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【グラディウス オリジン コレクション】発売記念インタビュー。発端は「『グラディウス』をまた世間に広め、今後も続けるためにやりたい」という思いから

byででお

by西川くん

更新
【グラディウス オリジン コレクション】発売記念インタビュー。発端は「『グラディウス』をまた世間に広め、今後も続けるためにやりたい」という思いから
 KONAMIより2025年8月7日に発売されたシューティングゲームのオムニバスソフト『グラディウス オリジン コレクション』。対応ハードはNintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Steam)。開発は、クラシックゲームの移植に定評のある有限会社エムツーが担当している。収録タイトルは以下の通りで、1980・1990年代に人気を博した横スクロールシューティングゲーム『グラディウス』シリーズのアーケード作品をまとめて現行機で遊べるようにした、コレクションタイトルの決定版だ

収録タイトル
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  • 『グラディウス』
    • 日本ROM版
    • 日本バブルシステム版
    • 北米版(NEMESIS)
    • 欧州版(NEMESIS)
    • 北米プロト版(NEMESIS)
    • VS.グラディウス ※シークレットタイトル
  • 『沙羅曼蛇』
    • 日本版
    • 北米版(LIFE FORCE)
    • パワーカプセル版 ※シークレットタイトル
  • 『LIFE FORCE』
    • 日本版
  • 『グラディウスII GOFERの野望』
    • 日本前期版
    • 日本中期版
    • 日本後期版
    • 北米版(VULCAN VENTURE)
  • 『グラディウスIII 伝説から神話へ』
    • 日本OLD版
    • 日本NEW版
    • アジア版
    • 日本AMショー版
  • 『沙羅曼蛇2』
    • 日本版
    • 海外版(未発売) ※マニアックオプションで設定するとプレイ可能になる
  • 『沙羅曼蛇III』
    • 完全新作

 本稿では、発売を記念して開発陣へのインタビューをお届け。収録されている新規タイトル『
沙羅曼蛇III』を中心に、隠しタイトルとして収録されている『沙羅曼蛇』(パワーアップカプセル版)、『VS.グラディウス』の話題、さらに制作秘話も訊いた。
※クリアー後のネタバレに関する話題もあります。これからプレイする方はご注意ください。 ※本記事内では、隠しタイトルの出しかたには触れていません。

上野亮作 氏うえの りょうさく

KONAMI所属。『グラディウス オリジン コレクション』プロデューサー。(文中は上野)

堀井直樹 氏ほりい なおき

エムツー代表。『グラディウス オリジン コレクション』プロデューサー兼『沙羅曼蛇III』立ち上げディレクター。(文中は堀井)

佐藤圭一 氏さとう けいいち

エムツー所属。『オリジンズコレクション』チーフデザイナー兼『沙羅曼蛇III』ディレクター。(文中は佐藤)

河内武博 氏かわち たけひろ

エムツー所属。『グラディウス オリジン コレクション』ディレクター1号。(文中は河内)

久保田和樹 氏くぼた かずき

エムツー所属。『グラディウス オリジン コレクション』ディレクター2号。(文中は久保田)

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“エムツーショットトリガーズを超える勢い”で要素を詰め込んだ

――いよいよ発売を迎えます。皆さんのお気持ちをお聞かせください。

堀井
 評判はまだわからないのですが、個人的にはしっかりとできたと思っています。あ、自分用にです(笑)。というのは半分冗談で、ようやく皆さんの手もとに届けられると思うと、とてもうれしいです。

佐藤
 『沙羅曼蛇III』も含めて、『グラディウス オリジン コレクション』にたくさん詰め込みました。エムツーショットトリガーズ(※)をいい意味で超えるべく、いろいろなことを盛り込んでいます。存分に遊び尽くしてほしいなと思ってます。
※エムツーショットトリガーズ……エムツーが開発・販売する、クラシックシューティングゲームの移植や新作のブランド。
河内
 死力を尽くしましたので、多くの方々に楽しんでいただける、長く遊んでいただけるものになると思っています。個人的には、墓まで持っていきたいタイトルになりました。

久保田
 戦々恐々としておりますが、『グラディウスIII』AMショー版の全一スコアって何点になるんだろうと気になっています。

上野
 ようやく発売となりました。いやぁ……たいへんでした(笑)。

――いろいろな苦労が見て取れるような(笑)。

上野
 X(旧Twitter)で、制作チームみたいな感じでコメントを出していますが、KONAMIの『グラディウス オリジン コレクション』制作チームって私ひとりなんです。ちょくちょくヘルプしてもらってたりはあるんですけど。ですから、Xの反響チェックも全部私がやっていることもあり、スタートしてからふつうの生活が何もできていなくて(苦笑)。もちろんうれしい悲鳴ではあるのですが、発売後もぜひ反響をいただけるとうれしいです。

