2025年8月29日(金)発売予定の、Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)用ソフト『SHINOBI 復讐の斬撃』。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a93583bbda7f8b1cacef5e50135ec6b3c.png?x=767)
本作は、1987年にアーケードゲームとして稼動し、家庭用ゲーム機版や続編が多く展開した『忍 -SHINOBI-』シリーズの最新作。同作は、『WonderBoy:ドラゴンの罠』、『ベア・ナックルIV』など、セガ名作のリメイクを手掛けてきたフランスのゲームスタジオLizardcubeが、セガとタッグを組んで開発しているという。
このタッグはどのような経緯で結成されたのか。そして、セガとLizardcubeのそれぞれが、さまざまな熱意をもって開発に臨む『SHINOBI 復讐の斬撃』とはどのようなタイトルなのか。セガの大原徹プロデューサーと、LizardcubeのクリエイティブディレクターであるBen Fiquet(ベン・フィケ)氏の両氏に訊いてみた。
なお、本日(2025年5月16日)、『SHINOBI 復讐の斬撃』のメイキング映像第一弾が公開されている。Lizardcubeの細部にまでこだわり抜かれた制作過程が紹介されているので、インタビューと併せてご確認いただきたい。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a57e061217a28bc33737bd858c65e8c9e_izmEDm8.jpg?x=767)
大原徹氏(おおはらとおる)
1993年、ゲームデザイナーとしてセガに入社。『サクラ大戦』に関わり、『サクラ大戦2』では戦闘パートディレクターを務める。『あつまれ!ぐるぐる温泉!』や『三国志大戦』、『WONDERLAND WARS』などのディレクターを担当。本作ではプロジェクトリーダー(プロデューサー)を務める。文中では大原。
Ben Fiquet氏(ベン・フィケ)
フランス・パリ在住のフランス人アーティスト。自身が設立したゲームスタジオLizardcubeのアート/クリエイティブディレクター兼CEO。同社は2015年に氏を含むふたりのスタッフによって『WonderBoy:ドラゴンの罠』をリメイクするというアイデアから始まり、現在は約10人で活動している。
※記事内の画像はアナウンストレーラー映像から切り出しており、開発段階のものです。セガとLizardcube、タッグ結成の経緯
――まずは本作の制作決定のきっかけや経緯について、教えていただけますか。
大原
かなり運命的というか、相思相愛の状態で惹かれて始まりました。もともとLizardcubeさんが『Streets of Rage 4』こと『ベア・ナックルIV』を作られたあと、じつは『忍 -SHINOBI-』を作りたいと思っていらっしゃったということがわかったんです。
ベン
もともと我々はセガの大ファンで、我々の会社は『ワンダーボーイ』や『ベア・ナックル』シリーズをリメイクするところから始まった会社です。そこからセガさんとの交流が始まりました。
セガさんのほうから、眠っていたIPを活性化させたいというような提案をいただき、我々からは『忍 -SHINOBI-』の企画を提案させていただきました。『忍 -SHINOBI-』は私自身が子どものときから大好きなIPでした。
大原
『ベア・ナックルIV』をきっかけに、Lizardcubeさんと何か新しいものを作っていけないか、というお話になっていたんです。それで話をしてみると、『忍 -SHINOBI-』いいじゃないかという話になり、お互いが声を掛け合って始まったというわけです。
ベン
コロナの最初のころの話ですね。この時期、ちょうど我々もつぎになにをしようか迷っていたところでした。
――ではそのタッグについてなのですが、ゲームの開発面ではどのようなプラス要素が生まれたとお考えでしょうか。
大原
Lizardcubeさんは10人ぐらいの会社ではありますが、スピード感やクリエイティブの勢いみたいなものをすごく強く感じました。すごいパワーを持った会社だと思ったんです。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a87f13fbe978fafa054e5b2e144efc0ae.jpg?x=767)
