“幕末オープンワールドアクションRPG”というかつてない挑戦的なコンセプトはもちろん、爽快かつ奥深いアクション、魅力的な物語、快適でノンストレスなプレイフィールなどさまざまな要素が絶賛され、発売から2ヵ月以上が経つ現在でも着実にプレイヤー数を増やし続けている。
そんな本作において、ストーリー面で最重要人物のひとりとなっているのが坂本龍馬だ。序盤に出会って以降、終盤までつねに主人公の行く道に寄り添い続け、選択によっては特別なパートナーともなりうる龍馬は、多くのプレイヤーに強い印象を残していることだろう。
本稿では、坂本龍馬を繊細に演じきった声優・武内駿輔さんへのインタビューを掲載。武内さんにとって坂本龍馬とはどんな存在なのか? 土佐弁で演じる苦労は? 収録時の印象に残るエピソードは? など、気になる質問に答えてもらった。
また、合わせて本作のプロデューサー兼ディレクターを務めた、コーエーテクモゲームス・Team NINJAの安田文彦氏からのコメントも掲載。武内さんの演技や、今回のインタビューを受けての感想などを語ってくれているので、最後まで漏らさずご覧いただきたい。
武内駿輔
声優。東京都出身。代表作に『アイドルマスター シンデレラガールズ』プロデューサー役、『アナと雪の女王』オラフ役、『A3!』兵頭十座役、『怪獣8号』神楽木葵役などがある。2015年に第10回声優アワード新人男優賞を受賞。
収録で難しかったのは、とにかく土佐弁でした
――初めて『Rise of the Ronin』の坂本龍馬というキャラクターを見てどう思われましたか?
『Rise of the Ronin』の龍馬は、“イケおじ”とでもいうのでしょうか(笑)。恰好もおしゃれですし。みなさんがイメージするいままでの龍馬像を崩さないまでも、自分自身でこの龍馬を操作してみたいとか、この龍馬といっしょに戦ってみたいとか、そう思わせる魅力を持ったキャラクターだと思いました。
言動もそうですよね。遊び心があるというか、ほかの作品の龍馬よりもノリがちょっと軽かったり、茶目っ気があったり、母性本能をくすぐるような仕草や表情を見せます。そのあたりが愛くるしくもあって、よいキャラクターですよね。
――坂本龍馬に関して事前のイメージはどのようなものでしたか? ご自身で調べられたことや、活かされたことはありますか?
いろいろな役者さんが演じた龍馬も拝見して、その中にも何となく共通する龍馬像――喋りのテンポ感や人情味のあるイメージは、ある程度参考にはしています。たとえば武田鉄矢さんはご自身が龍馬好きであることを公言されているので、そういう龍馬が好きな方のインタビューを見たり、龍馬について解説している人の龍馬に対する思いを読んだりもしました。そういう方々にも本タイトルの龍馬を愛していただきたかったので、龍馬のイメージにある種の統一感を持たせつつ、新しい龍馬像に仕上げられたらと思いました。
――開発スタッフからキャラクター作りの指導はありましたか?
あとは女性にデレデレなところとか、呑むときはとことん呑んで「でへへ」みたいになっちゃうところとか。でも、ただのちゃらんぽらんな人間ではなくて、自身の目的を遂行するための芯が通っている。収録ではそういうところを照らし合わせながら、「いまのはぐでぐですぎますかね?」とか「ちょっと恐くなっちゃいましたね」とか、スタッフのみなさんといっしょに調整していきました。
よく聞く「おまん」という単語も、その後ろに続く文章によって、平板になったり「おま(↑)ん」と中高になったりするんです。なので、ひとつの発音を学んでも、「いや武内さん、この場合はこういうイントネーションになるんです」と言われたりして、けっこうたいへんでした。事前に全部のセリフを監修の方に読み上げてもらって、それを聞いてからスタジオに入るんですけど、メモだけだとどうしてもうまくいきませんでしたね。
あとは、言葉の立てどころ。細かい違いもあるので、イントネーションだけマネしても、ネイティブの方にはなかなか近付けません。そのため収録のときも、監修の方にセリフを読んでもらって、僕がそれをオウム返しで再現するみたいな形になっていました。ゲームをプレイされた中に土佐弁ネイティブという方がいれば、ぜひ感想を聞いてみたいです。
ちなみに、土佐弁を監修してくれたのはコーエーテクモゲームスのスタッフさんで、土佐出身でこの時代についても勉強されている方でした。僕と同じ分量のセリフを読んでもらったので、そうとうたいへんな作業だったと思います。僕ひとりの作業というより、ふたりの作業という感じで、終わったときはお互いに労いあいました(笑)。
僕は知ってますよ。みなさんが龍馬と……
――印象に残っているゲーム内イベントなどありますか?