さまざまな事情が重なった『沙羅曼蛇III』

堀井
 KONAMIさんと長くお仕事させていただいていますが、『グラディウス』を動かすプロデューサーが現れて、こういう形で新作が世に出せるのは、じつは想像できていませんでした。2~3年前ですら想像できなくて。僕から話を持ちかけても「奇跡的に通ったらいいな」くらいにしか思っていませんでした。
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――では今回は、『沙羅曼蛇III』をメインにお話をお聞かせください。以前のインタビューで上野さんに『沙羅曼蛇III』のナンバリングについてお聞きしたとき、「詳しくはまた別の機会に」とおっしゃっていたので改めて。アラビア数字の“3”ではなくローマ数字の“III”とした理由はなんでしょう?
堀井
 理由はいくつかありまして、アラビア数字の“3”だと、『沙羅曼蛇2』の続きという感じが確定してしまう気がしたんです。作る前は、あんなにしっかりしたものの続編が作れる自信はなかったんです。ですから、言い訳ができるネタをたくさん仕込んでおこうみたいな想いが自分にありました。ただ、佐藤のほうはデザインの都合だったと思います。デザインとしてはアラビア数字の“沙羅曼蛇3”も当初はありました。

佐藤
 ええ。結果的にいまのロゴデザインに決定しましたが、“沙羅曼蛇3”のアイデアも作っていました。

上野
 社内でもナンバリング派や『外伝』派、『リバース』派など、いろいろ意見に分かれてたいへんでした。それぞれの言い分はどれも理解はできるので。最近わたしのアイデアノートを見返したら“グラディウスVSラティス”とか謎な案もあって……最終的に『III』で行きますと私が決めるまで2ヵ月くらいかかった気がします。

堀井
 そうでしたね。「IIIを使っていい」って言われたときに、すごく安心した覚えがあります。

佐藤
 それでもかなり、開発の最後のほうでしたよね。

堀井
 僕個人としては、商売的な見かたをするとナンバリングにしたほうが絶対皆さんの注目を集められますよね。注目を集めたうえで、「我々はそのプレッシャーを跳ねのけるほどのいいゲームを作ればいいじゃん!」と無責任に思っていたんです(笑)。
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――いろいろな事情があったのですね。時系列的に『グラディウスIII』と同時期に行われた戦いなのでそちらに合わせたのかな、とも思っていました。

堀井
 それもあります。そこにプラスしていろいろな事情が重なった形です。我々としては、タイトルをどうこう決めるよりも、とにかくゲームを作らねば! といった感じでしたが。 

佐藤
 僕としては、デザインがいちばんしっくり来たのが『沙羅曼蛇III』でした。

上野
 制作途中のものに、『グラディウスIII』からボスを引っ張ってきたバージョンのものがありまして。それはもういまのゲームとはぜんぜん違うものなのですが、その影響もあったのかなと思います。

堀井
 作業がぜんぜん進められない、というときに『グラディウスIII』と掛け合わせたような、オマケ的なゲームが作れたらいいなと思って作ったものですね。試しに作ったものとはいえ、影響があったのでしたら無駄な作業ではなかったですね。

――そういった作業を進めていく過程で、ストーリーなどが付いて、『沙羅曼蛇III』になっていくわけですね。どういった考えで、ストーリーを構築していったのでしょうか?

堀井
 上野さんですね。上野さんが歴史をまとめてくれて、いちばん熱心に考えてくれて。そこに僕たちは、ゲームを合わせていきました。

上野
 そういうのが好きなタイプのオタクですから(笑)。エムツーさんにこうしたいと提案する中で、いちばん心配だったのは妹のことです。ロードブリティッシュMk-IIIにはこれまで存在すら言及されていなかった妹、つまり惑星ラティスの皇女が乗り込むわけですが、いきなり彼女を誕生させても大丈夫なのかなと。
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佐藤
 それを聞いても、とくに心配はなかったですよ。

堀井
 デザイナーたちが問題ない方向に振ってくれましたね。あのあたり、ゲームがぜんぜんできていなかったせいで、設定まわりはほったらかしだったんです。僕たちだけでは、設定まわりは何も考えずに開発が終わっていたことでしょう。上野さんがそのあたりをフォローしてくれたおかげです。

上野
 あくまで“仮に”の話ですが、今後『沙羅曼蛇』シリーズがパチスロやパチンコになる動きが出てきたとします。そうなると、リーチ演出のためにいきなり知らない女性キャラクターが登場する可能性があるわけで。知らない人がいきなり出てくるのもなんなので、じゃあもうここで皇女を作ってしまおうと。といったことも考えていました。

堀井
 そこまで想定している……と?

