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『Neverway』悪夢侵食スローライフRPGはホラーな『ルンファク』みたいなゲーム? 「構造的には『Undertale』や『MOTHER2』に近い」【インタビュー】

by小林白菜

更新
『Neverway』悪夢侵食スローライフRPGはホラーな『ルンファク』みたいなゲーム? 「構造的には『Undertale』や『MOTHER2』に近い」【インタビュー】
 PC向けプラットフォームSteam向けにColdblood Inc.が開発中のスローライフRPG『Neverway』。のんびりと遊べて癒やしが得られるゲームが多いスローライフ系のタイトルながら、“悪夢に侵食される”という要素やグラフィックのスタイルなど、ダークで不穏なテイストも印象的だ。

 まだ謎が多いゲーム内容についてメールインタビューを行うと、2名の共同ディレクターと、音楽を手掛けるDisasterpeaceことリッチ・ブリーランド氏に、回答してもらえた。
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イザドラ・ソフィア(イザ)

Coldblood Inc.の共同設立者で、『Neverway』の共同ディレクター。ブラジル系カナダ人のソフトウェアエンジニア。デバッガークイーン!

ペドロ・メディロス

Coldblood Inc.の共同設立者で、『Neverway』の共同ディレクター。『Celeste』の開発にも参加したピクセルアーティスト。

リッチ・ブリーランド(Disasterpeace)ディザスターピース

アメリカの作曲家。63枚ものアルバムをリリース。ゲームでは『FEZ』、『Mini Metro』、『Hyper Light Drifter』、映画では『イット・フォローズ』、『アンダー・ザ・シルバーレイク』などなど、媒体の垣根を超えて数多くの作品のサウンドトラックを制作している。

罪悪感、負い目、そして“人に頼る術を学ぶこと”など、現代社会と通じるテーマも

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――本作がどんなゲームなのか、教えてください。

イザ
 『Neverway』を開発する中で、このゲームを上手に説明するのはすごく難しいと気づきました(笑)。特定のジャンルに縛られないよう、あえて「ホラー、アクションRPG、ライフシミュレーションを融合させた作品です」と説明しています。

 本質的には物語重視のゲームで、プレイヤーは主人公・フィオナが抱える問題(あるいは問題から目を背け続ける現実)に向き合う旅を追体験します。戦闘や農作業、ホラーといった要素は、フィオナの視点に立ったときに世界が生き生きと感じられるように設計されています。
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――田舎でのスローライフ的な設定に不穏な要素を取り入れているゲームは珍しいと思います。なぜこのようなゲームになったのでしょう?

イザ
 不穏な要素を取り入れることは、ある意味で“必然の成り行き”でした。私と共同開発者のペドロはともにホラーが大好きで、ゲームの方向性を模索する中で、ホラー的で不穏な雰囲気を取り入れるとむしろ開発がスムーズになると気づいたのです。それは私たちにとって、ごく自然な流れでした。

 また、あらゆる点で正反対の性質のコントラストを活用することが非常に効果的だとわかり、それがこのゲームの重要な柱となっています。

 のどかな田舎の生活や心温まるキャラクターとの交流を、暗く不穏なストーリーと組み合わせることで、ダークな要素が際立ちます。物語が重くなりすぎたときには、息抜きやリフレッシュの場も設けてあります。ドラマの
『ツイン・ピークス』がこの絶妙なバランスを実現した作品だと個人的には思っており、本作もそこから大きな影響を受けています。
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――不穏な世界観やストーリーは、現実に存在する心身の問題などをモチーフにしていますか? それとも、現実とは距離を置いたところにインスピレーションがあるのでしょうか?

ペドロ
 現実世界からも間違いなく影響を受けています。とくに、私たち自身が人生のどこかで経験したことが、ある意味でインスピレーションとなっていると言えるでしょう。

 『Neverway』が扱っているテーマには、現実から逃れて新しい生活を始めたいという願望、否認、罪悪感、負い目、そして人に頼る術を学ぶことなどがあります。これらは現代社会において日常的に向き合うものでもありますから、多くの人が共感できるのではないかと思います。
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――バトル、交流、農業やクラフトといった各種要素を踏まえると、『ルーンファクトリー』シリーズに近いゲームであるように感じます。もしプレイしていたらでいいのですが、ゲームデザインとして『ルーンファクトリー』と似ている部分、大きく異なる部分についてお聞きしてみたいです。

ペドロ
 じつはまだ『ルーンファクトリー』をプレイしたことがないのですが、たくさん動画などを見て研究しています。これを機に、参考のためにプレイしてみようと思います!

