
忘れられない怖い話がある。
2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)のとあるスレッドに「怖い、取り込まれる」というコメントとともに動画へのリンクが貼られる。
動画の内容は耳障りなノイズが流れるなか、両目と口にノイズがかかった女性が頭を揺らしながら口をパクパクする様子がループするというもの。モノクロ映像で、とにかく気味が悪いとしか言いようがない。見てしまった人たちは「背筋に寒気走るわ」など不安な感情をコメントするのだが、ひとりだけズレた反応を示す人が現れる。
その人は動画がぜんぜん怖くないと語り、「裸の女が行ったり来たりするだけ」の内容のどこが怖いのかと、逆に質問をしてくる。その後もスレに書き込みは続くが、会話は最後まで噛み合わないまま終わる(※)。
※興味がある人は「一人だけ見てる映像が違う」とかでWEB検索してみてほしい。2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)のとあるスレッドに「怖い、取り込まれる」というコメントとともに動画へのリンクが貼られる。
動画の内容は耳障りなノイズが流れるなか、両目と口にノイズがかかった女性が頭を揺らしながら口をパクパクする様子がループするというもの。モノクロ映像で、とにかく気味が悪いとしか言いようがない。見てしまった人たちは「背筋に寒気走るわ」など不安な感情をコメントするのだが、ひとりだけズレた反応を示す人が現れる。
その人は動画がぜんぜん怖くないと語り、「裸の女が行ったり来たりするだけ」の内容のどこが怖いのかと、逆に質問をしてくる。その後もスレに書き込みは続くが、会話は最後まで噛み合わないまま終わる(※)。
広告
見えているものがひとりだけ違う――たったそれだけの内容なのだが、たったそれだけのことで自分が立っている現実が揺らぐような感じがして、僕はこの話に得も言われぬ怖さを感じてしまう。
PLAYISMから2025年4月25日にSteam版および、スマートフォン向け日本語版が配信開始となったToii Games開発による『分身: 都市伝説チャンネル奇話』も、そんな“見えているものが違う”という怪異から物語が始まるミステリーアドベンチャーとなっている。
PLAYISMから2025年4月25日にSteam版および、スマートフォン向け日本語版が配信開始となったToii Games開発による『分身: 都市伝説チャンネル奇話』も、そんな“見えているものが違う”という怪異から物語が始まるミステリーアドベンチャーとなっている。
スマホに起きた異変から始まる都市伝説ミステリー
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a156005c5baf40ff51a327f1c34f2975b.jpg?x=767)
ゲームのおもな舞台となるのは架空のコミュニケーションアプリ“都市伝説冒険団”。このアプリのアカウントを作成するところからゲームはスタートする。
その名からもわかる通り、“都市伝説冒険団”には都市伝説に関心のあるユーザーが集まっていて、ゲームプレイの大部分を構成するのは彼らとのメッセージのやり取り。自身の発言は選択式になっていて、ときにはテキストではなくスタンプでリアクションをしたり、スクリーンショットや写真、動画を送信したり、緊急時には電話をかけることもある。
短い発言がテンポよく交わされる様子は現実のチャットアプリさながらの出来。また、物語が進行するとグループチャットも立ち上がるのだが、ほかの人が見ているところで扱いづらい話題は個別チャットで聞くといった、人間関係の面倒臭さも妙にリアルだったりする。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a799bad5a3b514f096e69bbc4a7896cd9.jpg?x=767)
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/ad0096ec6c83575373e3a21d129ff8fef.jpg?x=767)
自分以外のアカウントはアプリのホーム画面にあるユーザー検索から探すほか、すでにフレンドになっているアカウントのフレンド欄からも見つけることが可能だ。“都市伝説冒険団”を実際のアプリにたとえるなら、アカウントどうしのつながりがよりオープンなLINE、といった感じだろか。
ただ、残念ながら都市伝説を愛する同好の士たちとのコミュニケーションをキャッキャと楽しんでいる余裕はない。理由はふたつある。
ひとつ目は、主人公のスマートフォンにインストールされた“都市伝説冒険団”は、どうやらほかの人とは少し見た目が違うから。具体的に言うと、アプリのホーム画面の下に異常がある。ゲームを開始して最初にコンタクトをしてくる再来人というアカウントによれば、それは“たこ焼きみたいなボタン”であり、アプリの管理人Hydeはそれを“目のようなもの”と呼ぶ。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a032b2cc936860b03048302d991c3498f.jpg?x=767)
