
田村
そうそう! しかも、これから先のシーンやセリフも頭に入れてから収録を行っているので、このセリフはあのシーンに関係しているのかなって考えたりすると、ますます涙が止まらなくなっちゃう。
――台本を事前に読んで臨まれていると思いますが、その時点で収録がたいへんになるなと感じていましたか?
田村
めちゃくちゃ感じていました。ティッシュ箱を横に起きながら台本を読んでいましたが、途中から涙がこぼれちゃって……。練習もままならない。「ヤバい、収録どうしよう」みたいな(笑)。ヒルコも感動するシーンは多いんですけど、親子のシーンもそれぞれ泣けるところが多いので、なんて酷な演技をさせるゲームなんだって。
早瀬
私はカラオケでセリフを練習するのですが、台本を読みながら泣いちゃって。泣くたびに休憩をはさんで、泣きながらドリンクバーに行ったので不審に思われたかも(苦笑)。
飯沼
あの子、どうしたんだろうって?(笑)
渡部
私は仰向けになって台本を読んでいましたが、涙がどんどんこぼれていく。しかも鼻がつまりやすいので、泣くと息がつまって呼吸ができなくなるんですよ。
田村
わかる! 息ができなくなるよね!
渡部
『たねつみの歌』は感動して息ができなくなる(苦笑)。収録のときだけではなく、体験版をプレイしたときも泣いちゃいました。
飯沼
何度見ても泣けますよね。
早瀬
気持ちがグッと盛り上がって。
田村
展開がわかっているのに入り込んじゃう。
――飯沼さんはいかがですか?
飯沼
みすずは泣き叫ぶシーンが多くて、そこはスタッフさんに褒められましたね。とくに子ども時代は、「飯沼さん、お上手ですね」って言われたのを覚えています。私自身、子どものみすずがいちばん演じやすかったです。
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田村
たしかに、子どもの演技が上手いよね。
飯沼
すごくうれしいです(笑)。
田村
みすずが子ども時代のシーンを見たときに、「みすずは子役を使うんだ」って思ったんですよ。でも、よくよくセリフを聞いてみると、「めちゃくちゃしゃべるなこの子。これは大人だな」と気づいて。飯沼さんが子ども時代も演じていることを知って驚きました。
飯沼
うれしい~。モチベーションになる~。
――みすずと言えば、16歳のみすずが大人になった自分と会話をするシーンが印象的でした。どちらも飯沼さんが演じられていますが、あのシーンはどのように収録したのですか?
飯沼
16歳のみすずのセリフと、大人のみすずのセリフをそれぞれ別に収録しました。最初に16歳のみすずのセリフをすべて録った後、子どものときのセリフ、大人のときのセリフを収録したので、16歳のみすずと大人のみすずの掛け合いは、私もどうなるんだろうと思っていました。実際にそのシーンを見たときは、すごく恥ずかしかったです(苦笑)。
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大人になったみすず(画面左)と、16歳のみすず(画面右)の会話シーン。
田村
大人になったみすずも自然な感じでよかったよ。こんな雰囲気のお母さん、いるなって。
早瀬
みすずが成長したらこうなりそうって思いました。
田村
しゃべりかたがそのままだから。
飯沼
ありがとうございます。ふだんはふわふわしているんですけど、みんなと冒険を終えた後のみすずは、いろいろな経験を経て大人しくなって達観しているかなと思いながら演じました。
――みすずのイメージは、16歳、子ども、大人の順にかためていったのですか?
飯沼
そうですね。私の中でいちばんイメージをしやすかったのは、子どものみすずでした。無邪気なんですけど、すごく大人というか。病弱なお母さんを傷つけないために、自分の中でいろいろ考えているんですけど、子どもながらに素直なので演じやすかったです。逆に難しかったのが16歳のみすずでした。先ほどお話ししたように、特徴を掴むまで時間がかかりましたね。
収録が難航していたときに、企画とシナリオを手掛けるKazukiさんとお話する機会をいただいて。そこでみすずはKazukiさんかもしれないって思ったんですね。Kazukiさんはものすごくやさしい方ですし、いろいろ熱心に伝えてくれるんですけど、私のことを考えて言葉を選んでくれていたので、「あ、みすずっぽいな」って。Kazukiさんとのやり取りもあって、みすずのイメージがだんだんと固まっていきました。
――ほかのキャラクターに関しても、どのようにイメージを固めていったのか教えてください。渡部さんはどうでしたか?