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/ac9132d4a82c26a8048a9e25341a398de.jpg?x=767)
こちらがLizardcubeのオフィス。約10名のスタッフの中で、アートワークについてはBen氏ともうひとり(計ふたり)が受け持っている。
大原
我々セガもクリエイティブな意識を持ってはいるのですが、クオリティーアップをし続ける意思みたいなものが、当社の視点からしても非常に強いなと。実際、もうチェックでバグ修正以外は手を入れるのはやめようというような工程時期になっても、つぎのバージョンアップ版が来たらキャラクターの絵が変わっているといったことが実際にありました。
ベン
我々としてはすばらしい日本のプロデューサーのもとで働けたことで、たくさんの学びの機会がありました。日本の多くのクリエイターが作品に注ぐ細心の注意などを見ることが、たいへん勉強になりました。
私たちの目的はいいゲームを作ることで、ときには日本とフランスの文化の違いによってすれ違いが生じたりはしますが、最終的には一致団結できたと思っています。
――役割分担としては、開発はおもにLizardcubeさんのほうで行ったのでしょうか。
大原
開発はLizardcubeさんが中心で、セガはマーケティングや販売、パブリッシングのところを中心に担当していましたが、ゲームデザイン部分に関しては我々の意見も交えたり、いっしょにコミュニケーションを取りながら進めていった部分があります。
ゲームデザインや企画面に関しては、私もゲームデザイナーの出身だったということで、ディレクターの寺田とともにいっしょにコミュニケーションを取ってやっていきました。一部アクションのアイデアだったり、シナリオストーリーの調整だったりといった部分は、我々がいっしょに参加できた部分だと思っています。
ベン
セガは歴史の長い会社で、それによって膨大な知識の蓄積もありまして、それによって我々も非常に助けられました。プロデューサーはもともと開発者ということもあり、我々が求めるものをうまくセガの引き出しから取り出してくれました。
――少し話が逸れてしまいますが、ここでベンさんがとくに好きなセガのゲームを教えていただけますか。
ベン
『忍 -SHINOBI-』や『ベア・ナックル』のシリーズももちろん好きですし、より近年のものですと、ドリームキャストの『ジェット セット ラジオ』や『シェンムー』、『クレイジータクシー』などですね。あとは『ソニックアドベンチャー』の1作目、2作目も非常に大好きな作品です。
あとは『龍が如く』シリーズについても好きなのですが、あまりプレイをする時間を取れていないのが現状です。ほかに昔のメガドライブの作品ですと『アラジン』が非常に好きで、この作品の優れたアニメーションが、私がゲームに美しいアニメーションを取り入れたいと思わせるきっかけになりました。メガドライブでは『獣王記』と『ゴールデンアックス』もまた、アニメーションが美しいタイトルとして思い入れがあります。
タッグでどのように『SHINOBI』を作ったか
――続いて本作の内容についてうかがいます。『忍 -SHINOBI-』シリーズの復活作品として、とくに意識した点などはあったのでしょうか。
大原
意識した部分と意識しなかったところ、両方ありまして。たとえば、2Dアクションゲームが土台になっている部分であるとか、キャラクターや世界観といった部分に関しては、原作が持っているもともとの雰囲気を壊さないように大事にしています。
とくにジョー・ムサシという主人公をこの時代に復活できたということに関しては、非常に意味のあることだったのではないかなと思っています。
――もうひとつの、意識しなかったところについても伺えますか。
大原
逆に意識せずに自由に新しいものを作ったという部分に関しては、アート的な部分ですね。ここはLizardcubeさんのアート感覚のすばらしさを引き出すところを第一に考えました。結果、それでいい味が出たというか、ノスタルジーも少し入りつつも、新しい『忍 -SHINOBI-』の世界観を作り上げていただけたと思っています。
