コーエーテクモゲームスより2025年に発売予定の、『真・三國無双』シリーズ最新作『真・三國無双 ORIGINS』。対応プラットフォームはプレイステーション5、Xbox Series X|S/Windows(Steam)。
本記事では公開された最新映像をもとに、ω-Forceブランド長であり、本作のプロデューサーを務める庄 知彦氏へインタビュー。『真・三國無双 ORIGINS』がどのようなゲームになっているのかを、詳しくお聞きした。
庄 知彦氏(しょう ともひこ)
ω-Forceブランド長。初代『真・三國無双』から『真・三國無双5』まで制作に関わり、以降は 『ドラゴンクエストヒーローズ』シリーズや『刀剣乱舞無双』など多数のタイトルに関わる。『真・三國無双 ORIGINS』ではプロデューサーを務める。
濃密な三国志を体験できる無双へ
――本作の開発がスタートした経緯を教えてください。
庄
『真・三國無双』シリーズは多くのファンの皆さんに応援していただいている一方で、さまざまな理由で離れられたファンもいらっしゃると感じています。今後、海外も含め『真・三國無双』をさらに盛り上げるためには、従来のファンにも改めて遊んでいただくこと、そして新しい『真・三國無双』のファンを増やすことが必要だと考えました。そのために、『真・三國無双』の魅力とは何なのかを原点に立ち返って考え、本作の企画を立ち上げました。
これまでのシリーズのストーリーやキャラクター数を増やすといった、わかりやすい進化の方向性もあるとは思いますが、この先の新たな時代に向かっていくには、それ以上にゲーム性での大きな進化が必要だと考えました。そこで、『真・三國無双』が持つ唯一無二の魅力へ“原点回帰”したうえで、そのゲーム性を進化させること、いまだからこそ実現できる新たな“無双”ならではの楽しさを味わってもらうことを目指したのが、『真・三國無双 ORIGINS』です。
――『真・三國無双8』でも約90体ものプレイアブルキャラクターがいる中で、それをまた増やしていくような方向性にはしなかったんですね。
庄
そうですね。ゲームはプレイしていただける時間もそうですが、制作してコンテンツとして入れられるボリュームにも限りがありますよね。キャラクターのバリエーションを増やせば増やすほど、キャラクターひとりひとりを深く描くことが難しくなりますし、そのほかに割けるエネルギーも減ってしまいます。本作は、キャラクターが多数登場する魅力ではなく、ゲーム性の進化と深化、それと壮大なストーリーによって、シリーズ史上最高の爽快感と濃密な三国志体験をしていただくことを大事に制作しています。
――ナンバリングタイトルにすることも可能だったかと思いますが、『真・三國無双 ORIGINS』と名付けた理由はありますか?
庄
“原点回帰”をテーマにしていますし、内容としてもそうなっているので、ストレートに伝わるタイトルにしたかったからです。実際のところ、社内では「ナンバリングにしたほうがいいのでは?」といった声もありました。ただ、新たな挑戦としてオープンワールドを導入した前作『真・三國無双8』以上に、本作は原点回帰をテーマとしたことで、近年のシリーズと異なる部分も多いため、ナンバリングとはしないほうがいいだろう、と最終的に判断して『真・三國無双 ORIGINS』と名付けました。
本作は、位置付けとしては派生作品、外伝的作品ではなく、シリーズの本流の新作であって、位置づけとしてはナンバリングと同等です。じゃあ“真・三國無双9”はどうなるのか、など聞かれそうですが、今後についてはほぼ考えていないです(笑)。過去作や未来のタイトルのことよりも、いまは“『真・三國無双』の楽しさとは何か?”を突き詰めている本作のことしか頭にないので、本作の開発が落ち着いたら未来について考えようと思います。
――“原点回帰”をテーマにしたときに、本作のゲームコンセプトをどのように立てていったのでしょうか。
庄
ゲーム全体の柱となるのは、“圧倒的大軍団”と“圧倒的爽快感”です。いまだからこそ作れる『真・三國無双』は何か、ということを考えたときに、過去を振り返ると『真・三國無双』シリーズはいつも“ハードスペックを最大限に活かした戦場表現”を目指していました。
プレイステーション2が発売されたときには「このハードならどんなことができるのか?」いうところから、兵士がたくさん登場し、戦場自体をシミュレートした初代『真・三國無双』が誕生しました。プレイステーション3の時代になったときも、同じような考えで『真・三國無双5』をデザインしました。
