ああ、『ソニック』の新作? なんか前出たやつのリマスターなんだよね?
……というあなた! あなた、そう、あなたですよ!
その認識は半分合っているけど半分マチガイなので、詳しくはこれから書くレビューを読んでって!
新作部分が分厚いぞ!
2011年に発売された『ソニック ジェネレーションズ 白の時空』(PS3、Xbox360/以下、『白の時空』)に新要素を加えつつリマスターしたものと、新追加となる『シャドウ ジェネレーションズ』が収録されている。
ゲーム開始時に、『白の時空』か、『シャドウ ジェネレーションズ』のどちらを遊ぶか選択する。両作はキャラクターや世界設定などは共通しているものの、別個の作品となっている。
筆者は『シャドウ ジェネレーションズ』をクリアーまで遊んでみて思った。
えっ……新作じゃん、このゲーム!
と。
「だから新作だって言ってんだろ!」。
というセガの人のツッコミが大崎方面から聞こえてきそうだが(筆者のイマジナリーセガ社員です)、なんというかねえ、ホラ、まさかここまでちゃんと作られているとは……っていうことってあるじゃない。「はいはいリマスター+おまけ要素でしょ」、ってついタカをくくってしまう部分ってあるじゃない。ねえ。
正直、すみませんでした。
内容はソニックチーム謹製の『ソニック』シリーズ最新作と言えるもので、新アクション、新ステージ、シャドウのちょっと切ないifストーリー、十分楽しめる内容に仕上がっていた。
本稿ではその内容を詳しく紹介するとともに、感想をお伝えしよう。
ソニックとはひと味違うシャドウのアクション
『ソニックアドベンチャー2』(2001年/ドリームキャスト)で初登場し、クールな性格や“僕”という一人称が人気を呼んだのか、2005年には主人公になった『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』が発売された。つまり今回の『シャドウ ジェネレーションズ』は約20年ぶりの主役抜擢というわけで、シャドウファンは感涙しているに違いない。
このシャドウ、ソニックと同様に非常に素早いアクションが可能となっているが、ダッシュ時はスケートのような動きになっていたり、最初から2段ジャンプができたり、ブースト時にはジャンプしなくてもそのままぶつかれば敵を倒せたりと、細かな点がいろいろと異なっている(基本的にソニックよりも強化されている)。
さらに本作でのアクションを特徴づけているのが、物語が進むにつれて使える能力が増えていく“ドゥームパワー”。シャドウの出生の秘密にも関わってくる特殊能力だ。
本作では水の上を進んだり、特殊な壁や天井に塗られた液体に潜って登れたり、最終的には羽が生えて飛んだりする(正確には滑空)。
ゲームサイクル
ステージを進める→新能力が身につく→ホワイトスペースで探索できる場所が増える→探索して新たなステージを開放→クリアーしてさらに新能力を身につける→たまにボス戦……
という流れが『シャドウ ジェネレーションズ』の大まかな展開となっている。その合間合間に、短いながらも印象的なストーリー(ドラマ)が挿入され、シャドウの生い立ちと宿命、待ち受けているラスボスとの戦いの果てに待ち受ける結末には思わずぐっと来てしまった。
『ソニックフロンティア』ファンも触ってみて
かく言う筆者もそのひとりなのだけど、本作『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』の情報を見たときには、「あっ、3Dアクションの新作ではなく、リマスターなのね……」と思ってしまった。
ところが、ここから声を大にして言いたいのだけど、『シャドウ ジェネレーションズ』は、すべてではないものの、ところどころに『ソニックフロンティア』っぽさを感じるニュアンスが入っている。
具体的にはホワイトスペースの探索だったり、小気味よく3次元的に展開する空間移動だったり、ドラマ性だったりだ。アクションの軽快さも『ソニックフロンティア』を継承している。
すこし細かいハナシになるけど、従来のソニックシリーズでは方向ボタンをすこしのあいだ押し続けることで加速していくという仕様になっている(『白の時空』も同様)。だけど『ソニックフロンティア』と『シャドウ ジェネレーションズ』では初速から最高速度を出すことができて、これがキビキビとしたアクションと軽快なプレイフィールにつながっている。
