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『ハンドレッドライン』必要になった曲を翌朝に提出してたら400曲オーバーに。カタルシスを生む曲作りの妙技【インタビュー:サウンド編】

byジャイアント黒田

更新
『ハンドレッドライン』必要になった曲を翌朝に提出してたら400曲オーバーに。カタルシスを生む曲作りの妙技【インタビュー:サウンド編】
 2025年4月24日に発売された『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』(ハンドレッドライン。発売:アニプレックス。対応プラットフォームはNintendo Switch、PC(Steam))。

 クリエイターインタビューのトリを飾るサウンド編には、小高和剛氏と本作の音楽を手掛けた高田雅史氏が登場。
『ハンドレッドライン』の音楽の開発秘話はもちろん、 高田氏がトゥーキョーゲームスの経理担当ということで、資金面での苦労話も……!?(取材日は2025年2月28日)
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小高和剛氏こだかかずたか

ディレクション&シナリオ担当。音楽のパートでは、ゲームに必要な素材を高田氏に発注している。文中は小高。

高田雅史氏たかだまさふみ

音楽担当。『ダンガンロンパ』シリーズや『レインコード』など、小高氏の作品の楽曲も手掛ける。文中は高田。

まるでライブのような感覚で! ふたりならではの息の合った連携

――まずは本作の企画を聞いたときに、高田さんはどのような印象を持たれましたか?

高田
 「いやいや、実現できないよね……」と(笑)。最初はそう思ったんですけど、打越がフローチャートを壁に貼り出していたので、「まさか本気なのか!?」と驚きました。

小高
 打越がフローチャートをオフィスの壁に貼ったのは、プロジェクトのたいへんさをみんなに認識させる目的だったみたいです。覚悟しておけよ、と(笑)。

高田
 とにかく正気を疑うくらいに馬鹿げているというか、ほかの会社だったら絶対にマネできないプロジェクトだなとは思いましたね。それがリリースに漕ぎつけて、なおかつ関われたということは、僕の人生においてよかったことのひとつだと噛みしめています。

――本作の曲の発注作業がどのような流れで行なわれたのか、お聞かせください。

小高
 発注に合わせて高田が曲を作る形でした。

高田
 十数年前から変わらない流れです(笑)。

小高
 もう少し具体的に説明しますと、最初は過去作を参考に開発担当のメディア・ビジョンさんのサウンド担当者に楽曲のリストを作ってもらいました。バトルもあるので必要なバリエーションも含めて高田に発注していただいて、上がってきたものをチェックすると。あと、『レインコード』のころからそうですけど、僕がスクリプトの作業をするようになったことで発注の精度は上がった気がします。「このシーンで流したい曲が足りない!」といったことになったら、逐一、高田に作ってもらい、完成したらすぐにそれを実装するといった感じで。ですから、最初に発注した曲数は少なかったですね。

高田
 曲を作るうえで基点になったのは、公式ホームページなどで流れている『HUNDRED LINE』という日常系の曲。タイトルのイメージに合い、かつ展開があって長めの曲が必要だろうということで作ったもので、そこからバリエーションを増やしていきました。先ほど、小高がスクリプトを書くうえで必要になったら新たに発注をかける、という話をしていましたけど、当初は毎日のように曲が増えていきましたよね。

小高
 開発が始まったころはそんな感じでした。

高田
 基本的にリモートワークなので、「ああいうのも必要、こういうのも必要」みたいな要望がチャットでつぎつぎと来るんです。

――そう聞くとたいへんそうですが……。

高田
 ただ、僕はそういう発注が嫌いではないんですよ。もちろん、全体のプロットは読んでいるのですが、具体的にどういう“いざこざ”が起こるのか、楽曲の発注とともに可視化されていくのも好きなので。

――なるほど(笑)。

高田
 結果的に、新たに必要になった曲を翌朝までに提出するというようなルーティンが作られていました。やはり小高が自身でスクリプトを打つうえで曲が仕上がっていたらイメージもしやすいでしょうし、「欲しい曲がすぐ用意できたら喜ぶだろうな~。あっ、発注の詳細が届いた、すぐにやろう!」といった感じで(笑)。言ってしまえば、僕も小高ファンのひとりなので、そこまでやりたくなってしまうんです。

小高
 演出がすぐに確定するので、ものすごく助かりました。僕も作業を後回しにせずにその場でハッキリさせたいタイプの人間なので、同じ社内でそういうスピード感で作業してもらえるのは大きな強みだと思います。これが外部のクリエイターさんだと、そうはいきません。