今回プレイステーション5の世代ということで、よりハイスペックなハードで戦場の臨場感を描きだせると考えました。これまでにないほど兵士の表示数を増やせるのであれば、より戦場の臨場感、一騎当千の爽快感も進化させられるだろうと考えて、圧倒的な大軍団どうしの戦いを描くことにしたのです。
――『無双OROCHI3 Ultimate』なども含めて、兵士の表示数はある意味、到達点に達していたと思っていました。それが今回、映像を見たら「こんなに登場するの!?」とビックリするぐらい、大量すぎる兵士数で本当に驚きました。
庄
今回、企画の立ち上げの段階からプログラマーに「とにかく兵士を出せるだけ出してほしい!」とお願いしていました。私は言うだけでしたが、チームの仲間が本当に努力してくれて、いまのような圧倒的な兵士数を出すことができました。ある程度組み上がったものを初めて見たとき、私も「こんなに出せるの!?」と驚いたものです(笑)。
これだけ表示できたのは、これまでのノウハウが培われている部分もありますが、やはりハードスペックや技術の進歩が大きいです。ざっくりですが、『真・三國無双7』や『真・三國無双8』などと比べると、低めに見積もっても10倍以上の兵士数になっています。
つまり、これまでは100人の兵士として表示されていたところが、1000人規模で表示されるわけです。画面ひとつとっても最大で数千人を超える表示数になっています。本当に、スタッフたちの努力のおかげです。
――あまりにも兵士が多いので、プレイヤーの操作キャラクターが埋没してしまうのではないかと(笑)。
庄
そうなんです(苦笑)。本作は兵士の数や状況に応じて、従来よりもカメラ位置が操作キャラクターから離れることがあるのですが、兵士数が多すぎることも相まって、「あれ、自分どこにいるの?」となることも現状はありますね。そういった兵士が多いからこその悩みについては、現在も調整中です。静止画ですと伝わりにくいかもしれないですが、いろいろな工夫をすることで、自分を見やすく遊べるようにしています。
――操作キャラクターといえば、本作は主人公を操作して戦っていくとお聞きしています。なぜオリジナルの主人公を立てたのでしょうか?
庄
“三国志の世界をしっかり描くこと”も本作の重要なテーマでした。小説やマンガ、アニメ、映画、そして、当社の『三國志』シリーズなど、三国志をテーマにした作品はたくさんありますが、壮大な三国志のすべてを深く楽しめるものは少ないと思いますし、数多の魅力をもれなく楽しめている人も少ないと思っています。
『真・三國無双』シリーズでも、これまで武将たちの視点や、勢力というくくりで三国志を描き、その魅力を楽しんでいただいてきましたが、登場キャラクターが多かったり、俯瞰的な視点になったりすることから、どうしてもひとりに掛けられるボリュームや、歴史的な背景、物語の掘り下げが少なくなりがちでした。そういう気持ちもありつつ、それに加えて、三国志を知らない人でもその物語と英傑たちの魅力を楽しめるゲームにしたい……という想いから、一個人の視点に立って、三国志の世界と歴史を体験できる存在が必要だと考えました。
主人公は記憶喪失の青年で、世界のことを何も覚えていません。なにもわからない主人公の視点から、三国志の歴史を体験していったり、名だたる武将たちと交流していったりすることで、すべての人に三国志を楽しんでいただけるようにしようと思ったんです。
――主人公は、姿形が決まっているタイプなんですよね。キャラクタークリエイト方式にする案も考えたのでしょうか?
庄
キャラクタークリエイト方式にするのかは、チーム内でもかなり議論がありました。開発終盤にも関わらず、まだ「必要なのでは?」といった声も出ることがありますし、そういった要望が強いこともよくわかります。ただ、私の中では明確に理由があって、今回の主人公に決めました。
本作は三国志の物語ではありますが、我々が独自に解釈した物語でもあります。それをいちばん深く楽しんでもらうためには、過去がある、物語の中核を担うしっかりと柱となる主人公とそのイメージが必要でした。見た目や声などがカスタマイズできてしまうと、今回目指している濃密な三国志体験を描き切れないと思ったんです。
明確な人格があり、固有の魅力を持つ主人公ではありますが、とはいえ何かが強烈に尖っていたり、クセが強かったりするような主人公ではありません。感情移入しながらも、主人公なりのキャラクター性を好きになってもらえるように、いまもそこのバランスを整えています。
主人公
――なるほど。物語のベースはもちろん三国志かと思いますが、史実よりも“三国志演義”に近いのでしょうか?
