『ソウル・コヴェナント』レビュー。最初の武器は自分をかばった隊長の死体。VRで首を食いちぎられ、死の追体験は極上の“ごっこ遊び”であると気付く【開発インタビュー付き】

byカール大島/翡翠ミヅキ

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『ソウル・コヴェナント』レビュー。最初の武器は自分をかばった隊長の死体。VRで首を食いちぎられ、死の追体験は極上の“ごっこ遊び”であると気付く【開発インタビュー付き】
 みなさんは“自分が死ぬ瞬間”を体験したことがあるだろうか? 筆者はある。首から食われるのは辛かった。

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この記事は『SOUL COVENANT』(ソウル・コヴェナント)の提供でお送りします。

 2024年4月19日に発売されたVRドラマチックアクション『SOUL COVENANT(ソウル・コヴェナント)』。2024年4月のPlayStation Storeにおける日本のPlayStation VR2ダウンロードランキングで、1位を獲得したVR専用ゲームだ。

 荒廃した日本を舞台として機械兵器“デウスエクスマキナ”と人間がくり広げる熾烈な戦いを、近接戦闘を主体としたアクションで体験していく。キャッチコピーは“死が語り継ぐ、命の物語”。

 ジャンルはVRアクションゲームだが、本作の醍醐味はアクションとは別の部分にあるように思う。VR技術を活かした視点には臨場感があり、気分はまるでシリアスなSFアニメの主人公。ただし、その物語には死がまとわりつき、重く、暗い。
『SOUL COVENANT(ソウル・コヴェナント)』公式サイト
 映像はきれいで操作難度は低く、初めてVRに触れるプレイヤーにもおすすめ。……と書くのは簡単だし、それはそれで事実なのだが、マジで話が重いので、人を選ぶことは最初に書いておきたい。あまりにも死が連鎖し続けると人は人間性を失うことを、筆者は本作を通して知った。

 「仲間だけじゃなくて、自分が死んじゃう瞬間もVRで体験してみたい」という方にはぴったりのゲームだろう。

自らの手で剣を振り、ビームで敵を撃滅。話は激重なのに戦闘はカジュアルでとっつきやすい

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 『ソウル・コヴェナント』は、2013年にリリースされたマルチプレイアクション『ソウル・サクリファイス』を手掛けたメンバーが中心となって制作された。精神的な続編であり、前作を未プレイでも問題なく楽しめる。

 本作はVRヘッドセット専用のタイトルで、対応機種はプレイステーション VR2、PC(Steam)、Meta Quest 2/3。自身の体を使って機械兵器“デウスエクスマキナ”と戦っていくわけだが、ある意味で“理想を叶えるゲーム”とも言える。

 主人公が振るうのは、人間の遺骸から生まれた“スケイプゴート”と呼ばれる近接武器だ。剣や槌など複数の種類があり、すべてが可変機構を搭載。武器を両手で握ることで変形し、剣は鎌に、槌は双剣にと、瞬時に変形する。見るからにかっこいい。

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 これらをVR空間の中で自由に操りながら大量の敵を切り刻んだり、見上げるほど巨大な敵との死闘を体感できることが本作最大の魅力。戦闘中にはシールドによる防御やステップ、相手を吹き飛ばす“フィニッシュブロー”といった要素を使いこなし、戦略的な駆け引きもおもしろい。「これぞVRアクションゲーム!」という感覚を味わえる。

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 ここにさらなる快感をプラスするのが、敵から回収したエネルギー“モナド”を消費して使用可能な必殺技“デモニックバースト”!

 自身の左手を正面にしっかり伸ばし、右手で左腕をつかむとチャージスタート。十分に
エネルギーを溜めると手のひらからビームを発射できるのである。そのポーズは誰もが憧れるかっこいい姿そのもの。誰しも敵をビームで薙ぎ払いたいものなので、テンションが上がるのは間違いない。

 かっこいい武器を振り回し、かっこよくビームを放つ。これを理想と言わずして何と言おうか。

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 筆者は日常的にVR機器を使ったゲームや、いわゆる“メタバース”と称されるVRSNSにどっぷりと浸かっているゲーマー。その視点から本作を語ると、カジュアルに遊べるVR剣戟アクションゲームという印象で、ぶんぶんと全身を動かしながらSF的な形状の近接武器を振り回せるのが本当に楽しかった。

 腕を自由に動かせるVR機器は、剣を駆使して遊ぶアクションゲームと非常に相性がよく、チャンバラをゲーム性の主軸に据えたVRゲームは数多く登場している。最近では『Blade and Sorcery』なんかが人気を集めているし、リリースから5年以上が経過した『ソード・オブ・ガルガンチュア』は定番ゲームとしていまだに人気が根強い。

