『オーバーウォッチ2』×『ガンダムW』開発者インタビュー。『エンドレスワルツ』版をベースに、大量のガンプラを作ってスキンを制作。POTGでは「あのシーンだ」と興奮必至のオマージュも
 『オーバーウォッチ2』(OW2)にて『新機動戦記ガンダムW』(ガンダムW)とのコラボが2025年4月30日より開始。マーシーがウイングゼロ、リーパーがデスサイズ、ソルジャー76がトールギス、ラマットラがエピオンに扮したスキンが登場する。

 本コラボの開催に合わせて本作のアートディレクターを務めるディオン・ロジャース氏とプロダクトマネジメント担当アソシエイトディレクターを務めるエイミー・デネット氏への合同インタビューが行われた。
『ガンダムW』コラボのきっかけや開発チームの反応、スキン制作におけるたいへんだったことなどについて訊いてみた。
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Dion Rogers(ディオン・ロジャース)

『オーバーウォッチ2』のアートディレクター。文中はディオン。

Aimee Dennett(エイミー・デネット)

『オーバーウォッチ2』のプロダクトマネジメント担当アソシエイトディレクター。文中はエイミー。

一番大事なのはゲームの中で『ガンダム』の世界を感じてもらうこと

――『ガンダムW』30周年にあわせて始まった今回のコラボは、バンダイナムコエンターテイメント(以下、バンナム)側から持ちかけられたのでしょうか。本作がアメリカで初めて地上波放送された『ガンダム』作品ということで、コラボ企画が決定したときの開発チームの反応はどのようなものでしたか?

エイミー
 以前、ほかIPとのコラボでバンナムさんと仕事をした経験があったので、いつか『ガンダム』作品ともコラボできたらいいねってよく話し合っていました。そんな中、バンナムさん側から「今度『ガンダムW』30周年を迎えるんだよね」といったお話をいただいたときは、まさに絶好の機会だったんです。とくに開発チームは『ガンダム』シリーズの大ファンなので、すぐディオンにバトンを渡しました。
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ディオン
 今回のコラボが決まったとき、「やりたい!」、「自分も参加したい!」という声がたくさん挙がるほど、美術班はもちろんチーム全体が盛り上がりました。また、『ガンダム』はシリーズ全体を通して自分たちの絵柄やストーリーテリングなどに影響を与えてくれた作品なので、開発チームのみんながこのコラボに参加することにとても興奮していました。

――『ガンダムW』を当時リアルタイムで視聴していた世代は40代ほどになっていますが、『オーバーウォッチ』のプレイヤー層は幅広いと思っています。今回のコラボではとくにどの年代の層を意識しているのでしょうか。

エイミー
 私たちは、いつもいろいろな年齢層に向けてコラボを考えています。若いプレイヤーに向けたものもあれば、「ちょっと懐かしい」と思ってもらえるようなテーマを選ぶこともあります。しかし、一番大事なのは特定の年齢層をターゲットにしているかどうかではなく、プレイヤーがゲームの中で『ガンダム』の世界を感じることができ、自己表現の一環としてコラボスキンを使ってもらうことです。
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ディオン
 スキンを担当したアーティストのひとりは、高校時代に『ガンダム』のファンアートを描いていたので、担当に決まったときはもうかなりテンション高かったですね(笑)。

スキンは何箱も買って作ったガンプラを参考に制作

――今回のスキンは機械的なデザインが際立っており、従来のスキンとかなり異なる印象を受けました。制作時に苦労した点、こだわった部分について教えてください。

ディオン
 スキン制作に関しては「参加したい!」という人が多く、バンナムさんとの連携も密に行えたので、とても楽しかったです。スキンは基本的に『オーバーウォッチ』のキャラクターが他作品のキャラクターのコスプレをしているという設定なのですが、今回に関しては“モビルスーツのカッコよさ”をそのまま表現したかったんです。

 そのためにもガンプラを何箱も買って作って、関節部分がどうなっているのか、内部構造がどうなっているのかなどの資料を作りました。“モビルスーツの見た目を完璧にしたい”という思いもあり、できる限りフォルムをガンダム側に寄せられたと思います。限界を超えるくらいの勢いで作業しました(笑)。

――ウイングゼロ、デスサイズ、エピオン、トールギスのスキンは、どのような基準で選ばれたのでしょうか? マウガとヘビーアームズの組み合わせが除外された理由も教えてください。

ディオン
 コラボが決まった後、美術班だけでなく開発全体から多くのアイデアがバンバンと提案されました。もちろん、マウガのヘビーアームズの案もあり制作してみましたが、実際に採用されたスキンと比べてデザイン的にうまくフィットしませんでした。一方で、ラマットラの“エピオン”スキンは“どっちも変形する”という共通点もあり、ぴったりハマりましたね。