『シャドウ ジェネレーションズ』のプレイ時間はクリアーまで5~6時間程度。『ソニックフロンティア』ファンに伝わるように言うと島1個ぶんくらいだろうか。
これだけでは短めだと感じるかもしれないが、何しろ本作には『白の時空』(クリアーまで10~20時間程度)も収録されているので、2本合わせれば20~30時間くらいのボリュームにはなるだろう。
しかし『シャドウ ジェネレーションズ』だけでも、クリアーまでの時間は短いながら、しっかりと遊んだという満足感が残る。それはステージと探索、そして新能力取得をくり返すというゲーム構成が力強く作られている上、ドラマ要素もきちんとあるからだ。
もちろんアクションの完成度は高く、各ステージに設定されている制限時間で“S”を取ろうと思いながらプレイすると、程よい歯ごたえで本気になってしまう絶妙のバランスとなっている。
ソニックチームのチャレンジ精神が感じられる意欲作
これには、ソニックシリーズ本編では、あまりヒネリを効かせたアクションを搭載するのはためらわれるけど、主人公がソニックではなくシャドウだからこそ「こういう遊びって、どう?」と提案するような、新たなアクションを搭載しやすかったという背景があるかもしれない。
過去作品をリマスターするにあたって、もともとある作品の同ベクトルの延長線上にある追加コースをそのまま増やすだけではなく、現代のプレイヤーに向けて、さらに新しい味付けのおもしろさを提供しようとする姿勢は、称えられるべきものだと思う。
ちょ~っと悩んだところ
それは、ホワイトスペースでの探索時に、どこに行けばわからなくなってしまうということ。
つぎに目指すべきポイントはマップに示されるのだけど、3次元的に設置されたオブジェや建築物の中で、「あそこに見えるところに行きたいんだけどどうやって行ったらいいかわからない!」という状況がたびたび発生してしまった。
これは筆者が生来の方向音痴であるというせいもあるかもしれないけど、筆者が操るシャドウは、ホワイトスペースを高速で駆け抜けたあと、迷子の迷子のハリネズミと化していたのだった。
“目的地まであと●メートル”的なマークが出るので、基本的にはここを目指せばいいんだけど、1ヵ所、目的地が地下になっているパートがあり、地下への入口が……どこだっけ……。
「ちくしょう! おれはマップ探索じゃなくてひたすらステージを遊びたいんだ! タイムアタックを極めたいんだ!!」という人は、なんと、シンプルにステージクリアー型の『ソニック ジェネレーションズ 白の時空』が遊べるではありませんか!
まとめ
ボリューム的にはリマスター編の『ソニック ジェネレーションズ 白の時空』のほうが大きいんだけど、注目してほしいのは完全新作部分の『シャドウ ジェネレーションズ』。
なぜならそこには新しいステージ、新しいアクション、新しいボス、そして(過去作とも関連がありながら)新しいストーリーがしっかりと作られているから。『ソニックフロンティア』を遊んでハマった人にもおすすめできる、『ソニフロ』っぽさもある。ただし探索がわかりづらかったり、マップやアイコンが見づらかったり、すぐ迷子になってしまうという欠点もある(方向音痴の筆者だけかもしれないが)。
全体で見るとソニックとシャドウが主人公のアクションゲームが、計2作品入っている、という構成の本作。かつて原作版の『ソニック ジェネレーションズ 白の時空』をプレイした経験がある人にも遊んでほしいし、未経験ならばそれはそれですべて新鮮に感じるだろうから、ボリュームにも満足できるはず。
そもそも、『白の時空』自体が『ソニック』シリーズ20周年作品であり、それまでタブーとされていたというモダンソニック(3D)とクラシックソニック(2D)が共演を果たしている珍しい作品。これだけで2Dソニックと3Dソニックのふたつの味わいが楽しめるというゲームになっていた。今回は、そこにさらに『ソニックフロンティア』風味かつ、シャドウ主人公ならではの遊びが加わっているのだから、いわば“1本で3度おいしい”というわけだ。
2024年12月27日に上映が決定した映画3作目『ソニック×シャドウ TOKYO MISSION』ではシャドウがフィーチャーされるとのこと。映画を観る前に遊んでおくとシャドウのことが深く知れるだろうし、もし、映画を観て「シャドウ超かっこいいじゃん!」となったら(シャドウは超かっこいいのだ)、このゲームのことを思い出して、そこからでも遊んでもらえればと思う。