かつてソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)に在籍し、『Bloodborne』、『Demon’s Souls』、『SOUL SACRIFICE』、『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』などを手掛けた鳥山晃之氏。SIE退社後は、Thirdverseに移籍し、同社の日本スタジオを統括しながら『SOUL COVENANT』を始めとするVRゲームを開発した。
この春、鳥山氏とThirdverseでともにゲーム開発に取り組んでいた一部のスタッフたちが独立。ジーゼグループ傘下となり、新たなゲームスタジオ“シリウススタジオ”を立ち上げた。同スタジオでは今後、家庭用ゲーム機向けの大型タイトルや、VR・XRゲームの開発を手掛けていくという。
本記事では、シリウススタジオの取締役副社長を務める入江秀毅氏、取締役CPO兼ゼネラルプロデューサーを務める鳥山晃之氏、執行役員兼プロデューサーを務める岡村光氏へのインタビューをお届け。シリウススタジオ立ち上げの経緯や、今後開発するタイトルの方向性、VR・XRゲームの課題や今後の可能性について話をうかがった。
聞き手:週刊ファミ通編集部 編集長 嵯峨寛子![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/38560/a02cec5fe9c4fde93810c4515a8bbee47.jpg?x=767)
入江 秀毅(いりえ ひでき)
シリウススタジオ取締役副社長。親会社であるジーゼの執行役員も兼任する。これまでにデベロッパーの経営や、セガネットワークス、セガゲームス(現セガ)のプロダクション責任者、プラチナゲームズの上席執行役員、Thirdverseの事業開発担当執行役員などを歴任。
鳥山 晃之(とりやま てるゆき)
シリウススタジオ取締役CPO兼ゼネラルプロデューサー。ソニー・インタラクティブエンタテインメントJAPANスタジオのプロデューサーとして『Bloodborne』、『Demon‘s Souls』、『SOUL SACRIFICE』、『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』など、数々のヒット作を手掛けた後、Thirdverseに参画。『SOUL COVENANT』などを制作した。
岡村 光(おかむら こう)
シリウススタジオ執行役員兼プロデューサー。これまでに数々の家庭用ゲームに携わり、マーベラス在籍時はCGデザイナーとして『ブルードラゴン』や『THE LAST STORY(ラストストーリー)』を、プロデューサーとして『SOUL SACRIFICE』シリーズなどを担当。Thirdverseでは『SOUL COVENANT』のプロデューサーとアートディレクターを務めた。
「クリエイターの独立性を最優先したい」シリウススタジオ設立までの道のりとジーゼグループの強み
――始めにシリウススタジオ設立の経緯に関してお聞かせください。
入江
我々はThirdverseという会社のジャパンスタジオにて、ハイエンドゲームを制作するチームとして所属しておりました。ですが、この度Thirdverseがカジュアル系ゲームの制作に事業転換することになったのです。我々はハイエンドゲームの制作をするべく集まったチームでしたので、今後もハイエンドゲームを作りたいという意向があり、國光宏尚さん(Thirdverse代表取締役会長)に直接相談をして、円満移籍となる運びとなりました。
その後移籍先を考えていた際に、ありがたいことにいくつかの企業からお話をいただいたのですが、私たちが本当にやりたいこと、実現したいことを理解していただき、クリエイターとしてリスペクトを持ってくださった会社がジーゼでした。そうして、ジーゼグループに移籍することが決まり、“シリウススタジオ”の設立にいたりました。
――新しいスタジオを立ち上げるのは勇気が必要なことだと思うのですが、設立時の心境はいかがでしたか?
鳥山
最初はスタジオを設立するとは思っていなかったのですが、とんとん拍子にスタジオを建てるという話になっていたのです(笑)。「僕らでスタジオを作って、みんなを抱えてやっていこう」という心構えに自然になれたので、意外と悩まずに考えてこられましたね。
ただ正直、僕はゲーム開発への興味はあるのですが、経営にはまったく興味がない。それに関しては入江にすべて一任しています(笑)。入江には経営に関する業務をThirdverseのときから任せてきたので、ビジネスパートナーとして本当に信頼しています。その代わり、開発は僕がすべて責任を持ちます。
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――当初は自身でスタジオを立ち上げるのではなく、ジーゼのもとで開発を行うという選択肢もあったのですか?