上野
 予定は現状ありません(キッパリ)。あと、僕がエムツーさんにリクエストしたのはビックバイパーが1Pで開発進んでいたので、ロードブリティッシュを1Pにしてください、そして今回のビックバイパーは双発でデザインお願いします、ですね。あ、あと「エンディングでパイロットのシルエットを出して」とスケジュール押しているときに泣きつきました。

――キャラクターの設定はファンにとっても大事ですもんね。

堀井
 上野さんから上がってくる設定はもう、全部オタク心をくすぐってくれるのがすごいんです。たとえば、ビックバイパー・タイプLはもう、ジ〇ンがガン〇ムをリバースエンジニアリングして作ったみたいな、タイムリーな感じで(※)。
※インタビュー時は、まさに某『ジークア〇ス』が盛り上がっていた時期だった。
上野
 ちなみにビックバイパー・タイプLのLは、ラティスのLです。
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佐藤
 今回から“RATIS”ではなく、“LATIS”で表記は確定なんですよね。

上野
 はい。ラティスの表記は昔、RとLで揺れていました。もともとLのほうだったのですが、曲名を付けるときにうっかりRのほうにしてしまったのかなと。でも、長年続いてきた『Planet RATIS』という曲名の綴りをいまごろLに変えるなんてできないですよね。

佐藤
 一瞬、曲名も統一しようかみたいな話も出たことはありました。

上野
 だからもう、LATISとは違う、もうひとつのRATISという惑星があるのでは……といった具合に、皆さんで考察をしていただければと……。

堀井
 考察しても答えは出ませんけど。

周回前提のやり応えを

――『沙羅曼蛇III』を遊ばせていただいたところ、1周目は比較的簡単な難度になっているように感じました。得意な人なら初見でも1周はできそうでしたが、どのようにバランスを調整していったのですか?

佐藤
 エクステンド数がとても多いのでクリアーしやすいですよね。本来はエクステンドの数をもっと絞ったもので考えていましたが、開発中に「1周目は誰でもクリアーできるようなカジュアルな難易度に」という話になり、エクステンド数を増やしました。

上野
 確か、開発途中のバージョンがあまりにも増えすぎていたこともありましたよね。

佐藤
 はい、製品版よりももっと残機が増えまくるバージョンでした。それを僕のほうで調整して、増える数を半分くらいまで削って、それでも増えすぎだなと思ったので、もっと削ろうかと思ったのですが、そこを上野さんが止めてくださったというか。デフォルトのエクステンド設定は7万点ですが、そのときは15万点くらいにしようとしてました。

河内
 そのあたりは僕たちも入って相談していました。難度を調整する時間がなかなか作れないので、だったらイージーモードの設定をゲーム側で変更できないかわりに、エクステンドしやすくする方向にシフトしたんです。

――残機がどんどん増えるうえに、ミスしてもその場復活ですからね。これくらいカジュアルなほうが、シューティングゲームに触れてこなかった人たちにもおすすめしやすいと思いました。

佐藤
 ステージ1は誰でもクリアーできて、ステージ2もちょっとがんばればいける。ステージ3から本番です、みたいな感じで調整しました。

上野
 と言うわりには、ステージ1後半の殺意自体は高いですよね?(笑)。

堀井
 ステージを作った人間の性格が出ていると思います。
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――本作の発表時に“もし1998年に続編が出ていたら”という内容のコンセプトをお聞きしていましたが、“1998年”というところには大きな意味はないのですか?
上野
 そう思っていただきたいです。実際には「この敵弾はこの時代にはないだろう」みたいな見かたもできてしまいますが、ガチガチに1998年にこだわったわけではありません。あくまで1990年後半あたり、といった感じです。

堀井
 「そのつもりで作っている」という我々向けの意気込みなので、ゲームファンの皆様は深く考えないでいただければと。そこかかっちり固めてしまうと、もっとガチガチになってしまった可能性があります。たとえばグラフィックの表現から音の鳴らしかたまで1998年ならこう、と決めなくてはならなかったり。

 当時のKONAMIの基板に乗っているサウンドチップが何だとか、そういうことも調べて作らないといけなくなります。もちろん、そういう音の作りかたも一部しているのですが、厳密に詰めているわけではないということを強調しておきます。