僕も台本を読んで「こういうイベントもあるんだ」と知っていましたが、収録する段階ではロマンス系の映像がまだでき上がっていませんでした。シチュエーションの細かい指定もなかったので、なんとなくの距離感をイメージして演じましたが、実際の映像を見たら「こんなに近い距離感だったんだ!」とか「こんな肌着みたいな姿なの!?」とか、これはドキドキしちゃいますよね。
これまでの幕末のお話だったら、男どうしが血と汗と涙を流して、自分の志のために戦う、そんな印象が強かったと思います。でも、親密度が上がるイベントが導入されることによって、当時の人たちのリアルな心情を想像できるような奥行きが生まれたのかな、と。だからこそキャラクターに愛着がわくと思いますし、すごくよい試みだと感じました。一見するとゲームに関係のないイベントに感じるかもしれませんが、それがあることによって、ストーリーの本筋がより楽しくなります。実際にユーザーの皆さんが、そこに興味を持って喜んでくださっているのを見ると、すごくうれしいですね。
女性キャラクターとの掛け合いも楽しかったですね。実際の収録は別録りですが、龍馬が死んでしまいそうなときの楢崎龍の伊藤(静)さんのお芝居はすごくよかったです。
あとはなんといっても福沢諭吉! 僕はもともと、うえだ(ゆうじ)さんが好きなんですけど、福沢諭吉の声ってうえださんだったんじゃないかと思うくらいのマッチ感でした。10000円札の福沢諭吉を見ていると、うえださんの声が聞こえてきそうな(笑)。これまで何人もの方が福沢諭吉を演じてきたと思いますが、今回が僕の中でのベスト・オブ・福沢諭吉です。
――『Rise of the Ronin』のファンにメッセージをお願いします。
あとはゲームの仕組みとして、幕末だけではなくて、いろいろな時代や設定でシリーズ化が望めるゲームだと思いました。それだけの作り込みをしていますし、もっともっと遊んでいただいて間口もどんどん広がって、そういう展開になったらいいなと思います。ぜひ、これからも引き続き楽しんでいただければ幸いです。
コーエーテクモゲームス・Team NINJA 安田文彦氏からのコメント
最後に、本作のプロデューサー兼ディレクターを務めたコーエーテクモゲームス・Team NINJAの安田文彦氏からのコメントをご紹介!
――坂本龍馬役に武内駿輔さんを選んだ理由は?
そんな中、これまで「仁王」シリーズなどTeam NINJAタイトルでごいっしょさせていただいている音響監督の方からキャスティング検討の際に武内さんを推薦いただきました。
お若いながらも深く、遊び心も感じさせる雰囲気の声や幅広い演技はもちろん、バラエティー番組などで活躍されている姿も拝見し、今作の龍馬を演じていただくのにピッタリだと思い、お願いさせていただきました。
――実際の収録を見たときの武内さんの印象は?
――武内さんが回答されたインタビュー内容をご覧になって、いかがでしょうか? ご感想をお聞かせください。
音声収録の時点ではゲーム内の画が完成していない場面も多かったのですが、収録させていただいた音声を実装しながら開発を進めていきましたので、ゲームでは武内さんのイメージをできる限り再現できているはずだと信じています。
また、改めて全編土佐弁で演じてくださったことには本当に感謝しています。収録の裏話にもいくつか言及されていましたが、当社の土佐弁監修の担当スタッフが実際に土佐弁でセリフを読んでアクセントをお伝えして、武内さんが演じるという流れで収録の多くを進めていったのですが、当社スタッフの演技が、武内さんの演技に引っ張られて少しずつうまくなっていくのも収録中の楽しみのひとつでした(笑)。