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『ライドウ リマスター: 超力兵団奇譚』開発者インタビュー。19年ぶりの新作で果たされる、ファンとの“約束”とは?

by川島KG

『ライドウ リマスター: 超力兵団奇譚』開発者インタビュー。19年ぶりの新作で果たされる、ファンとの“約束”とは?
 
 約19年前に発売された、アトラスの名作アクションRPG『
デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』が、HDリマスター化されて2025年6月19日に発売決定。ストーリーとキャラクターはそのままに、グラフィックやゲーム性が向上し、さらに本編フルボイス化など、演出面も強化されている。

 本作『
RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』のディレクターを務めるのは、オリジナル版の立ち上げにも深く携わったアトラスの山井一千氏。ファミ通は独自に山井氏へのインタビューを行い、『ライドウ』をいまの時代にリマスターする理由と意気込みを訊いた。
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※週刊ファミ通2025年4月17日号(4月3日発売)で掲載したインタビューを全文掲載。

山井一千やまいかずゆき

アトラス所属。『真・女神転生III - NOCTURNE マニアクス』や『真・女神転生IV』、『真・女神転生IV FINAL』などで開発のコアメンバーを務め、『真・女神転生V』では原案を担当。オリジナルの『デビルサマナー 葛葉ライドウ』シリーズでもディレクターとして携わった。

ファンとの“約束”がついに……


――約19年前に発売されたオリジナル版でも、山井さんは開発のディレクターを務めておられました。まずは、オリジナル版を企画した当時の経緯をお聞かせください。

山井
 2004年に『真・女神転生Ⅲ – NOCTURNE マニアクス』を発売した後、つぎは何を作るかについて金子さん(金子一馬氏。オリジナル版でプロデューサーを務め、原案とキャラクターデザインも担当)といっしょに考えていたとき、デビルサマナーを題材にした新しいゲームを作りたいね、という話題がよく出ていました。また、コラボなどでお付き合いのあった他社さんのオフィスに行くと、会社を代表するキャラクターたちの大きな販促ポップやポスターなどが飾られていて、「アトラスにもこういう、会社の看板を背負えるようなヒーロー然としたキャラクターがいたらいいなぁ」と、かねてから思っていたんです。

 そんななか、金子さんのほうから、架空の大正時代を舞台にするといったアイデアをいただいたり、ライドウの原型となるキャラクターを描いてもらったりしながら、オリジナル版の企画が固まっていきました。

――それ以前の『デビルサマナー』シリーズや、『真・女神転生』シリーズとも異なるテイストを目指したということですね。

山井
 『真・女神転生』シリーズは、神と悪魔の壮大な戦いがドラマの主軸にあって、人間は往々にしてか弱い存在でした。一方の『デビルサマナー』シリーズは、人間に焦点を当てたドラマを描いていて、表向きには真っ当な仕事をしているけれど裏では悪魔を駆使して戦っているという、比較的コンパクトな世界観で楽しんでいただく作品。そのテイストは踏襲しつつ、「こんどは街を守るヒロイックな“探偵”を主人公にしよう!」という経緯で、葛葉ライドウというキャラクターが生まれたんです。

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――主人公と悪魔たちの関係も、ドラマとシステムの両面において独自性がありました。

山井
 『デビルサマナー』系統の前作にあたる『デビルサマナー ソウルハッカーズ』(1997年発売)では、悪魔会話に力を入れたり、仲魔の性格や忠誠度をシステムに組み込んだりと、悪魔たちを身近でキャッチーな存在として描いていましたから、その方向性をさらに追求したいと思ったんです。バトルは従来のコマンド選択式ではなく、フィールド上でさまざまなアクションや悪魔の力を駆使できたり、探偵としての事件捜査にも悪魔を役立てられたりと、大胆なチャレンジをしましたね。当時を振り返ると、相応に苦労した記憶がよみがえります(笑)。

――ユーザーからの反響はいかがでしたか?

山井
 大きく変えたぶん、「大好きだ!」と言ってくださる方もいれば、「どうしてコマンド選択式じゃないんだ!」などといった評価をされる方もいて、やはり賛否は分かれましたね。ただ、ライドウの主人公像や、架空の大正時代といった舞台設定が心に刺さったという声もたくさんいただけて、手応えを感じました。

 悪魔を連れて歩けるのも好評だった一方で、従来の2Dではなく3Dで悪魔たちを描いたため、その種類は『
ソウルハッカーズ』よりも絞らざるを得ませんでしたが、そういった当時の心残りなどは、続編の『デビルサマナー 葛葉ライドウ対アバドン王』(2008年発売)で改善を図りました。

――その『アバドン王』で、ライドウの人気はさらに高まったように思います。あれ以来、新たな供給を望む声は根強かったのでは?

山井
 ありがたいことに、アトラスが毎年実施しているアンケート調査でも、熱のこもったご要望をたくさんいただいていました。また、『アバドン王』のシステムで『超力兵団』を遊びたいというお声も非常に多かったので、リマスターをお届けするなら必ず果たさないといけない約束のひとつになっていましたね。

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変えたところ、変えないところ


――本作は、“RAIDOU”という英字表記のキャラクター名から始まるタイトルに改められています。ここにはどんな意図があるのですか?