渡部
陽子も16歳のシーンから録った後に、大人になったシーンのセリフを収録しました。16歳の陽子は、勝ち気な性格なのでセリフの量が多いんですよ。
たとえば、ツムギとケンカするシーンでは、ワードで攻めてくるツムギに対して、陽子は文章量で攻めるんですね。勝ち気な性格から早口でまくし立てるイメージもあったので、セリフはハキハキ、ハッキリと。強くて負けない女のイメージで演じました。Kazukiさんからは、セリフのニュアンスを変えてくださいとディレクションされたことはありましたが、役の方向性の指摘を受けた記憶はあまりないですね。
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――大人になった陽子は?
渡部
大人の陽子は病気で自分の死を身近に感じているので、淡々とゆっくりしていて、感情の起伏がないほうがいいのかなと考えました。ただ、大人の陽子は、みすずと冒険に行くことを16歳のときに体験して知っています。プレイヤーにも伏線として感じてもらえるように、意識するところは意識しようと演技プランを立てていました。スタッフの方たちは、私が考えた演技プランをくみ取ってくださりつつ、セリフのニュアンスや年齢感を指摘してくれたので、その都度調整しながら演じるようにしています。
――早瀬さんは、ツムギのイメージをどのように固めていきましたか?
早瀬
ツムギは、その場の感情みたいなものを大事に演じようと考えていたので、イメージをガッツリ固めていませんでした。ひとつだけ決めていたのは、ただ生意気で勝ち気な女の子には見えないようにしたいなっていうのがあって。ツムギはけっこう強気に見えますが、じつは周りの空気や相手の顔色をちゃんと見たうえで、自分の言葉を伝えられる子なんです。私は台本を読んでそう感じていたので、セリフの中にある繊細な感情もちゃんと表現したいなと思いながら現場に向かいました。
渡部
ツムギの声を初めて聞いたときはビックリしました。想像していたよりも、本当に現代っ子だなって。陽子、みすず、ツムギは世代が違うのに、会話がちゃんと成立しているのがすごいんですよ。そこにヒルコも加わって、会話がマッチしていることにゾクッとしました。
田村
私たちは親戚だからね(笑)。
飯沼
会話のふしぶしに、血の繋がりを感じられるんですよね。
渡部
ツムギの演技はすごく好き。お芝居の雰囲気が自然で。
早瀬
うれしい~。ありがとうございます。
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田村
私は最初、ツムギが生意気で、ものすごく苦手だと思った(苦笑)。
一同 (笑)。
田村
でも、物語が進むに連れて、ツムギの根底にある芯の強さなんかを感じて、いちばん好きなキャラクターになりました。
早瀬
たしかに、最初は生意気だったんですけど、あの姿勢はたぶん、陽子に舐められたくないというか。
渡部
強く見せたいんだよね。
早瀬
そうなんです。台本を読んで陽子に対して強くっていうのが気持ちとしてはあるんだろうなと考えて演じたんですけど、Kazukiさんにディレクションをしていただいたときは、とにかくもっと自然に、自然にと言われて。自然体を心掛けていくうちに、最終的にはいましゃべっているぐらいのテンションでいきましょうとなったので、私ではないですが、ほぼふだんのしゃべりかたで演じています。
――なるほど。田村さんはヒルコを演じるときに固めたイメージは?
田村
ヒルコは、根底にすごい怒りとか悲しみの感情があって、親切でやさしいところもあるんだけど、自分が信じることと外れたことをした人を見ると、ものすごく怒ることがあって。ふだんのおだやかなところと、怒っているところの揺らぎがあるなと思ったので、そこはちゃんと表現したいなと考えていました。
収録では、ヒルコが意地悪なことをいうシーンで、私が考えていた以上に「もっと意地悪くしてください」と指摘されたのが印象に残っています。私は自分のお芝居はあっさりめだと思っているのですが、ヒルコはもっと濃いお芝居を求められたといいますか。「ねっとりねっちりした、いやらしい感じで攻め立ててください」というようなディレクションがけっこうあって、その要求に答えるのがたいへんでした(笑)。怒るだけならいいんですけど、口を歪めて意地悪くいうシーンが多かったので。
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渡部
春の国でもありましたよね。「桜の木でも褒めてあげたらいいんじゃない?」みたいなことを言って。
田村
そうそうそう(笑)。ヒルコは、みすずたちに対しても急に意地悪になったりするので、こんな一面もあるんだなって。
飯沼
ヒルコは顔を歪めた表情の立ち絵もありましたよね。明らかに意地悪そう(笑)
田村
みすずとふたりきりになったときは、いじらしい瞬間もあるのにね。
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――意地悪なシーンは、演じるのが毎回たいへんでしたか?