高田
 へたしたら1曲で1ヵ月くらいかかっちゃいますからね。それを場合によっては数時間で骨格ができたりもするので。

小高
 ふわふわとしたアンビエント系の曲だったら、その場で作ってもらって「これで」みたいなこともありましたよね。

高田
 ライブ感覚で曲を作っている感じです。

――おふたりの関係性が熟しているからこそなせる業のような。

高田
 そうですね。それはあると思います。

小高
 『ダンガンロンパ』のころと違い、いまでは同じ会社ですし(笑)。あと、新規IPとなるとどんなに曲数を抑えようとしても新たな曲がつぎつぎと必要になってしまい、そうせざるを得なかったというのもあります。

高田
 どれくらい曲を作ったのかというのも自分ではあんまり感覚がないんですよね。ゲーム内のギャラリーには90曲以上あるようなのですが、カットシーンなども含めてノイズミュージックのように演出したものも数えるなら400曲以上は作ったのかなと。本作は会社勤めの社会人が全貌を見ようとしたら5年くらいかかりそうなボリュームですが、曲に関してはふつうにプレイするだけでギャラリーは埋まるのではないかと思います。

――それでも、かなりたいへんな作業だったのではないでしょうか?

高田
 おそらく、ほかのスタッフのインタビューでは「『ハンドレッドライン』の制作現場は作業量が多くてたいへん!」という話題が出ていると思いますけど、曲に関してはそういうイメージがじつはありません。むしろ、SEのほうがたいへんだったのではないかなと……。

小高
 『レインコード』のときもSEは多かったですからね。

高田
 そうそう。ですから、個人的にいちばん苦労したのはスケジュールの調整作業のような気がします(笑)。タイムライン的には『レインコード』から休みなしでしたし。

――ふたつのタイトルの作業時期が被っているとなると、作曲する際の頭の切り換えも難しそうな印象を受けますが。

高田
 複数のラインのお仕事が同時に入ってくることもありますが、それぞれで曲調がガラッと変わる場合は、片方の作業が行き詰まったときのいい気分転換になるんです。そういう意味では、作業の同時進行が得意なのかもしれません。また、僕は会社の経理も担当しているので、このあたりがうまく切り換えられれば大丈夫なんだと思います。

――『ダンガンロンパ』シリーズのときは“サイコポップ”がテーマだったように、作品に応じてイメージしやすい楽曲のジャンルもあるかと思いますが、本作に関してはいかがでしたか?

高田
 最初に「どんな感じ?」と聞いたときに言われたことを鮮明に覚えています。

小高
 ぜんぜん覚えていないな(笑)。

高田
 ちょうど『レインコード』の作業が終わったころだったので、「あんな感じ」と(笑)。さらにオーダーとして『ダンガンロンパ』のころに作った曲のテイストにも近づけてほしいというのがあって、そこからはいろいろ考えました。

――楽曲を作るうえでとくに意識されたことがあったら教えてください。

高田
 僕が曲を作るうえでひとつ意識していることがあって、それは“キャラクターどうしが会話している場面において、曲もひとりのキャラクターとして成立すればしっくりくる”ということ。『ダンガンロンパ』の舞台に携わったときに、演者さんたちとお酒を飲んでいて「音楽は演者のひとりですよね」という話題になってからは、そのことをずっと念頭に置いてきました。それも踏まえて、キャラクターどうしがやり取りするシーンでは打ち込み系の曲に。さらにそこにノスタルジーな要素も少し加えています。
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――ノスタルジーというと、実家感があるような感じでしょうか?
高田
 インターネットではよくそう言われますね(笑)。具体的には、過去に使っていた音色に似せた音をちゃんと現代で作り直してから、今回の曲に当てはめるという手法を何曲かで取らせてもらいました。そのために十数年前に使っていたシンセサイザーを倉庫から持ち出したりもしたんですけど、それが“Virus TI”というちょっと変わったシンセだったこともあり、古いMacをつなげないと当時の音色が出せなくて……。あえて過去作とは違った曲調でそういった音色を使っていたりもするので、皆さんにも楽しんでいただけたらうれしいです。

――先ほど話題に上がった『HUNDRED LINE』という曲も、そういった作りに?

