『ライドウ リマスター: 超力兵団奇譚』レビュー。味わい深さとテンポのよさを両立するストーリー&バトル。仲魔を愛でる喜びも味わえる極上の逸品
 アトラスより2025年6月19日に発売予定のアクションRPG『ライドウ リマスター: 超力兵団奇譚』。対応プラットフォームはNintendo Switch、Nintendo Switch 2、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、そしてPC(Steam)となっている。

 この作品は、2006年にプレイステーション2向けに発売された『
デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』のHDリマスター版。

 HDリマスターということでグラフィックは美麗になり、メインストーリーもフルボイス化、そしてアクションや悪魔合体などで続編『
デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』や近年の『真・女神転生』シリーズで好評だったものを採用するなど、システム面が大幅に強化されている。ストーリーとキャラクター以外はほとんど手が加えられていると言っていいだろう。

 本記事では、発売に先駆けて製品版同等のバージョンからゲーム前半戦の山場となる第伍話までを遊んだレビューをお届けする。
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大正浪漫な世界観とただの勧善懲悪ではない物語

 物語の舞台は大正二十年、帝都。和洋折衷が進み、どこかハイカラな雰囲気を漂わせるようになった架空の日本である。

 主人公は十四代目“葛葉ライドウ”の名を受け継いだ悪魔召喚師(デビルサマナー)。会話シーンでは基本的にしゃべらず、ムービーシーンでもあまり表情の変化を見せないが、危機に遭っても揺るがず、たまに不敵な微笑みを浮かべているなどなかなかに頼もしい人物である。

 プレイヤーはこの青年を操り、帝都の怪異を解き明かしていくのだ。
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 ゲームの流れは基本的にオリジナル版と同じ。人々が日常を送る“現実世界”と悪魔が跋扈する“異界”を行き来しながら、鳴海探偵社に持ち込まれた依頼をきっかけに起こるさまざまな事件に挑んでいく。

 ストーリーは一本道で、また新たに目的地表示などのサポート機能が整備されたため、どこに行けばいいか迷うことはそれほどない。さらに“現場急行”と名付けられたファストトラベル機能も追加された。一度訪れた場所に瞬時に移動できるこの機能はじつに便利(ただし電車賃はしっかり取られる)。
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 オリジナル版もテンポのよさが魅力のひとつであったが、本作はそれ以上にサクサク進められるはず。

 今回プレイした範囲では帝都有数の資産家でもある“大道寺家”の令嬢、伽耶が持ってきた「自分を殺してほしい」という奇妙な依頼に始まり、つぎつぎと不可思議な事件が起こる。ライドウがそれらを解決していくうちに、次第に帝国を覆う陰謀に近づくことになるのだが……。

 メインストーリーでは、鳴海やタヱ、関東羽黒組の若頭・佐竹に金王屋の主人など、ライドウを取り巻く個性的な協力者たちとのやり取りが楽しい。ひとりの例外もなく、ひと癖もふた癖もある人物ばかりで、ライドウを振り回したり、痛い目に遭ってヘコんだりとさまざまな姿を見せてくれる。

 また、事件の構造は基本的にわかりやすいものばかりだが、捜査を進めていくうちに犯人が必ずしも“悪”ではなかったり、それどころか周囲から慕われていたりと、単純な勧善懲悪のお話になっていないところも魅力。また前述したように展開のテンポがいいので、気持ちよく進められるはずだ。
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捜査やアクションバトルなど独自のシステムに迫る!

 本作の特徴のひとつが“捜査”システム。主人公のライドウは“探偵”として、悪魔が関わるいくつもの事件を追うことになる。その中で街行く人々や、一部の人にしか見えない悪魔たちに“聞き込み”をしたり、マップ上に点在するギミックを解いたりして“捜査”を進めていくのだ。

 毎回従者のゴウトとともに捜査に赴くライドウではあるが、彼にはゴウトのほかにも心強い味方がいる。それが仲魔たち。仲魔にできる悪魔にはそれぞれ捜査用の特殊能力が設定されていて、それらを発動させることで特殊な捜査が可能になるのである。

 本音を探るべく“読心術”をかけたり、歩いてはいけない場所を“飛行”で越えたり、水場を“冷却”で凍らせて歩けるようにしたり……。『
メガテン』シリーズや『ペルソナ』シリーズなど、アトラスのRPGタイトルではおなじみの悪魔たちだが、本作では戦闘だけでなく、捜査の助手としても頼れる存在になっている。

 こういった要素も19年ぶりにリマスター版が発売される原動力となった、ファンからの根強い人気の理由なのかもしれないと感じた。
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 もうひとつの特徴が仲魔とともに戦うアクションバトル。本作では続編『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』(以下『アバドン王』)のシステムが多く採用されており、とくにバトルは『アバドン王』のものが基本に据えられている。

 前述したように、展開はとてもスピーディー。攻撃ボタンを押すだけで一瞬でターゲットの敵に近付いて攻撃してくれるので、移動の煩わしさがあまりないのはうれしい。
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 また、アトラスのRPGらしく基本戦術は“敵の弱点を突き、一気呵成に攻撃を叩き込む”というものになっている。ただし『ペルソナ』シリーズのように敵をダウンさせて一斉攻撃……というわけではなく、弱点属性で攻撃(特技)を当てると敵は一定時間硬直する。その隙に攻撃するという仕組みだ。

