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『CoD:BO6』開発者インタビュー。「ブラックオプスとは一体何か?」と根本的な疑問とつねに向き合って生まれた新作

byいーさん

更新
『CoD:BO6』開発者インタビュー。「ブラックオプスとは一体何か?」と根本的な疑問とつねに向き合って生まれた新作
 Activision Blizzardより、2024年10月25日に発売される『Call of Duty: Black Ops 6』(コールオブデューティ: ブラックオプス6、以下『CoD: BO6』)。

 Treyarchが手掛ける、特殊部隊の秘密作戦を描く
Black Ops』シリーズの最新作だ。歴代作品よりもスピード感が増す“オムニムーブメント”の採用や、Xbox Game Passで発売日からプレイでき、新規プレイヤーも増えることから追加されるアシスト機能、ファンからの要望が多かったシアターモードの復活など、さまざまな新要素が追加されている。

 本記事では開発スタジオのTreyarchでメディア向けに開催されたマルチプレイヤーについての合同インタビューをお届けする。
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エイムをしながら全方向に走れる革新的な”オムニムーブメント”システムはどのように生まれたのか

――“オムニムーブメント”について教えてください。FPSゲーム全体にとってもかなり新しいコンセプトだと感じましたが、この発想はどのように思いついたのですか?

Matt
 まずは“ブラックオプスのエージェントは最強のエリート集団である”というところから考え始まりました。現実世界での最強エリート、つまりアメリカンフットボールやヨーロッパのサッカー選手、テニス選手、NBA選手、そして実際にトップの軍人たちを研究しました。彼らはどの方向にも素早く移動できます。私たちだってどの方向にも走れますよね?

 また、ある程度時間に余裕ができた時に、一歩引いて「
『Black Ops』のゲームであるとはどういうことか」と自問自答したことも要因のひとつです。難しい質問を自分たちに投げかけ、『Black Ops』の意味を再定義しようとした結果なのです。その過程で失敗もありましたし、さまざまなことを試しました。

Yale
 あらゆる要素をブレンドするのは楽しかったのですが、同時に悪夢でもありました。

Matt
 そして最終的に「どの方向にもダッシュできたらどうなるか?」というアイデアに立ち返りました。試してみたところ、非常にいい感触でしたが、かなり膨大な量の作業が必要でした。

 どの方向にもダッシュができるだけでなく、ダイブやスライディング、方向転換、あらゆる方向に対応した専用アニメーションも実装する必要があったからです。

[IMAGE]
――オムニムーブメントは『CoD: BO6』だけでなく、将来の『Call of Duty』全体に及ぶ、大規模なメカニズムの調整ですよね。それを先駆的に導入するのは大変なことだったのではないでしょうか? また、マルチプレイヤー以外へのモードへの実装はどうなったのでしょうか?

Matt
 間違いなく大変な挑戦でした。キャンペーンやマルチプレイヤー、ゾンビモードへの影響など、多くの疑問がありました。

 これは単一のモードだけのメカニズムではなく、グローバルなメカニズムであることを明確にするために、私たちは大きな努力をしました。オムニムーブメントは
『CoD: BO6』の一部です。当然、ほかのゲームや将来の展開についても考えますが、私たちの焦点はあくまでも『CoD: BO6』の体験を最高の状態にすることです。

Yale
 制作側の視点から言うと、オムニムーブメントは非常に基礎的なものであり、ほかのすべての要素に影響を与えるための大きな課題でした。最初のドミノを倒したら、その後は連鎖的にあれもこれもやらなければならなくなるわけです。

 「これは本当におもしろくなるぞ」とワクワクする反面、アニメーションチームから物理チーム、ゲームプレイエンジニアリングチーム、アニメーションツールやシミュレーションを作る人たちの中で、何度もミーティングを重ねることになりました。そして話し合っていくうちに、「それはできるけど本当に大変。すべてのアニメーションを考えると、すべてをつなげるためには何千何万ものアニメーションが必要になる」という結論に至りました。

 そこで「もしこうだったら?」と提案したところ、Mattが自分のデスクでいくつかのスイッチを切り替えることで実際にゲーム内で動かせるものを作ってくれました。見た目はあまりよくありませんでしたが、可能性を感じさせるものでした。そして、私たちはそれをプロトタイプとして、関係者に説明する際に使用しました。そして人々がその可能性を理解し始めると、「時間さえあればできる」という確信に変わっていきました。

 結果的に、オムニムーブメントの実装にはゲームプレイとアニメーションのリソースの大部分を費やすことになりました。とくに何かひとつを作るたびに次々と課題が発生しました。それでも、私たちは“ブラックオプスのエージェント”という、最高の兵士といったファンタジーを実現するために、あらゆる要素を検討し努力を惜しみませんでした。

 そしていま、私たちはそれを実現できたと感じています。

――オムニムーブメントをオフにして従来の操作方法に戻すことはできますか?