入江
そうですね。その可能性もゼロではなかったと思います。しかし、いちばん優先したかったのは私たちの独立性です。やはり、ある程度の規模の会社に入る場合は、独立性がどこまで担保できるかという懸念点もありますので、そこに関しては慎重に話し合いました。
そんなとき、新たに会社を作って、ともにやっていこうと言っていただけたので、私たちとしては非常にありがたかったです。
――ジーゼの方にも理解していただいて、スタジオ設立にいたったということですね。親会社であるジーゼや、同時期にジーゼグループに加入するあまた(※)と、今後ジーゼグループ内で協力する可能性はあるのでしょうか?
※あまた株式会社。『Last Labyrinth』や『オノゴロ物語 ~The Tale of Onogoro~』、『ファイナルファンタジー アギト』などを手掛けている。入江
ジーゼグループ内でしっかりとシナジーを生み出していこう、と話し合っています。ただ、各社は一見似ているようで、じつはかなり色が違うのです。
私たちシリウススタジオはVR・XRタイトルや家庭用ゲーム機タイトルなど、ハイエンドの方向性で攻めていくのが特徴。あまたは、VRやPC、家庭用ゲーム機、スマートフォン向けタイトルを手掛けており、マルチプラットフォームで初期開発から運営まで、ワンストップで対応できる総合的な開発力があるのが特徴かと思っています。
またジーゼは、ソーシャルゲームやブラウザゲームにおいて、ユーザー動向のデータ分析を徹底した長期運用が得意な会社です。VRも手掛けていますが、比較的ライトな作品を作っている会社。と、各社はっきりと住み分けができています。
グループ全体の人数は250人を超える規模になるので、案件に応じた人の貸し借り、スタッフの交流などをしていければと考えております。
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――お互いがこれまで蓄積したノウハウを共有できる関係というのは理想的ですね。
鳥山
それぞれの得意とする分野が違うというのは、とても大きなメリットです。たとえば、ジーゼグループ全体にお仕事の話があったとき、この企画はどの会社が担当すべきかという判断もしやすいですし、「シリウススタジオが受け持ちますが、一部分だけあまたが得意なところがあるから手伝ってください」ということもできます。グループとしては魅力的な体制なのかなと思っていますね。
ハイエンドタイトルに主眼を置いた事業方針
――先ほどシリウススタジオはハイエンドのゲーム開発で攻めるといった話もありましたが、具体的にはどのような取り組みかたをされていくのでしょうか?
入江
私たちは世界に通用するトップクラスの開発スタジオを作るつくるという理念を掲げていますので、パブリッシング事業は積極的に行わず、デベロッパーとして展開する予定です。
ただ、VR・XRなどのタイトルは、ダウンロード販売が中心ですので、VR・XRタイトルだけはパブリッシング事業を行う可能性はあります。ですが、家庭用ゲーム機タイトルのパブリッシング事業は考えていません。
――スタジオ設立直後は、まずは1~2年でそこまでコストが掛からないものを作る、というケースもありますが、最初からハイエンドタイトルを?
入江
ハイエンドもしくはある程度の規模の、インディーではないクラスのタイトルから始める予定です。基本的には、家庭用ゲームとVR・XRの二軸でやっていこうと考えております。
鳥山
シリウススタジオには、僕らとともに国内外でヒットした大型タイトルに関わったスタッフや、家庭用ゲームの制作で成果を出してきたスタッフ、VRゲーム業界でキャリアを重ねたスタッフなどがいるので、彼らの強みを生かした家庭用ゲームや、VR・XRタイトルを開発していきたいと思っています。
ゲーム開発の研究を行う過程で「ゲーム化したらおもしろいよね」と思える要素を発見したら、研究成果を発表するような形でタイトルを出す可能性はあります。ただ、シリウススタジオとしては、ハイエンドのプロジェクトを進めていくのが第一ですので、そこを重視して動いていきたいと思っています。
岡村
VR・XRに関しては、じつは現在アメリカに住む10代の30%以上がVRヘッドセットを所持しているというデータがあるほど、市場が広がっているのです。ですので、北米をメインターゲットに据え、我々の強みを生かしたコンテンツやゲームを開発していきたいと思っています。
家庭用ゲームの開発は、こちらの出身者が多いので積極的にやっていきたいです。また、他社様と協力するタイトルも含め、複数の企画を鳥山と考えているところですので、さらに企画を練り上げていけたらと思っています。
今後、VR・XRと家庭用ゲームが交わっていく部分も非常に多くなるという風に考えていまして、シリウススタジオでは家庭用ゲームとVR・XRの開発を通して、ふたつのノウハウをしっかり蓄積していきたいなと考えています。
入江
いまの話に補足を入れさせていただくと、私たちのスタジオは基本的にドメスティックではなく、ワールドワイドでの展開を想定しています。とくにVRの市場は英語圏が8割と言われていますし、鳥山も含めて、当社スタッフが携わったタイトルは、ワールドワイドでヒットしたものが非常に多いため、不可能な目標ではないのではと考えています。
また、先ほど“他社様と協力するタイトル”というお話がありましたが、その中にはオリジナル作品から既存IPを用いた案件まであり、うれしいことに非常に期待していただいている状態です。
――シリウススタジオの第1弾タイトルがどんなものになるか期待が高まりますが、情報が公開されるのは少し先になるでしょうか?