庄
はい、基本は“三国志演義”です。またイチから三国志を描くので、シリーズファンの方々にとっては「何回自分は黄巾の乱を収めたんだ!」と思われるかと思います(笑)。ですが、本作はひとつの歴史について、より深く描いた作品です。いままでのような粒度のストーリーの描きかたではなく、より色濃い体験を味わってもらえるかと思います。
――三国志のどのあたりまでが語られるのでしょうか?
庄
ストレートな質問ですね(笑)。改めて説明はさせていただこうと思いますが、“より深い三国志体験を味わってもらう”ことがテーマなので、三国志全体を描こうとは考えていない、ということはお伝えしておきます。
――わかりました。これまで登場していた無双武将たちは、プレイアブルキャラクターとして選択するのではない、ということなんですよね?
庄
はい。本作は主人公の視点から三国志を楽しんでいただきたいので、あくまで主人公が操作するメインキャラクターであり、自分自身の分身と考えてもらえればと思います。
ですが、無双武将たちが登場するのならば、やはり皆さん操作したいですよね。物語の中で深く交わったり、必然性があったりする人物に関しては、バトル中に交代して、一時的に操作できるようになっています。
主人公はある程度の強さはありますが、最初から一騎当千の武将というわけではありません。ゲーム中盤くらいまでは、無双武将たちの圧倒的な力が目立つんじゃないかと思います。無双武将たちで“無双”することや、その武将を操作して戦うことも楽しんでいただければと思います。
――いままでのように、無双武将を選択して出撃することはないんですね。
庄
そうですね。すべての戦闘に主人公で参加します。武将と同行できるシチュエーションで、同行できる武将が複数いる場合は、その中から自分の好きな武将を選んでともに出陣できることもあります。
――主人公は、武将たちとどのように関わっていくのでしょうか? 関羽と最初に出会うとなれば、のちに蜀陣営になるようにも見えますが。傭兵のような感じで、各陣営に関わっていくのでしょうか。
庄
武将との関わりは、バトルで味方になったり、ときには敵になったりすることもあるでしょう。バトル以外でも、交流することで仲を深めることもできます。主人公と各武将たちとの会話も、見どころのひとつです。そうした交流を経て、最終的にどんな立ち位置で三国志に関わるのか。深くはまだ語れないのですが、特定の勢力に属することが決まっている、という物語ではありません。
関羽
――公開された映像を見る限りでは、関羽のほかにも多数武将がいるように見えました。いわゆる無双武将は、どれくらい登場するのでしょうか?
庄
ざっくり言うとそれなりに登場します。少なくとも、これまで登場した無双武将から、意図的に数を減らしたりはしていません。ただ、物語に沿った形で登場するため、少なくとも時代に合っていない無双武将は登場しませんね。
味方となる武将、敵として戦うことになる武将がほとんどですが、ごく一部はバトルの外、物語の中だけで登場する武将もいます。「あ、この人ここで出るの!?」ときっと驚いてもらえるかと思います。
本作は無双武将の数をウリにしたいわけではなく、プレイヤーの三国志体験を重視しています。これまでの無双武将が汎用の見た目の武将に変わったりすることはありません。が、ストーリー上で無理に登場させるようなこともしていません。
――関羽やおそらく曹操であろう人物の見た目も、若いころのイメージ像で表現されているように感じました。これまで時代の変化をビジュアルで魅せることはしていなかったと思いますが、そこを狙っていたのでしょうか。
庄
たとえば、黄巾の乱の時代なのに、その後の威厳のある風貌の劉備を登場させる、みたいなことはやりたくありませんでした。あくまで三国志をしっかり描くために、その年代に合ったビジュアルや声を採用しています。
『真・三國無双』シリーズはキャラクター性が強調されていて、キャラクターそれぞれのイメージが強いかと思います。それはそれでいいのですが、とはいえ根本には“三国志”があります。今回はキャラクター性よりも“三国志”を描くことに比重を置いた形です。
――これまでもきっと描きたかった部分かと思いますが、ようやく武将たちの年齢差が表現できているように感じました。これまでは、たとえば威厳のある曹操のイメージ像で、すべてを語っていたと思うので。
庄
初代『真・三國無双』のころから、じつはやりたかったことでした。ですがそれを採用すると、各武将の年代を表現しなくてはならなくなりますし、さらに声も年齢を重ねないと違和感があるので変えないといけないとなると、ひとりのキャラクターのボリュームがものすごくなります。ですから、これまでは多くの人が想像するイメージで送り出していました。
