『ウイニングポスト10 2025』レビュー。将来有望な牝系探しやレース時の作戦選択が楽しすぎて時間が足りないと嘆きつつ、そこかしこから洩れ出ている制作陣の競馬愛にニヤニヤ
 コーエーテクモゲームスより2025年3月27日に発売された競馬シミュレーションゲーム『ウイニングポスト10 2025』。対応ハードはNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、PC(Steam)。今回は、同作のプレイレビューをお届けする。
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『ウイニングポスト10 2025』の注目ポイント

 まずは本作の見どころをチェック。
  • 1971年開始の新シナリオ実装(従来の1973年開始シナリオが変更)
  • レースごとに設定された新要素“レース傾向”と各馬の“適応能力”が追加
  • レース観戦時の“作戦選択”が進化
  • “競馬ヒストリア”、“史実調教”、“固有特性”、“配合理論”などで海外要素が拡充
  • “世界100傑馬ランキング”の実装
  • 時代を超えて名馬たちが対決する“ザ・レジェンドマッチ”
 下ふたつについては長期間プレイのためのやり込み要素となっているため、本稿ではそれ以外の要素について触れていきたいと考えている。

 
『ウイニングポスト』シリーズはナンバリング更新のほか、毎年最新年度版が発売されるが、収録データの更新だけでなく新システムの実装、従来システムの改修なども積極的に行われている。

 本作は
『ウイニングポスト10』シリーズの3作品目ということもあってか、よりディープなプレイを意識した要素の追加、改修がなされているという印象。シリーズの他作品にプレイデータ引継ぎが可能になる30年以上のプレイをするくらいやり込む人にはとくにオススメだ。

スタートダッシュを決めろ!

 シナリオはやはりシリーズ最古年となる1971年開始シナリオを選択。今回は新シナリオということで選んでみたが、そうすればプレイを重ねるごとにもっとも昔から最新の年代まで、自然と競馬の歴史を追体験できる。シリーズ初心者でシリーズ初心者でプレイする年代にこだわりがない人は、このように古い年代のシナリオを選ぶといいだろう。
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 本作ではどのシナリオを選んでも、レース体系は2025年度の最新版となっている。そのため、短距離やダート路線など、重賞以上のレースそのものがなかった時代でそれらの路線で戦えば、ライバルも少なくかなり勝ちやすくなっているのだ。

 というわけでゲームスタート。開始時に選ぶ牧場の開設地区などの基準は、前作
『ウイニングポスト10 2024』とほぼ変わらないので、より詳しく知りたい方は前作のレビューを参考にしていただきたい。
 開始年が1973年から1971年となり、初期選択の3歳馬のラインアップも変わっている。オススメは史実でも1972年に天皇賞(春)を勝利するなど長めの距離で強かった牡馬のベルワイドか、架空馬で牝馬のウィンドコカード。購入にはけっこうな高額が必要だが、きちんとレースを選んであげれば回収はそれほど難しくない。
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 おもしろいところでは、ゲームのチュートリアルとは別に1971年の競馬シーンを解説してくれるイベントが発生する。攻略そのものにはそれほど影響しないだろうが、競馬好きにはうれしい要素だ。
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 ベルワイドを選択すると、基本的には3歳クラシック路線へと挑むことになる。そこには伝説のダービー馬ヒカルイマイという強力なライバルがいて、皐月賞や日本ダービーでは圧倒的な強さを発揮してくるのが困りもの。だが、それらのレース以外ではきちんと調子を整えてレース傾向に合った作戦を選べば難なく勝って賞金も稼げるのだ。

 ウィンドコカードは距離適性がものすごく狭く(2300~2400メートル!)健康Gで多くのレースに出すのはきびしい馬だが、うまく賞金を稼げばオークスや秋華賞、エリザベス女王杯ではかなり勝ちやすくなっているのが魅力。

 ベルワイドは飛び抜けた能力がなく作戦選択が重要、ウィンドコカードは距離適性がピンポイントすぎるためレース選択も重要となるなど、能力と作戦をうまく組み合わせた戦術が必要になる、初期に選ぶにはうってつけの馬と言えよう。
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 なお、1年目にはチュートリアルの一環で“目標”が設定されており、最終目標の200ポイントを達成すると史実で1973年オークスを制したナスノチグサなど有力な1歳馬を譲渡してもらえる。近年の『ウイニングポスト』シリーズは、基本的にスタートダッシュでたくさん資金とお守りを稼げばその後のプレイがラクになる仕組みになっている。本作でもその構造は変わらないようで、要素が増えてもやはりシリーズプレイヤーには遊びやすい作品だと感じた。