鳥山
そうですね。我々のスタジオが手掛ける完全新規のハイエンドタイトルは時間をかけて制作するつもりです。ただ、既存IPを用いたタイトルや、他社様から開発のお声掛けをいただいたタイトルは、サプライズ的に出せるかもしれません。
ですが、僕らのスタジオが目指す方向性を示せる、知っていただけるものを、なるべく早く出したいとは思っています。
「ゲーム開発はコミュニケーションが重要」熟練クリエイターが数多く在籍するシリウススタジオのこだわり
――現在、シリウススタジオには何名くらいのスタッフが在籍しているのですか?
入江
いまは20名弱スタッフがおります。少数ではあるのですが、ほとんどのスタッフがリードクラス、またはサブリードクラスで、いわゆる開発の根幹となる、クオリティコントロールが可能なレベルのスタッフです。
プロデューサーや、ディレクターもいますので、ハイエンドなタイトルをいきなり受注したとしても対応できるスタッフが揃っております。
――これから増員をしていく予定はありますか?
入江
はい。あまり詳しくは言えませんが、すでに声をおかけしている方も複数人います。
鳥山
社内とは別に、外部で協力してくれる方々もたくさんおられます。そういった方々とともに、相乗効果でおもしろいタイトルを開発していけたらと思っています。
――腰を据えて開発していくとなると、いずれ大きなオフィスが必要となりそうですが……。
鳥山
そうですね。やはり、40~50人がオフィスに集まって相談しながら作品を創っていくことが大切だと思っています。これまでもリモート環境での業務を一応やっていましたが、リモートだとコミュニケーションが取りづらい。とくにカメラ越しだと自分たちの思いが伝えづらかったりするので、出社していただく形にしようかと考えています。
事情があり、どうしてもオンラインでしか仕事できないという方々に関しては、週に何回かは必ず来ていただく形にしようと思っていて、出社したときに一日中話し合う、という形でコミュニケーションを取りながら、ゲーム作りをしていこうと岡村とも話し合っています。
岡村
これから入ってくるスタッフの中にも、オンラインでの仕事中心のスタッフもいますが、週に何回か出社してもらい、しっかりとコミュニケーションを取ってやっていきたいと思っています。
これは鳥山の基本的な意向ではあるのですが、以前も、協力会社さんのプランナーやエンジニア、アートの方にオフィスに出社してきてもらっていたのですよ。毎日。
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――毎日……!? それはすごいですね。
岡村
はい。それを前提にご協力いただいていたので、かなり強力なお付き合いをすることができました。
鳥山
来ていただいたからには、僕がゲームを開発する際にどのように考えているか、VRゲームを開発する際にどういうところに気を付けているか、という思想やノウハウなどを全部お伝えします。たとえ外部の方であろうとも、本音で話し合える関係をつくってから、同じ気持ちでモノ作りをいっしょにしていきたいという考えです。
実際に外部のスタッフさんからも「いっしょに仕事できてよかったです」と言っていただけていたので、そういった環境作りというのは大切だと思います。そこはシリウススタジオでも、しっかり継続していきます。
岡村
とくにVR・XRの開発となると、身振り手振りの感覚がすごく重要で、ある程度はリモート環境でも開発ができるのですが、実際に企画を詰めていく段階や、手触り感の確認、それこそ鳥山が持っているノウハウを伝えるといった業務は、隣の席でやったほうが早かったりするので、出社してともに作業していただきたいと伝えていました。
始めは不安を感じていたスタッフの方もいっしょにやり始めていくと、どんどん熱量が上がっていって「VRの開発ってこういう風にやったほうがいいよね」と理解してくれることも非常に多かったですね。
――たしかにVR・XRの分野は、すでに確立されているジャンルよりもコミュニケーションが必要になりそうです。
岡村
SIE時代から培ったノウハウに加えて、VRで酔わないための“秘伝のタレ”みたいなものを鳥山は持っているので、それらを共有できるというのはいっしょに開発することの強みだと思いますね。
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長年VR開発に取り組んできたからこそわかる、VRの可能性と課題
――鳥山さんたちはもう10年近く、VR分野に取り組まれているのですよね。
鳥山
そうですね。プレイステーション VRの開発が始まってから、ずっと研究しています。まぁ、『Bloodborne』なども並行して作ってはいたのですが、プレイステーション VRのゲームと『Bloodborne』はまったくタイプが違うゲームでしたので、当時は両方とも楽しんで開発していましたね。
――長年VRを研究・開発してきたことでわかる、VRの持つ可能性や課題はありますか?