 VRゲームにおいて“剣”は“銃”と並ぶ人気ジャンル。筆者にとっても『VRChat』の中で意味もなくショートソードを素振りするくらいには剣戟は身近な存在である(筆者が特殊な人種なのかもしれないが)。

 剣戟系VRゲームはおもしろいが弱点もある。アクション性が高いので、どうしても人を選ぶのだ。だが、『ソウル・コヴェナント』は少し違うように感じた。

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 多くの剣戟系VRアクションゲームは、パリィやジャストガードといった高難度テクニックを高速で駆使する傾向がある。日常的に剣戟系ゲームで遊ぶ人からすれば、そのテクニックこそが重要。敵の攻撃を紙一重で攻略して「見切った!」的な動きができる魅力的な要素であるから、当然と言えば当然のこと。

 逆に言うと、剣戟の動きに慣れていない初心者にとっては、少なからずハードルの高い要素である。筆者自身、そういったゲームに慣れるまでは、敵に斬られながら覚えなければならず苦労した。モニターでプレイするゲームとは異なり、VRで没入したうえで斬られる体験はけっこう怖いもの。感受性の強い人には辛いだろう。

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 そこで『ソウル・コヴェナント』である。最初に遊んだとき、
高等テクニックを“あえて”多用しないことを意識したゲームシステムだなと感じたのだ。片手で剣を振り回しながら。

 敵の攻撃を防いだり回避する動きこそ重要だが、基本的に敵の攻撃スピードは遅めだ。予備動作が大きかったり、攻撃範囲が視覚的にわかりやすかったりと、初見で対処しやすいものも多い。

 先ほど挙げたパリィやジャストガードも実装されているが、クリアーに必須のテクニックかと問われたらそういうわけでもない。防御に使うシールドはトリガーを引くだけで瞬時に大きく展開され、直感的かつ強力だ。

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 序盤~中盤はさくさく進められるものの、終盤になると難度がグッとアップ。もちろん、ゲームを進めていけば苦戦必至の強敵も登場する。

 単に強いだけでなく、「これまでのヤツとは違う!?」とマンガみたいなセリフを素で言っちゃうような緊張感のある存在である。この壁を越えたいと思わせるような、アクションゲームとしての演出は秀逸のひと言。

 あくまでも、基本の作りは“おもしろい武器を気持ちよく振る快感”を重視。バトル中に難しいことを考えないような難度設計にしているんだなと思える(とくに序盤は)。

 そして、それにはちゃんと理由もある。

お腹の下にズシンと来る重厚な物語。仲間の死を抱えて進め。

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 ここで、あらためて本作のキャッチコピーを見てみよう。

「死が語り継ぐ、命の物語」

 すごくダーク。そして重そう。そんな印象を抱くのではなかろうか。

 そのイメージ通り、本作は「超ッ重い」。話が。“絶望”や“死”といった言葉がよく似合う。

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 ゲーム本編は、“チャプターを選択→プロローグのムービーを見る→戦場に出撃→エピローグを見る”という流れが1セットになっており、これをくり返して物語を進めていく。

 各プロローグとエピローグはフルボイス。ボリュームもかなりあって、ひとつひとつの戦闘にしっかり戦う理由を持って出撃する様子から、じわりじわりと臨場感が伝わってくる。

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 戦闘中にも仲間や敵との会話イベントがひっきりなしにくり広げられるので、戦っているだけの時間はほとんどない。ゆえに“戦闘だけに集中する”時間が少なく、戦いと同時に物語を体験し、プレイヤーが主人公として没入できる作りになっている。

 つまり、“物語の登場人物として主人公とプレイヤーがシンクロし、生で体験する”という点にこだわっているのだろう。そのためにも、テクニカルな操作が不要なのはありがたい。戦闘が難しすぎると、物語に集中できないから。シンプルな話だ。

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 肝心の物語は、とにかくシリアスでバイオレンス。登場人物の命がひたすらに軽い。もうどんどん死ぬ。なんだったら主人公も死ぬ。だいたい30分にひとり死ぬ。本稿はコミカルな表現も取り入れて文章を書いているが、『ソウル・コヴェナント』本編にギャグなんて基本ない。

 ゲームを始めた時点で人類はもはや壊滅状態であり、
プレイヤーを導いてくれるはずの隊長ですら、すでに死んだ状態で初登場する。ここまでゲーム開始から4分弱。早くもひとりめの犠牲者である。早死の世界記録でも狙っているのか?