高田
 はい。音色といった面ではすべて新しくしているんですけど、みんなでワチャワチャしているときは、過去作で感じたインスピレーションが蘇ってくるような感じに仕上げられたと思います。

小高
 『HUNDRED LINE』はこちらの発注通りという感じでした。日常系の曲というくくりでいうと、僕は『ダンガンロンパV3』の曲がお気に入りなので、そのテイストを求めたら違和感のない楽曲が上がってきました。あの日常曲はちょっとクール寄りなんですよね。

高田
 そうそう。ちょっとクールな感じ。

小高
 本作も戦争がテーマになっているので、殺伐とした感じがマッチしているというか。まさにイメージ通りでした。

――その後は、どういった形で曲作りを進めていかれたのでしょうか?

高田
 ひたすら発注リストを埋めていくだけでした(笑)。先ほども話しましたけど、今回はスケジュールが最大の敵で……。あるとき「こっちの曲は作りますけど、あっちの曲は作らなくていいですか?」というようなことを言ったのですが、削ろうとしたのが説得イベントの曲だったんですよ。いま思えば、「重要な説得イベントの曲をカットできるわけがないじゃん!」という感じですけど(笑)。

小高
 確か、天秤にかけられていたのが探索パートの曲ですね。そちらもエリアごとに曲を変えようとしていたんですけど、よくよく考えたらそちらは分けなくてもいいだろうと。でも、説得イベントを削るわけにはいかないので、そちらはやりましょうという話で落ち着きました。

――高田さんがそこまで追い込まれることはなかなかないのでは?

高田
 そう……ですね……。いや、振り返るといつも追い込まれている気がします!(笑)
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クワイアからデジタルロックへ。バトル曲が形作るカタルシス

――バトル曲は、日常パートとは一線を画すような印象ですが、制作秘話も教えてください。

高田
 本作の曲作りに際して、オーケストラの生演奏を入れるということも考えていたのですが、小松崎のいわゆるフォトリアル調ではないキャラクターイラストが軸になる日常パートとはなかなか合わないように感じました。一方で、シミュレーションRPGのバトルシーンを説明するには、生オケっぽい曲がメタ的にもぴったりハマるなと。

小高
 バトルに関しては、僕は1990年代のデジタルロックをイメージしていました。それこそBOOM BOOM SATELLITES(1997年にヨーロッパでデビューした日本のロックユニット)のような。いまの洗練されたロックとは少し違う、エレクトロニックとケミカル・ブラザーズのあいだのようなロックですね。実際に上がってきた楽曲を聴いたときも「これこれ!」といった感じで。曲の面でも『ダンガンロンパ』の学級裁判のような盛り上がりを作りたくて、それが見事に叶った印象です。

高田
 最初に作ったのはバトルの『WAVE 1』でしたね。バリエーションは多いのですが、曲数はそんなに多くないので、あまり苦労した記憶もありません。

小高
 個人的には、ボス戦の曲もお気に入りです。最初はいまの完成形とは別のイメージを提示していましたが、途中で方向性が変化したというか、「荘厳なボスが来た!」と感じてもらえるような楽曲になってよかったと思います。

高田
 定番ではありますが、クワイア(シンセサイザーのコーラス音源)を入れたいというのがポイントでした。あとは、WAVEとWAVEのあいだに会話があって、サイレンが鳴ってからボスが来る……というゲーム全体の流れに沿うような楽曲になるようにも心掛けました。カットシーンが挟まる場合もあるのですが、そのあいだのキー(調)の変遷もしっかり考えています。最初は曲と曲のあいだに妙な間があって、僕はデータロードの都合なんだろうと目をつむっていたのですが、メディア・ビジョンさんが曲の余韻の部分を気にしてくれていたんですね。いやいや、ここはテンポよくいきましょうと、曲間を詰めてもらったんです。

小高
 いい感じになりましたよね。

高田
 1秒から2秒程度の間があるかないかでだいぶイメージが変わってしまうので、調整できたのはよかったです。想定していた通りになったのがあまりにうれしくて、会社のチャットに喜びの報告までしてしまいました(笑)。

――そういった細やかな調整がクオリティーにつながるわけですね。

高田
 少なくとも僕が担当しているタイトルに関しては、音楽が乗ってから実際にプレイしつつ細かいところをひとつひとつ詰めていくようにしています。じつは、発売直前のこのインタビューの時点でも調整したいと思っている箇所が一点あって、現在も相談中だったりします(笑)。そこを除けばほぼほぼ完ぺきかなと。

――すべての楽曲の中でとくに苦労した楽曲を教えてください。

小高
高田
 SIREIの曲ですね。

小高
 早めに上げてほしかったんですけど、なかなか上がってこなくて(笑)。

高田
 SIREIは、『ダンガンロンパ』で言うモノクマと同じポジションのキャラクターです。でも、『ダンガンロンパ』のモノクマのテーマは、僕にとっては奇跡のような一曲で、もう二度と作れる気がしなかったんです。ですから、ものすごいプレッシャーもありましたし、最初はもっとコミカルな曲調だったんですよ。

小高
 イメージが固まったのは、大塚芳忠さん(SIREI役)の声を聴いた後でしたっけ?