Yale
『CoD: BO6』全体にとって非常に基礎的な要素であるため、オフにすることはできません。一度体験したら、もう元には戻れないと強く信じています。ほかのゲームをプレイすると、「なぜこんなに動きが遅いのだろう?」と感じてしまうほど。

 プレイヤーはオムニムーブメントを強制されるわけではなく、オムニムーブメントはアクションヒーローのような動きだけを目的としたものではありません。基本的には、
『CoD: BO6』以前のゲームでは建物をダッシュで移動中に階段を上るために方向転換すると、向きを変えすぎたためにダッシュが止まってしまいました。しかし、本作ではそうではありません。滑らかに動き続けることができます。たとえ窓から飛び降りたり、爆発から逃れたりするような激しい動きをしなくても、滑らかな動きの効果を実感できるのです。従来通りの『Call of Duty』のプレイスタイルでも、滑らかさと快適性の向上を感じることができるでしょう。

Matt
 プレイヤーが切り替えられる要素もあります。たとえばコーナーの切り抜けかたや、インテリジェントムーブメントなどです。オムニムーブメントの開発を進める中で、ユーザーリサーチやプレイヤーとの対話、そして実際にプレイした経験から、アクションヒーローのような動きをするには、基本的な操作をマスターしている必要があることに気付きました。どうすればもっと多くの人が「窓から後ろ向きに飛び降りて敵を撃てた! すごい!」というようなクールな瞬間を体験できるようになるかと考えました。

 そこで、私たちはインテリジェントムーブメント機能の開発に着手しました。この機能はオンにすることで、自動的にダッシュしたり障害物を登ったりするように設定できます。これにより、プレイヤーは操作ではなく、ゲームに集中できるようになります。ただし、これらのアシスト機能はすべてオンとオフを切り替えることができます。そのため、ボタン操作を少なくして、より高度な動きをすることも可能です。

 レーシングゲームで最適なプレイをするには、完全にコントロールし、完璧なタイミングで操作する必要があります。ですがインテリジェントムーブメントでは、これらの機能の一部をオンとオフに切り替えることができます。カメラの動きなどに関連する設定は、プレイヤーにそれを強制したくありません。アクセシビリティなどの観点から考慮すべき点です。

――オムニムーブメントの真価を最大限に引き出すには、インテリジェントムーブメントをオンにし、コーナーをスムーズに切り抜けるように設定する必要があるのでしょうか?

Yale
 いいえ、それはプレイヤー次第だと思います。その助けとなるためにさまざまな設定を用意しました。私は個人的にはスプリントアシストだけをオンにしています。多くのユーザーテストを実施し、インテリジェントムーブメントに関するテストでは、この設定をオンにする人、オフにする人などさまざまなプレイヤーを観察しました。万人にとって最適な設定というものは存在しません。

 まったくオンにしない人もいれば、ハードコアなプレイヤーの場合は「私の動きは私が決める」という人もいます。つまり、プレイヤー次第であり、
『Call of Duty』を初めてプレイする人からプロプレイヤーまで、あらゆるプレイヤーにあったプレイスタイルをサポートすることが重要なのです。

Matt
 私たちは長いあいだ、一般的な『Call of Duty』の移動システムを採用してきましたが、オムニムーブメントは初めてです。ですから、プレイヤーにオムニムーブメントを体験してもらうことが私たちの目標のひとつです。

 クールな動きをしたり、ほかのプレイヤーの動きを見たりすることで、その可能性に気付いてもらいたいのです。 残念ながら、
『CoD: BO6』の発売時にプレイするすべての人が、このメディア向けのプレゼンテーションのような、すべての機能を説明される機会を得られるわけではありません。