鳥山
VRもXRも、目の前に現れたキャラクターと触れ合ったり、自分自身がゲームの登場人物になったりできるという、物理的な没入感に僕らは可能性を感じています。
Meta Questが北米を中心に3000万台以上も普及するなど、市場規模も年々広がってきているほか、若いクリエイターが活躍しやすい市場だとも思っています。彼らが出すアイデアを形にすること、また彼らが発言しやすい場を作ることがひとつの課題だと考えています。
VRの国内市場はまだまだ発展途上で、ヘッドセットの煩わしさや酔いといった課題もありますが、VR・XRのハードウェアは家庭用ゲーム機よりもライフサイクルが早く、1年周期で性能が更新されているので、数年以内に全部解決され、普及が進むと考えています。一例として、VRのレンズは現在かなり厚いですが、あと数年もすれば眼鏡サイズになるはずです。このように問題が少しずつ解消されていけば、国内市場も拡大されるのではと、思っています。
また、大手の開発会社から「興味はあるが、社内に開発環境がない」、「このIPでどのようなVRを作ればいいのかわからない」という相談を受けるのですが、今後はそういった形の相談をシリウススタジオで受けて、僕らが考えて作る。ということも挑戦していきたいと思っています。
ただ、やはり僕らは家庭用ゲームをしっかり作っていかないとダメだと思っているので、そちらと並行して、スタジオとしておもしろく、ご期待に応えるようなVR・XRタイトルを作っていきたいですね。
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入江
その家庭用ゲームに関しては、鳥山が過去に携わり、成功したアクションやアクションRPGといったジャンルの作品をさらに深掘りし、新しい要素を加えたものを開発していこうと考えています。
基本的には、鳥山が考えている作品をシリウススタジオで出して、トップクラスのゲームスタジオにしたいと考えています。
鳥山
僕としては家庭用ゲームかVR・XRのゲームであるかを問わず、コントローラーを動かしたときの手触り感のよさや、探索の没入感、世界観といった部分にこだわりを持って作っていこうと思っているので、どんなタイトルにも全力で取り組んでいく所存です。
また、僕や岡村の過去作を遊ばれた方々から「魔法使いが魔法で戦うアクションゲームを、そろそろ出しませんか」と言われているんですね。そういったゲームも作っていきたいと考えています。企画自身は岡村と相談しながら温め続けているので、いずれどこかで入江に「これだけ予算掛かるんだけど大丈夫かな」と相談しようかなと思っています(笑)。
――作りたい物が早くもたくさんあって、生産ラインが足りませんね(笑)。
岡村
XR・VRはアクション系のジャンルを表現するのに適していますから、鳥山の作品と非常に相性がいいんですよね。ですから家庭用ゲームもVRも、両方ともアクション要素のあるタイトルを作るという方向性で考えています。
鳥山
日本を始めとするアジア圏でウケるアクション要素と、北米・欧州でウケるアクション要素はまたちょっと違うんですよね。
VRに関して言うと、剣の振りかたひとつでもそう。たとえば剣を上げる際に両手で振り上げるのか、それとも片手で持つのかは、地域や文化によって異なります。実際の文化に合わせた動き、手触り感を表現していく、ノウハウを溜めていくというのが、今後大事になってくると思っています。
岡村
日本だと侍のような軽やかな剣さばきが気持ちいいと感じる方が多いのですが、北米の方は重さを感じる動きを好まれるという差があったりしますね。どちらにも対応するために、モードがふたつあったほうがいいのかな、と鳥山と話したりするのですけど。
岡村
あと、アジア圏のユーザーはゲームを座ってプレイする方が多いのも特徴ですね。欧米のユーザーは、家の広さにもよるとは思うのですが、FPSを遊ぶときに立ってプレイしたり、プレイヤーキャラクターに合わせて伏せてほふく前進してみたりと、実際に身体が動く人たちが多いですね。
ですので、感覚で遊んだときのおもしろさというのはどういうものなのか、といった話も議論しています。日本だとそこまでの広さがないので難しいのですが……。
鳥山