 ただ、農業と戦闘を組み合わせている点などは似ているかもしれませんが、共通しているのはそれくらいだと思います。構造的には『Neverway』は物語重視のゲームであり、むしろ『
Undertale』や『MOTHER2』に近いです。
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――10人以上の島の住人たちと絆を深められるとお聞きしました。全員と友人だけじゃなく恋人になることもできるのでしょうか? それとも、彼らの性的指向によっては恋人にはなれない場合もあったり、友人や恋人といったくくりでは言い表せない関係になれたりしますか?

イザ
 “恋人ルート”が用意されたキャラクターが島の内外に10人以上います。ただ、私自身もそうですが、「RPGや農場ゲームではさまざまなキャラクターと仲よくなりたい」というプレイヤーのために、イベントシーンはすべて“友情ルート”でも解放できるようにする予定です。友情ルートは、恋愛要素を省いた形となります。

 たとえば会話中の選択肢で、そのキャラクターを恋愛対象として見るか、友だちとして過ごすかを選べます。わかりやすくするために、恋愛可能なキャラクターはソーシャルメニューで“独り身”(あるいは“破局済み”笑)と表示されるので、恋愛対象にできるかどうかは一目瞭然です。ただし、意外な展開もあるかもしれません。個人的に「ゲームに“悪人”が恋愛対象として登場したっていい」とずっと思っていたので、この願いを反映させています。

 また、デートに関しては、“誰かとカップルになる”という伝統的な帰結に縛られないでほしいと考えています。その理由のひとつは、フィオナが責任のある関係性を築くのが苦手で、現在まさにそれを克服しようとしている最中だからです。とはいえ、デートの相手を誰にするかが物語の中で重要なカギを握るシーンもあります。
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――グラフィック表現において本作で新たに挑戦していることがあれば教えてください。

ペドロ
 本作のグラフィックにおける最大の特徴は、その限られた色彩です。現在のところ、ゲーム全体を通して一度に使用される色は11色程度に抑えられています。時間帯や場所、特殊な状況に応じてこれらの色を変化させているんです。

 これによって、ゲーム全体に強い視覚的な統一感をもたらしつつ、同時に単調さを防ぐ効果も期待できます。また、色使いにはゲームの世界観に沿ったある意味合いも込められており。この点もプレイヤーに楽しんでもらえるとうれしいですね。
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――音楽を手掛けるDisasterpeace氏といえばゲーム以外にホラー映画『イット・フォローズ』などにも参加されています。本作の聴く者を不安にさせる楽曲は、この映画に近いアプローチで制作しているのでしょうか?

リッチ
 アプローチはまったく異なります! 『イット・フォローズ』では、おもに専用の減算合成シンセサイザーパッチを構築して曲を作成しました。『Neverway』では、ほとんどすべてが古いFMシンセサイザーチップのエミュレーションを用いて作られています。

 また、『イット・フォローズ』では音楽的な参照を多用しましたが、このゲームでは一切行っていません。そのため、より自由に制作を進めることができました!

――『Neverway』はどんなプレイヤーに向けて開発しているゲームなのでしょう?

イザ
 かわいらしくてカラフルなゲームを好む人、そして非常にダークな雰囲気のゲームを好む人、それぞれがたくさんいることは以前から知っていました。私のように、その両方ともを好む人がどれくらいいるかはずっと不明でしたが、実際にはたくさんいることがわかったんです!

 ホラーファンとして、自分がプレイできるホラーゲームが非常に少ないと感じています。 たいていのホラー映画は平気な私ですが、ゲームとなると、自分がキャラクターを操作する分、映画よりもはるかに怖く感じます。ほとんどのホラーゲームは、驚かせたり、追いかけられたり、不安を煽る仕組み(たとえば、使える資源の制限など)が満載です。それが原因で、ホラーというジャンルは好きでも、ホラーゲームをプレイする気にはなれませんでした。

 しかし、『
ゆめにっき』のように楽しめるホラーゲームもいくつか存在します。その理由を考えていくと、単にプレイヤーを怖がらせる仕組みだけでなく、作品のテーマとしてのホラーが重要なのだと気づかされました。また、プレイヤーが気持ちを回復するための“一息つく”パートが必要であり、準備ができたときにダークなパートへ戻れるようにすることも大切だと考えています。

 つまり、『Neverway』はホラーファンに向けたゲームですが、その中でもとくに「ホラーは好きだけどホラーゲームは苦手」という方々のために開発しています!
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7月18日~20日開催の“BitSummit the 13th”に出展

 『Neverway』は、2025年7月18日(金)~20日(日)の3日間にわたり京都府・みやこめっせで開催されるインディーゲーム展示会“BitSummit the 13th Summer of Yokai”に出展する。本作のゲームイベント出展はこれが世界初。

 ブース(IP2-02)では日本語対応のデモ版が試遊できるほか、ステッカーなどの特別なグッズの配布も行われるとのこと。本作が気になった人は、足を運んでみてはいかがだろう?
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