また、ゲームデザインに関しては、いまの2Dアクションゲームユーザーのファンの皆さんにもちゃんとプレイしていただけるように、触り心地とか操作感だとか、そういったところでこだわりを持って、新しいものを作っていきました。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a91190f3622263ce6a4fe5182e8cae877.png?x=767)
トレーラーでは美しい花火が打ち上げられるシーンを始め、バラエティー豊かなステージがすでにいくつも見受けられた。
ベン
もとのゲームIPと現代のプレイヤーに対する新規性、そのふたつのバランスを取ることは難題でした。これはビジュアル面とゲームプレイ面の両方に共通していたと思います。
ゲームプレイ面は、もとのゲームは現代のゲームよりもゆっくり進行するものになっていて、まずはそこからですね。最初はメガドライブ版のものに忠実に作っていたのですが、現代のゲームと比べるとかなり異なるものなので、プレイヤーが操作するうえでの気持ちよさや快適さを重視して調整を行いました。もとのゲームが30年前のゲームであるため、そのまま作り変えるのは難しかったです。
そこでもともと『忍 -SHINOBI-』というゲームのエッセンスがどういうものなのかを改めて見つめ直し、最終的にはかっこいい忍者になってSF世界でドンパチをする、というところがエッセンスなのだという考えにいたりました。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a4c4921910686f5271183bd0dfdb45e8a.png?x=767)
本作では日本の要素とSF要素が混在しており、それが独特な世界観を生み出している。
――Lizardcubeさんにセガ側から、とくにここはこうしてほしいといったオファーをされた点はあったのでしょうか。
大原
逆にLizardcubeさんのやりたいことを、ねじ曲げるようなことはしないようにと私としては考えていました。とくにアート面に関しては我々が口を挟むところはなくて、どんどん彼らがよいものにしていってくれました。
ゲームデザイン部分に関してはいろいろと議論を重ねたのですが、Lizardcubeさんにはポリシーがありました。
――ポリシーですか。その議論の一例を教えていただけますか。
大原
本作ではゲーム進行に応じて、技のアクションがどんどん増えていく形で、いつでもそれらが使えるようなゲームデザインになっているんです。するとその敵にはこの技がいいなどの“答え”、たとえば火属性の敵に対して水攻撃がいいよ、といったルールを作るのが一般的で、我々セガ側としても、そういうことをしたほうがいいのではないかと提案したことがありました。
しかし、Lizardcubeさんの考えかたとしては、選択肢というのはもっと自由であるべきだということでした。その自由なところから、ユーザーが独自のアクションを自分たちで探してほしいと。そこについて議論を重ねた結果、やはりLizardcubeさんのよさを大事にしたうえで、ゲーム構築を進めていこうという結論になりました。
――ほかにも両社のあいだで交わされた議論やオファーなどがあれば、ぜひうかがいたいです。
ベン
ライセンスアウトではなく実際に監修を受けるということで、最初はゆっくりとお互いのことを知っていくところから始まっていき、プロデューサーとしては我々が『忍 -SHINOBI-』というIPで何ができるのかを知りたかったのではないかと思います。
そうして信頼もしていただき、期待には応えられたかと思っていますが、そのうち「もっとエッジを効かせてほしい」という要望がありました。これはパブリッシャーからいただく要望としては非常にレアで、ゲームをよりよくしていくためにあらゆる手を尽くしてくれているという印象を受けました。
――エッジを効かせてほしい、という要望を受けて、実際に変えた部分というのはどういったところなのでしょうか。
ベン
ある時点で、我々のアートがよりコンサバティブ(保守的)な方向になっていて、それをもうちょっとアーティスティックなエッジを効かせた方向に寄せてほしいという要望を受けました。 これはビジュアル面の話で、もうひとつ、ゲームプレイ面でもプレイテストなどを重ねたことで、ある程度課題が見えてきましたので、おもにプレイヤーのアクションに対するおもしろさを追求した見返りの部分で、セガさんといっしょにいろいろなやりかたを考案していきました。
このように、セガさんにはプレイヤーをつねに楽しませていきたいという思想がありましたので、それに関してさまざまな知見をいただきました。