 多くの人は「
『Call of Duty』の新作が出た」とだけ思って、従来通りのプレイスタイルでプレイするかもしれません。しかし、オムニムーブメントである瞬間に後ろ向きにダイブして、「なんだこれは? すごい!」と感じるかもしれません。ですから、私たちはより多くの人がその体験をできるようにしたいと考えており、プレイヤーの実体験を通じて、オムニムーブメントの可能性をアピールしていきたいと考えています。

 初期段階でオムニムーブメントを紹介した際には、「これはスクリプト化されたシーケンスでしょ?」と言われましたが、「いいえ、これはマルチプレイヤーモードで実際にできることです」と説明しました。横向きにダイブしたり、いままでにない動きができることを理解してもらえなかったのです。

 実際に目にしたにもかかわらずカットシーンだと思った人もいました。しかし、「実際にできるんだ」と実感してもらうことで、オムニムーブメントの可能性に気付いてもらえるはずです。ですから、インテリジェントムーブメントは、より多くの人がその瞬間を体験し、よりよい操作方法を見つけ出すための重要な要素だと考えています。

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――オムニムーブメントは、バトルロイヤル『Call of Duty: Warzone』にも実装されるのでしょうか?

Matt
 それについてはお答えできません。

――『Call of Duty』のマルチプレイヤーモードは、新規プレイヤーにとって敷居が少し高いように感じます。『CoD: BO6』に新規プレイヤーを惹きつけるための魅力はありますか?

Matt
 インテリジェントムーブメントについてはすでに詳しくお話ししましたが、『Call of Duty』を初めてプレイする人でも、FPSを初めてプレイする人でも、ゲームを初めてプレイする人でも、誰でも簡単にプレイできるゲームにすることが重要だと考えています。

Yale
  マルチプレイヤーだけでなくキャンペーンやゾンビモードについても同様です。詳細はまだお話しできませんが、ゾンビモードにもプレイヤーをスムーズに導入できるよう取り組んでいます。

 マルチプレイヤーとゾンビモードはいずれも非常に奥深く、豊かな体験を提供できますが、まずはプレイヤーをゲームに引き込み、基本を教える必要があります。
『Call of Duty』にはさまざまなモードがあり、最初は「何をすればいいんだ?」と迷ってしまうかもしれません。そこで私たちは“いますぐゲームをプレイする”といったように、操作を簡素化しようとしています。起動からゲームプレイまでのクリック数や、マッチングにかかる時間など、あらゆる要素を検討しています。

――UI/UXについてですが、『Call of Duty: Modern Warfare』などでは、キャンペーンやマルチプレイヤーなど、読み込みシステムに階層構造があります。『CoD: BO6』も同様のメニュー構造を採用するのでしょうか、それとも独立したものになるのでしょうか?

Yale
 私たちは『Call of Duty: Modern Warfare』のシステムの一部を採用していますが、同時に独自の改善にも取り組んでいます。アップデートについては改めてお話しする機会がありますが、『CoD: BO6』の発売に合わせて大幅な刷新を行う予定です。

――マルチプレイヤーでは、プレイヤーの腕前によってマッチングが行われる“スキルベースマッチメイキング”が採用されていますか?

Yale
 いまはお話しできません。Activisionがマッチメイキングに関するブログ記事を公開しましたが、現時点ではマッチメイキングの具体的な内容については触れません。

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――ゲームプレイでいくつかのパークを確認しましたが、ほかにもパークは登場しますか?

Yale
 次回の情報公開で、さらに多くのパークが発表されるはずです。今回のメディア向けのビルドには、いいサブセットが含まれていると思います。重要なのは、プレイヤーが自分のプレイスタイルを構築できるだけの選択肢があることです。そして、Mattが少し触れたパークボーナス機能により、追加ボーナスを獲得するためのカスタマイズが可能になります。

――プレゼンテーションでHUDプリセットについて説明がありましたが、HUDをプレイヤー自身がすべてカスタマイズできるのでしょうか?