高田
 そうです。それも大きかったのかなと。最終的には、バラエティーで活躍する外国人タレントが、独特のニュアンスでおちょくるように歌っているようなボーカルを入れてみました。

小高
 福田(福田淳氏。『レインコード』などでSEを担当)が歌ってくれたの?

高田
 いえ、お願いしようと思ったんですけど、福田が歌うとまともになってあのニュアンスが出せず、エディットしたものを使っています。でも、なんだか海外を中心に人気が出そうな気がする曲ですね。

小高
 個人的に新鮮だったのは、敵が攻めてきて臨戦態勢に突入するときの曲です。過去作にはああいう曲はなかったですから。あと、『レインコード』のときからそうなのですが、悲しいシーンなどで使うピアノ曲は僕の好みが多分に反映されていて、今回もさまざまなバージョンを作ってもらいました。
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高田
 基本的にピアノ曲はごまかしが利かないので、ちゃんと弾きながら作ります。ただ、2日、3日経つともう弾けなくなっているので、もし後から演奏をお願いされたら猛練習しなければなりません(笑)。そんなピアノ曲も含めて、そのときにしか作れない曲がけっこう入っています。もともとイメージを固めて曲を作るというよりは、必要になった曲をあれこれ弾きながら形作っていくタイプなので。

――特防隊のメンバーが学生鎧を装着するシーンは、音楽の力もあって見飽きないです。

高田
 ありがとうございます。正直に言うと、最初は「なんで自分を刺して血まみれになっているの!?」と理解できなかったんですよ(笑)。当時はまだ『レインコード』の死に神ちゃんの変身シーンを強くイメージしていて、そこからバトルにつなげようという感覚でした。ですから、まずは変身シーンでクワイアが流れ、WAVE1でデジタルロック、WAVE2もロックで盛り上げて、クライマックスのボス戦で再びクワイアを入れる構成にしようと。それだけ考えて、あとは画面を見たままの印象で弾いて曲を作った感じです。

――クワイアの音色がシーンに連続性を与えているようなイメージでしょうか?

高田
 そうですね。シンセサイザーの音色と同列にクワイアを入れたような感覚です。

――あと、とある日数での楽曲のギミックにも驚いたのですが……。

高田
 あれは小高のアイデアです(笑)。

小高
 具体的なことはネタバレになるので伏せますが、日本的なダジャレですね。世界観が一気に変わるような遊び心は必要かなって。

――ゲームが進むと“音による攻撃”が注目される場面も出てきます。音楽のジャンルとしては本当にバラエティーに富んでいますね。

小高
 あそこも僕のアイデアで、参考になりそうな楽曲を高田に渡しました。

高田
 もともとマジメにふざけるのが好きなので、本当に楽しかったです。ちなみにフォークソングっぽい楽曲を歌っているのは福田ですね。

小高
 民族っぽい音楽については、むしろ高田に出してもらった感じで。音楽か何かわからない違和感のある音を流したくてお願いしました。

高田
 あと、楽曲ではないのですが、サウンドチームでこだわったのがサイレンの音や予鈴の音です。福田がそれぞれのシーンで鳴る楽曲やセリフのトーンに合わせてSEのピッチを調整しているので、ぜひ注目していただきたいです。
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とがった個性を打ち出せたのもアクセルベタ踏みの開発ゆえ

――曲も含めて細部までこだわり抜かれているだけに、発売後にはさっそく続編を望む声も挙がるかもしれません。

小高
 そういう声が挙がるのはうれしいですが、いまはうんざり感のほうが強いかも……(苦笑)。

高田
 そのうんざり感を乗り越えない限りは続編には取りかかれないですね!(笑)

小高
 あとは、この規模の作品をまた作るとなると、資金調達など会社を運営するうえでのきびしさも出てきてしまいます。

――リアルなお話が……。

高田
 お金に関しても入り口の部分は小高が担当してくれていますけど、経理として出口を担当するのは僕なのでよくわかります。正直、胃が痛くなる瞬間もありました(笑)。お金のことを気にし出すと制作にも影響してしまうのでなるべく切り換えるようにはしていましたが、まったく考えないわけにもいきません。