アクションのおもしろさを生む“自由な選択肢”とは
――そうして議論も重ねたアクション面について、こだわりを教えてください。
ベン
我々はプレイヤーの動きと格闘面について、かなり重点的に開発時間を費やしました。動きが滑らかになるように、本当に忍者としてプレイしている感覚になれるように努力してきました。
結果として、本作はベルトスクロールアクションとプラットフォームアクションの融合になりました。敵キャラクターの動きを把握して、自分の技を効果的に使うことによって、敵を倒していく形になっています。
大原
セガ視点のコメントになりますが、このゲームのアクションのこだわりはふたつあると思っています。ひとつは爽快感、もうひとつが自由な選択肢です。
爽快感のほうについてですが、私が改めて本作を体験してみて思ったこととして、このゲーム、キャラクターがぜんぜん止まらないんですね。つねにキャラクターが画面の真ん中にいないというか、つねに動いているという感覚があります。それが非常に気持ちよくて、ずっと触っていたくなるというところにつながっているのだと思います。
ベン
おもにアクション面……ボタンを押していかに楽しく、かつ気持ちよく動けるかというところには、実際にこだわっています。あとは従来のアクションゲームや格闘ゲームから、エフェクト面や空中コンボ、ヒットボックスなどについて、インスピレーションもたくさん受けています。正直、このようなゲームはほかにはあまりないと自負しています。
――もうひとつの“自由な選択肢”というこだわりについても、教えていただけますか。
大原
ジョー・ムサシはゲーム開始時には弱攻撃、強攻撃、手裏剣を投げるぐらいしか基本攻撃はなくて、コンボもそこまでつながらないようなゲームデザインになっています。
そこからゲームをプレイしていく過程で、どんどん技を習得していけます。本作ではそれらの技をボタンに割り振って持っていく形式ではありません。ほとんどの技がつねに、(コストなどもほぼなく)自由に使えるようになっていくゲームデザインとなっています。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a5a4bf08bdf0afc38b1f61cd70f2c4373.png?x=767)
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a35b116e3afffc2afeeb493191f08391c.png?x=767)
トレーラー映像でも、スピーディーな連続技が見受けられる。
ベン
プレイヤーが扱える技は、ゲームの進行に応じて新たなものを習得したり、新たなものを見つけたりします。技にはいろいろなものがありまして、敵を空中に飛ばしてコンボを入れられるようになったり、投擲武器を投げたりといったさまざまなものが含まれます。
大原
本作では攻撃しながら、自分も動いていくようなアクションがあったりだとか、ボタン操作によって前にダッシュしながら切り込んでいったり、後ろにバックステップしながら攻撃したりするような、そういう移動を伴ったアクションがたくさんあるんですね。
そういった技がどんどん増えていくことで敵を攻撃し続けられるとか、敵を斬り上げたところに追い打ちをかけられるとか、そういったことが非常にやりやすいゲームになっています。それが爽快感にもつながって、この作品ならではのおもしろさが生まれています。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a77d249f274c5aa104d4a32d1a46af4b0.png?x=767)
空中から斬りつけながらそのまま移動するといった具合に、移動と攻撃の組み合わせがスピード感を生んでいる。
――実際の開発で、とくに時間を割いた部分についても教えていただけますか。
ベン
プレイヤーの動きと格闘面について、かなり重点的に開発時間を費やしました。敵キャラクターの動きを把握して、自分の技を効果的に使うことによって、敵を倒していく形になっています。
大原
これが先ほど触れたように、このタイミングではこの技を使おうだとか、このタイミングでこの技を使ったらつながるのではないかだとか、ここはどう追い打ちをかけようだとか、ここはいったん下がろうだとか、自由に操作が行なえる自由な選択肢につながっていくと思っています。