――そして驚いたのは、張角のビジュアルでした。『真・三國無双』シリーズにおける張角は、これまで妖術を駆使する感じのコミカルな要素や、いわゆる最初の悪役のボスみたいな描きかたをされていたと思います。それが今回、“イケオジ”な張角になっていて。
庄
『真・三國無双4』くらいまではハードスペックの影響もあり、表現の限界がありました。また、ゲーム的にも三国志を濃く描くのではなく、全体をダイジェストのように描いていました。そうなると、意図的にかなりデフォルメしないと、キャラクター性が立たない側面がありました。
ですが、現在は見た目の表現力や、描ける物語性なども、全体的に進化しています。いまの時代に合わせて作った結果、こういったイメージの張角になりました。これは全体を通して言えますが、意図的にピンポイントで「今回はこう変えよう」として変えているのではなく、すべては本作で描く世界に合わせた形を取ったまでです。
『真・三國無双』シリーズは、だいたい黄巾の乱から始まって、張角が最初に立ちはだかるわけですよね。ですが“黄巾の乱”とは何なのか、なぜ起きたのかを語るとなると、しっかりと“張角”という人物を描く必要があります。イロモノ系からイケオジに変えたい、みたいな狙いではなく、しっかりと“黄巾の乱”とは何なのかを理解し、体験していくために作り上げたのが、本作の張角なんです。
張角
――張角くらい、デフォルメされたイメージから変わる武将も登場するのでしょうか。
庄
全体的な世界観やストーリーに沿ったイメージの調整は、全登場武将で行う前提で作っています。派手なイメージを持つ無双武将なども含めて、元の無双武将にあった要素を継承しつつ、本作になじむようにアレンジを加えています。そのうえで物語を描くために「ガラリと変えるべきだ」といった無双武将については、変わることもあります。
――よりシリアスな三国志になりそうですが、張角が妖術で炎を吐いたりみたいな表現は消えたりしていますか?
庄
アクションも全体的にこれまでよりもシリアスな表現になっています。ただ、たとえば妖術を使うとか、軍師系の武将が戦う……みたいな、皆さんが期待されているようなデフォルメした表現は登場します。あくまでも『真・三國無双』なので(笑)。
――期待しています! グラフィックは全体的に色調がこれまでのシリーズ作品より抑えられていて、少しだけシックなイメージに近づいた印象があります。
庄
そこは狙っています。ただ、カラフルだった『真・三國無双』のイメージを払拭したくてそうしたわけではありません。現代的にあまりにもアレンジしすぎると、“三国志”のイメージから離れてしまうので、本作では“三国志”らしい世界観にするうえで、ゲーム的にアレンジした本作ならではの『真・三國無双』にしたかったのです。
――また、公開されている声優陣ですが、関羽は引き続き増谷康紀さんが演じています。張角は竹内良太さんとキャストが変わっていますが、声優陣の変更もあるのでしょうか。
庄
はい、あります。ただ、声優陣を意図的に変更しないようにする、または変更しようといった考えは、私にはありません。キャラクターが若ければ、見た目相応の声であるべきですし、キャラクターのイメージに合う声優さんを選んでいます。
たとえば張角は見た目だけでなく、性格や言動もこれまでのイメージとガラリと違いますから、今回のイメージに合った声優さんにお願いすることにしています。関羽の増谷さんは今回、若いころの関羽の声をお願いしてみたところ「これはやはり関羽だ!」とイメージが合ったので、引き続きお願いさせていただきました。
――ではBGMですが、軍議画面やフィールドなどは、三国志らしさが強調されているような、中華な雰囲気が漂うBGMでした。一方で、バトルはやはりギターサウンドが特徴的な、ロック調のものを引き続き採用しているんですね。
庄
全体として三国志を感じられるように、バトル以外の部分は三国志らしい音楽を意識して制作しています。ただバトルはやはり、ロック調のBGMのほうが高揚しますよね。そこは従来の魅力そのままに継承すべきだと考えました。場面ごとに三国志らしさを強調している部分もありますが、全体として「これは“無双”のBGMだな」と感じてもらえるように作っています。
ちなみにBGMは、シリーズファンに喜んでいただける要素もありますので、ぜひお楽しみにお待ちください。
圧倒的な兵士たちの激突!