 そんな動揺をよそに、隊長の脊椎を、自分の武器“スケイプゴート”として託される主人公。重ッ! この武器、重ッ!! コントローラーしか持っていないのに、やけに剣を持つ右手が重いのは気のせいだろうか。思い出ができるよりも先に、武器として仲間の遺体とご対面させていただくのはさすがに初めての経験である。

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 加えて、その主人公ですら、“今の自分ではない、他の自分”が死んで残された記憶を移植された“アヴァター”(要するにクローン体)だという。物語は移植された他の自分の記憶を追体験する形で話が進むため、
自分もいつか死ぬのは確定事項なのだ! 怖い!

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 ……最初の“自分の死”の追体験は、
挑んだ機械兵器に首から上を生きたまま食いちぎられるというものだった。「カブッ。ベキッ。グチョッ」という音をいま思い出しただけでも、ちょっと首がもぞもぞする。モニター越しならともかく、こちとらVRなのだ。その体験は筆舌に尽くしがたい。

 これはPR記事だ。多くの人に「このゲームはおもしろいですよ」と届けるのが目的だが、筆者の評価を語るレビュー記事でもある。自分の名誉のためにも、もう一度書いておく。感受性が豊かな方は本作のプレイを避けるのが賢明かもしれない。

 それでも興味を惹かれた人は、まずはいったん深呼吸をして、心を落ち着けてからプレイしてほしい。VRゲームだからこそ表現できる極上の“生々しさ”を味わったら、人はどうなるのか。その答えがわかるはず。

 そういった“死”がまとわりつく体験が好物な方は、どうぞ存分に堪能しましょう。レッツ捕食(される方)。

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 こうして“初めての死”を体験した後には、新たな仲間がめちゃくちゃ気にかけてくれた。暖かさが沁みるぜ。……まぁ、30分後には死亡フラグを乱立させながら死んでしまうのだが。

 死んでしまった仲間の遺体は新たな武器として託される。変わり果てた姿の仲間を手に、思いを馳せながら戦おう! ……すごい文章を書いてるな自分。

 背負うものが重すぎて、仲間が死ぬと一周回って「また死んだなー。お、新しい武器じゃん」という気持ちにさせてくれる。物語の中で“死”という概念から開放された主人公は人間性を失っていく。こっちまでそんな状態だ。どうせ、みんな死ぬ。

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 お腹の下あたりがグンと重くなるような絶望の中で戦う戦士たちのヒューマンドラマを、エピローグ、バトル、プロローグと、ボリューム満点で味わいながら、かっこいい自分の剣技に酔いしれる。それが『ソウル・コヴェナント』というゲームである。筆者が筆を走らせながら胃もたれしているのは、本作のせいか。はたまた逆流性食道炎のせいか。

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 さて。開発・販売元のThirdverseは、前述の『ソード・オブ・ガルガンチュア』も手がけている。経験者なら「VRで剣術を楽しむならココ!」と太鼓判を押したくなるデベロッパーだ。

 あえて物語や世界観を重視し、VRゲーム初心者たちがコンシューマゲームように遊べるタイトルの開発にも挑戦していくことで、VRゲームユーザーの拡大を目指しているという。

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 一方で、『ソウル・サクリファイス』の精神的な続編という一面もある。同作の開発メンバーが再結集しており、“犠牲”や“生贄”などの言葉が似合う、特有のエグさは健在だ。

 VRを活用した剣戟アクションゲームであり、重い物語を追体験させるRPG。その開発の裏にはどんな想いが込められているのか、開発チームのキーマン・下川輝宏氏に話をうかがった。

下川輝宏

ゲームデザイナー/シナリオライター。『ソウル・コヴェナント』や『ソウル・サクリファイス』シリーズのディレクターを務めている。文中では下川。

【開発インタビュー】長年愛してくれた“ソルサクファン”といっしょに、“VR”という戦場に挑む

――発売から3週間ほど経ちました。ユーザーからの反響はいかがでしょうか。日本のPlayStation VR2ダウンロードランキング(2024年4月の)で1位を獲得したとお聞きしましたが。

下川
 はい。ありがたいことにご好評をいただいております。ストーリーのクリアー報告も増えてきました。とくに物語や世界観については、こちらの想像以上の評価していただいているようです。中には「いままでプレイしたVRゲームの中でいちばん楽しめた」という声もあり、非常に光栄に思っています。本作のコンセプトは“ごっこ遊び”や“死の追体験”。これらも狙い通りの楽しみ方をしていただけているようです。