上野
 とは言え、当時ゲーセンで稼動していたら……というコンセプト自体は間違っていないので、インスト(インストラクション)カードも作りました。A5サイズの2枚組です。ただ、これって1998年のKONAMIではありえなくて。

 1枚の大きなインストカードでまとめていたのが当時で、2枚組は1996年が最後になります。最初の想定稼動年は1986年年末くらいじゃない? それはインストカードもまだギリギリ2枚組で……とかだったんですが、堀井さんのこだわりの“3機目”のせい(?)で? これは1998年だわ、と(※)。
※「ラウンドレーザーの3機目をどうしても出したい!→でも『外伝』の前に出ていたことにするわけにはいかない。『外伝』は1997年。『グラIV』が1999年……つまり、1998年しかねえ」ということだそうです。
――ああ、なるほど。テーブル型の筐体が使われなくなってきた時代なので、インストカードは大きい1枚をアストロシティやブラストシティなどの上部に入れる形が主流でしたね。

堀井
 1998年って言ってるのに、作っていると「こっちのほうがいいよね」で1996年風のものを挙げたりして、アバウトなところがあります(笑)。でも、そのほうが好きな人楽しんでもらえるだろうと思ってやっていますし、僕たちもそっちのほうが好きだから、わざと曖昧にしているんです。

――確かに。ところで、遊んでいて「これはいいな」と思ったのは各種アイテムのデザインがとてもわかりやすかったことです。たとえば、パワーアップアイテムの形状は初代『沙羅曼蛇』を踏襲しつつも、リップルレーザーっぽい楕円が描かれていて、どれがどの武器かひと目で判別できるなと。

堀井
 高橋というスタッフが打ったドットですね。やはり、アイテムを取得する方式だと、その形がどんな効果があるのか覚えなくてはいけませんよね。『沙羅曼蛇2』では“L”や“R”などのパネル状のデザインで、あれもわかりやすかったですが、ケレン味がもう少し欲しくなって。

 そこをわかりやすく、かつ『沙羅曼蛇』のアイテムの形を拾う方式にしたいとスタッフに伝えたところ、“スピードアップアイテムにバックファイヤーが付いている”といった具合で、細かく変えてくれたのです。

佐藤
 ミサイルやレーザーも、それぞれわかりやすくしています。

上野
 そこまでやったうえで、社内テストでは「アイテムの効果が、見た目でわかりにくい」という意見がまだ出て、さらに調整を重ねていただきました。
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――また、パワーアップは2段階方式ですよね。ファミコン版の『沙羅曼蛇』を彷彿とさせるような。

堀井
 まさにそれです。ファミコン版やMSX版のような2段階パワーアップは、派手になるのでいいなと思って導入しています。

――アイテムもポロポロ落ちるので、バンバンパワーアップできて楽しかったです。

佐藤
 レベルデザイナーたちが、全員で共通してどこで倒されてしまっても、大体復活ポイントが近くにあるようにする方針で組み立てていました。初代『沙羅曼蛇』は出現するアイテムが少ないため、ミスする場所によっては非常に復活が難しい箇所があります。そういうことがないようにしました。

久保田
 初代『沙羅曼蛇』はスピードアップが本当に少ないんですよ。1個でも逃すと、かなり絶望的な難度になってしまいますから。

佐藤
 『沙羅曼蛇III』はアイテムの多さで補う代わりに、復活したときの無敵時間を短めにしています。無敵時間を使った(ゴリ押しっぽい)復活は狙いにくいようにしているので、そこはうまくプレイヤーさんのほうでパターンを構築してほしいですね。

――自分はミス後の復活時はバースト攻撃を活用していました。バースト攻撃はド派手なうえに、かなり強くて驚きました。まさか『パロディウス』シリーズのミカエルみたいな全方位ショットを撃てるとは(※)。
※リップルもレーザーも取っていない状態でバースト攻撃を行うと、周囲8方向に向かって攻撃できる。
堀井
 作った人が『スーパースターソルジャー』(PCエンジン/1990年)とか『スターパロジャー』(PCエンジン/1992年)の開発に関わっていたので、そのノリなんですよね(笑)。

佐藤
 最初は連射数が増えるだけだったんです。ノーマルショットが2連射から6連射になるくらいだったのですが、それだとバーストの効果が見た目的にわかりにくかったんです。で、アイデアとして挙がってきたのが8方向ショットでした。実装してみると「これは本当に『沙羅曼蛇』なのか?」と思っていたこともあります。ただ、遊んでいるうちにこれがないと辛いなと、8方向ショットのバーストがしっくりきたんです。