海外プレイヤーの方がそのように身体を動かすとは、僕らも想像していなかったですね(笑)。
入江
これもありがたいことに、前職のアメリカスタジオで現地の開発者たちとお話ができたおかげで、英語圏の文化というものを知れましたね。
――海外のVRデバイスのイメージ画像を見ると広いリビングでプレイされているものが多いですよね。
鳥山
VRゲームをプレイするには、どうしてもある程度の広さが必要になりますが、海外と比べて日本は住宅事情もありますので、ユーザーによっては遊ぶのが難しいという現実もあります。
――お話を聞くと、ワールドワイドで展開するゲームを作ろうとすると、モードは複数必要なのかも、とも思いますね。
鳥山
僕らとしてはユーザーが心地よく遊べることを追及していきたい。多少コストが掛かる可能性があっても、しっかりと文化圏に合わせた表現を入れていくべきだと思っています。
岡村
そこのノウハウは鳥山といっしょに前職から作り続けたことで蓄積している部分もあるので、引き続きがんばっていきたいなと思っています。
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VR開発は若い人にこそやってほしい。若手クリエイターが得られるメリットの数々
――先ほど、VR・XRは若いクリエイターが活躍しやすい市場だとおっしゃっていましたが、それはほかのハードに比べるとまだ研究が進んでいる最中であるがゆえに、参入しやすい空気があり、挑戦しやすいということでしょうか。
鳥山
そうですね。若い方の提案が新鮮でいいというのもありますが。正直、僕らみたいに年を取っているとVRゲームを長時間プレイするのはしんどいんですよ(笑)。
岡村
開発スタッフでテストプレイする際も、若いスタッフのほうが酔わないですね。我々ぐらいの世代だとVRの感覚に慣れるまでにちょっと時間がかかったり、酔いやすかったりするのですが、若手はまったく酔わない方が多い。
鳥山
やはり、酔いに関しては10代のほうが受け入れやすいのだと思います。そして、感性も違うとも思います。僕たちは家庭用ゲーム開発のノウハウも積み重ねているので、どこかで家庭用ゲームと似たような制作をしてしまっているのかもしれないのですが、彼らは僕らと違うアイデアやひらめきを持ってきてくれる。アウトプットがまったく違うものになっているので、若いスタッフには期待ができますね。
また、若い子はフットワークが軽くて、コミュニケーションが取りやすい方が多く、僕らとも積極的に交流してくれる。それらの要素があるからこそ、VR・XR業界は若手が活躍しやすい場なのかなと思っています。
岡村
それと、家庭用ゲームタイトルに比べて、VRのタイトルのほうがコンパクトかつ開発期間が短めなものが多いので、その辺も相まって若いスタッフが率先して参加しやすい状況だと思います。
鳥山
大きい会社だと家庭用ゲームを1タイトルを作るのに5年程度かかってしまうのですが、VRだと1~2年でタイトル開発のひと通りの経験ができるんですよ。つまり、短期間で開発のノウハウを溜めやすい。さらにVRは作り込まないといけない箇所が非常に多い ので、細部までチェックする必要があります。
360度を探索できる世界なのに、壁の裏や天井のCGが作られていなかった、なんてことがあるとたいへんですから。そういった理由から、ゲーム開発の研修の場として適していると思っています。
入江
社員のキャリアパスを考えるうえで、若いスタッフに関してはVR開発を担ってもらうのがいいのかなとも思っています。一般のプランナーやエンジニアの人が、短期間でサブリードやリードクラスになれたり、自身のキャリアパスを明確にするためにしっかり勉強できたりするのは、非常にメリットが大きいですね。
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――若者が経験を積みにくいというのは、ゲーム開発における長年の問題点ですしね。今後、若い方を積極的に採用していく予定はあるのでしょうか。
鳥山
もうすでに若いスタッフはいまして、いちばん若いスタッフは25歳ですね。現状、若い方を新たに大量に採用する予定はありません。僕らのような30代後半~40代くらいのベテランに少数の若手スタッフたちをつけ、師弟関係のような形にして学ばせていきたいと思っています。