――ではゲーム部分ですが、フィールド画面の“大陸地図”からステージを選んで、バトルを進めていくゲームなのでしょうか?
庄
はい。大陸地図で、行きたい都市や町、戦場などに移動してゲームを進めていきます。戦場は複数同時に出現する場合もあり、どういう順番で挑むかはプレイヤーの自由です。進めていくと、行けるエリアも増えていきます。
――ではRPG的要素もあるのでしょうか?
庄
本作の公式ジャンル名は“タクティカルアクション”ですが、企画の当初から私としては“タクティカルアクションRPG”として進めていました。アクションRPGとしてのボリュームや、プレイフィールを重視しつつ、従来の無双とは異なるサイクルで進めていくゲームになっています。
濃厚な三国志体験を味わってもらうために、フィールドにはさまざまな仕掛けをご用意しています。武将との出会いはバトルや物語の中だけでなく、大陸地図で出会うこともあります。
――なぜ大陸地図を用意することにしたのでしょうか?
庄
大きな理由のひとつとしては、歴史の中で起きた有名な戦いを、位置関係や距離感も含めて感じ取ってほしかったからです。官渡の戦いの“官渡”や、虎牢関の戦いの“虎牢関”がどんな場所でどんな位置関係になっているのかなどをプレイの中で自然と知ることで、三国志の物語をより深く楽しんでいただけるのではないかと思います。
――わかりました。バトルは、ひとつのステージの中で戦いを進めていき、最終目標の達成で勝利となるような、従来のシステムと同じものですか?
庄
総大将を倒す、ということだけで言えばいつも通りです。もともと『真・三國無双』シリーズは、戦場での自由度が高くて、どこに行っても基本的には問題ありません。そこは変わらない魅力で、シリーズ初期、『5』以前に近い感覚じゃないかと思います。
近年のシリーズ作品は、自由度よりもドラマ性を重視していましたが、シリーズ初期はバトル開始後、いきなり総大将のもとへ向かうことも可能でしたよね。原点回帰を目指す本作の方向性は、そこの自由度も含めての話になります。なお、本作には『4』以降に導入された “拠点”の要素もありますが、必ずしも制圧しなくてもいいようになっています。
まあ、単騎突撃するプレイヤーには、それ相応のシチュエーションにはなりますけどね(笑)。
――具体的にはどのような?
庄
本作にも軍団や軍全体に“士気”があり、士気が高ければ強く、低ければ弱くなります。いきなり士気の高い敵総大将の陣営に突っ込んでも、まあ勝ちにくいわけです。
ですから仲間とともに戦線を押し上げたり、味方の士気を上げたり、敵の士気を下げたりすれば攻略しやすくなっていきます。有利な状況を作れば、どんどん“無双”しやすくなっていくでしょう。
RPG的な面もあるので、キャラクターが育てば、戦況に関わらず“無双”できる面もあります。とはいえ、全体的には仲間とともに攻め込むようなバランスになっています。
――そこが本作の特徴として、大軍団VS大軍団として描かれていくわけですね。
庄
本作では味方の兵士と武将がとても大事で、味方がいると戦いが楽になります。最近の『真・三國無双』シリーズは、基本ひとりでどうにかできてしまうことが多かったと思いますが、本作は一般的な合戦のイメージに近い感覚で戦っていけるかと思います。
――『真・三國無双』シリーズのバトルアクションはいろいろあります。通常攻撃とチャージ攻撃を使い分けるものがオーソドックスなシステムかと思いますが、本作はどのバトルアクションに近いのでしょうか?