ふたつ目は、この”たこ焼きみたいなボタン”あるいは”目のようなもの”が現れるのは今回が初めてではなく、過去にはクリスという女性のアカウントにも現れていて、さらに彼女は現在行方不明になっているからだ。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a18e2999891374a475d0687ca9f989d83.jpg?x=767)
図らずも“見えているものが違う”という怪異の当事者になってしまった主人公は、何かを知っている風の再来人と管理人のHyde、そしてかつてクリスも所属していた、都市伝説に関する動画配信チャンネル“不可思議ミステリー探検部”の運営メンバーたち――レイナ、ショウ、湯湯の3名にもコンタクトを取り、自身の身に起きている(あるいはこれから起きる)ことの真相を明らかにすべく、調査を開始する。
アプリからつながる異世界“META空間”という都市伝説
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/afe5df232cafa4c4e0f1a0294418e5660.jpg?x=767)
なぜアプリに目のようなものが現れたのか? その理由はすぐにはわからないが、この目のようなものが“何を起こすのか”については、調査を開始して間もなく判明する。“META空間”への接続だ。
管理人のHydeいわくMETA空間とは“何かについての何か”を意味する都市伝説で、たとえば現実世界で学校があるところからMETAに接続すると”全ての学校についての学校”が現れる、ということで……要するに現実世界とリンクした異世界、くらいに考えておけば問題ないだろう。
META空間へは目のようなものを押すことで瞬時に移動し、移動後は空間内を探索することもできる。また、META空間にいる状態で目のようなものを押すと、現実世界へ戻れるという仕組みだ。
ゲーム内で接続するMETA空間は複数あるのだが、なぜかそれらはすべてクリスの過去と関係した空間になっていて、また各空間には謎解きも用意されている。
たとえば、クリスの部屋と思われるMETA空間には鍵のかかった日記があったり、学校の教室のようなMETA空間では学生時代のクリスとレイナが会話しているが周囲がうるさくて何を話しているのかわからなかったり……といった具合だ。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a8cda81fc7ad906927144235dda5fdf15.jpg?x=767)
謎を解くためのヒントはメッセージのやり取りから見つかることもあれば、ほかのMETA空間で見つかることもある。会話、探索、推理、解決という流れをくり返して、クリス行方不明事件およびアプリに起きた異変の真相に迫っていく、というわけだ。
また、前述のとおりMETA空間では“都市伝説冒険団”でやり取りをしている人物たちの過去の姿を見ることもあるのだが、彼らは全員、実写で登場する。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a30e62fddc14c05988b44e7c02788e187.jpg?x=767)
スマホの異変やら謎の行方不明やらMETA空間やら、非現実的なことが立て続けに起こっているなかでの突然の実写登場は、現実が非現実に抗っているようにも思えて、個人的にはとても楽しめる要素のひとつだった。
プレイヤーを疑心暗鬼にさせる都市伝説“分身”とは?
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/aae566253288191ce5d879e51dae1d8c3.jpg?x=767)
『分身: 都市伝説チャンネル奇話』の物語ではMETA空間のほかに、もうひとつの都市伝説も絡んでくる。ゲームタイトルにもある“分身”がそれだ。
“分身”とは、自分とまったく同じ姿をした者が現れて、自分と入れ替わろうとする都市伝説。オカルト方面に明るい人であれば“ドッペルゲンガー”が思い浮かぶかもしれないが、そちらは“自分とまったく同じ姿をした者を見たら死ぬ”なので、遭遇したあとの結果が異なっている。
見たら死ぬドッペルゲンガーは文句なしに怖くてたまらないが、“分身”の“本人と入れ替わろうとする”という目的も、周囲の人間からすればなかなか恐ろしい話だ。友人や家族の誰かが、いつの間にかその人の分身になっているかもしれない、ということなのだから。
物語のなかでは、クリスが行方不明になる前に出演した動画に、クリスと瓜ふたつの人物が映っていた、という形で分身の噂が語られる。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a62bf1edb36141f114521ec4bb4175579.jpg?x=767)
彼女が行方不明になったのは分身が入れ替わるため? という疑問が真っ先に浮かぶところだが、なにかを知っている風の言動をくり返す再来人や、明らかに隠しごとをしている不可思議ミステリー探検部の3人、都市伝説に対して異様な情熱を抱く管理人のHydeなど、冷静に見ると周囲は怪しい人ばかりだったりもする。
