
少年ジャンプ+10周年を記念して開設されたポータルサイト“読切ディスカバリー”。10年の歴史で生み出されてきた、じつに2000を超える読切を探せるサイトです。もちろんそのまま読むことも可能。
ファミ通関係者にはゲームだけではなく、漫画好きもたくさん。こんなサイトがあったら、おすすめするしかないよなあ? おれたちの“推し”読切ってやつをよお! 漫画好きライターが読切ディスカバリー掲載の推し作品をご紹介します!
- 縦ロール古原のジャンプラ推し読切3選
- オクドス熊田(ライター)のジャンプラ推し読切3選
- 二城利月(ライター)のジャンプラ推し読切3選
- 平田特異点(ライター)のジャンプラ推し読み切り3選
- あなただけの“推し”読切を見つけよう
縦ロール古原のジャンプラ推し読切3選
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- 『ジョンタイターの恋占い』著:星間晶
- 『愛と苺』著:湯切優
- 『ジーニアスピカソ(正式名称ではない)』著:大豆田
そこで、数ある大好きな作品の中から“連載経験のない作家さん”をテーマにピックアップしてみました。どれも間違いなくおもしろいので、ぜひ感想をSNS等で発信してみてください。作家さんたちの励みになりますし、そのエネルギーで新作が生まれたら僕がめちゃくちゃ喜びます。
ジョンタイターの恋占い
運命の人とは何か?と問われたとき、あなたはどう答えますか。おそらく、多くの人の回答は“生涯を共にするパートナー”などでしょう。しかし、この『ジョンタイターの恋占い』では、それとは少し違った運命の人の形が描かれます。
翼太郎に惹かれていく蘭々香のいじらしい姿もさることながら、翼太郎の詩的なのに飾らない台詞回しがグッときます。そして物語の最後、蘭々香が運命の人とはこうだったのだ、と悟るシーンは何度読んでも目頭が熱くなる……。ぜひ、この作品にとっての“運命の人”とは何か、その目で確かめてみてください。
愛と苺
本作ではキラキラネームに対する偏見や社会からの厳しい目線など、ネガティブな面にもしっかりと向き合っています。そのうえで描かれる、多様な生き方を尊重する結末は、読んでいて晴れやかな気持ちになりました。
あとなんといっても登場人物がかわいいのなんの。ベリィの努力して積み上げてきたかわいさや、スイートメモリーの内側から溢れて止まらないかわいさを見事に描き切る画力にも要注目です。キャラがかわいいのはもちろんのこと、キャラデザから“揺るぎない意思”が感じられるように思います。同作者の読切『結婚まであと○センチ』ではそれがより突き抜けていて最高なので、そちらもぜひ読んでみてください。
ジーニアスピカソ(正式名称ではない)
いけすかない天才のように見えて、血の滲むような努力でそれを成り立たせている主人公・天乃のキャラクターが光る読切。彼は学年一絵がうまい生徒に教えを乞い、つたないながらも自分だけの作品を創り上げますが、ライバルたちは明らかに自分で描いていない凄まじい画力の絵を提出。同じように、天乃の手元にも自作の絵とは別に高名な画家に代筆させた作品が。どちらを提出すべきかギリギリまで悩む天乃が出した結論は、きっと皆さんの期待を裏切ります。読んでいて思わず「えっ、そっち!?」と声が出ましたから。勝負には負けたけど誇りは守った的な展開じゃなくて!? と。
ここまで読んで「内容に踏み込みすぎじゃない?」と思った方もいるかもしれません。しかしご安心を。ここから描かれるオチこそが、この読み切りの真髄なのです。勝利を義務付けられてきた男・天乃の生き様は、きっとあなたの胸に刻み込まれるはず。
オクドス熊田(ライター)のジャンプラ推し読切3選
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- 『斜塔とネコスープ』著:夏井とし
- 『カイホウ賛歌』著:白石仗
- 『概食産業』著: 肋骨凹介
そんな考えから選んだのがこの3作品。本音を言えばこの文章なんて無視して直に作品を読んでほしい。だって、事前知識なしで殴られるのがいちばん気持ちいいのだから。
『斜塔とネコスープ』著:夏井とし
主人公は魔女の見習い・ルミィ。彼女が魔女修行の一環として、とある幸せそうな3人家族“高崎家”にお手伝いに来たことから物語は始まる。物腰穏やかな父に、優しい母親。娘はちょっと気難しそうだけど悪い子ではなさそう。そんな一家に降りかかる大事件を魔法の力で乗り越える、心温かなハートフル・メルヘンストーリー――。