田村
おだやかなシーンはすんなりいけるんですけど、意地悪なシーンは慣れなかったですね。
飯沼
でも、ヒルコに“ヌマる人”は絶対にいると思いますよ。
田村
いてくれるといいなぁ~。だいぶ情緒は不安定だけど(笑)。
飯沼
だからこそ支えたくなるんじゃないですかね。
渡部
ヒルコがバシッと言うシーンもグッとくる人はいると思いますよ。春の国の王様に進言するシーンも、みんなといっしょにいるんだなって意識が垣間見えてよかったです。
田村
あれは許せなかったのかな。自分はこんなめにあったのにって。ヒルコは、深い悲しみや強い怒りがベースにあって、孤独だからこそ必要以上に周囲の人たちを攻め立てちゃうんだろうなと思います。
――Kazukiさんとのやり取りで、田村さんが印象に残っていることはありますか?
田村
ヒルコが意地悪なシーンでは、いつもねちっこい演技を要求してきたことですね(笑)。
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収録も涙との戦いだった。“同い年の私・母・娘”が絡む難しさも
――台本の印象でもお話しされていましたが、公式サイトに掲載されている皆さんのコメントで、「泣ける」、「涙が溢れた」といったコメントが多くて印象的でした。本作のように感情を揺さぶられるシーンが多いと、演じるのが難しかったりするのでしょうか?
田村
私はとくに最後のほうのシーンがヤバくて、このまま収録ができないんじゃないかと思うぐらい泣いちゃって(苦笑)。 とくに秋の国からヤバいんです。
早瀬
秋の国はヤバい!
田村
ヤバかったよね! それぞれグッとくるシーンはありますが、秋の国からは涙なしには語れなくて。
早瀬
怒涛の展開でしたよね。
田村
秋の国は、「こんなシーンやめてくださいよ~」って感じで涙に溺れていましたね。
――とくに早瀬さんは同意していましたが、秋の国からは涙をこらえながら収録に臨んでいたと。
早瀬
そうですね。ただ、その前の夏の国にも、秋の国とは異なるベクトルの泣けるシーンがあるんですよ。とくにツムギにはトラウマになるようなシーンもあって、感情を爆発させるんです。この夏の国に対して、秋の国はストーリーで泣かせにくるんですよ。秋の国のシナリオをプレイして泣かない人はいないと思います。
――渡部さんがとくに感動して演じるのが難しかったシーンは?
渡部
プロローグで、16歳の陽子がみすずを迎えに来た後、みすずの祖母である陽子のお母さんに別れを告げるシーンです。お母さんの声がやさしくてピッタリでしたし、あのシーンは「ただいま」が言えない「いってきます」だからグッときちゃって。収録のときはあまりにも泣きすぎてしまったので、じつは収録し直しました。
体験版をプレイしても泣いちゃいましたし、いまも思い出して泣きそうですね。今後も泣きたいときに見ようと思います。
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田村
“涙活”したいときにピッタリだね。
――飯沼さんはどうでしたか?
飯沼
私は冬の国のシーンですね。ネタバレになってしまうので詳細はお伝えできないのですが、とある理由からみすずの心が死んでいて、私の心も大ダメージを受けてしまったんですね。台本を読んでいるので、結末はわかっているのですが、それでもちゃんと演じられるのかな、この物語を終えられるのかなっていう気持ちで演じていたので、みすずの気持ちとリンクして「もうしゃべりたくない」と思いました。冬の国はトラウマです。できれば、冬の国には行きたくないなっていう。
早瀬
冬の国はみんなトラウマですよね。
飯沼
後半は泣いて、叫ぶセリフが続いたので、スタッフさんに「大丈夫ですか」と心配されながら収録した記憶があります。
――演じる難しさでいうと、陽子とみすず、みすずとツムギは親子の関係ですが、16歳の少女という共通点があります。かなり珍しい関係性ですが、掛け合いなどのシーンは演じるのは難しかったですか?
早瀬
陽子に対してツムギは、孫と祖母の関係で親子よりは離れていますし、陽子は亡くなっていて会ったことがなかったので、友だちと割り切れていたと思います。でも、みすずはママなので、どうやって演じればいいのか難しくて……。
ツムギが「母親になる以前のみすずの前では、子どもは空っぽだよね」といったことを言うんですよ。私はこのセリフがとくに印象に残っていて、その通りだなって。16歳のみすずは、ママだけどママじゃない。この関係性を演じるのはたいへんでしたね。
だからといって、どんなに考えても、現実ではありえないじゃないですか。最後のほうは、ツムギも割り切ってみすずとして接していたと思いますが、最初のほうは葛藤があっただろうなと考えながら演じました。
――陽子はどうでしたか?