中途採用に関しては、いま直接声をおかけしている人が複数いるのに加えて、シリウススタジオ立ち上げの話を聞いて「いっしょに働きたい」と言ってくださる方もいらっしゃるので、大々的に募集する予定はいまのところありません。
岡村
この記事を見てシリウススタジオが気になったという方には、ぜひ連絡してほしいですけどね(笑)。
「ユーザーの心を輝かせるゲームを作りたい」会社名にかけた想いと今後の抱負
――ここまで、さまざまなことを伺ってきましたが、ここで会社名であるシリウススタジオの由来をお聞かせいただければと。
鳥山
社名について語るのは気恥ずかしいのですが……僕たちはゲームには人の心を動かす“何か”があると考えており、クリエイターとして、発想力や想像力をフル動員して真剣にゲーム開発に向き合い、世界中のユーザーの心をドキドキわくわくさせるような体験を届けられればいいな、と思っています。
そこで、夜空に浮かぶ星の中でいちばん明るい星“シリウス”にちなんで、「遊んでくれたユーザーの心を輝かせるようなゲームを作れるスタジオでありたい」という思いを込めて、“シリウススタジオ”と名づけました。
岡村
いくつかみんなでアイデアも出したのですが、やはり鳥山が出した“シリウス”という単語が、スタッフみんなの中で、いちばん想像が膨らんだ名前でしたね。
鳥山
また、何か輝きを持ったスタッフがたくさん集まっているので、それが集合して、ひとつの輝きとなれれば、僕らも満足なので、そういった複合的な意味合いがある名前にしてもいいかなと……。改めて口に出してみると、恥ずかしいですね(笑)。
岡村
シリウスが連星というのも、すごくいいと思っていますね。個人的に入江と鳥山がツートップで運営しているスタジオだというイメージがあったので。
入江
たしかに、シリウスって、じつはひとつの星じゃないですからね。
岡村
あとは、シリウスという星は行き先を迷ったときの指針にもなるので、そういったいろいろな意味、プラスの意味が湧いてくるような名前だったので、すごくいいなと個人的に思っていました。
鳥山
いかようにも解釈できる(笑)。
一同 (笑)。
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――「ゲーム体験が人の心を輝かせてくれる」というのはその通りですね。非常にいい想いが込められた会社名だと思います。では最後におひとりずつ、今後の抱負や目標などをお聞かせください。
岡村
入江と鳥山がこれまでお話ししてきたことと重なってしまいますが、開発現場の一員としては、皆様が知っている他社様の既存IPのタイトルの開発にもチャレンジしていきたいと思っています。
やはり、VRやXRはまだまだ認知が広がっていく必要があるので、すでに応援している方がいる、ファンがいるIPを通して、VRやXRについてもっと知っていただける機会を作っていけるような開発スタジオでありたいと考えています。
また、せっかく鳥山といっしょに作品作りができる環境ですので、個人的にはオリジナルのタイトルをゼロから作り出すことも、やっていきたいと思います。「魔法使いが登場するダークな世界観のものを作りたい!」という野望に向かってがんばっていきます。
鳥山
僕としてもサプライズ的なタイトルや、既存IPを用いたタイトルの開発には、どんどん挑戦していきたいと思っています。
とくに家庭用ゲーム機のタイトルに関しては、ユーザーの皆さんに期待していただけるようなタイトルを生み出したいです。シリウススタジオらしいオリジナルタイトルの発売は、もう少し先になると思いますが、スタジオの総力を挙げて取り組んでいきたいと思っていますので、期待していただけますと幸いです。
入江
私はシリウススタジオを立ち上げるうえで、もっとも責任を担う立場だと考えています。とにかく世界に通用するスタジオにするためには、なんでもする所存です。ですので、開発者が気持ちよくいいものを開発できる環境を整備しつつ、裏のたいへんな業務も見えないところでしっかりとやっていこうと思っています。
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