“悪夢に侵食されるスローライフRPG”を標榜する『Neverway』もそのひとつ。2025年7月18日~20日に京都・みやこめっせで開催中の“BitSummit the 13th”(ビットサミット)にプレイアブル出展されていたので、プロローグ部分を遊ばせてもらった。
展示会イベントでは、長くても10分程度の試遊でゲームの魅力を伝える必要がある。そのために『Neverway』開発チームが選んだのは、主人公フィオナが壊れていくまでの様子だった。繊細なドット絵アニメーションで、丁寧に、丁寧に。
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デリバリーされたご飯を無気力に食べ、何となくPCを立ち上げる。未読メールの中に会社の人事部からの出社催促状があった。無断欠勤をくり返しているのだろう。
無力感に苛まれて何もできないフィオナの焦りを想像してしまい、すごくつらい。この間およそ2分。苦痛までの初速が速すぎる。
鏡を見て「髪、だいぶ短くなったな…」とつぶやく彼女に違和感を覚えた。短くなった? 髪が縮むことはないし、美容院で失敗したのだとしたら「切りすぎた」では?
ハッとした。これはきっと自傷行為の表現だ。精神にダメージを負った人は、髪を引き抜いたりめちゃくちゃに切ってしまうことがあるという。それほどまでに彼女は追い詰めらている。
全体がやけに青いのは“心理的な不健全さ”の表れだと思う。ドット絵アニメーションはスムーズで、多くのオブジェクトにインタラクト可能。いろいろ触るのが楽しい。
ソファーに座ると正面にあるテレビの音声が吹き出し表示された。ニュース番組では“ミスプレイス”という社会問題を報じている。報道内容から察するに、人に仇なす怪異(?)らしい。
溜まったメールの中には会社からの解雇通告もあった。私物を回収しに来いとのことなので、外出前に着替えないといけない。そのまま家を出てもいいのに、わざわざ“着替え”という行為を挟むことでリアリティーが生じている。
もうひとつ、リアルな表現を僕は見逃さなかった。
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脱いだブラをクローゼットの扉にかけているのだ。ドット絵アーティストの執念を感じる。
文章で説明せず、ただひたすらに映像で見せる
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帰りの電車では奇妙な光景に遭遇する。
人恋しくて見ず知らずの女の子に話しかけたら、謎めいた言葉を残して隣りの車両へ行ってしまった。追いかけるとなぜか車両が途中で途切れている。奈落へ身を投げる少女。入れ替わるように出てくる化け物。何なんだこれは。
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夢の中の出来事だったのか、気づくとフィオナは電車内に倒れていた。混乱はそのままに、仕方ないのでとりあえず帰路に就く。
家の前で待っている人がいた。たぶん恋人だ。なぜわかったかと言うと、別れを切り出してきたから。
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彼はフィオナに「髪、切ったんだね。似合ってる。」と声をかけた。おかしい。記事の前半で書いたように、おそらくフィオナは髪を抜いたり切ったりすることで自分を傷つけている。それを“髪が短くなっている→髪型を変えた”と受け取る浅慮。彼はずいぶんとフィオナのことを見ていなかったのだろう。
ここで、フィオナを支えていた糸がプツリと切れてしまったのだと思う。限界まで耐えてきても、崩れるのはほんの一瞬だ。いとも簡単に人間は落ちていく。
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その演出には静かな迫力があった。玄関先でうずくまるフィオナ。ベランダで立ち尽くすフィオナ。バスルームの鏡を呆然と見つめるフィオナ。途中から部屋が散らかっていることに気づいた。精神疾患を患うと部屋を片付けられなくなるというから、そういうことか。
文章での説明は一切なく、カットシーンが切り替わっていくだけ。それなのに彼女のつらさは僕の心の隙間に入り込んでくる。まるで無声劇だ。
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この後、彼女は現実から逃げ出すように、ゲーム本編の舞台となる島への移住を決意する。自分から変化を切り出せるあたり、まだぎりぎり踏みとどまっているのだと思う。そうあってほしい。
フィオナが抱く心の闇を映像演出で見せるプロローグは、チュートリアルでもある。僕はシステムの説明を文章で読まされると物語への没入が途切れるので好きではないのだが、本作ではストレスをあまり感じなかった。つぎに何をしなさいという指示がほとんどないからだ。導線が整理されている証左である。
素材収集やアイテムクラフトといったスローライフ部分が解禁されたら、どんな手法で不安にさせてくれるのだろう。