庄
ひと言では言えないのですが、『真・三國無双2』~『真・三國無双5』までを足して、さらにそのほかのいくつかの無双系タイトルを足して、いいところだけを残したようなシステムです。詳細は続報をお待ちいただきたいのですが、ボタン感は変えてないけど、操作感は進化している、みたいな。
皆さんの考える“無双”らしいボタンアクションも残しつつ、そのほかの部分でいろいろなアクションをくり出せます。いわゆる通常攻撃からのチャージ攻撃的なものも入っていますが、武器種によって違いもあります。スキル攻撃のようなものもあるので、自分でアレンジしながら自由なアクションを楽しめるようにしています。
――なるほど。表示兵士の数が多いということは、通常兵士のKOカウントも圧倒的に増えるように感じますが、一騎当千を超えて10000人倒せて当たり前、くらいの規模感なのでしょうか?
庄
兵士の数が多いので、1000人斬りできる機会は従来よりも多いかもしれません。とはいえ、やみくもに戦っているだけでは1000人斬りを目指せるわけではないです。より考えて、うまくプレイすればそういった機会に恵まれやすくなるでしょう。
と言いつつ、集団に向かって技をくり出したら「いまの一撃で数百人も倒したの!?」と驚くこともあるでしょう(笑)。 そこは狙っていたところで、三国志らしさを強調している作品ではありますが、本作はやはり『真・三國無双』、従来持っている一騎当千の爽快感を損なわないようにしています。“無双乱舞”を上回る必殺技など、シリーズ史上、圧倒的最強の爽快感を目指しています。
――対武将戦は、だいたいハメ倒すようなバトルになりがちでしたが、本作はいかがでしょうか?
庄
本作では、ひと味違います。従来でも弾き返しといったアクションなど、何かしらの攻防は取り入れていましたが、本作では武将との戦いは、緊張感のあるバトルにしています。
とはいえ、いわゆる“死にゲー”的なイメージではなくて、“無双”らしいほどよい緊張感というバランスを保っています。武将との戦いが、単にちょっと強い敵がいるから倒していくみたいな存在ではなく、しっかり意識して戦えるような。それでいて、自分の腕前が気持ちよさにつながるような、ちょうどいい塩梅に落とし込んでいます。
また、敵武将に味方の部隊を突撃させるなど、自分だけでは生まれないような有利不利の要素もあります。敵武将も、部隊を突撃させてくることもあるでしょう。
とはいえ、ぜひご期待いただきたいのは、敵対する無双武将たちの強さです(笑)。本作はそういった部分でも原点回帰を狙っていますので、本気の無双武将の強さにぜひ恐怖……ではなく楽しんでいただきたいです。
――登場が発表されてはいませんが、とある武将が頭に浮かびますね(笑)。ちなみに昔は、ゲームオーバーになると完全にイチからリスタートでしたが、本作はそこも原点回帰していたり……?
庄
本音を言えば、あのイチからやり直すという虚無感をまた体験してもらいたいところですが、残念ながら昨今の“無双”タイトルのように、チェックポイントから再開できます(笑)。
――よかったです! また、味方の兵士を動かすことが重要になりそうですが、無双アクションとともに、兵士と兵士の戦いもフィーチャーしているのでしょうか。
庄
とても重要視している要素です。味方の武将は、味方の兵士を動かす役割を持っています。映像では袁紹が号令を掛けて、部隊を突撃させていましたが、あのように主人公が近づいてそういった作戦を実行することがあります。ひとりで攻め込むとたいへんな目に遭ってしまいますが、味方と攻め込むことで“無双”しやすくなるでしょう。一方で、敵も同じようなことをしてくるので、大量の兵士たちが激突するようなシーンもあります。
――より“タクティカルアクション”であることが楽しめそうです。
庄
戦場をシミュレートしながらも、一騎当千できるような塩梅になっていますので、爽快感と戦略性の両方を楽しんでもらえるかと思います。これまでは戦況が変わるたびに、逐一マップ画面を開いて戦略を把握したりしなければなりませんでした。しかし、本作は従来作よりもリアルタイムでわかりやすく戦況の情報が表示されますから、テンポを損なわずに戦略を考えられるかと思います。
――映像では敵兵士の攻撃頻度が高いようにも見えましたが、無理やりひとりで突撃しているからなのでしょうか?