山井
 理由はふたつあります。第一に、本作はグラフィックのHD化だけにとどまらず、『アバドン王』のシステムを取り入れたり、新しい世代の開発スタッフの意見も採用しながら大小さまざまなチューニングを施したりと、いわゆるベタ移植とは一線を画す作品になっています。それなのにタイトルを変えないまま世に出したら、オリジナル版を“なかったこと”にしてしまう気がして、そのような歴史の上書きは避けたかったんです。

 そして、もうひとつの理由は、SNSなどでファンの方々の投稿を見ると、日本や海外でもライドウというキャラクターの名前で認知されていることを感じますので、これをタイトルでも前面に出したいと考えました。

――『アバドン王』でパワーアップしたシステムといえば、バトルで悪魔を1体ではなく複数召喚しながら戦えるのが売りでした。

山井
 それに加えて、敵の“MAG”を奪うには弱点を突く必要があったところ、若いスタッフから「弱点を突くこと以外でもMAGを奪えるような仕組みを取り入れたい」という意見が出まして、本作では弱攻撃と強攻撃を使い分ける“MAGドレイン”の仕組みを作りました。単に『アバドン王』のシステムを乗せただけではありませんので、“いいとこ取り”以上の仕上がりになっているかと思います。

――タイトルとゲームシステムは変えた一方で、ストーリーやキャラクターについてはオリジナル版を尊重しているのですよね。

山井
 はい。オリジナル版を企画したころは、世の中が不景気で、どことなく将来への不安や閉塞感みたいなものが漂っていたので、ゲームを遊んだ人にエールを送るようなメッセージを込めたいと考えていました。大正という激動の時代から置いて行かれて不幸になった人たちや、帝都を守る組織のおかげで窮屈さも感じてしまう……といったドラマの要素は、2025年の現代にもすごく突き刺さってくると思います。

――確かに、ここ数年で世界情勢は激変していますし、先行きが見えない不安もあります。

山井
 そんなときに、葛葉ライドウのような、裏表なく正義を貫き通すヒーローがいてくれたら元気をもらえそうですよね(笑)。それから、本作ではキャラクターボイスも新たに収録していますから、オリジナル版を経験された方にも改めてドラマを味わっていただきたいです。ゲームの後に発売されたドラマCDで初めてライドウたちに声がついて、そのイメージが皆さんに浸透しているかと思いますので、いまも現役で活動されている声優さんについてはドラマCDから続投していただきました。

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――リマスターということで、グラフィックも要注目ですね。キャラクターや帝都の景色などがHD化どころか一新されています。

山井
 ライドウが好きでアトラスに入社したというスタッフもいるので、「キャラクターの3Dモデルを原画の雰囲気にもっと近づけたい!」といった提案が続々と出てきましたね。事件捜査で駆け回るフィールドも、今回は3Dで再構築しつつ、カメラワークはオリジナル版の雰囲気を踏襲して半固定式にしています。

 また、現実世界で傷薬を買いに出かけたら敵と遭遇するなんてことも多々ありましたが、本作では現実世界でそういったエンカウントが発生しないようになっています。ダンジョンに関しても、「悪魔たちがうろついているほうが見ていて楽しい」という意見が出たので、ランダムエンカウントからシンボルエンカウントに変更しました。

――悪魔の種類も大幅に増えましたね。

山井
 『アバドン王』や近年の『真・女神転生』シリーズからも厳選した悪魔を追加しています。また、同種の悪魔を何体も仲魔にできますので、極端な話、仲魔の枠をジャックフロストだけで埋めるといった遊びかたも可能です。

――目的地へ瞬時に移動できる“現場急行”や、自由な難易度設定なども、いまどきのゲームらしいチューニングだなと思いました。

山井
 コマンド選択式ならパーティーを育てれば強敵相手でも戦えますが、アクションが苦手という方もいらっしゃいますからね。ライドウのビジュアルや世界観に興味を抱いてゲームを始めてくださった方が、アクションに難しさを感じて途中で断念されてしまうといったことが生じないよう、幅広いお好みに対応した難易度を用意しています。“現場急行”でテンポの向上を図りつつ、いわゆるサブクエストにあたる“別件依頼”も追加しているので、ちょうどいいボリューム感で楽しんでいただけるはずです。

――オリジナル版はダウンロード販売がありませんでしたから、ライドウのことを知っても実際には遊べない人が多かったでしょうね。

山井
 若い世代の方々にとっては、ある意味で伝説のようなゲームになってしまっていたかもしれません(笑)。『真・女神転生』シリーズを源流とするさまざまなアトラス作品の中でも、ライドウという主人公は異質な存在だと思いますし、悪魔の能力を使いながら事件を解決していく楽しさもライドウならでは。鳴海のようにコミカルなキャラクターも登場しますので、初めて遊ぶ方にとっても意外と取っつきやすい作風だったりします。今回のリマスターを機に、ライドウの魅力をぜひ知ってほしいです。

――19年ぶりの復活、楽しみにしています。

山井
 こうしてリマスターが実現したのは、絶え間なくライドウの復活を待ち望んでくださったファンの皆さんのおかげです。本当に、ありがとうございました。我々もライドウのことが大好きで、積年の愛を込めてリマスターに取り組みましたので、どうぞご期待ください!

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お知らせ

 本作の“ファミ通DXパック”には、ファン必携の“葛葉(クズノハ)便覧 ~大正二十年版~”などが同梱される。A5判、本文48ページの“葛葉便覧”には、葛葉ライドウという存在や、設定にまつわる豆知識、アトラスの開発者たちが語りあう座談会など、本作がいっそう味わい深くなる内容が詰め込まれている。こちらもどうぞお見逃しなく!

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集計期間: 2025年04月25日12時〜2025年04月25日13時