堀井
 最初だけ違和感あるかもしれませんが、遊んでみると楽しさを感じていただけるのではないでしょうか。バースト攻撃を使うことでボスも瞬殺できたりしますが、そういった戦術を潰したりはせず、爽快感を重視してそのままにしました。

佐藤
 バースト攻撃を使うことで、気持ちよくなってもらえるポイントがたくさん入れ込んでいますので、いろいろな場面でお試しください。バーストだからこそ破壊できるものもたくさんあります。

堀井
 ボスの撃破音が連発するようなポイントをわざと作っていて、そのおもしろさって『グラディウス』や『沙羅曼蛇』が積み上げてきたものがあるため、爽快だったり笑えたりするポイントになってると思います。そう考えると、我々は本当に“使わせていただいている”感じがしました。

佐藤
 そうですね。『沙羅曼蛇』はレーザーが強くて、バリバリ敵を倒せるゲームだと思います。『沙羅曼蛇2』はそこが弱くなっていたので、その強さと楽しさは『沙羅曼蛇III』に持ち込もうと考えていました。そのあたりをバーストでも表現している感じですね。 

上野
 最初はリップルレーザーが強すぎて、「もうリップルレーザーだけでいいじゃん」みたいなバランスでしたよね。レーザーを取る意味ないくらいの。

佐藤
 じつはロードブリティッシュMk.IIIはリップルレーザーが強くて、ビックバイパー・タイプLはレーザーが強いという性能差があります。それで当初、ロードブリティッシュMk.IIIのリップルレーザーがあまりにも強すぎて、それ以外要らないような状態でした。

 そこから調整して、リップルレーザーがほどよく強いくらいにしつつ、レーザーも強くしました。ちょうどいい塩梅になるまで、最後まで調整を重ねました。初代のレーザーの強さを体感したい、という人はビックバイパー・タイプLに乗るのがおすすめです。
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ロードブリティッシュMk.III(赤い機体)。
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ビックバイパー・タイプL(青い機体)。
――レーザーを付けて、オプションをスネークオプションにして、クルマのワイパーのような動きで敵を一掃するのがとても気持ちいいです。

堀井
 スネークオプションは扱うのは難しいですが、振り回せば単純に気持ちいい、みたいな感覚的な部分で採用したのもあるんです。スネークオプションは佐藤が入れたいと言い出したのですが、すごくこだわりを持って、とても気持ちのいいオプションにしてくれました。

久保田
 スネークオプションに対する情熱がものすごかったですね。『沙羅曼蛇III』でスネークオプションを使ってみたら、じゃあ『グラディウスIII』でもチャレンジしてみようか……と思う人はいないと思うんですけど(笑)。でもそれくらいの気持ちよさがあります。

佐藤
 スネークオプションを入れたいと思ったのは、そもそも『沙羅曼蛇』や『グラディウス』のオプションって、事前に置いておく使いかたが基本ですよね。パターンを覚えて、そこにオプションを置いておくと、攻略が楽になるっていう。

 その固定観念的な部分を変えたかったんです。リアルタイムに好きな方向に振り回すことで、パターンを知らなくてもアドリブで突破できるような。遊びの幅を持たせたかったため、スネークオプションを用意したんです。

――本作でのスネークオプションの仕様は、『グラディウスIII』と同じのものではないですよね?

佐藤
 スーパーファミコン版の『グラディウスIII』をモチーフにしています。あれをよりクイックにしました。さすがにアーケード版『グラIII』の仕様では使いにくいと思うので。

久保田
 そもそも挙動の再現が難しい(笑)。

河内
 ちなみに『オトメディウスG』(Xbox 360/2008年)を作ったとき、アーケード版のスネークオプションの再現にチャレンジしたこともありました。でも本当に難しすぎて、プログラマーが断念したんですよ。

――そんなことが(笑)。各種パワーアップはいずれも使いやすい印象で、選択の幅が広いなとも感じました。

佐藤
 『沙羅曼蛇』はレーザーばかり、『沙羅曼蛇2』はツインレーザーばかりで遊んでいた方も多かったと思います。でも『沙羅曼蛇III』は自由に切り換えて遊んでほしいと思い調整しています。レーザーの強さは残しつつも、シーンによってはリップルレーザーのほうが活躍できたりして。

久保田
 ただ切り換える場所をどこにするのかは、難しいですよね。

佐藤
 切り換えるポイントを覚えることで、より活躍できると思います。

堀井
 じゃあもし今後『LIFE FORCE III』を作るとしたら、カプセル型のパワーアップ方式にしましょうよ。より自由度が高まるかもしれませんし。

――『LIFE FORCE III』ですか。昔の家庭用版『沙羅曼蛇2』のときに『LIFE FORCE2』に変えられたものの、そもそも海外では発売されたのか不明……という話がありましたよね。ネタが細かい。