もしかするとすでに分身は“都市伝説冒険団”の中に入り込んでいるのかもしれない……そんな疑心暗鬼にさせる設定も物語を構成する重要な要素のひとつだ。
真相へたどり着くために、都市伝説を“構築”せよ
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a8df7b73a7820f4aef47864f2a6c5fccf.jpg?x=767)
META空間に分身、ふたつの都市伝説が絡みあったミステリーを謎解いていくことが本作の目的だが、その過程では“都市伝説とはなにか?”というテーマにも向き合うことになる。
少し前に発売された某・都市伝説系アドベンチャーでは、都市伝説の裏に隠された真実を暴き、それを個別に“解体”するというやりかたで“都市伝説とはなにか?”に向き合っていた。言い換えれば、都市伝説へのロジカルなアプローチである。
『分身: 都市伝説チャンネル奇話』でも同様にロジカルなアプローチが行われるが、その対象はMETA空間、分身といった個別の事象よりも、都市伝説という概念そのものに向いている感じがした。
たとえば、都市伝説冒険団の管理人Hydeは、“文化依存症候群”が都市伝説を生み出しているのではないか、と考えている。文化依存症候群とは、その人が所属する地域や民族、文化環境の影響によって発症しやすい精神疾患のことで、日本であれば“対人恐怖症”が文化依存症候群によるものと考えられているそうだ。Hydeの考えでは、都市伝説というのは人々のあいだで語られ、その内容に影響を受ける人が増えることによって、噂という実態のないものから実在する怪異へと顕在化するものだという。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/a9414a8f5b810972c3c9a0e2860c07532.jpg?x=767)
あるいは、不可思議ミステリー探検部のメンバーであるショウは、一部の都市伝説は矛盾していると話す。Hydeの言うように都市伝説が広まることによって影響力を増すのだとしたら、分身のような現実世界を飲み込んでしまう都市伝説は、それが実行されればされるほど、噂を口にする人が減ってしまうではないか、というもっともな指摘だ。
では、肝心の主人公は「都市伝説とはなにか?」にどう向き合っているかというと、それはプレイヤー次第である。会話のなかで登場する選択肢で、都市伝説に対する自身の考えを都度示していくのだ。
つねにロジカルな判断をすることで都市伝説の“解体”を試みてもいいし、あるいはハナからそんなものは存在しないという態度で都市伝説を“無視”したっていいだろう。ただし、どう向き合おうと変わらない事実があることを忘れてはいけない。
あなたのスマートフォンにはMETA空間へ接続する目のようなものがあり、クリスという女性が行方不明になっているという事実だ。
本作には3つのエンディングが用意されているが、その分岐は“都市伝説とはなにか?”への向き合いかた次第で左右される。
では、真相へたどり着くには、どう向き合うべきなのか? ヒントとして、映画『貞子vs伽椰子』に登場した名ゼリフを引用させてもらう。
「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」(霊媒師・常盤経蔵)
都市伝説によって起きた問題を解決するためには、都市伝説の力が必要だ。
さあ、都市伝説の“構築”を始めよう。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/40383/aedab7ba7e203cd7576d1200465194ea8.jpg?x=767)
■執筆者紹介:ヨージロ
元ファミ通編集部ニュース班。好きな都市伝説は、ピアスの耳から紐みたいなやつが出てくるヤツです。ちなみに本文内で書ききれなかったのですが、『分身: 都市伝説チャンネル奇話』はスマートフォン版も同時に配信。スマホ版ではMETA空間でのジャイロ操作や、本体のカメラ機能を使ったシステムもあるそうで、より没入感のあるプレイが楽しめるかもしれません。これはもう、スマホでも改めて都市伝説を構築する必要がありそうですね!
元ファミ通編集部ニュース班。好きな都市伝説は、ピアスの耳から紐みたいなやつが出てくるヤツです。ちなみに本文内で書ききれなかったのですが、『分身: 都市伝説チャンネル奇話』はスマートフォン版も同時に配信。スマホ版ではMETA空間でのジャイロ操作や、本体のカメラ機能を使ったシステムもあるそうで、より没入感のあるプレイが楽しめるかもしれません。これはもう、スマホでも改めて都市伝説を構築する必要がありそうですね!
『分身: 都市伝説チャンネル奇話』
- 発売日:2025年4月25日発売
- 対応プラットフォーム:Steam、iOS、Android
- 発売元:PLAYISM
- 開発元:Toii Games
- 価格:Steam/1200円[税込]、iOS、Android/900円[税込]
- ジャンル:アドベンチャー
- 対象年齢:IARC 12歳以上対象