 あと“トールギス”と“エピオン”に関しては、チーム全員が「これは絶対入れなきゃダメだよね」と強く要望したこともあり、ほぼ最初から確定といった感じで進んでいきました。
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エイミー
 コラボの話をいただいたとき、みんな「マウガとヘビーアームズは相性バツグンだ」と思ったんです。でも、コンセプトアートなり実際にモデリングしてみると、ちょっとしっくりこないというか違和感が生まれてしまいました。

 ほかに試してみたのは、武器が似ていることから、アナの“トールギス”でした。でも、同じようにしっくりこなかったんです。最終的にソルジャー76にあわせて作ってみたら、見事マッチして「これでいこう!」となりました。
『ガンダム』のようなコラボだと試行錯誤の連続なんです。

――アナだとうまくいかなかったとのことですが、ソルジャー76が“トールギス”に選ばれた理由や決め手はなんだったんでしょうか。

ディオン
 開発チームの「全部完璧に仕上げるぞ」という気迫がすごく、ソルジャー76をはじめ全キャラクターに対して何度もスキンの試作を行いました。ソルジャー76にトールギスに決まったのは、シルエット的にこの体型が一番正解に近かったからです。動きやアビリティとの相性もよかったので、自然と彼に固まりました。
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ディオン
 とくに、“どこまでディテールを入れるか”にこだわっていて、『ガンダム』って本当に描き込みが細かいんですけど、『オーバーウォッチ』のスタイルにその緻密さを落とし込めるかが大きな挑戦でした。それでも「やるからにはちゃんとやろう」と何度もコンセプトアートを描き直し、最終的な方向性が定まるまでかなり時間がかかってしまいましたね。

 そして最初にみんなが納得できるレベルに到達したのが、じつはソルジャー76だったんです。彼のスキンがほか3人のクオリティーや方向性を決める“基準”になったという意味でも、とても感慨深いです。

エイミー
 『ガンダムW』で興味深いのは、『ガンダムW』と『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz(エンドレスワルツ)』でモビルスーツのデザインが異なっていることでした。今回のコラボでは、テレビアニメ版とエンドレスワルツ版のスキンを用意してそれぞれ比較した結果、すべてを同じデザインにしたいということもあり、スキンを『エンドレスワルツ』版のデザインに統一しました。

“ガンプラ”箱絵アーティストによるロビー背景に注目

――今回の『ガンダムW』とのコラボにおいて、ファンに向けた仕掛けや、ぜひ注目してほしいポイントがあれば教えてください。

ディオン
 チーム全体の『ガンダム』に対しての情熱がすごく、いろいろ仕込んであります。たとえば、リーパーの“デスサイズ”では、特定のアニメーションやPOTG(プレイ・オブ・ザ・ゲーム)で鎌を出すといった小ネタを用意しています。
※POTGとは、試合終了後にもっとも活躍したプレイヤーのハイライトシーンが再生される簡易リプレイ機能のこと。
 また、マーシーは今回初めて完全に顔が見えない“フルロボット化”のデザインになっています。彼女が“ウイングゼロ”のイメージに一番適しているなと思ったので挑戦してみました。実際にスキンを見てもらえれば、なぜこのペアなのか理由がわかると思います。
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エイミー
 そのほかにふたつ注目してほしいポイントがあります。ひとつはロビーの背景です。じつは“ガンプラ”の箱絵を描いてるアーティストさんにバンナムさんを通して依頼しまして『オーバーウォッチ』仕様で描いてもらいました。

 もうひとつは、さきほどディオンがPOTGの話をしましたが、演出が
『エンドレスワルツ』版のオマージュになっています。「これ、本編のあのシーンだ……!」と思ってもらえるような再現度なので、そこにも注目していただければなと思います。

――今回のコラボをきっかけとして、もしガンダムコラボ第2弾があるとしたらどの作品とコラボしてみたいですか? 個人的には“赤い彗星”を彷彿とさせるようなD.vaのスキンを見てみたいです。

エイミー
 たぶん10人に聞いたら10通りの答えが返ってくるくらい『ガンダム』ファンだらけなんです(笑)。なので、どのシリーズであっても、またコラボできたら本当に光栄です。個人的には『水星の魔女』とのコラボをやってみたいですね。

ディオン
 私は『ガンダムW』が大好きなので今回のコラボを非常に楽しみしており、まさに「夢が叶った!」って感じですね。D.vaの“シャア専用”っぽいスキンも試してみたんですけど、どうもうまくいかなかったので採用できませんでした。

 でも、開発チームみんなこの
『ガンダム』という作品が本当に大好きなので、またいつかもう一度コラボできたらいいなと思っています。

――ありがとうございました。
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[2025年年4月29日1時11分修正] 開始日に誤りがあったため、該当の文章を修正いたしました。読者並びに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。