堀井
 おっと、この話は後半にしましょうか(笑)。
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3機目の登場、高次周の脅威

――また、クリアー後に解放される3機目の“グレイレイヤー”の存在があることにも驚きました。見た目も緑で、『ツインビー』シリーズのグインビーを連想させるような。

佐藤
 赤、青ときたら3機目は緑なのが、まあしっくりくるのかなと。色はすんなり決まりましたが、デザインはいろいろと考えました。最初はジェイドナイト(※)っぽい見た目でしたが、同じ機体ではないのでそこをなんとかしたいなと。
※『グラディウス外伝』に登場した自機。
 最終的には輪っかと羽根が付いていますが、『オトメディウスG』のエスメラルダの、飛行機部分をモチーフにデザインしています。
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――プレイヤーが1周クリアーを達成している前提のため、性能もかなりはっちゃけっている印象です。

佐藤
 もうこれだけでいいやみたいな簡単な機体にしようと思ってましたが、「強すぎるだろ」とプログラマーからも跳ねられ、結果的にはそうはなりませんでした(笑)。楽しく愉快な機体をもう1個入れたいな、という部分の目標は達成したので、おもしろさの味は広がったと思っています。

上野
 僕の中では、堀井さんはとにかくラウンドレーザー機体を出したかったんだな……と(笑)。先述しました想定稼動開始年の問題もあって、二、三度「ラウンドレーザーやめません……?」と言った記憶がありますが消える気配はありませんでした(笑)。
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ラウンドレーザーで戦うグレイレイヤー。射程は短いが全方位を攻撃可能。
――ちょうどいいバランスだと思いました。ツインレーザーとラウンドレーザーの使い分けが重要なんだろうと。

佐藤
 使いこなせるようになると、かなり強いと思います。たとえばその、3周目のステージ1ってヤバいですよね?

――はい。2周目まではなんとかなったのですが、3周目のステージ1は完全に殺りに来ているなと思いました。

佐藤
 グレイレイヤーなら、そこが突破しやすかったりしますので、要所要所を押さえるとかなり強いと思います。

――周回のお話が出ましたが、1周目は簡単、2周目でそこそこの手応え、3周目から牙を剥くような感じになっていますよね。周回でステージの中身も変えたかった理由はありますか?

佐藤
 最初のコンセプトから周回させる前提のゲームでした。3周目まではステージ構成自体も変える、というのは最初から決まっていたことです。じつは設定もちゃんとあるんです。敵が惑星ラティスにワープで兵器を送り込んでくるのですが、座標を間違えてしまったため生態兵器が活性化しない。それが1周目です。

堀井
 敵は無理やり転送されてきたためまだ準備が整っていない……というのが1周目ですね。
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佐藤
 それが2周目から活性化されるので戦いが本格化する、という感じです。本当は全ステージでそういったことも盛り込みたかったのですが、1ステージ目だけになりました。

――また、ステージ構成は6ステージで、ステージごとに縦と横のスクロールが交互にやってきます。『沙羅曼蛇2』もそうでしたが、やはりバランスがいい構成なのでしょうか。

佐藤
 最初から決まっていましたね。僕は後から合流した形ですが、もう決まっていました。ただ、企画の中ですとボスラッシュを入れて、同じステージ内なのに縦横が何度も変わるような構成も考えられていたようです。

堀井
 ボツにしたネタで言うと、『沙羅曼蛇』は縦と横のスクロール方向を変えた部分が、驚きのひとつでした。じゃあ次は『アクスレイ』みたいにパースの変わったステージを追加しよう、みたいなことも考えていたんです。ただ、何せ制作まったく進まず、作業が遅れてしまいました。仕方なくボツにした部分は多数あって、縦横ではない、もうひとつのステージはやはりやりたかったですね。

――BGMも新たに制作されたと思いますが、どのようなコンセプトで作られたのでしょうか?