それは「この敵にはこの技しか出す意味がないな」などというものではありません。人によって"ここではこういう技がかっこいいと思う"といった理由で自由に技を選んでいただけるところがあり、そこがこのゲームのおもしろさになっていると思っています。
――アクションゲームとしては、たしかにいままでにないタイプのおもしろさですね。
大原
私がチーム内で説明するときに使っている表現なのですが、本作は、最初は手数の少ないアクションゲームのキャラクターなのですが、技が増えていくと格闘ゲームのキャラクターを使っているような感覚になっていくんです。最初は弱パンチと強パンチしかなかったものが、途中から中パンチやジャンプなどを使った連携技みたいなものが増えていくような感覚に近いかなと思っています。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a25271e3afbffeed70246ae5891b639a7.png?x=767)
トレーラーを見るとたしかに格闘ゲームの動きのような印象も受けるが、格闘ゲームではまず不可能な移動やジャンプなど、アクションゲームならではの要素も健在だ。
――アクション面が非常におもしろそうで、そうなってくるとユーザーとして気になるのは難易度面ですが、そちらのほうはどのように意識していますか。
大原
難易度は基本的には少し高めな設定をして、やり応えがあるゲームデザインを目指しています。難易度が高い低いというよりは、やり応えのあるゲームプレイが序盤から終盤まで通して楽しめるものが目標です。
先ほど触れたように、技がどんどん増えていくことでプレイヤーキャラクターとしては非常に強い、何でもできるキャラクターになっていくんです。それに対して敵の強さは相対的に高い難易度になるかと思うのですが、自分がうまくなっていけばそんな相手でも気持ちよくプレイできるような難易度を目指しています。当然、アクションゲームが苦手な方に対しても、フォローできるようなサポートをいくつか用意していくつもりです。
世界観とアートへのこだわりと、その集大成
――続いてストーリーについてですが、本作は『忍 -SHINOBI-』シリーズにおいてはどのあたりの時間軸のお話になるのでしょうか。
大原
世界線的には過去シリーズとつながっている部分もあるのですが、とくに明確にはしておらず、独立したお話としてプレイヤーの皆さんに楽しんでもらえるように作っています。ですので、過去の作品を知らない方でも、楽しんでいただけるかと思います。
――オマージュ要素として過去の敵なども出てくるようですが、それも過去作品と直接つながりがあるというわけではなく、あくまでオマージュとして出てくるといった感じでしょうか。
大原
そうなりますね。新しい作品として遊んでもらえますし、過去のタイトルをご存じの方は、少しニヤリとできるようなシーンや敵も見つけられることがあるかと。
――では続いて、アート面についてもこだわりをお聞かせください。
ベン
我々はアートに強くフォーカスした会社となっています。どれだけ美しくゲームを描けるかに、重点をつねに置いています。まず、本作では使用しているカラーパレットの数に関して、メガドライブのカラーパレットを参考にして、使える色をある程度絞って作りました。
アニメーションに関しては、私はもともと日本のアニメーターやイラストレーターが非常に好きで、彼らの用いているテクニックをいろいろ勉強して、本作にも活かしています。こういった伝統的なアニメーションをゲームに取り入れた作品というのはあまりなく、可能な限りそれを美しい形で仕上げることに、私たちは重きを置いています。
――参考にされている作品や、クリエイターについても教えていただけますか。
ベン
我々が参考にしているものは、日本のマンガやアニメのほか、アメリカやフランスのコミックなど多岐にわたります。
好きなアニメーターといえば、今石洋之さん(※)とすしおさん(※)、中村豊さん(※)、沖浦啓之さん(※)、湯浅政明さん(※)などですね。あとはTRIGGERやプロダクションI.Gの作品など、さまざまなところから勉強しています。めちゃくちゃオタクですみません(笑)。
※今石洋之氏:アニメ制作会社TRIGGERの設立者で、同スタジオで監督を務める。代表作は『天元突破グレンラガン』、『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』、『サイバーパンク エッジランナーズ』など。