Yale
 HUDプリセットについては、かなり前から取り組んでいます。開発である私たちは、HUDの要素を自由自在に移動させることができます。実際にプレイヤー自身がHUDをどこにでも自由に配置を変更できるバージョンも検討しましたが、スコアフィード、スコアインジケーターなど、ほかの要素との兼ね合いで、ひとつを移動させるとほかの要素も移動してしまうという問題がありました。

 私たちの考えは意味のある変更を加えることです。たとえば、HUDやミニマップを上部に表示するか、左下に表示するか、過去のゲームを参考に
『Call of Duty: Modern Warfare』のようなレイアウトにするかなど。具体的な数はまだ決まっていませんが、いくつかのHUDプリセットを用意する予定です。そして、コミュニティと協力し、プレイヤーの意見を聞きながら、「こんなバージョンが欲しい」という要望に応えて、新たなプリセットを追加していく予定です。

 アクセシビリティの観点からも、すべての要素を自由に配置できるようにするのではなく、ハードコアモードをつねにオンにするか、すべての要素を最小限にするか、下部にまとめて表示するか、上部にまとめて表示するかなど、大きな変更をプリセットとして用意します。プレイヤーがもっとも求めているもの、もっともよく使われているものを把握して、そこから発展させていくほうがいいと考えています。

 HUDのカスタマイズは、私たちにとっても非常にエキサイティングな要素です。長年フォーラムなどで、「マルチプレイヤーでハードコアHUDをオンにできたらいいのに」という意見を見てきました。それが実現できるようになったのですから。

Matt
 マルチプレイヤーとゾンビモードの両方で利用できるグローバルな機能でもあります。ですから、ゾンビモードでもHUDをカスタマイズできます。ゾンビモードに適したプリセットも用意しています。

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――本作は“Black Ops is back”というキャッチフレーズを使っていますね。それはまさに『Black Ops』の復活を象徴する言葉ですが、『Black Ops』らしさを維持するために、どのような点に重きを置きましたか?

Yale
 いい質問ですね。私たちはすべてのゲームモードにおいて、一歩引いて「『Black Ops』らしさとは何か」を自問自答する必要があったからです。新しいエンジンと共有技術を採用したことで、『Black Ops』をゼロから構築し直さなければなりませんでした。

Matt
 “Black Ops is back”という言葉には、「『Black Ops』らしさとは何か」という根本的な問いが含まれています。

Yale
 マルチプレイヤーに関しては、マップの鮮やかさや彩度など、膨大な数の要素について議論しました。『Black Ops』といえば「マップが鮮やかで色彩豊か」というイメージを持っているプレイヤーが多いので、ラボでマルチプレイヤーのマップを大画面に映し出し、高解像度で色を確認し、私たちが目指すものとプレイヤーが期待するものに合致しているかを確認します。遡れば『Black Ops 2』の高度な動きが印象的です。

 そう、
『Black Ops 2』でスプリントアウトの時間などを調整し始めたのが最初で、それ以来『Black Ops』の動きには力を入れてきました。マルチプレイヤーは、私たちが新しいアイデアを試すためのサンドボックスのようなものです。

Matt
 しかし、私たちにとって重要なのは、単なるひとつの動きではなく、全体の流れです。『Black Ops』の魅力は、プレイヤーが滑らかに動き回れることです。それは、走り回って銃を撃っているときだけでなく、倒されたあとのリスポーンまでの流れにも当てはまります。私たちはつねに自問自答しています。

 動きは重要な要素ですが、根本的には銃を撃ったときの感触、弾丸、キルタイム、ヒットサウンドなど、『Black Ops』らしさを追求することが重要です。『Black Ops』のヒットサウンドは、実際に敵に命中したときの音などがほかの『
Call of Duty』シリーズと異なります。過去の『Black Ops』では、すでにベースがあり、それを元に開発していました。

 新しいエンジンを採用した今回は、あらゆる要素をゼロから見直す必要がありました。感触だけでなく機能も重要なのです。

Yale
 過去に実装した機能のクラシックプレステージやシアターモードなども同様です。「これは本当に素晴らしい機能だ。プレイヤーにも好評だ。『CoD: BO6』では、どのようにして復活させようか?」と考えています。復活と言えば簡単ですが意外と大変なんです。

Matt
 現在のシステムやライブシーズンなどを考えると、これらの機能を復活させるのは簡単ではありません。過去から多くのことが変わりました。ですから、「これをやりたい」と考えた上で、そのクラシックな機能をどのように現代風にアレンジするかを検討しています。

 古いアイデアだからといって悪いアイデアとは限りません。車輪が今でも円形であるように、優れたアイデアは時代を超えて通用します。私たちにとって
『Black Ops』は、現実よりも少しだけ壮大で、常に疑問を提示してくれる楽しいゲームです。
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