『バーチャファイター5 R.E.V.O.』レビュー。映像表現向上とネット通信改善で、対戦ツールの完成度はアップ。ファンには喜ばしいが、新規層と新作への架け橋となるか?

by西川くん

更新
『バーチャファイター5 R.E.V.O.』レビュー。映像表現向上とネット通信改善で、対戦ツールの完成度はアップ。ファンには喜ばしいが、新規層と新作への架け橋となるか?
 セガより2025年1月28日にリリースされた、対戦格闘ゲーム『Virtua Fighter 5 R.E.V.O.』(『バーチャファイター5 レヴォ』。以下、『VF5REVO』)。3D格ゲーの金字塔である『バーチャファイター』シリーズの最新作となっている。対象ハードはPC(Steam)のみ。実際にプレイしてみてのレビューをお届けしよう。
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『VF5REVO』とは?

 最初に言ってしまうと『VF5REVO』の基本的な中身は、『バーチャファイター eスポーツ』(以下、『VFes』)そのもの。『VFes』は2021年にリリースされたタイトルで、2010年にアーケードで稼動した『バーチャファイター5 ファイナルショーダウン』(以下、『VF5FS』)のリメイク、またはリマスターに近い作品だ。

 そんな
『VFes』は2024年12月にVer.2.00のアップデートを実施。『VF5FS』稼動時の最終アップデートから数えて、約13年ぶりとなるバランス調整が加えらえた。基本的には細かな調整だが、一部の技が新たに追加されるなど、ちょっだけ新鮮味のある要素が登場している。
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 そして今回リリースされた
『VF5REVO』は、『VFes』のVer.2.00をもとに、PC向けに制作されたタイトルとなっている。とまあ、経緯はいろいろとややこしいのだが、知らない人に端的に言えば2010年の『VF5FS』が今風のネット対戦向けに調整されたのが『VF5REVO』だと思っていいだろう。
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 もしそれなりのスペックがあるPCを持っていて、
『バーチャファイター』シリーズを触ってみたいという人がいれば、間違いなく本作から始めるのがベスト。PCを持っていなかったり、スペックが足りなかったりする人で、プレイステーション4やプレイステーション5を所有しているのであれば、内容自体は同じなので『VFes』を遊ぼう。ちなみにネットワークシステムが異なるため、クロスプレイには対応していない。

グラフィック向上&ネットワーク改善

 本作は『VFes』のころから龍が如くスタジオが開発に関わっており、『龍が如く』シリーズに使用されている“ドラゴンエンジン”で制作されているため、さすがにAAA級のグラフィックとまではいかないが、『VF5FS』よりも格段に綺麗なグラフィックを実現している(造形の印象は個人の好みにも左右されるところだと思うが)。
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 『VF5REVO』ではさらに最大4Kの内部解像度と、フレームレート60fpsに対応。より高繊細かつ滑らかな画面でゲームを楽しめるようになった。ただ個人的には、もともと綺麗だったこともあり、さほど違いは感じられなかった。あくまでオマケ的なアップグレード要素だろう。
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画像は『VFes』のもの。
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こちらが『VF5REVO』(最高設定)。ほとんど差は感じられないだろう。
 最大の特徴は、昨今のネットワーク対戦では主流である“ロールバックコード”を採用していること。細かな解説は省略するが、カンタンに言うとネットワーク対戦がラグなどを感じさせず、より快適に楽しめるようになっている。

 『VF5』シリーズはコンマ1秒の細かな攻防が重要視されるため、ラグ問題は勝敗に関わる重要なポイント。『VFes』も快適ではあったのだが、オフライン対戦よりもどうしてもラグを感じることは多少あり、完璧……とまではいかなかったのが正直なところ。

 今回はさらに快適な環境で楽しめるようになり、ようやく対戦ツールとして完璧なものを目指した、というのが本作
『VF5REVO』の方向性だろう。
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グラフィック設定の項目はとても細かい。より高繊細なグラフィックにすることもできるほか、クオリティを落としてPCスペックに合わせることも可能だ。

実際の対戦環境はいかに?