小高
 僕も以前までは「これもやりましょう! あれもやりましょう!」と提案するだけでしたが、現在は会社の代表としてブレーキを踏みつつアクセルも踏まなければならないので、そこはたいへんでした。ただ、冷静に振り返ってみると、そこまでブレーキを踏んでいなかったなと。

高田
 そうね!(笑)

小高
 でも、ブレーキを踏もうとする意思はあったんですよ。ただ、踏んだのはクラッチで、ギアが変わっちゃったりして(笑)。

高田
 そういったところが社長、副社長としての悩みですかね。自社のスタッフのみならず、メディア・ビジョンさんやアニプレックスさんのがんばりも自然と目に入ってくるので、どうにか還元してあげたいというプレッシャーもあって……。だからこそ、音楽で手を抜くなんてことは一切できませんし、「全曲いいと思われたい!」という一心で作業をしていました。

小高
 そもそも作りかたが完全にインディーズですから。お金を自分たちで調達して、一見すると実現不可能に見えるものを力業で完成させてしまったわけですし。もし、最初からこれだけの予算になることがわかっていたら、もっとスキーム化したゲームを作るのが一般的ですけど、この規模で個性のとがりまくった作品を作れたのはレアケースだと思います。

高田
 とがったタイトルにも、お金が出やすい時代になるといいんですけど。始まる前に消されてしまうアイデアも多いですからね。

小高
 とはいえ、本作は当初の2倍くらいの予算に膨れ上がっているので、これがふつうの会社だったら仕様を削られるか、最悪プロジェクトが閉じられても文句は言えません。

――確かに……。そう聞くと、ウルトラCのような作りかたをしていたように感じます。

高田
 経理担当の身から言えるのは、アニプレックスさんの協力がなければ、まず実現不可能だったということでしょうか。

小高
 そうですね。スタートの時点ではアニプレックスさんもいませんでしたし、僕らの資金だけでは作りきれないということがわかっていましたから。もしかしたら、そこがいちばんドキドキしたかもしれません。

高田
 小高の社長としてのいちばんの偉業がそこなんですよ! ある日突然、「アニプレックスさんが契約してくれそうだ」と言い出したんですよね。そのとき、本人も褒めてほしいと言っていましたけど、まさか僕らにIPの権利を持たせたまま契約を結んでくれる会社があるとは。あの瞬間に完成が見えた気がします。

小高
 逆にそれまでの期間はしんどかったです。もちろんクオリティー面の自信はあったのですが、「お金をかけたはいいけど、途中で終わってしまうのか!?」というドキドキはつねにありました。最悪、権利を手放してでも完成させる気はありましたし、条件を下げていけばいつかはどこかで拾ってくれるだろうといった感覚でいましたが、アニプレックスさんとビックリするくらい早くに組めたので助かりました。

高田
 うーん、やっぱり最初からアクセル踏みっぱなしでしたよ(笑)。

小高
 確かに、資金を調達する前に開発を始めるとか、正気なら絶対やりませんね。でも、機を待っていたらあと2、3年は開発が遅れていましたし、逆に途中まで開発が進んでいなかったらアニプレックスさんとは組めなかったかもしれない。そういう意味では巡り合わせかなと。狙って同じことをするのは至難の業かもしれませんが、こういうゲーム作りができるようになれば、日本のゲーム業界には特徴的なタイトルが増えていくように思います。

――最後に、メッセージをお願いします!

高田
 遊んでいただければ楽しさは伝わるはずです。日本の住宅事情だと難しいかもしれませんが、爆音でプレイしてみるとものすごい体験ができるのではないかな。とくにシミュレーションRPGパートはかなり刺激的だと思うので、機会があればぜひ試してみてください。

小高
 高田はもちろん、SE担当の福田も見事な仕事をしてくれていますし、シミュレーションRPGパートの音の爽快感も楽しめると思います。ぜひ細部まで注目してください。

――ちなみに、サウンドトラックを出す予定はありますか……?

高田
 出します……よね?

小高
 たぶん出しますよ! 少しでも開発資金を回収しないと(笑)。

高田
 とりあえず、デジタルデラックスエディションの特典として選りすぐりの音楽を10曲ほど収録したミニサウンドトラックがつきます。収録曲は独自のマスタリングをした特別版で、ゲームを遊んでいないときでも、本作の世界観に浸っていただけると思います。

『ハンドレッドライン』スタッフインタビュー

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      集計期間: 2025年04月26日08時〜2025年04月26日09時