渡部
陽子は“たねつみの巫女”として選ばれて、みすずを迎えにやってきたので、陽子が疑問を持ってはいけないなと思って。みすずとの出会いのシーンでは、「私は陽子」、「あなたの母」、「いっしょにいくわよ」みたいな感じで、全部強気でいこうと考えていました。それもあって、演じるにあたって関係性の難しさは感じなかったですね。
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田村
陽子はブルドーザーみたいだよね。うぉーって。
渡部
そうですね。全体的に強気で、まくし立ててしゃべらないといけなかったので、迷わずに突き進んでいった感じです。
田村
時代を感じるよね。個人的なイメージですけど、昭和の人は強そうってイメージがあって。陽子は、私についてきなって感じがするよね。
渡部
陽子はわからないときも強気なんですよ。みすずだったら、「それはわからないなぁ」ってひと言だけ言うんですけど、陽子は「わかんない」、「なんで?」、「どうして?」、「どうなったの?」といったことをズバズバ言うので。
田村
わからんものはわからんと(笑)。春の国でニワトリを絞めているシーンも、心が強いなと思いました。やらなきゃいけないことはやるみたいな。いやなことも人に押し付けないで、折り合いをつけるところは陽子の強さを感じましたね。
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――みすずは、16歳の母親、16歳の娘といっしょに旅をするので、3人の中でもいちばん難しいのかなと思います。実際に演じてみていかがでしたか?
飯沼
そうですね……。みすず自身がみんなに対して、陽子は私のお母さん、ツムギは私の娘、ヒルコは生まれなかった私の弟ってそれぞれ紹介をしているけど、「何を言っているの?」みたいな状態なので、関係性や距離のとりかたはどうやって表現しようと考えていました。
物語が進むうちに、陽子の仕草は亡くなったお母さんと同じだよなとか、ツムギは私譲りなところがあるなとか、ヒルコが本当の弟だったらこういうことがあったかもしれないとか……。そういった感情がどんどん生まれてきて、みんなとどんどん打ち解けていくのが伝わればいいなと思って演じましたね。
――ヒルコは生まれることのできなかったみすずの弟ということで、4人の中で唯一、現実世界での関係性がありません。みすずたちとの距離のとりかたはどうでしたか?
田村
ヒルコは距離が近いこともあれば、急に意地悪をすることもあったので、ほかのメンバーとの距離感をあまり意識していないのかなって。ひとりだけ男だからとか、こういうことを言っちゃいけないとか、そういう考えはなさそうな感じで。ヒルコが人間ではないからなのか、距離感の保ちかたが独特だなと思いました。
早瀬
ヒルコのことをわかったと思ったら、急に心を閉ざされることもあったので、ずっと掴めない感じでした。
田村
危うい感じがするよね。
早瀬
そんなところも沼でした(笑)。
一同 (笑)。
――なるほど(笑)。これまで少しだけ話題に出ましたが、改めて体験版の中でとくに印象に残っているシーンやセリフを教えてください。
田村
母の陽子と子どものみすずのシーンが印象に残っています。本当はもっと陽子に甘えたかったのに、甘えるのを我慢している姿からみすずのやさしさが感じられていいなって。ツムギは強がっていて生意気に見えるところ、陽子は強い母性で引っ張っていってくれるところが好きですね。みすず、陽子、ツムギと出会えたからこそ、ヒルコは心穏やかに過ごせたのかなっていうのも感じられました。
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幼いころのみすず(画面右)と入院中の母親・陽子。
渡部
私はニワトリを絞めるシーンです。陽子が自分でニワトリをさばいて、みすずにお手伝いをさせて、ツムギにはやらせないという選択をするのですが、そのときにみすずが「全部陽子ちゃんにやらせて、私もやるよと言わなかった。私はずるいんだ」みたいなことを考えるんですね。
体験版をプレイしてそのシーンを見たときに、これまでの人生で似たような体験があったことを思い出しました。人任せにして、自分はやらなかった。あのときの自分はずるかったんだなって。お芝居をしているときには気づかなかったんですが、Kazukiさんの台本には、プレイヤーの気持ちにリンクするシーンがところどころに埋まっていることを発見してゾクッとしました。
――飯沼さんが印象に残ったシーンは?
飯沼
みすずがお祖父ちゃんやお祖母ちゃんと、わちゃわちゃしているシーンが印象に残っています。台本で読んだときよりも、声が入ってゲームになっているものを見たときに、すごくいい家族だなって感じられたんですよ。 じつは私も一時期、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんと暮らしていた時期があって。渡部さんがリンクするシーンがあると言っていましたが、私は祖父母との日常シーンが記憶とリンクして共感できました。
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――早瀬さんはどうですか?