 ネットワーク対戦を試したところ、基本的にはスムーズかつ快適にバトルを楽しむことができた。とはいえ、発売すぐの1月28日頃は、海外にいるプレイヤーとは試合にならないことも多かったのも事実だ。筆者の環境ではラグをかなり感じ(正確にはロールバックの多発)、キャラクターがワープしながら戦っていたので、同じエリアのプレイヤーと戦うのがベストだろう。

 ただ、人によっては同じエリアでもロールバックが多発したり、再戦したらロールバックが消えた……なんてこともあり、回線相性などの問題なのか、いまのところ“完璧に快適に遊べる”とまではいっていなかった。また、海外プレイヤーともマッチングする仕様だったのも大きいようだ。
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メインメニュー画面。ほかのプレイヤーの試合が流れるので、トップ画面で放置するだけでも観戦を楽しめる(全画面表示も可能)。
 発売日から間もなく2025年2月4日にアップデートが入り、マッチング対象を自身と同じエリアのみに設定できるようになった。そのため、海外プレイヤーと当たることはとても少なくなり、以前よりも快適に対戦できる機会が増したように感じる。
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マッチング設定はアップデートで、より細かくなった。
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いまのところランクマッチは不安定な部分があるため、ルームマッチで相性のいい人と連戦する人が多いようだ。
 基本的には快適で『VFes』よりもラグを感じない対戦が多い。が、少し安定しないところが残っているといった感じ。まだまだアップデートで改善されていくことに期待したい。

 なお、本作のユニークな要素として、ネットワークまわりの調整がおおまかに変更可能。ロールバックの発生頻度、入力遅延のレスポンスを調整することで、ある程度自分好みの対戦環境にできる。
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 小難しい要素なのだが、「相手の攻撃が見えていたのに、ガードできなかった!」みたいな遅延部分を優先して改善するのか、それとも「相手に攻撃を当ててヒット音が聞こえたのに、ガードされていた!」といったロールバックで発生する問題を改善するのか、その優先度を変更できるようなイメージ。

 ほかのタイトルにはない環境設定で、うまくできれば素晴らしい設定項目になるだろう。ただ現状は(β版)と表記があるように、まだまだ制作中のもののようだ。いまのところ、個人の体感としてはデフォルト設定のままのほうが安定しているような気がした(好みやネットワーク環境に左右されると思われる)。
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 ちなみにアップデートでステージ演出がスキップ可能になるなど、よりテンポよく対戦できる調整はとてもいい。できれば、連戦時はステージをもう1度ランダムセレクトしてほしかったのは高望みだろうか(本作はステージとキャラクターの相性がとても重要)。

 また、個人的にはボタン設定が
『VFes』よりも自由度が減っているのも気になった。パンチ、キック、ガードボタンと、同時押しボタンを最低限いずれかのキーに割り振ることができるのだが、複数のキーにボタンを割り振ることはできない。アーケードコントローラーならどうでもいい要素ではあるのだが、このあたりも今後改善されることを期待したい。
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『VFes』のボタン設定。パンチボタンを2個に割り振ったりできる。
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『VF5REVO』では各ボタン1個のキーのみに設定できる仕様だ。

新規層には厳しめの環境か

 といった感じで、本作は『VF5FS』プレイヤー向けの対戦特化ツールといった内容。もちろん、発表済みの新作『バーチャファイター』につなげる目的はあると思うし、実際界隈の盛り上がりも感じられる。

 ただ、新規層の開拓はゲーム外からは感じられるのだが、本タイトルからはあまり狙っているように感じられなかった。チュートリアルやトレーニングなどは基本
『VFes』そのままで、コマンドリストは昨今の対戦格闘ゲームとしては情報も少なく、とてもシンプル。
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 ゲーム外では、たとえば
公式サイトのキャラクターページで、キャラクターの特徴を長めに解説してくれたり(『VFes』からあったが、知らない人も多いだろう)、技表にはすべてのデータ(フレームなど)が閲覧できる。また、YouTube公式チャンネルでは、初心者講座動画が公開されており、外側ではそれなりにやる気を感じられる。