※すしお氏:TRIGGER所属のアニメーター。代表参加作品は『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ、『彼氏彼女の事情』、『キルラキル』、『グリッドマン ユニバース』など。
※中村豊氏:アニメ制作会社BONESを中心に活動するアニメーター。代表参加作品は『勇者エクスカイザー』、『カウボーイビバップ』、『鋼の錬金術師』、『血界戦線』など。
※沖浦啓之氏:スタジオカラー所属のアニメーター。代表参加作品は『星銃士ビスマルク』、『蒼き流星SPTレイズナー』、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』など。
※湯浅政明氏:スタジオame pippin代表取締役を務めるアニメ監督。代表作は『DEVILMAN crybaby』、『四畳半神話大系』、『映像研には手を出すな!』、『犬王』など。![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a2f74ce8663bd073bf8032331b56c9e84.png?x=767)
トレーラー内でも鮮烈な演出が見られたが、これらもさまざまな作品から学んだ技法ということだろうか。
――アート面について、本作で日本をイメージするうえで核とした場所などはあったのでしょうか。
ベン
世界的に見て、日本という国に対する原風景というか、印象みたいなものは、世界中である程度固まったものがあると思います。日本の田園風景や竹林の小道だったりとか、そういったものです。私自身も日本に何度か行ったことがあり、その面からも日本的なイメージを出すのは、比較的簡単だったのではないかと思っています。
また、本作は必ずしも伝統的な日本だけがメインではなく、SF的な要素もたくさん盛り込まれていまして、作中の看板とかにも漢字がたくさん用いられているのですが、セガさんから正しいものを使っているかどうか、監修を受けています。
――アナウンストレーラーでも、個性的な背景が見られますね。
ベン
本作では伝統的な日本をベースにしたステージもあれば、トレーラーにあったような非常にモダンなステージもあったりと、さまざまなエリアをカバーした作品になっています。日本人の皆さんから見ても、違和感のないように仕上がっていればいいなと思っています。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a0573993e8d1d3f5443401d53fe6ba8b4.png?x=767)
映画『ブレードランナー』などを思い起こさせる、雨が降る夜に輝くネオン看板。これぞサイバーパンク。
――Lizardcubeさんから上がってきたアートについて驚かされた点や、ここがすごいと思った点などがあったら教えてください。
大原
全面的にLizardcubeさんのアートは、すごく雰囲気があっていいなと思っているのですが、とくに背景やキャラクターの存在感はすごいと思わされるところです。
これらがたったふたりによって描かれているということですので、そのコンビネーションが本当にすごいと思います。とくにキャラクターに関しては、全部手書きで描かれているんですよ。
――ツールでモデルを動かしているわけではないんですね。
大原
そうです。1枚1枚絵を描かれているんです。実際に開発途中の絵を見ていると、ゲームを作っているというより、アニメを作っているような感覚さえ覚えます。説明が難しいんですが、魂を感じる、といった言いかたになるでしょうか。
――アクションとアートの両方を合わせた極みが大技の演出かと思いますが、こちらについてもこだわった点などを教えてください。
ベン
強力な技については『ザ・スーパー忍』など、『忍 -SHINOBI-』シリーズから本作に採用したものがメインとなっています。たとえば、忍術に新たなエフェクトなどを加えて、よりかっこよく仕上げました。これらは非常に強力ではあるのですが、そのぶん発動するのに時間がかかったりするといった欠点があります。
この欠点を補うために、プレイヤーに対する新たな見返りを考えないといけないと思ったときに、セガさんと新たな技を考えました。
大原