堀井
 担当はchibi-techという弊社のサウンドクリエイターです。chibi-techはちょうど『悪魔城ドラキュラ Revisited』のアレンジが終わってお疲れのところでしたが「メインの作曲家がもしかしたら合流するけれども、ひと通りの曲を作ってほしい」とお願いしたんです。で、けっきょく全曲chibi-techを担当してもらったと。

 chibi-techはものすごい『沙羅曼蛇』ファンであり、KONAMIのシューティングというか、アーケード基板ファンだったんですよ。だからもう、chibi-techの好きにやってもらうことにしました。

 「堀井の言ってるコンセプトってこういうことだよね」と自分で解釈して、KONAMIのSYSTEM-GX基板に搭載されてるPCMでFM音源をやったのが前作『沙羅曼蛇2』なのだから、きっとこういう音作りをするだろうというのを自分なりにやったものを挙げてきたんです。これがもうすごくしっくりきたので、結果的に全部chibi-techでまとめられて、とてもいいものになったと思います。

佐藤
 最終ステージは、chibi-techのたっての希望でゲームの進行にシンクロしたBGMになっています。曲との合わせは処理落ちとの戦いで、プログラマーが苦労して実現したところでもあります。ぜひ注目しながら聴いてみてほしいです。

堀井
 chibi-techの話ばかりで、サウンドエンジニアのアンドリューには申し訳ない(笑)。

佐藤
 アンドリューは効果音やボイスのほうですね。僕も必要な効果音・ボイスのリストを作りました。

堀井
 『沙羅曼蛇』だからめちゃくちゃボイスのセリフあるといいよねってことで、「たくさんしゃべらせて」って、アンドリューに投げただけなんですけど(笑)。

 ちなみにステージ4のボスはたくさんセリフをしゃべります。ちゃんと聞いて翻訳してみたらぜんぜん重要じゃないセリフなので「せっかく翻訳したのに!」と怒られる前に言っておきたいのですが、あれは「私みずからが出る!」みたいなことを言っています(※)。
※KONAMIのシューティングゲーム『XEXEX』に登場した クラウス・パッヘルベルと同じセリフ。
佐藤
 あの周辺だけふざけてますが、基本はシリアスです!

細かなサプライズタイトル

――パワーアップカプセル方式の『沙羅曼蛇』が収録されたことにも驚きました。『LIFE FORCE』も収録しているのに、なぜこちらを制作したのでしょうか?

上野
 そこは堀井さんのこだわりが半端なかったからですね。

堀井
 『沙羅曼蛇』と『LIFE FORCE』を並べて「どっちが『グラディウス』か?」と言ったら、そりゃ当たり前ですが『LIFE FORCE』と答えると思います。ただ僕は『沙羅曼蛇』を遊んだときに、パワーアップに自由度があったらいいなと思っていたんです。ですから、『LIFE FORCE』が出たときすごくうれしかったんですよ。ただ、『LIFE FORCE』は『LIFE FORCE』という作品であって、グラフィックは『沙羅曼蛇』とは違っていました。

 『沙羅曼蛇』の世界観が好きなので、そのままパワーアップカプセル方式の『沙羅曼蛇』を遊びたいと思っていました。昔に某雑誌の企画で、景品として作られた
『沙羅曼蛇 スペシャル版』っていう、同じような仕様のものがあったんです。でもそれは遊んだことがない。どうしても遊びたいので、だったら自分たちで作ろうぜ、と。

 ということで、ここぞとばかりに『沙羅曼蛇』をベースに『LIFE FORCE』のフィーチャーを盛り込んだバージョンを作ることにしました。仕様については、『沙羅曼蛇 スペシャル版』の詳細が分からないので、敵配置やボイスは『LIFE FORCE』を参考にいいところ取りでまとめています。

上野
 そのときは「納期内に収まるならいいですよ」と。でも「まだです……? 間に合わないなら切りますよ」と何度もくり返した覚えがあります(笑)。

堀井
 すみません、メチャクチャ言われました(笑)。

――間に合ってよかったです。もうひとつ、『VS. グラディウス』もまさかの隠し玉になっていて、こちらも驚きました。

堀井
 『オリジン コレクション』はアーケード版の移植コレクションである、というのであれば、そりゃ入れないとダメでしょうと。決してファミコン版ではありません。れっきとしたアーケードゲームです。

河内
 弊社に一流の“グラディウサー”がいまして、元となる基板もスタッフから出てきたものでした。

久保田
 オマケのはずなのに、ガジェットはしっかり用意しています。移植するだけでいいのにスタッフから「入れておきました」って言われて、起動してみたらすでに入っていて……(笑)。

――もう、何バージョン本コレクションに入ってるのかわからなくなってきました(笑)。

河内
 じつはもう1個あって、『沙羅曼蛇2』の海外版も収録しています。先ほど堀井が言っていた『LIFE FORCE2』です。

上野
 海外で発売されたのかどうか不明、みたいなタイトルだったのですが、調べるとけっきょくは海外ではリリースされなかったタイトルです。制作はしたものの出荷されなかったようで。あるとき河内さんから「データが見つかりました!」と連絡が来て驚きました。