 いちファンとしては、もう少し新規プレイヤーを狙った要素も取り入れてほしかったところ。ゲームの基本が複雑なのは
『VF5FS』が元なので仕方ないが、コマンドトレーニングの表記をもっとわかりやすくする、収録されている基本コンボをもっと実用的なものにするなど、いろいろと付け加えることができただろう。テキスト類の追加や補足だけでもあるとよかったように思う。
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今風ならばリストに情報を付ける、技の説明を加えるなども可能なはず。
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たとえば、コマンドトレーニングで“提籠換歩”中と表示されても、提籠換歩を出すにはどうすればいいのか、そもそも提籠換歩とは何なのか、初心者にはわからないだろう(リストを開くとガイドはある)。コマンドトレーニングにもガイドを付けることもできたはず。
 一応、Ver.2.00の共通バランス調整として“立ちP(パンチ)が、移動入力をせずとも前進する”、“キャラクターの重量(空中コンボ時の浮きやすさ)が少し簡略化された”といったものが加えられている。これは初心者にもやさしくなった要素なのだが、知らない人は説明されてもマニアックすぎて伝わらないのでは、という心配も。

 たしかに全体的なハードルは少し下がったのだが、その前のゲームへの導入をどうにかしてほしかったというのが、筆者の包み隠さない感想だ。逆に言えば、往年の熟練プレイヤーや「昔遊んでいた」という復帰プレイヤーは、そのまますんなり遊ぶことができる。バランス調整によるちょっとした違いはあるが、基本的な部分はそのまま。対戦ツールの決定版として、バトルを楽しむことができる。
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たとえばアキラならば、崩し技から白虎双掌打に派生できるなど、復刻技も少しだけ追加されているので、往年のプレイヤーにも新鮮な部分はある。

『New VIRTUA FIGHTER』に向けて

 2021年の『VFes』、2023年より稼動したアーケードタイトル『バーチャファイター 3tb Online』(『バーチャファイター 3tb』のオンライン対戦対応版)、そして今回の『VF5REVO』。いずれも移植的なタイトルではあるが、比較的短い期間で続々と『バーチャファイター』が動いている最中だ。

 驚かされたのが、2024年12月に突如として発表された『New VIRTUA FIGHTER』プロジェクトだ。
『バーチャファイター』シリーズの新作として制作されており、『バーチャファイター』ファンはもちろんのこと、対戦格闘ゲームファン全体で大きな盛り上がりを見せた。

 『バーチャファイター』の名を聞いたことがある、遊んだことはないが知っているという人も、この盛り上がりを見てきっと、少なからず『バーチャファイター』シリーズに興味を持ってくれたように思う。

 『VF5REVO』はその架け橋のひとつであり、長く愛してくれているシリーズファンへのアンサーとも言えるタイトルだと感じられた。また、新作に向けた開発ノウハウの蓄積も狙っているのだと予測する。
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 ただ前述したように
『VF5REVO』は新規プレイヤー向けて「オススメです!」とは、胸を張っていいにくいのが正直なところ。ゲーム外での施策では、本作の攻防を解説したりしているので多少は興味を持ってもらいたいが……。

 とはいえ、
『バーチャファイター』シリーズが本格的に再始動したのはとても喜ばしい。いきなり大きな距離を踏み出したのではなく、着々と1歩1歩進み続けているのは実感しているので、いちファンとしてもぜひ応援したい。

 発売からすぐ不満点を改善したアップデートが実施されるなど、今後のアップデート情報にも期待したいところ。もちろんファンとしては「いますぐ買って!」と言いたいが、客観的に見るとある程度の改善を待ってから購入するほうがいいかも。

サントラ、マジでオススメです

 ちなみに新オープニング曲『Burning Soul』はものすごく素敵で、ムービーと相まってホロリと泣いてしまった。『VF5』シリーズのエンディング『愛はついえない』の英語版、といった感じなのだが、影丸役であり日本一歌の上手いサラリーマンこと、セガのサウンドクリエイター・光吉猛修氏が新たに歌唱している。下記動画もぜひチェックしてみてほしい。

 また、ゲームに直接の関係はないが、『Virtua Fighter 5 R.E.V.O. - 30thアニバーサリーエディション』を購入すると手に入るダウンロードコンテンツ『Virtua Fighter 5 R.E.V.O. - VF30周年 アニバーサリーサウンドコレクション』は超絶オススメ。

 歴代シリーズのBGMはもちろん網羅され、これまでサウンドトラック化されていない曲だけでも200曲以上を収録されている。『バーチャファイター サイバージェネレーション』などの曲も楽しむことができ、
なんと500曲以上ものサウンドを楽しめる。対戦は引退してしまった人でも、これだけのために買うべき!
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