安楽椅子探偵――。
それは、部屋に訪れる来訪者から聞いた情報などを精査し、自ら現場におもむくことなく事件を解決してしまう、あまりにもかっこよすぎる存在に付けられる呼称である(ミステリー用語の一種)。
東京ゲームショウ2024(2024年9月26~29日、千葉県・幕張メッセで開催)で試遊展示されていたPC用推理アドベンチャー『There is NO PLAN B』が見せてくれたのは、そんな安楽椅子探偵の未来の姿……だった、のかも、しれない……? いや、疑問符が多すぎるのもちょっとアレかとは思うが、何しろ事件があまりにもアレだったもので……。
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なぜ彼は全裸になってしまったのか――こんな感じの事件を捜査します。
探偵業を営む主人公“B”のもとに舞い込んだのは、社会的殺人と呼ばれたある事件。公安から事件簿の整理として依頼されただけの案件だったが、事態は思わぬ方向へと発展していく。
試遊版のあらすじは以上のような感じ。ちなみに舞台は未来の韓国だ。徹底的な管理体制が敷かれ、国家による監視が行き届いたディストピア的未来都市。その名も大韓帝国である。
どれくらいの未来感かと言うと、街中でふつうにアンドロイドが歩いていたり、機械による身体拡張なども一般化している模様。ざっくりと“サイバーパンク”という受け取りかたをしてもらえればいいと思う。
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左にいる短髪の女性がB。右が同居人のユジン。
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大韓帝国は国境の封鎖された唯一の国家なのだとか。恐怖政治とクソみたいな管理社会はサイバーパンクの鉄板という感じがする。好きだ。
さてさて、舞台がそんな感じともなればもちろん探偵の業務にも変化が。ゲームは探偵業務補佐アンドロイド“A.I.”を起動するところから始まる。彼(性別は不明だが)の能力により、主人公であるBは部屋からいっさい出ずに事件の捜査を行うことに。
その事件こそは殺人事件。……いや、実際に死んだわけではない。街中で唐突に服を脱いでフリーズし、社会的な“殺人”を受けた、謎の身体拡張者についての捜査だ。
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証拠として提出された画像。右のポスターには何やら見慣れた感じの猫もいる。
最初は警察も大きな事件とは思っておらず、渡された資料もわずかなもの。依頼内容もただ事件をあらためて調査し、概要をまとめるだけという簡単な仕事だった。
しかし全裸になった本人に通話で事情聴取を行ったところ、彼は「熱い」、「刺された」という言葉をうわ言のようにくり返すばかり。概要をよりしっかりとまとめるべく、現場の写真やSNSを使って捜査を進めていくことに。
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写真を撮った学生が拡散しているのでは? ということで別アングルの写真を求めてSNSを調査。未来でもこんな感じなんだね、SNS。
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全裸になったおじさんにも事情聴取。尋常じゃない様子におののきながらも聞き込みをしてみる。
捜査パートも部屋の中から。A.I.の能力により写真から現場の内容を再現し、怪しい点を探っていく。動かずとも現場を探索できるという設定はおもしろく、かつ本作のスマートな部分だ。移動やそれにまつわるパートをまるまるスキップできるので、スラスラと展開が進んでいく感じが心地いい。
操作感も悪くない。スタンダードな推理モノといったプレイ感覚で、再現された現場を見て気になるところをクリックしてはBとA.I.のリアクションを見つつ推理を進めていく、といったもの。複雑すぎないところが好印象だ。
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横になりながら捜査現場へ。もちろん捜査に不要な部分はA.I.が隠してくれている。
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操作のやりかたはシンプルだが、演出面はこだわりを感じられるものに。謎と謎がつながる感覚が気持ちいい。
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一部の証拠品は何と形状を立体的に再現して詳しく検分できてしまう。すごいぞA.I.。偉いぞA.I.。
現場の気になるところを探したり、容疑者と被害者の立ち位置を割り出したり、捜査でやることはかなり多い。これは試遊版全体(約30分程度)を通しての意見だが、「同じ作業ばっかりさせられて飽きるな……」という感覚には陥らなかった。正式版として全編を通してプレイした際も同じ感想を抱けるかはわからないが、少なくとも引き出しの多さはしっかりと感じられるものになっていた。
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真犯人に証拠を突き付けるクライマックスパートもしっかりと完備。こういうミステリーならおなじみだ。見た目的にもわかりやすい工夫が凝らされており、いま自分が真犯人を追い詰められているのか、それとも相手のほうが有利なのか、ひと目でわかるような工夫がなされているのがとてもいい。
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ネタバレ保護のためモザイクありで。こんな感じで、ちょっと不利になると左側に中央のバーが移動。逆に優勢になると右に移動してこっちの領分が大きくなる。ぱっと見で舌戦の有利不利がわかりやすく、演出としてもおもしろい。
こういったパートがあるからには、やはり作品全体を通してのセリフ回しはとても重要だと思うのだが、この点も本作は非常にすばらしかった。ユーモアに富んだセリフも多く、それぞれの人格もしっかりと見えてくる。試遊版でありながらも、登場人物たちのバックボーンが思わず気になってしまうような仕上がりになっていた。
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とくにですね、最初の画像でも出した同居人のユジンがすごく気になるんです。宮廷とはいったい……?
試遊版では、すべての捜査パートが主人公の部屋内部で完結する。詰問や事情聴取は通話で。現場捜査はSNSとA.I.による再現で。
その結果、街中を歩くようなパートはなく、実際にこの世界がどのような状態であるかは登場人物により語られる内容を見るのみであったが……それが逆に、この世界への興味を加速させた。綿密に練られた世界設定があることはたしかなようなので、そのあたりの深掘りは正式版へ期待したい。
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PVを見る限りだと、まだまだ登場人物も控えていそう。
それに、ひと部屋というコンパクトな世界だけで完結する“安楽椅子探偵”っぽさが個人的には気に入った。まあ、にしては主人公のBはかなり激情型で、多少泥くさい感じはするものの、サイバーパンク的安楽椅子といっても過言ではないのではないだろうか。あと思いっきり事件の実証とかもしているし、現場での捜査も実質的にはしているけども。ほら、雰囲気として。
これ以上は語るに落ちる、そんな感じがする。『There is NO PLAN B』が安楽椅子探偵かどうか、真相は皆様の目にお任せしたい。
そう、これも筆者の感想のひとつ。ただの推論のひとつに過ぎないのだから――。と、安楽椅子探偵っぽい締めで、ひとまずこの記事を終わらせておこう。