庄
士気が高いと攻撃力も高く、攻撃頻度も高くなります。全体的には、映像にある敵兵士たちはかなりやる気に満ちています。ただ、単純に攻撃力が高いですとか、防御力が高いだけですと、敵を一騎当千する爽快感が損なわれてしまい、ストレスにしかなりません。
本作の兵士はアグレッシブですが、基本的にプレイヤーの行動が阻害されないようになっています。たとえばですが、ふつうの兵士に攻撃されたくらいでは、自分の攻撃モーションが中断されたりはしません。
――ああ、シリーズ初期のように、遠くから弩や弓兵がチクチクしてきて、何も行動できないみたいなのは……。
庄
基本的にはふつうの兵士の攻撃同様、安心してもらえれば。……といいつつ、そこは無いとは言い切れません(笑)。ある意味そこも原点回帰と言いますか、最近の方々は弓兵や弩兵の怖さを知らないと思うので、弩がいかに痛いのかを思い出してもらえればと思っています。もちろんただストレスを与えたいわけではなくて、工夫することで突破できるような、攻略要素のひとつとなるように試行錯誤しています。
――ちなみに、主人公の武器は剣以外にもありますか?
庄
ゲームを進めていくと、複数の武器種が使えるようになります。最終的には好きな武器種を使っていただければとも思いますが、1プレイでひと通りの武器種を楽しんでいただけると思います。また、バトル中に武器を自由に持ち替えできますし、何ならバトル中に手に入れたものをその場で装備することも可能です。いろいろな武器をバトル中に試したり、使い分けることもできます。
――また、自分の部隊を連れていくような、護衛兵的な要素はありますか?
庄
あります。今回、以前からやりたかったことを実現できました。『3』までにあった要素ですが、護衛兵を描画するよりも敵味方の兵士をひとりでも多く描画するため、『4』以降はカットして別の要素に変えていました。本作ではついに、自分の部隊として護衛兵を引き連れることができるようになり、より戦略にも絡むようになりました。具体的なシステムは、続報をお待ちください。
――馬にも乗っている場面がありましたが、やはり馬のシステムはあるのでしょうか。
庄
あらゆる部分でそうですが、好評だった要素の多くは踏襲しています。馬についても、いつでも呼び出して騎乗できます。なお、馬は序盤から使えるわけではありません。馬は護衛兵とはまた別の成長要素として入っているので、こちらもご期待ください。
原点回帰を目指して
――トレジャーボックスのような、限定版は予定されていますか?
庄
ぜひやりたいなと考えているところです。シリーズファンの方々には恒例かつ人気のあるものですから、そういった方々に喜んでいただける限定版は何かしら発売したいです。ただ、これまではおもに多数いるキャラクターを中心に内容を構成できていましたが、本作は原点回帰を目指したタイトルですので、どういった内容がいいのか悩んでいる最中です。商品担当の部署が絶賛検討してくれているので、なる早でお伝えできるように発破をかけておきます!
――気が早いですが、DLCや『猛将伝』のようなものは考えていますか?
庄
現時点では、何も考えていないです。本作は『真・三國無双 ORIGINS』1本でしっかり楽しめるボリュームかつ、内容にすることを目標にしています。そこに全力投球するために力を尽くしている最中ですので、“考えていない”のではなく“考えたくない”のほうが正しいのかもしれません。
とはいえ、きっとプレイヤーたちから今後「こういう要素が欲しい」みたいな声は挙がると思うので、そうなったときに考えたいです。少なくともチーム内では「いまはDLCのことを考えている余裕ありません!」ということです(笑)。
――最後に期待されているファンの方々に、メッセージをお願いします。
庄
『真・三國無双 ORIGINS』のテーマが原点回帰であることから、『真・三國無双』シリーズのコアなファンの方に向けたタイトルと受け止められるかもしれません。しかし、本作は『真・三國無双』が本来目指していた“タクティカルアクション”に向き合って、しっかりと作り上げているタイトルです。ファンの方のみならずシリーズ作品を遊んだことがない方にも、真の無双の楽しさを体験していただけるものと信じています。
また、三国志を丁寧に、濃厚に描いているため、これまでのシリーズ作品以上に、三国志を知らない人にオススメです。手前味噌ではありますが、これまで長くシリーズ作品に関わってきた中でも、いちばんおもしろい『真・三國無双』を作れていると思っています。ぜひ続報をお待ちいただきながら、発売を楽しみにしていてください!