もう少しわかりやすく、本作の独自性を出せないかというところから、Lizardcubeと議論した点でもあります。先ほど触れた技が増えていくという要素は、いちばん最初は感じられない部分であり、継続していくことで感じられるおもしろさなんです。ですので、できれば最初からおもしろさが感じられるワンアクションを作れればということになりました。
――アナウンストレーラーにもあった、複数の敵を一気に倒している技のことでしょうか。
ベン
はい。この技には現段階ですと、プレイヤーがより素早く敵を倒せるという要素もあるのですが、たくさんの敵を一度にまとめて倒すと、その数に応じて報酬も増減するというアイデアが取り入れられています。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a9016918a94b53fc4301a5f94ab077651.png?x=767)
トレーラー内では画面上の敵のあいだを高速移動し、一瞬でせん滅する様子が見て取れる。
ベン
こうした特殊な技を使うことによるゲームプレイで、できるだけいろいろな人に、この駆け引きを楽しんでもらえたらいいなと考えて開発を進めています。
大原
セガ側から一定条件下で必殺技が使えるようになるといったシステムの提案をさせていただいて、そのつぎの会議のときには、ベンさんがアニメーションのアイデアを早くも作ってくれていました。
その時点で最終的な完成版とほぼ同等のアニメーションが作られていました。それが非常にかっこよくできあがっていたんです。けっこう無茶なお願いだったのですが、我々としても提案してよかったと思っています。
蘇るジョー・ムサシの強さに刮目せよ
――過去のシリーズ作品ですと、素手攻撃が刀に変わったり、手裏剣が銃になったりといったパワーアップ要素もありましたが、本作ではいかがでしょうか。
大原
本作では技が増えていくというイメージで、自分の攻撃力が上がっていくというゲームデザインではないんです。技が増え、その技がつながることによって、結果攻撃力が上がるようなゲームデザインになっています。だんだんと勘を取り戻していくみたいなイメージでしょうか。
ベン
ジョー・ムサシに関しては全身白装束の忍者というのがまず非常に斬新でした。すごく目立つでしょうに(笑)。本当に何も恐れるものがないんだろうな、という印象が残りました。
キャラクター性を見てみると、本当にもう英雄の中の英雄といったキャラクターで、忍術や忍者のありかた、朧一族や家族など、そういったものを非常に大切にする、かっこいい英雄になっています。個人的には、彼のようなヒーローがもっと世の中にいてもいいなあと思うくらい、本当に欠点らしい欠点のないヒーローだと思っています。
大原
私としても、ジョー・ムサシの復活自体が大きな要素だと考えています。最初の作品から30年以上経過しているシリーズなのですが、ジョー・ムサシというキャラクターは姿や世界観も含めて、いまも唯一無二だと思っています。
メガドライブ時代からプレイされているプレイヤーさんには、ジョー・ムサシがいまもこんなにも存在感に溢れていて、ストーリー的にも前面に出てきて活躍しているということ自体に、新しさ、懐かしさを感じていただけるかと思います。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/a2a9f40a524027becc41662a56898bfb4.png?x=767)
ジョー・ムサシという主人公の存在そのものが、本作の世界観と魅力を大きく引き立てる。
――ジョー・ムサシを復活させるにあたり、どういったところにアイデンティティーがあると考えましたか。
大原
姿としては白装束と赤の鎧という部分は外せないということで、これはまさにそのままデザインされています。アクションとしてはやはり、いまとなってはふつうかもしれませんが、近接と遠距離の両方の武器を持っている部分というのもひとつのポイントかと。
それと、彼は寡黙なんですよね。そんな彼が主人公となって、どのような物語が展開されていくのか、ぜひご覧になっていただければと思います。シナリオ部分やテキスト周りの監修もセガが行っており、アドベンチャー的なものの見せかたやおもしろさの表現はセガの強みのひとつでもありますので、この部分でも協力できたかと思っています。
――話は少し戻りますが、今回復活させるIPとして『忍 -SHINOBI-』がすんなりと両社同意で決まった点について、このシリーズが持つ魅力とはどのようなものがあると考えていますか?