 また1971年開始となり、“第1次競馬ブーム”の担い手であるハイセイコーを幼駒のうちに購入して、自分の馬として走らせることができるようになった。同期のタケホープとともに金札設定されており、体験版やら過去作のシリーズボーナスで金のお守りをもらっていれば最初に買っておきたいところ。
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 そのほか、将来子孫が大活躍するはずの繁殖牝馬を買っておくなど、競馬知識があることでゲームを有利に運べる仕組みになっているのも毎度ながらうれしい。「どの牝系を買っておくべきか……」と、過去のデータを調べるのも楽しくて、ゲームを止めたままついつい時間が経ってしまう。かなりの時間泥棒なゲームながら、競馬データマニアには本当にオススメの作品なのだ。

競馬中継を思い起こさせる作戦選択画面

 筆者は競馬ゲームファンであると同時に競馬ファンでもあるのだが、本作の新要素でいちばん胸躍ったのがレースの作戦選択画面だった。
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 テレビの競馬中継を観ている人には、この画面はなじみ深いものであることだろう。予想家は展開予想を見ながら馬券を買うが、本作では展開予想を見ながら愛馬の作戦を決めることになる。

 ここで鍵になるのが本作からの新要素“レース傾向”と“適応能力”だ。レースには“瞬発戦”、“持久戦”、“消耗戦”、“総合戦”などの傾向があり、それに対して競走馬にはそれぞれへの適応能力が備わっている。適応能力は後述する史実調教やレース内容によって成長させられる(上限はある)一方、写真にある“大外一気”など特殊な作戦を選択するとその場で一時的に増減することもある。

 従来のように「差し馬が多くてスローペースになりそうだから逃げや先行にしよう」と展開にハマりそうな作戦を選ぶのか、レース傾向に対して適応能力が最大限に発揮できる作戦を選ぶのか……。事前に把握できる情報や作戦の種類が大幅に増えたぶん、考える楽しみがある。もっとも、1レースに掛かる時間も増えてしまうかもしれない。何とも悩ましい要素である。

 なお、レースシーンでは新たな視点のカメラが増えている。
『ウイニングポスト10』以降のカメラワークは、リアル競馬のリプレイ動画やJRAとのコラボ動画で採用されていたりして、見た目がおもしろいし将来性を感じさせるものでもある。ナイスエンターテインメント。
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マニアックすぎる要素に微笑みが止まらない

 競馬ファン的には、競馬の歴史を学べたり、名馬の歩みを追体験したりできる“競馬ヒストリア”の拡充も見逃せない。

 開始年が2年さかのぼったことでそのぶんのイベントや日本競馬史が追加されたのはもちろんのこと、今回は“海外競馬史”が新たに実装されている。それも、日本競馬史と同じく10年区切りの前後編でそれぞれ20ページ前後のコラムを収録……というとんでもないボリューム。さらに、当時の写真やイメージ画などもしれっと入れていたりして、制作陣の愛というか執念を感じさせる作りになっていた。
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 とくに古い年代の海外競馬史などは、個人で調べるのはなかなか骨が折れる作業。また名馬やレースの数も多すぎてどのようにまとめたらいいのか悩んでしまいがち(若き日の筆者はまさにそうだった)。それをキレイにまとめてくれたのだから、もう感謝しかない。

 競馬ヒストリアだけでなく、本作では海外に進出してのプレイをさらに充実させる要素がかなり増えている。まずは“SP史実調教”。2頭で行う特別な史実調教で、適応能力を任意に上昇させられる貴重なコマンドでもあるが、その調教内容のモチーフとなっているのが海外の調教技術。

 さらに海外の競馬場で力を発揮する競走馬の“特性”や、海外の牧場だけで使える配合理論も新たに実装。馬産に携わる人やPOG(ペーパーオーナーゲーム/仮想の馬主として競走馬を選びレース結果に応じたポイントを競う遊び)のヘビーユーザーくらいにならないと名前さえ知らないような“ドサージュ理論”や“ラスムッセン・ファクター”などが登場しているのだ。

 どこもかしこも「ムダにマニアックだなぁ」と本作スタッフの細かすぎる仕事ぶりにちょっと呆れながらも、ニヤニヤが止まらない。
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 競馬ファンならハマってしまう数々の罠のせいで長期間プレイはできなかったが、いつにも増して細かく作り込まれているため、あっという間に現実の時間は過ぎていった。競馬好き、もしくはこれから競馬のことをもっともっと知っていきたい人なら、必ずや満足できるゲームになっていると思う。だた、ひとつだけ注文をつけるとしたら、エディットがもう少しラクになるといいなぁ……と。
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