 特技はすべてMAG(マグネタイト)を消費して発動するというシステムもなかなか味わい深い。MAGは弱攻撃を当てるか、硬直した敵を攻撃すると補充できるようになっていて、攻撃の組み立て次第では無限に特技を使うことも可能。

 ただし、仲魔たちの特技はかなりMAG消費量が大きく、放っておくと一瞬で使い果たしてしまうほど。また、弱攻撃はその名の通り威力が低めなので戦闘が長引きやすくなるというリスクがある。

 残量が不安なときはスキル使用禁止の指示を出せば無駄遣いを抑えられるので、指示も活用しつつ、ライドウの弱攻撃と強攻撃、特技を使いわけながら戦うことが肝要となる。さまざまなゲージに注意を払いながらの戦いになるためけっこう忙しい。また、ゲージに気を取られて敵が放った遅い弾に当たってしまったりもする。単純な攻撃だけでなく状況に応じて適切な行動をとる必要があり、オリジナル版よりも遊びやすくかつ奥深いバトルシステムになっている。
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 戦闘では“殺魔一閃(せつまいっせん)”や“スピリット剣”といった新技も気持ちいい。

 殺魔一閃は対個体の強攻撃、スピリット剣は超強力な全体攻撃となっている。これらは戦闘中に連続で攻撃を当てたり、敵の攻撃をうまく回避することで発動できるようになるものなので、まず発動可能になった時点で自己肯定感が爆上がりである。威力も、とくにスピリット剣はザコ相手ならほぼ一撃必殺のようなものなので頼りになる。

 一方、殺魔一閃は発動しやすいものの、発動コマンドが表示される時間が一瞬なので、前述したゲージに気を取られていると見逃しやすい。また、弱攻撃+ジャンプというボタン配置もくせもので、筆者はよく間違えてはその隙に攻撃を食らってしまっていた。本作のバトルはシンプルではあるが、使うボタンは多いので慣れが必要ではある。
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 こういった味わい深い=習熟が必要なシステムだとか、油断していると序盤から瞬殺されてしまうような骨太のゲームバランスというのはやはりアトラスのRPG。初心者もしくはアクションが苦手なプレイヤーのために、とてもやさしい難易度変更も用意されているので、恥じることなく活用しよう。

レトロな感覚と快適な手触りに満足

 戦闘以外でも『アバドン王』から採用されたシステムはあり、そのひとつが“別件依頼”。いわゆるサブイベントである。ストーリーを進めるのに必須のものではないが、クリアーすると金銭やアイテムなどさまざまな報酬がもらえる。
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 オリジナル版でのサブイベント類はすべて別件依頼に統合されていて、達成条件なども随時確認できるのでとても便利になった印象がある。

 悪魔合体を行う“業魔殿”もパワーアップしており、検索合体や逆引き合体などが追加され、合体コマンドが使いやすくなった。また“デビルカルテ”と“デビルカルテ・プロ”という、“悪魔全書”のような要素も登場。『アバドン王』に出てきた、ライドウの武器を素材を使って進化させていく“錬剣術”もここで行えるようになっている。
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 本作のグラフィックは、同じアトラスの『ペルソナ3 リロード』などのようにイチから作り直したものではなく、基本的にはオリジナル版をリファインしたものとなっている。

 十分にキレイな仕上がりになってはいるが、もともとオリジナル版はSD画質のプレイステーション2向けに作られたものなので、正直「超なめらか! 超美しい!!」というほどではない。

 しかし、架空の大正時代というレトロな世界観や古今東西の“悪魔”が人間と密接に絡み合う、どこか不気味な雰囲気とも相まって、この少し粗さを感じさせるところがむしろいい“味”を出しているように感じた。
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 一方で、手触りは非常に快適。ボタンのレスポンスはいいし、場面転換時の待機時間もほとんどない。前述したようにバトルもスピーディーで、CD-ROM、DVD-ROM時代のゲームにありがちな、メディアの読み込みに起因するモッサリした挙動は、本作に関してはまったく感じないと言っていい。

 唯一気になるとすれば、会話もしくはスキル使用のボタンが決定、キャンセルのそれと同じであるために会話終了時にうっかり連続して話し掛けたりスキルを使用してしまいがちであること。コンフィグ機能でボタン配置を変えればいいのだが、最初から変えてくれていてもよかったかな。

 メインストーリーのフルボイス化も、ストーリーをより深く味わうためのエッセンスになっている。また、悪魔たちもバトルや特技使用などでとにかくよくしゃべるので、プレイ中ほとんどの時間が賑やかになったのも楽しかった。

 とくに仲魔たちはよくしゃべり、よく動く。単独捜査時に見せるそれぞれの姿や歩きかたなど、とても個性が出ている。筆者はとにかくデカい“オボログルマ”だとか、スキップするさまがかわいらしい“イズン”などがお気に入り。かわいく感じて愛着が持てるようになったと思う。
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 発売まであと約2ヵ月。かつてオリジナル版を遊んだ人も今回初めて遊ぶ人も、誰もが新鮮な気持ちで楽しめるゲームなので、ぜひ手に取ってみてほしい。