ベン
街中で忍者になって戦うという、そのコンセプト自体が非常に斬新なものだったと考えています。そのあと『ザ・スーパー忍』、『ザ・スーパー忍II』と続いて、世界観が個人的にはもっとクレイジーになっていったのがよかったと思っています。
『ベア・ナックル』や『獣王記』にも言えることなのですが、これらのタイトルは年長寄りのティーンエイジャーに向けた作品だったのかなと思っています。たとえば比較すると、任天堂の当時の作品はファミリー向けだったのに対して、セガはもうちょっと大人のティーンエイジャーなどに向けて、こういったゲームを作っていたのかなと。それが非常に斬新でクールに見えて、私のような人たちの思い出に強く残っているのではないかと思っています。
大原
それらのタイトルの中でも、やはり『忍 -SHINOBI-』はひとり用のアクションゲームとしては非常に新しく、しかも難易度がめちゃめちゃ高くて、クリアーできたら神と言われるようなタイトルだったわけで、その存在感が非常に大きかったですよね。
――オマージュ要素を入れるにあたり、こだわった部分などもあれば教えてください。
大原
トレーラームービーにもあるのですが、たとえばジェットボードに乗っている忍者というのはおもしろいので、このシーンは絶対復活させようよ、みたいな流れはありましたね。
あとはアート面の話になりますが、竹林のシーンはふつうにLizardcubeさんが描くだけでぜんぜん違うというか、圧倒的なクオリティーの変化が出ています。本作ではオマージュが感じられる部分もありますが、今風のアートに変わったことによる感動も多いと思っています。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/41648/ada982b763d84197787e217208d98b38c.png?x=767)
ジェットボードに乗ってクナイを投げ、敵のジェットバイクを撃破する。この一幕だけでも、濃密な世界観が伝わってくる。
――ほかにもこんなオマージュや、こんな部分に注目してほしいといった部分はありますか?
大原
ジェットボードのシーンのような要素のほかにも、過去作のエネミーを今風のデザインに描き起こしたキャラクターが登場したりと、そういった部分でニヤリとしていただければと。
ベン
もともとのオリジナルのシリーズからキャラクターやボスを使っています。アーケード版、マスターシステムのものも含めです。たとえばジョー・ムサシとその妻などですね。
あとはトレーラーでも出ていたかと思いますが、『忍 -SHINOBI-』初代作品のステージも登場していて、子どもの忍者を救うステージも含まれています。あとはセガのほかのタイトルについても、ちょっとしたオマージュを散りばめています。セガの多大なIPに敬意を払いながら、見ていて楽しいようにいろいろ含めさせていただきました。
――では最後に、本作を楽しみに待つユーザーの皆さんへメッセージをお願いします。
ベン
私たちのゲームをプレイしていただいて、楽しんでいただければ幸いです。本作は『忍 -SHINOBI-』シリーズに対する賛歌でもあり、皆さんにとってもっとも楽しい2D忍者ゲームになれていたらいいなと思っています。
そしてなによりも、ジョー・ムサシという最強の忍者に、少しでもなりきってもらえればと願っています。
大原
本作には過去の『忍 -SHINOBI-』シリーズを知ってる人には懐かしくなってもらえるような要素をいろいろ入れていますが、過去作を知らない方でも、まったく問題なく遊んでもらえるように設計しておりますし、楽しみがたくさん用意してあります。
とくに、いまの2Dアクションゲームが好きで、爽快感とか、自分なりのアクションとかを楽しみたいという方には、ぜひプレイしていただきたいです。言語化が難しいところで恐縮ですが、本作には一度触っていただくと「このゲーム、何か新しいかも」と思える要素がありまして、いままでの2Dアクションゲームとは少し違う、新鮮な快感を味わってもらえるかと。皆さん、ぜひ一度触ってください。