今作のあらすじをつまらなそうに言うとこんな感じ。まあ“幸せそうな~”という字面にした時点で何となくお察しかと思うのだが、起こる大事件のタチがとにかく悪い。よくもまあ“エンタメ”と“許容できないイヤさ”の中間をこうも攻められるなと感心してしまう。
オチと、そこにつながるまでの展開もまあ悪い。読んだときは思わず「最悪~☆」とニコニコ顔で喜んでしまった。この流れにつながることがわかったうえで読み直すと、またいろんなイヤさが滲み出てくるのも最高。勝手に片側の頬だけが吊り上がるような、そんな歪な笑みをつい浮かべてしまう。
読後感も含め、“この作品ならでは”な気分が味わえる一作。読んでいないようならぜひこの機会に。同作者の『そしておわり、すいかわり。』もおすすめだ。
『カイホウ讃歌』著:白石仗
まずぶん殴られるのが6ページ目。サイコパスを自称する青年・ノアが大学から帰ってきたそのときから物語は回り始める。ギクシャクした親子の関係。くり返されるとんでもないカミングアウトの数々。幾千の衝撃の先に、すべてを解放したふたりの行く末は……。
読み終えた後は、「何でこんなに爽やかな気持ちになってるんだろう」と、怒涛の展開と最悪の絵面からは考えられないぐらいの清涼感がある。とくに最後の7ページは、数ある創作物の中でもトップクラスの爽快さ(個人の感想です)。タイトルの意味に気づく瞬間も含め、個人的には忘れられない一作だ。
『概食産業』著:肋骨凹介
・雑誌や新聞紙を巣材として使おう。文字情報が多ければよい“斡旋”に育つぞ
・なんでもいいので紙がエサになるぞ。希望の斡旋先を書いた紙を与えれば願いが叶うぞ
というとんでもない代物。じゃあ希望の斡旋先を、ということで男は“石油王”やら“不労所得者”やらを書くわけだが……。
この作品は展開の仕方がとにかくうまい。進む先は意外であれど、読んでいて「あ、なるほど」と思わせるだけの丁寧さがある。全部わかってから読み返し、作中に意味のない言葉がほとんどないことに気づいたときの衝撃たるや。その職人芸っぷりに思わず天を仰いでしまった。
「引えっ…」、「噛虫 噛虫(はむはむ)」、「だっぴっぴ」など、独特のセンスが光る細かい擬音もいい味を出す作品。個人的には虫が紙を食いちぎる「虫ィィィ」がとくにお気に入りだ。
同作者のジャンプ+読み切り『博士七段』も非常にいい。トーチwebにて連載中の『宙に参る』も(趣旨から外れるので深くは紹介しないが)日常×SFの極致という感じでめちゃくちゃにおもしろいため、気になった方はぜひそちらも。
二城利月(ライター)のジャンプラ推し読切3選
- 『ロロドーム』著:仙洞田寛
- 『歯医者さん、あタってます!/読切版』著:山崎将
- 『天才少女は平凡な日常の夢を見るか?』著:在間りしん
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『ロロドーム』著:仙洞田寛
『歯医者さん、あタってます!/読切版』著:山崎将
『天才少女は平凡な日常の夢を見るか?』著:在間りしん
平田特異点(ライター)のジャンプラ推し読み切り3選
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/24130/aa1ed40f653cf3e6e6585be650ffcf533.png?x=767)
- 『免許取るならオートマでいいよ』著:菱田すみ
- 『シルバーロック』著:三上カン
- 『SF男女物語』著:みかわ絵子
免許取るならオートマでいいよ
「なんでMTにしたの?」と聞かれたり、ATの友人といっしょに教習所に入ったのに自分だけ卒業が遅かったり、MT車での変速がこれでもかと詳しく描写されていたりと、随所に散りばめられている“MTネタ”が最高。そしてギャグにシリアス、友情と怒涛の展開の連続で、疾走感と読後感が気持ちいい。まさかこんな形でMT免許が活躍するとは……という驚きの展開も。クラッチは踏むけどブレーキは踏まない、そんな一作です。
シルバーロック
また、作者・三上カン先生の表現力が凄まじく、演奏シーンは漫画のはずなのにロックミュージックが聞こえてきそうなほど迫力満点。物語・画力ともに素晴らしい一作なのでぜひ読んでいただきたいです。
SF男女物語
ちなみに、本作に登場する“明らかにあれでヤバイおじさん”が『忘却バッテリー』番外編6話にも登場して暴れているので、本作読了後にはそちらも読むとより楽しめると思います。