早瀬
先ほど挙げたツムギとみすずの会話シーンが印象に残っていますが、ほかにも春の国で陽子の寝ぼけた姿を見られたのも印象的でした。寝ぼけた陽子はめちゃくちゃかわいくて、赤ちゃんみたいだったんですよ。
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渡部
あのシーンはディレクションを受けました。「もっとかわいらしく」って(笑)。ふだんとのギャップが感じられていいよね。
早瀬
そうなんですよ。陽子にもこんな一面があるんだなって。
――改めてにはなりますが、演じられたキャラクターの魅力や、注目してほしいところを飯沼さんから教えてください。
飯沼
みすずはマイペースでとてもやさしくて、ふだんはふわふわしていますが、自分のことよりも相手のことになると力を発揮できる女の子です。私はふだん、他人を第一に考えたことがなかったので、みすずを演じていろいろ考えさせられることが多かったです。私もみすずのように生きようと勇気をもらいました。
――みすずは、「おったまげーのぶったまげー」といった、ユニークなセリフも個性的だなと思いました。
飯沼
そうでした(笑)。みすずはセリフの中に、見たことも聞いたこともないギャグみたいな文言が出てくることがあって。これらの文言はどういった場面で、どんなイントネーションで使うのか、Kazukiさんに教えてもらいながら演じたのを思い出しました。
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――陽子の魅力や注目してほしいところは?
渡部
やり残したことがないように、懸命に生きる陽子の姿をぜひ見てほしいです。猪突猛進というか、真っ直ぐな性格なのは、体が弱くて人生が長くないことを、16歳の段階で感じているからだと思います。
ゲームをプレイし終わった後に、陽子の命の輝きと生きた証を感じてもらって、最初の病室のシーンに戻ってもらえたらうれしいです。クリアした後に、もう一度振り返りたくなるような作品だと思うので。欲を言えば、すべてのキャラクターに注目して、もう一度遊んでほしいというのが私の願いになります。
――ツムギはいかがでしょうか?
早瀬
旅を通してツムギがどんどん子どもっぽく、素直になっていくので、そこに注目してほしいですね。それに、ツムギは現代の子どもをいちばん投影しているキャラクターだと思います。現代の子どもが、感情をあらわにしていく姿はなかなか見られないので、そこにもぜひ注目してほしいです。そして、ツムギのことを身近に感じてもらえるとうれしいです。
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――同様にヒルコもお願いします。
田村
ヒルコは全編を通してミステリアスな存在ですが、順を追っていくと、なぜミステリアスなのかだんだんわかってくるので、それを楽しみにしていただきたいなと思います。あと、渡部さんが仰ったように、物語を振り返ってみると、セリフになっていない「……」にも、何らかの感情が乗っているんだろうなと想像できると思うので、物語がよりふくらむというか、ますます楽しんでいただけるのではないでしょうか。
――最後に、本作の発売を楽しみにしている読者やファンに向けてメッセージをお願いします。
飯沼
ここでは語りきれないくらいストーリーが壮大で、イラストや音楽もステキな作品です。この4人の家族が旅の中でどんな決断をして、どのような結末を迎えるのか。ぜひ注目していただけるとうれしいです。
渡部
体験版をプレイして、美しいイラストや音楽に、壮大なストーリーが動かされていることを確信しました。どこかに自分に通じるカケラがあって、どこかで共鳴して感情が揺さぶられたり、自分の人生を振り返ったりできると思うので、ぜひカケラを探してみてください。自分だけではないんだ、こんな人もいるんだと、いろいろな人間ドラマが楽しめると思います。そして、私たちが演じた魅力的なキャラクターたちにも注目しながら、たくさんの人にプレイしていただけたら幸せです。
早瀬
『たねつみの歌』には選択肢がないので、必ず同じ結末を迎えますが、異なる感想を抱く人が多いと思います。クリアした人どうしで、感想を語り合ってもらえるとうれしいです。収録が終わって時間が経っていますが、私自身、ふとしたときにこの作品を思い出すことがあって。遊んでいただいた方たちの記憶に残る作品になっていますので、発売を楽しみにしてください。
田村
いろいろな登場人物たちの、きれいな感情も、そうではない感情も、すべてむき出しになっている作品です。プレイすると自分に思い当たるフシがあって、喜び、悲しみ、イラ立ちといった感情を揺さぶられる作品になっていますので、感動したいとき手に取っていただけるとうれしいです。最後までプレイした後に、最初から遊んでもらえると新しい発見もあると思います。