――“死の追体験”はVRの特性にぴったりですよね。生き死にを描くゲームや映画は多いですけど、それらよりもさらに死が近いような。

下川
 レビュー記事ではその辺りも楽しんでもらえたようで何よりです。そういった感想を見るたびに、この作品を世に出せて本当によかったとあらためて感じています。課題としては、国内ユーザーさんからは総じて高い評価を届く一方で、海外市場への訴求は改善の余地があると感じています。

――お国柄の違いもあるかもしれませんね。海外VRゲームはシューティング系の人気が高いですし、「かっこいい武器でチャンバラをしたい」という欲求は日本人ならではかも。

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――本作をプレイして、バリバリのハードなアクションというより、カジュアルな遊びやすさを強調している印象を受けました。アクションが苦手な人にもストーリーを楽しんでもらいたいという配慮なのでしょうか?

下川
 難易度バランスには悩みました。開発中に何度もテストプレイを実施したんですけど、日頃からVRゲームを遊ばれている方とVRヘッドセット自体に慣れていない方では、当然ながらプレイ進行に大きな差が出ます。本作はアクションゲームではありますが、世界観や物語にも力を入れていますので、そちらを期待するユーザーさんがクリアーを諦めてしまう形にはしたくない。ですので、後者の方(VRゲーム初心者)でも遊びやすい設計を心がけました。

 『ソウル・サクリファイス』の精神的続編をうたう作品ですからね。“本作のためにVRヘッドセットを買ったソルサクファン”もいらっしゃると思うので、そういう方を大事に考えました。結果、それがVR市場の拡大につながれば……という想いもあります。テストプレイで得たフィードバックを可能な限り盛り込んだので、こういったゲームに不慣れな方でもとっつきやすくはできたかなと思います。実際にそのような感想をいただいたときはホッとしました。

――たしかに、遊びやすさは最初に感じたポイントでした。

下川
 入り口のハードルは低くしつつ、操作に慣れた中盤以降はややシビアにしています。クリアー後に遊べるクエストは、ものによってはVRアクションゲームに慣れた方でも苦戦するくらいの難易度にしたつもりです。“マルチプレイができるVRアクションゲーム”としては、ある意味でそこからが本番。序盤が簡単で物足りないという方は、ぜひそちらも挑戦してもらえるとうれしいです。

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――卵が先か鶏が先か的な質問です。開発段階では、VRゲームを作るのが前提だったのでしょうか? それとも『ソウル・サクリファイス』のようなゲームを現代風を作ろうとして企画を練った結果、VRに辿り着いたのでしょうか?

下川
 どちらかというと前者が近いですね。最初の目的は“ストーリー性のあるVRアクションゲームを作ること”だったんです。そこで、物語面で評価されている『ソウル・サクリファイス』のメンバーを集めてプロジェクトを進めようとなった次第です。

――開発時に参考にしたVRコンテンツはありますか?

下川
 他社さんの特定のタイトルを集中してベンチマークにしたということはありませんが、Thirdverse社の過去作でユーザーさんから届いた声を総合的に参考にさせていただきました。そこから「VRタイトルにも関わらず酔いづらい」などの評価につながったかなと思います。

“死”をテーマにしたのは“共感性”の高さから

―"死"をテーマにした重めのシナリオから、世界設定や物語に注力されている気がしました。ストーリーへのこだわりについてお聞かせください。

下川
 『ソウル・サクリファイス』の精神的続編をうたう以上、同シリーズで評価されている“世界観の作り込み”や“テーマ性のあるシナリオ”は、同等かそれ以上の熱量で向き合う必要があると考えました。テーマに“死”を選択したのは、人にとって普遍的なものであるからです。『ソウル・サクリファイス』がフォーカスしたのは“人の欲望”。だからこそ高い共感性が生まれたのではないかと。

――ある意味、本能に近い部分でもありますね。

下川
 (『ソウル・サクリファイス』の)明確な続編というわけではありませんが、本作でも“らしさ”が出るように狙った部分でもあります。本当はもう少し語りたいのですが、これ以上はネタバレになってしまうので……気になった方はぜひ本作を遊んでもらえたらうれしいです。

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――NPCや敵も含めて、キャラクターの動きが凝っていると感じました。これらの動きはどのように作っていったのでしょう? モーションアクターを使っていた場合、どのような指示があったのかも気になります。