河内
 しかも、もう開発末期の時期で(笑)。

上野
 ゲームとしては、難度が少し違うだけです。正直に言いますとギリギリのタイミングで無理やり入れたため、個別タイトルではなく『沙羅曼蛇2』のマニアックオプションをいじることで『LIFE FORCE2』に変更できるようになっています。

 データとしては、ROMの中のフラグを書き換えると海外版に変わるという仕組みでした。そりゃ、海外版の基板が見つからないわけですよね。どれだけ探しても見つからなかったのに、じつは中身に入っていたという。

堀井
 結果、7タイトル21バージョンがコレクション内に含まれています。とはいえ、全部遊んでくださいとは言いません。皆さんがそれぞれ気に入ったバージョンを遊んでいただければそれでよく、好きな人はつまみ食いもできる贅沢なコレクションだと思っていただければと。

――末永く楽しめそうですね。もし今後『グラディウスVI』や『沙羅曼蛇4』といった、さらなる続編を制作できるとなったら、やはり堀井さんは作ってみたいですか?

堀井
 作りたいというより、遊んでみたいです。今回『沙羅曼蛇III』を選んだのも、マップの戻りがないから敵の配置が楽で作業工数が減るよね、みたいな考えから選んだ部分もありますし。となるとこれまで『グラディウス』を作ったスタッフの方々から、舐めるなと言われ兼ねません。ただ、『グラディウス』シリーズは続けていってくれるとうれしいですし、もしそのときが来たら、誰かがやらなきゃいけないだろうな、と思います。

 『オリジン コレクション』自体、上野さんから「『グラディウス』をまた世間に広めて、今後も続けるためにやりたいんです」って僕に声を掛けてくださったんですよ。そんなこと言われたら、「スケジュールが空いてません」なんて言えないですよね。この先、もし
『グラディウスVI』が出たら、もう任務達成というか、ファンとしての本望です。

――では最後に、これからプレイする読者の皆さんのために、本作のおすすめポイントを教えてください。

河内
 『沙羅曼蛇III』がメインのインタビューでしたが、『沙羅曼蛇』についてひとつ紹介したいです。今回、ほぼ全タイトルで当たり判定表示機能を追加していますので、とくに『沙羅曼蛇』で表示して遊んでほしいです。リップルレーザーの判定がものすごいとか、ステージ6の冒頭のシーンがどうなっているかとか、ぜひ見ていただきたいです。

佐藤
 僕はサウンドギャラリーに注目してほしいです。ものすごい曲数が収録されていますが、曲を流しながらほかのビジュアルギャラリーをはじめ、各モードを閲覧できるようになっています。好きな曲を聞きながら資料を眺められますので、ファンの方も、これからファンになる方も絶対に楽しめる要素だと思います。資料もエムツースタッフの私物が混じっていたりします。『グラディウスIII』のポップは僕のです(笑)。

久保田
 『沙羅曼蛇III』については、僕はいちプレイヤーとして遊ばせてもらいまして、現在5周目までいけます。最初のころはもっと難度が高かったわけですが、プレイを通してフィードバックした部分もあるんですよね。きっともっとすごい極まったプレイをしてくれる方が現れるんだろうな……と、ワクワクしています。

堀井
 1980年代、1990年代のゲーセンを見たことがない若い方々に向けて提案しますが、何の攻略情報も入れずに『グラディウス』でも『沙羅曼蛇』でもいいので1クレジットクリアーしてみてください。今回、オプション機能もたくさん用意していますが、まずは使わずに。すごく難しいと思いますが、ステージをクリアーできるようになっていくたびに、きっと脳汁がダダ漏れになります。1周ワンコインクリアーできたとなったら、思わずガッツポーズしていることでしょう。

 『グラディウス』って、そういう経験ができるゲームなんです。この経験を経てから、搭載したあらゆる機能を使うことで、またおもしろさが変わってくると思います。となると(エムツーにとっての)いいお客さんの完成です(笑)。プレイヤーとしての完成する機会を、自分が上達する快楽を、ゲームをねじ伏せる喜びを、ぜひ体験してみてほしいです。

上野
 本当に長らくお待たせしました。これからも企画を出し続けていきたいので、発売後もがんばっていきたいです。まずは、『グラディウス オリジン コレクション』をゆっくりと遊んでみてください。
[2025年8月8日9時57分修正] 一部文章を変更・追記いたしました。
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      集計期間: 2025年08月11日21時〜2025年08月11日22時