下川
 ゲームのナビゲーターであり、物語の語り部であるイヴについてはとくにこだわりました。イヴは人を模して造られた人工知能。モーションキャプチャー時には“機械と生命のバランス”に気をつけました。機械っぽさと生物っぽさの融合は、敵デザインやそこから生まれるモーションでも気をつけた部分で、本作の世界観の特徴とも言えます

――敵である“デウスエクスマキナ”のデザインは、"人に畏怖される姿"ということで神に近い姿になったそうですが、この方向性は最初から決まっていたのでしょうか? 単なるモンスターとは異なり、とても新鮮でした。

下川
 敵のデザイン面は好評をいただいているので、ぜひ注目してもらいたいポイントのひとつです。機械が敵というのは当初から決まっていました。工夫しないとありきたりの存在になってしまうので、設定面にはこだわりがあります。

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下川
 自分がやるからには『ソウル・サクリファイス』に近いテイストがあった方がいいだろういうことで、神という要素を採用。デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)という名称を与えたときに、完成イメージが見えた感じですね。ゲーム内のアーカイブに各敵やステージのバックストーリーを載せているのも、『ソウル・サクリファイス』に通じる部分かと思います。

――ストーリーを楽しみたいという意味では、お気に入りの人物にもっと感情移入したいとも思えました。彼らを深堀りするコンテンツ(DLCや公式サイト上で公開する読みものなど)があるとうれしいのですが……。

下川
 追加ダウンロードコンテンツにつきましては、現時点ではお知らせできることはございません。今後、お客様の要望にもとづいた対応ができるよう検討していきたいと考えております。
――なるほど……。それではいまのところはゲーム内アーカイブを見て想像を膨らませようと思います。

VRアクションゲームとしては“終わってから”が本番

――マルチプレイ要素の魅力についてもお聞かせください。

下川
 “防衛戦”と呼ばれるカテゴリのクエストは、マルチプレイの連携を意識した設計になっています。とくにシナリオクリア後のEXステージに注目してほしいですね。死闘感全開のハードな難易度になっています。

――マルチプレイと高難度コンテンツは相性がいいですよね。

下川
 マルチプレイであればいっそう盛り上がるかと思います。ゲームの入り口をとっつきやすくした分、序盤は難易度的に物足りないユーザーさんもいたかと思います。そういった方々にも死がすぐ隣りにあるスリルを楽しんでもらえたらうれしいです。

――海外市場での評判はいかがでしょう?

下川
 『ソウル・コヴェナント』は物語や世界観を重要視しつつ、VRゲーム初心者の方たちがコンシューマーゲームに近い感覚で楽しんでもらえるように開発いたしました。またVR酔いにつながる動きや演出なども極力抑えるようにゲームをデザインしております。

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下川
 海外のVRゲーム上級者の方からは「物理計算の部分について物足りなさを感じた」というような評価をいただいた一方で、最後までプレイしていただいた方からは「コンシューマーゲームのような遊びやすさがあった」、「物語や世界観に共感した」という意見もいただいております。

 また、ハードな難易度を求める方からすると「シナリオクリア後のEXステージからが本番だった」という感想もいただいています。先ほど申し上げた通り、それはある意味狙い通りなので、今後はそれらの部分を丁寧に訴求していきたいと思っております。

――話を聞けば聞くほど、VRならではの特徴が詰まっているように感じます。

下川
 “漫画やアニメの主人公になりきる体験”は、VRでしか味わえないものだと思います。もし本作に興味を持たれたようなら、ぜひこの世界に飛び込んで“ごっこ遊び”を楽しんでほしい。しばらくVRヘッドセットを装着していない人には、久しぶりに起動してみてほしいですね。

 また、かつて『ソウル・サクリファイス』を遊んでくれた方々で、まだ本作をプレイされていない方もお待ちしております。VRという言葉に尻込みされる方もいるかもしれませんが、初心者でも遊びやすく設計しましたので、慣れてない方々にこそ、一度手に取ってほしいです。

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 長年シリーズを追ってきたファンといっしょに遊べる、おもしろいVRアクションゲームを作りたい。下川氏の発言からは、そんな想いが伝わってきた。

 “死”を恐れない人にはグサッと刺さる『ソウル・コヴェナント』で、“VRでゲームの世界に入り込む”おもしろさをぜひ体験してほしい。本作はVR機器専用のタイトルとして、プレイステーション VR2、PC(Steam)、Meta Quest 2/3で好評発売中だ。

 重くてダークな物語が好みだったり、怖くてグロい機械生物や強大な敵と対峙したいという方に刺さるであろう、尖った1本。この絶望を堪能してほしい。
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